本文
恵下埋立地(仮称)建設工事に係る伐採木の処分について
広島市監査公表第29号
平成29年10月6日
平成29年8月10日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法第242条第4項の規定により、別紙のとおり公表する。
広島市監査委員 佐伯 克彦
同 井上 周子
同 原 裕治
同 桑田 恭子
別紙
広監第 79号
平成29年10月6日
請求人
(略)
広島市監査委員 佐伯 克彦
同 井上 周子
同 原 裕治
同 桑田 恭子
広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)
平成29年8月10日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法第242条第4項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。
第1 請求の要旨
平成29年8月10日付けで提出のあった広島市職員措置請求書に記載された内容は、以下のとおりである。
A広島市長、B環境局埋立地整備部長、C前恵下埋立地建設事務所長、D前恵下埋立地建設事務所専門員、その他恵下埋立地建設事務所「恵下埋立地(仮称)建設工事」担当者等にかかる措置請求
1 請求の要旨
⑴ 概要
「恵下埋立地(仮称)建設工事」(工期:平成28年3月1日から平成32年3月10日、施工業者:E企業体)においては、伐採した立木(以下、「伐採木」という。)はすべて産業廃棄物として処分することとして、その処分料金を工事金額に含んでいた。
ところが、伐採木のうち「幹」の部分が「産廃処分」ではなく、「有用物」として木材市場で売却されていた。
その結果、産廃処分料と売却益の両方が、違法・不当に請負業者に渡った。
昨年、C前恵下埋立地建設事務所長に対してこのことを指摘し、調査及び是正措置をお願いした。しかしながら、広島市は是正措置(返納措置)をとらなかったため、違法・不当に税金を支出することとなり市民に損害を与えた。(平成28年12月以降の伐採分については、指摘通り産廃から有用物に変更し直接木材市場で売却しているとの事であるので、措置請求は、産業廃棄物としながら市場で売却されていたものに対してである。)
かかる違法・不当な公金支出に対して、損害額の返金処理と、当該職員への相応の処分を求めるため監査請求するものである。
⑵ 説明
ア 事実関係
(ア) 伐採木を有用物として市場売却した場合には、売却益を市へ返納することとなっている。伐採木は市の財産であること、売却益は工事とは別物であることから、市の財産によって得た収益は、市に返納する必要があるからである。
これとは逆に、伐採木を市場価値のないものとして産廃処分する場合は処分料金を払って産廃処理業者に引取らせ処分する必要がある。
(イ) 本件工事に先立って行われた「恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事」においては、伐採木の「幹」の部分は、有用物として木材市場で売却され、売却益が市に返納されている。その売買記録の一部を〔事実証明書1〕として添付する。
(ウ) 木材市場(F組合)は、本件工事現場から約20kmの位置にあることから、運搬距離が短く、運搬料金を支払っても売却益が見込まれる。市が設計に計上した産廃処分施設(再資源化施設)も約20kmとほぼ同じ距離にあり、両者を比較しても、有用物として市場売却する方を選んで設計すべきものであった。
(エ) しかしながら、先に行われた取付道路の工事では「幹」を市場売却としたにも関わらず、本件工事では、伐採木は、「幹」の部分を含めて、全て産業廃棄物として処分する設計で工事発注された。〔事実証明書2〕
(オ) E企業体が作成した施工計画書においても、伐採木は、全て産業廃棄物として処分することとしている。E企業体は、「幹」及び「根株」については、運搬距離が50kmもあるI社(安芸太田町川手)で処分することとした。(なお、枝葉については、設計通り佐伯区石内のG社としている)〔事実証明書3〕
(カ) ところが、産廃処分されているはずの伐採木の「幹」の部分が、市場で売却されていた。
(キ) 市場売却益は売主であったH組合が得ていた。その額がいくらであるのかは不明であるが、おおよそ推定すれば1,000万円程度になると思われる。E企業体も広島市も、関係ないため把握していないと言っているが、F組合かH組合に確認すれば分かるはずである。
私たちの指摘によって、広島市がE企業体に聞取り調査したところでは、売却された量は、平成28年12月までに3,700立方メートルということであった。〔事実証明書4〕
なお、H組合は、本件工事の一次下請業者である。〔事実証明書5〕
(ク) 市場売却されていた幹は、伐採現場において枝を取り払われ、幹のみにしてトラックに積込み易いよう選別・集積されていたものである。
伐採木は、再資源化施設で再資源化処理(チップ等にする処理)を行うこととして処理費用が組み込まれている。しかし、「幹」の部分はそのままで売却されている。
設計上は、佐伯区五日市町石内のG社で再資源化するとして、その費用(1立方メートル当り2,200円)が計上されている。市場売却された数量を3,700立方メートルとすれば、1,000万円程度(諸経費込み)が、実際に再資源化の作業をしていないにも関わらず支払われた額になる。
I社での処分費が、I社の公表通り1立方メートル当り7,500円であれば、2,700万円余りがE企業体からI社に渡っているということになるが、再資源化処理をしていないのであるから、共謀して処理費用を広島市からだまし取ったという構図になっている。産廃処分費は〔事実証明書6〕の通り。
(ケ) 木材運搬トラックが、伐採現場からI社に行くのではなく、木材市場の方に行ったという目撃情報〔事実証明書7〕からは、産廃処分場への運搬費も支出してはならない経費ということになる。しかし、本件工事の設計に組み込まれている。
実際に伐採現場から直接木材市場に搬入された量は、運搬トラックのナンバー記録や運行記録を突き合わせれば判明すると思われる。
(コ) 産廃処分されているはずの伐採木の一部が市場売買されていることについて、昨年、恵下埋立地建設事務所を訪れ、C所長に話し、調査と是正措置をお願いした。その後の広島市の見解は、「すべて産廃処分としているが、再資源化施設において手選別で、廃棄物と有用物をより分け、有用物を市場売却しているので違法ではない」というものであり、議会でも、伐採木のすべてを産廃処分(再資源化施設に搬入)することして設計計上し、施工業者もその通り再資源化施設に搬入していると答弁をしている。〔事実証明書8〕
なお、広島市からの問い合わせに対して元請業者は、すべて産廃処分している(中間処理施設に搬入している)と答えている。〔事実証明書9〕
(サ) しかしながら、現場で伐採された樹木は、現場で、枝と幹の部分に分けられ、幹は4mに切断されたうえで集積して、トラックに積み込まれており〔事実証明書10〕、中間処理施設(再資源化施設)で手選別でより分けている訳ではない。
