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内閣総理大臣 岸田 文雄 様
核兵器禁止条約に関する日本政府の対応について(要請)
貴台におかれましては、「核兵器のない世界」の実現に向けて多大なる御尽力をいただき、広島・長崎両市民を代表し、心より敬意を表します。
本年5月に開催されたG7広島サミットでは、「ヒロシマの心」を各国首脳にしっかりと受け止めていただくとともに、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」において、世界中の指導者や若い世代の広島・長崎への訪問を促されたことに深く感謝申し上げます。
一方で、本年8月のNPT再検討会議第1回準備委員会では、一部の国が個別の事項に関する記述にこだわったために、今後の検討作業の土台である議長総括を公式文書として残すことができませんでした。このことは、国際社会における緊張関係が一層高まっている中で、問題解決に向けての弾力的な対応が難しくなっているということの表れであり、強く危惧すべきものと考えています。
このような緊迫した状況の中、NPTとは異なるアプローチで核兵器廃絶を目指す核兵器禁止条約の存在意義は増しています。そして、核兵器禁止条約とNPTは相互に補完する関係性であることから、今月開催される核兵器禁止条約第2回締約国会議における議論が、NPTの核軍縮・不拡散に関する議論を再び前進させる力にもなり得ると考えます。日本政府がその議論に加わることは、被爆者の切なる願いと被爆の実相を踏まえた対応となるだけでなく、核保有国と非核保有国との分断を解消し、核兵器廃絶に向けた議論の共通の基盤を形成するための橋渡し役を果たすことにもなると考えます。
ついては、日本政府におかれましては、唯一の戦争被爆国として一刻も早く核兵器禁止条約に署名・批准することを強く要請するとともに、まずは今月開催される同条約の第2回締約国会議にオブザーバー参加し、対話による外交努力により核兵器のない世界の実現に向けた推進力となっていただくようお願いいたします。
令和5年(2023年)11月20日
広島市長 松井 一實
長崎市長 鈴木 史朗