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平和宣言
時は空しく過ぎるものではない。7年の間、私たちは心にうけた恐ろしい傷あとをじっとみつめてきた。思えば人間の犯しうる過失の余りにも深刻なのに戦りつせずにはいられない。
けれども私達は人間の善意と寛容とを信じている。
己の尊厳を汚すことなく、むしろそれを生かすことによって、かえって世界に通じる道のあることを信じたい。
ひとりの心の中に愛情の火を点じ、ふたりの心の中にそれを受けつぎ、やがてはそれがひとつの聖火へと燃えつづけるとき、きっと世界は良心の環によってひとつに結ばれるに違いない。
私達は素直に反省し、このことを個人としての、また市民としての責任において考え、かつ実践することを尊い精霊たちの前に誓うものである。
1952年(昭和27年)8月6日
広島市長 浜井 信三