現場で、そのまま木材市場に搬入できる状態にしていること、事実としてその幹を木材市場で売買したことから、「幹」は伐採現場に存在している時点ですでに「産業廃棄物」ではなく「有用物」であった。
従って、産廃処分場までの運搬費も支払うべきではない経費ということになる。
(シ) 平成11年11月10日付け厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知には、「根株等を製材用材等のように一般的に有価で取引きされているものとして利用する場合は廃棄物に該当しないものである」と明確に記載されている。〔事実証明書11〕
本件のように、有価で取引されている製材用材として利用する場合には、「廃棄物」ではなく「有用物」として取り扱わなければならない。
(ス) 伐採現場と木材市場、I社との位置関係は〔事実証明書12〕の通りであり、一度I社まで搬出してそこで積みなおして再度木材市場まで戻ってくるような位置関係にはない。このことは、当初から、幹の部分をI社に運ぶのではなく木材市場への運搬を前提としているとみることができる。
なお、本件工事の設計で見込んでいる再資源化施設G社は〔事実証明書13〕の位置にある。
(セ) 先に記述した通り、幹の部分は、実際に市場で売却したのであるから、「廃棄物」ではなく「有用物」である。当初設計を変更せず廃棄物のままとしたこと自体が違法・不当である。
幹の売却益(1,000万円程度になるものと推定される)は市に返納すべきものである。
廃棄物ではないのであるから、産廃処分料金(1,000万円程度になるものと推定される)も支払ってはならないものである。
あわせて2000万円程度が、違法・不当に請負業者に支払われたが、これは、廃棄物処理を利用した偽装工作による詐欺であり、業者と、その事実を知っていながら返納を求めなかった広島市の担当者も結託した詐欺事件ともいえるのではないか。
前の工事(恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事)で市場売却としたにも関わらず、本件工事で産業廃棄物として設計したこと自体不自然であり、当初から業者と結託してそのような設計としたのではないかとの疑念すら生じる内容である。
(ソ) 一般に、廃棄物か有用物かは、「中間処理(再資源化処理)に要した費用」+「売却先への運搬費」が、売却益を上回れば廃棄物、下回れば有用物と判断されており、廃棄物を再資源化施設で資源化して売買すること自体は違法ではない。
しかし本件は、伐採現場で選別し幹の部分のみトラックに積込んでいるので、中間処理施設(再資源化施設)で手選別している訳ではない。また、実態としても、中間処理施設まで運搬せず、直接木材市場に搬入している。(目撃情報)
更に、本省産業廃棄物対策室長通知に明確に「廃棄物」ではないと記載されているように、「幹」の部分は産廃ではないのであるから、産廃のマニュフェストに載せるべきものではない。一度、中間処理施設(I社)までわざわざ搬入して、そこでトラックを変えて木材市場に搬入したとしても、現場で有用物として選別されているのであるから、産廃を装って処分費を詐欺したということに変わりはない。
このような問題についての広島市への文書での質問に対する文書での回答は、〔事実証明書14〕の通りであった。
(タ) 環境影響評価書には、伐採木は、可能な限り製材用材等として有効活用することが記載されている。しかし、本件工事において、それを無視した設計を行っている。〔事実証明書15〕
また、木材市場の役員の方からも、広島市に対して、貴重な伐採木を市場に出すよう要望したという話がある。その時点では、産廃処分するので出せないと広島市に断られたそうである。
(チ) 木材市場で売却したのは、請負業者の一次下請けであるH組合である。広島市の所有物が、いつの間にか、H組合の所有物として市場売買されるという、いわば横領行為も行われているが、広島市の担当者が、そのことを知った上で黙認していることも大きな問題である。
(ツ) 産業廃棄物は、マニュフェストによって、その行先が分かるようになっている。本件工事は電子マニュフェストであり、最終処分場所の記載されているもの(紙マニュフェストのE票にあたる部分)を広島市に開示請求したが、取得していないとして開示されなかった。〔事実証明書16〕
本件工事の排出事業者は元請業者であるが、市は、最終処分まで監視し違法な処理が行われていないか確認する必要がある。マニフェスト上は、幹の部分は、I社で再資源化され、H組合に売却されているはずである。そのマニュフェストを確認していたならば、設計の問題点を把握し、早い段階で「幹」の部分を直接市場売却することに切り替えたであろう。しかし、私たちが指摘するまで仕様変更しなかったし、それ以前に伐採したものについては不問とした。
すでに伐採済のものについても、本省通達の通り「幹」の部分は産業廃棄物ではないのであるから、適正な変更処理をしなければならなかったが、状況を把握していたにも関わらず変更処理をしなかったことが大きな問題である。
(テ) C前所長は、議会で、再資源化施設に持ち込んだ産業廃棄物を「手選別」によって、廃棄物と有用物により分けたのち有用物として市場売買したもので違法ではないとの答弁をしている。
しかしながら、当該伐採木は、伐採現場で「枝」と「幹」の部分に選別されており、それぞれにトラックに積み込まれたため、「手選別」の過程がない。議会を軽視し、虚偽の答弁をした。
イ 違法性、不当性
(ア) 廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)によれば、「有用物」と「廃棄物」は明確に区分され、「有用物」と判断されるものは「廃棄物」ではない。市場価値のある「有用物」に、産廃の処分料金を支払うのは違法な公金支出行為である。
(イ) 本件工事の現場に存在している立木は、市の財産である。市の財産が、H組合の財産として市場で売却されていたが、この行為は、横領にあたる。このことを知りながら黙認していることは違法・不当な行為にあたる。
(ウ) 広島市は、伐採木は産業廃棄物であるとし、再資源化施設で「手選別」によって、廃棄物と価値のあるものに分けられ、価値のあるものが市場で売買されたのであるから違法ではないと議会で答弁したが、実際には、伐採現場で「枝葉」と「幹」に区分けされ、「幹」の部分のみまとめてトラックに積み込まれているのであるから、再資源化施設での「手選別」はあり得ない。全く手をかけていないにも関わらす、かかる説明を議会でしたことは、議会及び市民への背信行為である。
(エ) 平成11年11月10日付け厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知に、「根株等を製材用材等のように一般的に有価で取引きされているものとして利用する場合は廃棄物に該当しないものである」と明確に記載されている通り、木材市場で売却した「幹」が産業廃棄物に該当しないことを知りながら、また、50kmも離れているI社を再資源化施設とし、その途上20km地点にある木材市場に搬入していたことを知りながら、業者と一体となってその事実を隠していることが、地方公務員法に違反している。
