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平和宣言
あの戦慄すべき日から、ここに8年の歳月が過ぎた。
原爆下の広島の惨状は、今もまざまざとわれわれの眼に浮かんで来る。それは、人間の想像をはるかに超えた痛ましき限りのものであった。しかも1個の原子爆弾がのこした罪悪の痕は、いまなお、消えるべくもなく続いている。それは今後の戦争の深刻さを警告し、人類が自らの滅亡を望まないならば、再び武器をもって争ってはならないことを訓えている。
原子力を開放し得たことは、明らかに科学の偉大なる進歩であった。この近代科学の成果が殺戮と破壊のために使われるか、それとも全人類共同の福祉のために使われるかによって、人類の運命は、今や破滅か繁栄かの岐路に直面している。
本日、原爆8周年の記念日にあたり、われわれは、世界最初の原爆を身をもって知った広島市民として、全世界の人々に、重ねてこの事実を伝え、われわれもまた、決意を新たにして、平和確立のために精進することを謹しみて地下の貴き御霊に誓うものである。
1953年(昭和28年)8月6日
広島市長 浜井 信三