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平和宣言
あの惨禍の日から38年、ヒロシマは、今年も深い憂慮と憤りのうちに暑い夏を迎えた。
今日までのたび重なる軍縮交渉にもかかわらず、米・ソ両国を中心とする核軍拡競争は、ますます熾烈の度を加え、ヨーロッパにおけるSS20の配備、パーシング2の配備計画、極東における核兵器増強の動きなど、増大する核の脅威のもとで、人類は、まさに破滅の危機に直面している。
この緊迫した状況の中で、核兵器反対の運動は、大きな盛り上がりをみせ、「ヒロシマを繰り返すな」、「ノーモア・ヒロシマ」の声が、今や、国際的世論にまで高まっている。
国際連合は、第2回軍縮特別総会で採択した軍縮キャンペーンの一環として、今年秋の各国軍縮特別研究員の広島派遣、国連本部での原爆被災資料の常設展示など、被爆実相の普及と継承への新たな努力を始めた。
広島・長崎両市長は、本年1月、核兵器廃絶に向けての「世界平和都市連帯」を呼びかけた。今、世界の各地から熱い賛同のメッセージが寄せられ、国境を越えて連帯の輪が広がりつつある。
今こそ人類は、敵対の歴史に訣別して、人間の尊厳に目覚め、相互の対話を大いに深めて、信頼と友好の絆を確立すべきときである。
きょうの逡巡は、あすの破滅につながる。
際限のない核軍拡競争に歯止めをかけるため、核兵器保有国は、直ちに、核実験全面禁止条約を締結し、すべての核兵器の製造と配備とを停止し、さらに、核兵器を廃絶するように強く求める。
特に、核超大国である米・ソ両国は、一日も早く首脳会談を開催し、軍事的・戦略的立場を超えて、全人類的見地から、世界に希望を与える決断を行うよう訴える。
唯一の被爆国であり、憲法の平和理念のもとに非核三原則を堅持するわが国は、その実現に先導的役割を果たし、世界平和の灯火たるべきである。
本日、この式典にあたってわれわれは、原爆犠牲者の御冥福を心から祈念し、国家補償に基づく被爆者援護対策の確立と核兵器廃絶、全面完全軍縮を目指して邁進することを固く誓うものである。
1983年(昭和58年)8月6日
広島市長 荒木 武