(オ) 環境影響評価書に記載された計画を無視して、環境保全を図る措置をしなかったこと、先に行われた「恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事」とは真反対の産業廃棄物としたことは、意図的な何かがあったと推測されるものである。公務員が公務員として職務上尽くすべき義務に違反しており、ここには違法行為があると考えざるを得ない。
(カ) 上記の結果、払ってはならない産廃処分料を支払ったこと、市場売却益を返納させなかったことが、公金の不当支出にあたり、市民に損害を与えた。
(キ) 「幹」の部分は産廃ではないとの私たちの指摘を正しいと考え、広島市は、平成28年11月17日に請負業者に対して、追加で用地取得した土地の伐採範囲については、有価物となる木材を分別し、売り払いを行うことを指示した。〔事実証明書17〕
広島市は、この指示書をもって、平成28年12月以降の伐採においては、有用物として直接市場に搬入し、売却益を市に返納することとしたと称している。そのように見直した理由を「工事請負契約の締結後の昨年9月に、売買契約を締結した土地所有者の方から、大切にして育てた木を廃棄物として取り扱うのではなくて、建築資材として扱って欲しいとのご要望をいただいたため、昨年12月から伐採木の中で、建築資材への活用が可能なものは、元請け業者が直接木材市場の方で売り払うよう見直しております。」と議会(平成29年3月8日予特)で説明したことは、問題の本質を隠して議会を欺くものであり、不当行為にあたる。
⑶ 請求の対象となる職員
- 本件工事の契約者 A広島市長
- 本件工事の契約責任者 B環境局埋立地整備部長
- 本件工事の実施責任者 C前恵下埋立地建設事務所長
- 本件工事の現場責任者 D前恵下埋立地建設事務所専門員
- その他、本請求理由による公金の違法・不当支出に関わったすべての職員(氏名不知)
⑷ 損害の推定
違法に支払われた産廃処分費 推定1,000万円
市に返納すべき木材の売却益 推定1,000万円 合計2,000万円
⑸ 請求する措置
- 不当な公金支出の是正(設計変更による違法・不当な支出の返納)
- 関係職員の処分
⑹ 問題点の図化
別紙のとおり
⑺ 住民監査請求を行うに至った想い
広島市の次期一般廃棄物最終処分場として計画・整備されている「恵下埋立地」の工事において、不適切な公金支出が行われました。
恵下埋立地は、広島市佐伯区恵下地区の山林約102haを事業地とする計画で、そのうち約31haを開発するものです。「恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事」によって約3haがすでに開発済み(建設工事は平成24年7月5日から平成28年1月29日にかけて行われた)であり、今回「恵下埋立地(仮称)建設工事」により、広範囲にわたって大規模伐採が行われています。
この地は山林ですから、まず最初に立木の伐採が必要となります。
恵下地区は、江戸時代「御建山(おたてやま)」と呼ばれ良質木材の産地として手厚く育成・保護され、明治時代以降も営林署や民間で手厚く造植林されてきたところです。ここを広範囲に伐採し環境に影響を与える事業ですから、環境保全に十二分に留意することが求められています。
環境影響報告書には、本事業が環境保全措置の一つとして、伐採木の再利用・再資源化を図る計画であることに対して、「可能な限り建築資材等としての再利用や、チップ化等により、再利用・再資源化を図ることにより、廃棄物の発生の低減が見込まれます。」と評価しています。
しかしながら、そのように評価した広島市自身が、恵下埋立地(仮称)建設工事において、伐採木をすべて産業廃棄物として処分する設計としました。その設計に従い、工事を請け負ったE企業体によって、伐採木を「枝・葉」「幹」「根」の部分に現場で区分けした上で、トラックにより産業廃棄物の再資源化施設(枝・葉はG社、幹・根株はI社)に搬出する処分計画が策定されました。
ところが、建築資材等として価値のある幹の部分は、産業廃棄物として処分されるのではなく、I社への搬出路の途中にある木材市場に搬出し、有価物として売却されていました。
このことについて異議を唱えたところ、立木伐採を半分程度残した時点で方針転換し、幹の部分について、環境影響評価書に記載の通り、有用物として直接市場売却することとなりました。しかしながら、それ以前に伐採された部分については、有用物として市場売却されていたにも関わらず、設計を是正しなかったため、産業廃棄物処分費用と木材の市場売却益の両方を請負業者が違法・不当に得ることとなりました。
広島市は、環境影響評価での設計の考え方を踏襲することなく、環境に配慮することなく設計し工事を進めています。
平成17年度には、廃タイヤ等の燃える大規模な火事のあり、大規模に燃え殻が存在し土壌汚染の可能性のあることを知っていました。平成19年度から22年度にかけての現地調査(ボーリング調査)では、燃え殻を掘り当てていたにも関わらず、その燃え殻の分析を行うことなく土壌汚染のない土地として土地を取得したことや、土壌環境基準の29倍ものダイオキシン類や同じく8.2倍もの鉛の存在を放置し続けたことなど、広島市職員の対応に不信感を持ち、事務処理能力に不安を感じています。このような仕事の進め方をしていては、安全・安心は確保できません。
全身全霊で職務に専念し、市民の福祉の向上に寄与できる組織に生まれ変わって欲しいというのが、切なる願いです。
地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。
(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
- 〔事実証明書1〕 本件工事に先立って行われた「恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事」において有用物として市場売買された売買記録の一部
- 〔事実証明書2〕 本件工事設計仕様書(伐採木は、「幹」の部分を含めて、全て産業廃棄物としている)
- 〔事実証明書3〕 E企業体が作成した施工計画書(伐採木は全て産業廃棄物として処分。産廃処理業者(再資源化業者)をI社(安芸太田町川手)としている)
- 〔事実証明書4〕 広島市がE企業体に木材市場での売却数量を聞取り調査したもの
- 〔事実証明書5〕 本件工事の施行体系図(H組合が一次下請業者)
- 〔事実証明書6〕 本件工事の「幹」の部分に係る処分費の基準及び概算処分費
- 〔事実証明書7〕 木材運搬トラックが、伐採現場からI社に行くのではなく、木材市場の方に道を変えたという目撃情報
- 〔事実証明書8〕 議会答弁の抜粋(伐採木のすべてを産廃処分(再資源化施設に搬入)することして設計計上し、施工業者もその通り再資源化施設に搬入していると答弁)
- 〔事実証明書9〕 E企業体が、伐採木をすべて産廃処分している(中間処理施設に搬入している)ことを広島市に回答した文書
- 〔事実証明書10〕 伐採された樹木のトラックへの積込み状況(現場で、枝と幹の部分に分けられ、幹は4mに切断されたうえで集積して、トラックに積み込まれる)
- 〔事実証明書11〕 平成11年11月10日付け厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知(「根株等を製材用材等のように一般的に有価で取引きされているものとして利用する場合は廃棄物に該当しないものである」と記載)
- 〔事実証明書12〕 伐採現場と木材市場、I社との位置関係
- 〔事実証明書13〕 本件工事の設計で見込んでいる産廃処分場(再資源化施設)の位置
- 〔事実証明書14〕 広島市への文書での質問に対する広島市の文書回答
- 〔事実証明書15〕 伐採木は可能な限り製材用材等として有効活用するとの環境影響評価書の記述
- 〔事実証明書16〕 本件工事の産業廃棄物処理マニュフェスト開示請求に対する不存在決定
- 〔事実証明書17〕 有価物となる木材を分別し、売り払いを行うことの指示書
第2 請求の受理
本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、平成29年8月30日に、同月10日付けでこれを受理することを決定した。
第3 監査の実施
1 請求人による証拠の提出及び陳述
地方自治法第242条第6項の規定に基づき、平成29年9月13日に請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人は新たな証拠として次の書類を提出するとともに、陳述を行った。
(新たな証拠として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
- 〔事実証明書7〕 木材運搬トラックの目撃情報
- 〔事実証明書10〕 伐採された木の集積・積込み
- 〔事実証明書15〕 恵下埋立地環境影響評価書(抜粋)
- 鳥取県県土整備部公共工事建設副産物活用実施要領(抜粋)
- 県民の声・意見の内容
請求人は、以下の点について、陳述した。
⑴ 職員措置請求書に沿った内容の説明
⑵ 新たな証拠として提出した書類等に基づく補足説明
- ア 土地と一緒に購入した立木の所有権について鳥取県と本件との比較
- イ 本件伐採木の処分方法が環境影響評価書の環境保全措置の記載事項と異なること。
2 広島市長の意見書の提出及び陳述
広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、平成29年9月12日付け広施恵第320号により意見書が提出された。なお、陳述は行わなかった。
意見書の内容は、以下のとおりである。
⑴ 本市の意見の趣旨
請求人の主張には理由がないため、本件措置請求は棄却されるべきである。
⑵ 本市の意見の理由
ア 本件措置請求の要旨
本件措置請求の要旨は、おおむね次のとおりであると解される。
平成28年3月1日に広島市とE企業体との間で締結した恵下埋立地(仮称)建設工事(以下「本件工事」という。)の請負契約(以下「本件請負契約」という。)において、同年12月までの間、広島市は、伐採木のうち有用物(市場価値を有する幹)については産業廃棄物として処理すべきではないにもかかわらず、この有用物を含めて伐採木の全てを産業廃棄物として処理することとしていた。
本件工事の現場の立木は広島市の財産である(広島市に所有権がある。)にもかかわらず、E企業体の下請業者(本件工事の現場における立木の伐採を行う業者)及び委託業者(発生した伐採木を産業廃棄物処理施設(再資源化施設)において処理を行う業者及び運搬業者)(以下「下請業者等」という。)が伐採木のうち有用物を売却した利益を得ており、当該売却によって生じた利益は、広島市にとっての損害(推定1,000万円)となっている。
また、広島市は有用物に係る産業廃棄物処分料に係る支出を計上しているが、当該処分料(推定1,000万円)を支払う必要はない。
よって、上記2点の損害(合計2,000万円)の補塡及び当該職員への処分を求めるものである。
しかしながら、本件請負契約は、本市に何ら損害を発生させるものではなく、請求人の主張には理由がない。以下その理由を述べる。
イ 本市に損害を発生させていないことについて
(ア) 伐採木のうち有用物を売却したことによって生じた利益について
本件請負契約は、恵下埋立地(仮称)を建設するに当たって、工事の支障となる立木を除去するために、本市がE企業体に対し、立木の伐採と伐採木等の処分を全面的に委ねたものである。したがって、本件請負契約成立時点で、当該立木に係る所有権は、本市からE企業体に移転している。
よって、本市は、発生した伐採木が産業廃棄物であるか有用物であるかの如何に関わりなく、当該発生した伐採木の所有権を有していないことから、E企業体の下請業者等に対して、当該伐採木の売却益を請求することはできない。また、当該伐採木の売却益を請求する法的根拠のない本市にとって、それが損害になるということはあり得ない。
(イ) 有用物に係る産業廃棄物処分料を設計費に計上することについて
本市が本件請負契約において、伐採木の処理(立木の伐採、この伐採木の運搬及び根株の全てを産業廃棄物として処理するもの)に要する費用として設計した金額は、2億966万4,000円である。
他方、E企業体が入札時に、本件請負契約の伐採木の処理に要する費用として提示した見積金額は、1億1,329万9,200円である。これについては、本件請負契約締結後に、本市はE企業体から下請業者等が伐採木のうちの一部が売却できることを見越していたことから伐採木の処理に係る費用を安価に見積もることができたとの説明を受けたところである。(別添資料1の1参照)
よって、本市が設計した金額(2億966万4,000円)とE企業体の見積金額(1億1,329万9,200円)との差額(9,636万4,800円)は、伐採木を有用物として売却することを見込んだことによって生じたものといえる。
また、仮に、本件請負契約において、伐採木の一部(10%)が有用物に当たるという前提で設計する(別添資料1の2参照)と、設計金額は、1億7,008万8,000円となり、上記E企業体の見積金額(1億1,329万9,200円)の方が安価となる。
なお、本市は、E企業体が産業廃棄物処理施設に搬出した伐採木のうち、市場で売却された木材の売却益は3,327万1,000円と確認している。(別添資料1の3参照)
以上のことからすれば、有用物に係る産業廃棄物処分料として設計費に計上されている額は、本市に損害を発生させるものとはなっていない。
ウ 請求人の違法性・不当性に係る主張に対する反論について
請求人が主張する違法性・不当性(第1の1請求の要旨⑵イ)についても、請求人の主張には理由がない。以下その理由を述べる。
(ア) 請求の要旨⑵イ(ア)について
請求人は、有用物に産業廃棄物処分料を支払うのは違法な公金支出であると主張している。
しかし、平成11年11月10日厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知(以下「厚生省通知」という。)は、根株等(根株、伐採木及び末木枝条)を有用物として利用する場合は廃棄物として規制する必要がないことを示したにすぎず、根株等を有用物として取り扱う場合の公共工事の積算について何ら言及するものではなく、本件請負契約において、有用物に係る産業廃棄物処分に必要となる料金を見込んでいることが違法となる論拠とはなり得ない。
(イ) 請求の要旨⑵イ(イ)について
請求人は、本件工事の現場に存在している立木が本市の財産であるのに、本市が、当該立木が市場で売却されていることを知りながら黙認していることは、違法・不当な行為に当たるなどと主張している。
しかし、上記イの(ア)のとおり、本件請負契約成立時点で、立木の所有権は、本市からE企業体に移転していることから、違法・不当の主張は当たらない。
(ウ) 請求の要旨⑵イ(ウ)について
請求人は、伐採木について、実際には伐採現場で「枝葉」と「幹」に区分けされているのに、産業廃棄物処理施設(再資源化施設)で「手選別」によって廃棄物と価値のあるものとに分けられている旨を本市が議会で答弁したことは、議会及び市民への背信行為であると主張している。
しかし、E企業体からの聞き取りを踏まえ、産業廃棄物処理施設において伐採木の手選別(選別処理)がされていると答弁したことは、本件工事の現場において伐採木を幹と枝葉に分別していることを否定したものではなく、議会及び市民への背信行為との主張は当たらない。
(エ) 請求の要旨⑵イ(エ)について
請求人は、厚生省通知があるにもかかわらず、産業廃棄物に該当しない「幹」を産業廃棄物として設計していること、また、それが直接木材市場に搬入されていることを知りながら、本市が業者と一体となってその事実を隠していることは、地方公務員法に違反していると主張している。
しかし、上記(ア)のとおり、厚生省通知は、伐採木のうち有用物を産業廃棄物として取り扱う場合の公共工事の積算について言及するものではない。
また、本市は、幹も含めた伐採木の本件工事の現場から産業廃棄物処理施設への搬出については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、電子マニフェストで確認しているところであり、本市が業者と一体となって事実を隠していることはなく、地方公務員法に違反している事実もない。
(オ) 請求の要旨⑵イ(オ)について
請求人は、本市が、(1)環境影響評価を無視して環境保全を図る措置をしなかったこと、(2)伐採木の取扱いについて、恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事とは真反対の産業廃棄物処理としたことは、公務員として職務上尽すべき義務に違反していると主張している。
しかし、以下のとおり請求人の主張に理由はない。
(1)について
本市が作成した「恵下埋立地(仮称)建設工事に係る環境影響評価書」(以下「環境影響評価書」という。)には、環境保全措置として、発生した伐採木について建築資材等として再利用することのみを掲げていたわけではなく、チップ化し代替燃料として再利用する方法もある旨記載している。本件請負契約における伐採木は、環境影響評価書のとおり発生した伐採木をチップ化できる産業廃棄物処理施設に搬出されている。
よって、環境影響評価書を無視し、環境保全を図る措置を行っていないという事実はない。
(2)について
平成24年度に発注した恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事の工事場所は、国有林として間伐等の十分な管理がなされ、一見して有用物が確認できるものであったことから、伐採木の一部を売却することを見込んで設計したが、本件工事は、民有地の立木を除去することを重視して設計したものである。
よって、事案に則した設計をしたところであり、公務員として職務上尽くすべき義務に違反しているとはいえない。
(カ) 請求の要旨⑵イ(カ)について
請求人は、本市が、払ってはいけない産業廃棄物処分料を支払い、市場売却益を返納させなかったことが、公金の不当支出に当たり、市民に損害を与えたと主張している。
しかし、上記イのとおり、本件請負契約において、本市には損害が発生していないのであるから、公金の不当支出には当たらない。
(キ) 請求の要旨⑵イ(キ)について
請求人は、本市が平成28年12月以降、伐採木を売却した利益相当額を本件請負契約の代金から減額する取扱いに変更したことについて、請求人らの指摘が正しいと考えて行ったものであるのに、土地所有者から、大切に育てた木を廃棄物ではなく建築資材として扱ってほしいとの要望を受けたためであると議会で説明したことは、問題の本質を隠し議会を欺く不当行為であると主張している。
しかし、平成28年12月19日以降、伐採木のうち売却した利益相当額を本件請負契約の代金から減額することとしたのは、本件請負契約の締結時に未買収地であった土地所有者から、立木を市場で売却してほしいとの要望があったため、立木が有用物と確認できる場合の取扱いに切り替えることにしたものである。
なお、この取扱いの切替えは、本件請負契約の土木工事施工条件9の(12)(未買収用地等の立木の搬入先について)において、取得する用地の立木補償条件等により、立木の搬出先が変更される可能性があることを記載していたことを踏まえてのものである。(別添資料2参照)
平成29年3月8日の予算特別委員会での本市職員の答弁は、こうした事実関係を説明したものであって、議会を欺く不当行為ではない。
エ まとめ
以上の次第で、請求人が主張する内容について、いずれも本市には何ら損害が発生していないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。
(意見に係る証拠書類として、次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
- 資料1 恵下埋立地(仮称)建設工事における伐採木の処分に係る費用等
- 資料2 恵下埋立地(仮称)建設工事土木工事施工条件
3 監査対象事項
- 本件請負契約に基づく、発生木材運搬費及び伐採木処分費の支払は、違法又は不当か。
- 伐採木の売却益の返還を求めていないことは、違法又は不当か。
第4 監査の結果
1 事実関係の確認
請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、広島市長から提出された意見書及び関係書類並びに広島市の関係職員への調査により、以下のとおり確認した。
⑴ 恵下埋立地(仮称)建設工事(以下「本件工事」という。)の概要
ア 恵下埋立地(仮称)建設工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)の概要
- (ア) 工事場所 佐伯区湯来町大字和田
- (イ) 工期 平成28年3月1日から平成32年3月10日まで(契約締結日 平成28年3月1日)
- (ウ) 請負代金額 93億4,848万円 (当初契約時)
94億7,467万2,600円(変更契約時)
変更契約締結日 平成28年10月7日
変更理由 公共工事設計労務単価変更に対応するため - (エ) 受注者 E企業体
- (オ) 工事内容 全体計画容量160万立方メートルのうちの35万立方メートルの廃棄物埋立地建設工事(埋立地の用地約22万4,000平方メートルの造成その他工事)
イ 契約図書上の伐採木に係る記載
本件工事の特記仕様書、土木工事施工条件及び工事設計書には、伐採木について次の内容が記載されている。
(ア) 特記仕様書
13 建設副産物の搬出について
⑴ 工事の施工により発生する建設副産物は、下記の場所に搬入することとする。なお、指定場所等との協議等で他の受入れ場所へ搬入する必要がある場合又は、他の受入場所がない場合は、本市と協議し決定するものとする。なお、運搬、搬入等にあたり産業廃棄物に該当する建設副産物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を遵守すること。
建設副産物 |
搬入場所 |
---|---|
発生木材 |
産業廃棄物処分業の中間処理の許可を有する再資源化施設 |
(イ) 土木工事施工条件
7.建設副産物関係 |
|||||||
(5) 伐採木及び根株 |
本工事において発生する伐採木及び根株については、下記の受入場所に搬出することとし、所在地への搬出を見込んでいる。 ただし、下記の受入場所以外の「産業廃棄物処分業の中間処分の許可を有し、木質チップ等として再資源化可能な再資源化施設」に搬出することを妨げるものではない。 施設名 Q社樹木リサイクルセンター (名称変更があり、現在はG社樹木リサイクルセンター) 所在地 佐伯区五日市町大字石内 運搬距離 19.4km |
||||||
9.その他 |
|||||||
(2) 伐採除根量について |
本工事の施工に当っては、伐採除根量(体積)について近隣工事の実績により、下記のとおり見込んでいる。 なお、下記の条件により難い場合は、発注者と受注者の協議のうえ契約変更の対象とする。 伐開除根10,000平方メートルあたり
|
||||||
(12) 未買収用地等の立木の搬出先について |
取得する用地の立木補償条件等により、本条件明示7(5)に示す搬出先が変更となる場合がある。 |
(ウ) 工事設計書(共通仮設費内の準備費)
名称 |
数量 |
単位 |
---|---|---|
伐採・除根 |
224,000 |
平方メートル |
集積 |
224,000 |
平方メートル |
発生木材運搬費 |
224,000 |
平方メートル |
伐採木処分費 |
29,120 |
立方メートル |
根株処分費 |
20,160 |
立方メートル |
⑵ 本件工事の前提となる事項
ア 恵下埋立地(仮称)整備事業(以下「埋立地整備事業」という。)用地内の立木
(ア) 支障物件調査
埋立地整備事業用地の取得に当たり、市において、立木の樹種名、胸高直径、本数及び林齢等が調査されている。
(イ) 立木の補償額
埋立地整備事業用地として購入された土地の面積は、96万7,074.73平方メートルで、立木の補償額の総計は、8,080万2,600円とされている。なお、この土地の面積のうち、本件工事により22万4,000平方メートルの範囲の立木を伐採することとされている。
(ウ) 地権者からの要望等
用地交渉等において、地権者2名から要望等があり、その1名から、平成27年10月14日及び同年12月16日に「伐採木を市場に持っていって欲しい。」との要望が、平成28年4月4日には「伐採木の扱いはどうなったか。」との質問が出され、広島市(以下「市」という。)からは、「ここの伐採木については、市場の方へ持って行けるように検討する。」との回答がなされている。
他の1名からは、平成28年6月30日及び同年10月4日に「伐採木を産業廃棄物扱いにすることは納得できない。」との意見が出されている。
イ 環境影響評価
本件工事を含む埋立地整備事業は、広島市環境影響評価条例第2条第2項第6号に規定されている廃棄物処理施設の設置又はその構造若しくは規模の変更の事業に該当するため、事業の実施に当たり、あらかじめ環境影響評価が行われている。
恵下埋立地(仮称)整備事業に係る環境影響評価書(以下「恵下埋立地環境影響評価書」という。)の第8章環境保全のための措置において、伐採木に係る措置については、次のとおり記載されている。
環境要素 |
環境保全措置 |
|
---|---|---|
15 廃棄物等 |
工事の実施 |
・伐採木の再利用・再資源化 |
16 温室効果ガス等 |
工事の実施 |
(伐採木に対して) ・建築資材等としての再利用 ・チップ化し代替燃料として再利用 ・マルチング材(袋詰め)として再利用 |
ウ 参考となる工事(恵下埋立地(仮称)取付道路建設工事(以下「取付道路工事」という。))
(ア) 取付道路工事の概要
- 工事場所 佐伯区湯来町の大字麦谷及び大字和田
- 工期 平成24年7月5日から平成28年1月29日まで
- 請負代金額 16億6,333万4,400円(最終)
- 受注者 K企業体
- 工事内容 (1)トンネル工事、(2)道路新設工事
(イ) 契約図書上の伐採木に係る記載
取付道路工事の特記仕様書及び土木工事施工条件には、伐採木について次の内容が記載されている。
a 特記仕様書
14 建設副産物の搬出について
⑴ 工事の施工により発生する建設副産物は、下記の場所に搬入することとする。なお、指定場所等との協議等で他の受入れ場所へ搬入する必要がある場合又は、他の受入場所がない場合は、本市と協議し決定するものとする。なお、運搬、搬入等にあたり産業廃棄物に該当する建設副産物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を遵守すること。
建設副産物 |
搬入場所 |
---|---|
発生木材 (伐採木) |
産業廃棄物処分業の中間処理の許可を有する再資源化施設 |
b 土木工事施工条件
伐採木関係 |
1.工事区域の樹木は、伐採することとしているが、元は保安林であったことから売払い可能な有用な木があると思われるため、伐採木の約1割は売払い可能な樹木として算出している。 全伐採木1,640立方メートルのうち売払いを150立方メートル見込んでいる。 伐採量及び売払い量は、協議により変更する部分がある。 |
---|
(ウ) 積算
伐採木処分等の積算においては、当初設計時から共通仮設費内の準備費に、売払いが可能な伐採木については売払い金額がマイナス計上され、売払いができない伐採木については処分費がプラス計上されている。
(エ) 伐採木の売却実績
実績として、伐採木を売却できた数量は、136立方メートルとなり、当初の見込み(150立方メートル)より少なくなったため、数量減分を増額する設計変更が行われている。
⑶ 入札
ア 入札の状況
本件工事は、一般競争入札で行われ、2者が入札している。2者とも低入札であり、最低価格提示者に対し低入札価格調査が実施された結果、最低価格提示者が落札者とされている。
予定価格 |
10,703,396,000円 |
---|---|
調査基準価格 |
9,612,993,933円 |
入札者(業者名) |
入札金額 |
E企業体 |
8,656,000,000円 |
L企業体 |
9,580,000,000円 |
※金額は、消費税及び地方消費税相当額を除く。
イ 低入札価格調査
平成28年1月7日に市により、低入札価格調査の事情聴取が行われている。この中で、市の設計金額と業者見積金額の差額の比率が高い工種について調査が実施され、伐採に係る費用が含まれる準備費についても調査が行われている。
最低価格提示者(E企業体)から提出された準備費の明細書では、伐採木・根株処分費が市の設計金額と差が大きかったため、市がその理由を聴き取りしたところ、E企業体から、受け入れた木材をチップ化した上で100パーセントリサイクルしているが、チップの需要が高まっており量的に相当見込めるなどのため、通常より安価な見積りとしたとの回答がなされている。
⑷ 伐採に係る施工
ア 施工計画書の記載内容
平成28年4月13日付けでE企業体から市に提出された施工計画書には、伐採工について次の内容が記載されている。
項目 |
施工時期 |
数量 |
---|---|---|
伐採・除根 |
平成28年4月~平成30年12月 |
224,000平方メートル |
伐採処分 |
平成28年4月~平成30年12月 |
29,120立方メートル |
根株処分 |
平成28年4月~平成30年12月 |
20,160立方メートル |
施工方法
- 伐採前確認
- 草刈・立木枝払い
- 伐採
- 伐採材集積
- 除根
- 場内運搬
- 場外運搬・処分(伐採材積込)
バックホウにてダンプトラック(10t)に積込む。低木・枝葉類はパッカー車に積込み、過積載とならないように注意する。
ダンプトラック(10t)及びパッカー車にて、所定の処分場所まで運搬し、処分する。
場外搬出前に、元請職員がマニフェストにより産廃項目・数量を確認する。
運搬中は決められたルートを走行し、交通規則の厳守により運搬する。
検測方法
項目 |
単位 |
検査時期 |
検査方法 |
---|---|---|---|
伐採工 |
平方メートル |
伐採範囲を明示後 |
巻尺、測量機器及び設計図書により面積を算出する。 |
伐採木処分 |
立方メートル |
伐採処理後 |
マニフェストで確認する。 |
根株処分 |
立方メートル |
伐採処理後 |
マニフェストで確認する。 |
イ 施工体制
(ア) 下請契約の状況
平成28年5月16日付けでE企業体から市に提出された下請業者通知書における伐採工の施工体制は、次のとおりとされている。
1次下請業者 |
2次下請業者 |
3次下請業者 |
---|---|---|
H組合
|
M組合
|
O社
|
N組合
|
|
(イ) 伐採木(幹)及び根株の運搬・処分に係る委託契約の状況
本件工事における伐採木(幹)及び根株の運搬及び処分(中間処理)の委託契約は、次のとおりとされている。
項目 |
委託元 |
委託先 |
委託先の処分内容 |
委託先による再生品 |
---|---|---|---|---|
運搬 |
P社 |
J社 |
― |
― |
処分 |
P社 |
I社 |
破砕 |
木くずチップ |
ウ 伐採木の運搬・処分
(ア) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)上の扱い
廃棄物処理法第21条の3第1項において、廃棄物処理法上の事業者(以下「排出事業者」という。)は、建設工事を請け負った元請業者とされており、元請業者が、廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないこととされている。
廃棄物処理法第12条の5により、排出事業者が産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合で、産業廃棄物管理票の代わりに電子情報処理組織を使用した登録及び報告(以下「電子マニフェスト」という。)による場合は、
- 排出事業者は、産業廃棄物を引き渡した日から3日以内に、委託に係る産業廃棄物の種類及び数量等の必要事項を情報処理センター(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)に登録しなければならない。
- 運搬受託者は、運搬終了日から3日以内に必要事項を入力して情報処理センターに報告しなければならない。
- 処分受託者は、処分終了日から3日以内に必要事項を入力して情報処理センターに報告しなければならない。
- 排出事業者は、情報処理センターから運搬終了報告又は処分終了報告の通知を受けたときは、運搬又は処分が終了したことをこの通知により確認しなければならない。
こととされている。
(イ) 伐採木の運搬・処分の状況
本件工事における伐採木の運搬・処分については、電子マニフェストにより、産業廃棄物の種類及び数量、運搬受託者名、処分受託者名、産業廃棄物の引渡し年月日、運搬先の事業場名、運搬終了年月日、処分終了年月日等が管理されており、排出事業者であるE企業体により、これらの内容が確認されている。
エ 伐採木の売却
市の調査によれば、伐採木が中間処理施設に搬入された後に、有価物と考えられる幹が木材市場に持ち込まれ売却されていたことが確認されている。幹の売却は、工事現場から中間処理施設に搬入された後、一次下請業者のH組合が有価物と考えられる幹を中間処理業者から買い取り、木材市場に持ち込んで売却するという構図とされている。
幹の木材市場への持ち込みは、伐採木を工事現場から搬出し始めた平成28年6月1日から、市が伐採木の一部を有価物として取り扱い、E企業体に直接売却を指示し、その準備が整う同年12月19日までの間に行われており、約3,800立方メートルの木材が、3,327万1,000円で売却されている。なお、この材積は、丸太から不要部分を切り落として角材にした体積(有効な矩形断面×長さ×本数)とされている。
オ 伐採木の処分方法の変更に係る市の指示
平成28年11月17日付けの工事打合せ簿において、市からE企業体に対して、
- 追加で用地取得した土地の伐採範囲については、価値がある森林が比較的多いことから、有価物となる木材を分別し、売払いを行うこと
- 売払いの対象となる基準は、伐採木の末口の直径が20センチメートル以上のものとすること
- その他の範囲についても可能な限りこれに準ずること
などの指示がなされている。
これに対してE企業体からは、平成28年11月18日付けの工事打合せ簿において、
- 売払い及び運搬契約等の手続期間として、おおむね1か月程度必要となること
- その期間中の伐採木を仮置きする場所等もないため、運搬契約等の手続が整うまでの間は、これまでどおり搬出とすること
に関する協議の申出がなされている。
市からは、同日付けでこれを認める旨の回答がなされ、加えて、契約等の手続が整い次第、速やかに売払いを開始するようE企業体に依頼が行われている。
平成28年12月19日から、E企業体により伐採木が直接木材市場で売却されている。
なお、市からは、当該指示に関する変更契約については、他の変更内容がまとまった時点で合わせて行う予定であると聞いている。
⑸ 伐採木が木材市場に直接持ち込まれ売却された事実
市の調査によれば、本件請負契約において、伐採木は全て中間処理施設に搬入するよう定められているにもかかわらず、伐採木の一部が工事現場から中間処理施設に搬入されることなく、直接木材市場に持ち込まれ、売却されたことが確認されている。
中間処理施設に搬入されることなく直接木材市場に持ち込まれた日は、平成28年6月1日、2日、3日、6日、7日の計5日で、持ち込まれた数量は、約880立方メートルとされている。
これに係る売却代金、また、これに係る伐採木の処分費及び運搬費の金額は、市及びE企業体において確認中であると聞いている。
⑹ 本件工事におけるこれまでの支払状況
ア 支払金額及び支払日
年度 |
種別 |
支払金額 |
支払日 |
---|---|---|---|
平成27年度 |
前払金 |
94,500,000円 |
平成28年3月23日 |
平成28年度 |
前払金 |
247,000,000円 |
平成29年3月27日 |
部分払 |
119,205,000円 |
平成29年3月27日 |
|
計 |
366,205,000円 |
|
イ 平成28年度の支払状況
出来高に係る支払は、広島市建設工事請負契約約款第37条に規定されており、平成28年度においては、準備費(伐採・除根、集積、発生木材運搬、伐採木処分及び根株処分)の出来高を含め支払が行われている。
ウ 部分払に係る検査
当該検査については、広島市建設工事請負契約約款第37条第4項に規定されており、1回目の請求に係る出来形部分等を確認するため、市の検査を受けている。
平成29年3月10日に、検査担当課である技術管理課により検査が実施されており、工事検査調書に施行の確認が記されている。
2 判断
請求人は、売却された伐採木に発生木材運搬費及び伐採木処分費を支払ったこと並びに伐採木の売却益の返還を求めていないことは違法又は不当であり、これによって市に損害が発生したと主張するとともに、関係職員の処分を求めていることから、以下、検討する。
⑴伐採木の発生木材運搬費及び伐採木処分費の支払について
本件請負契約において準備費として示される伐採木に関する工事は、(1)伐採・除根、(2)集積、(3)発生木材運搬、(4)伐採木処分、(5)根株処分とされている(工事設計書26頁)。
本件請負契約においては、建設副産物としての発生木材は、産業廃棄物処分業の中間処理の許可を有する再資源化施設に搬入することとされており(特記仕様書7頁)、搬入すべき発生木材は産業廃棄物に限定されていないことから、有価物である発生木材も、中間処理施設に搬入すべきと解される。
ア 本件請負契約について
請求人は、本件請負契約においては伐採木を全て産業廃棄物として処分することが前提とされているにもかかわらず、その一部を木材市場で売却しており、その売却された伐採木は中間処理施設に搬入されてはいるものの産業廃棄物として処分されたことにはならず、伐採木処分費が違法・不当にE企業体に支払われていると主張する。
この請求人の主張が、本件請負契約において再資源化の工程を経ることなく売却された伐採木についても伐採木処分費を支払うこととされていることが違法・不当であるとの趣旨であるとすれば、住民監査請求は対象となる財務会計行為の後1年を経過したときは請求することができないとされているところ(地方自治法第242条第2項)、本件請負契約の締結は、平成28年3月1日になされたものであり、平成29年8月10日になされた本件措置請求は、請求期限を徒過している。
なお、請求期限までに請求できなかったことについて正当な理由がある場合は、請求することは可能であるが、請求人は、平成28年6月6日には、本件契約に基づいて伐採木がトラックに積載されて木材市場に運ばれていることを知っていたのであるから(本件措置請求に係る事実証明書7(追加提出分))、その日の翌日から起算したとしても1年を経過しており、請求期限までに請求できなかったことについて、正当な理由があるとはいえない。
したがって、本件請負契約の内容が違法・不当であるとする住民監査請求をすることはできない。
イ 中間処理施設に搬入されていない伐採木に係る発生木材運搬費及び伐採木処分費について
次に、市の調査によれば、平成28年6月において、有価物である伐採木が中間処理施設に搬入されずに売却されている事実が認められる。
これについては、中間処理施設に搬入されたものとして伐採木処分費に係る請負代金が、また中間処理施設に運搬されたものとして発生木材運搬費に係る請負代金が、それぞれ既に支払われ、又は支払われることになっているところ、これらは本件請負契約に基づく履行がされていない債務についての支払であり、市の損害と認められる。
この点、市は、意見書において、市の設計金額とE企業体の見積金額との差額は伐採木を有価物として売却することを見込んだことによって生じたものであるところ、仮に伐採木の一部が有価物に当たるという前提で本件請負契約を設計しても設計金額はE企業体の見積金額を上回ることから、市に損害は発生しない旨を主張する。
しかし、低価格入札の調査の際に市がE企業体から聴取した内容によれば、準備費が低価格で見積もられた理由は、伐採木を産業廃棄物としてチップ化しリサイクルする予定の下、チップの需要が高く分量も多いと見込めること等であって、伐採木の一部を木材として売却し利益を得られる見込みがあることによるものではない。
また、現に成立した請負金額において約束された債務が履行されていないのであれば、それに対して支払われた金員が市の損害に当たるのは上述のとおりである。
以上のことから、中間処理施設に搬入されていない伐採木についての発生木材運搬費及び伐採木処分費に係る請負代金の支払は違法であるため、市は、E企業体に債務不履行に基づく損害賠償請求を行う等の措置をとる必要がある。
ウ 中間処理施設に搬入された伐採木に係る発生木材運搬費及び伐採木処分費について
中間処理施設に搬入された伐採木については、その発生木材運搬費及び伐採木処分費の支払については、契約に従ったものであり、違法・不当な点はない。
また、支払の前提となる契約内容の違法・不当を、支払の違法・不当の理由とすることはできないとされている(最高裁昭和62年5月19日判決)。
以上のことから、本件措置請求のうち当該部分については理由がない。
⑵ 伐採木の売却益の返還を求めていないことについて
ア 中間処理施設に搬入されていない伐採木に係る売却益について
市は、立木の所有権は本件請負契約時にE企業体に移転していることから、他人により伐採木が売却されても市に損害は発生しない旨を主張する。
しかし、立木の所有権移転時期については契約上特段の定めはなく、伐採後の処分方法として全量を中間処理施設に搬入することが規定されていることからすると、契約時に立木の所有権を移転させるのが契約当事者の合理的意思であったとの主張は直ちには認められない。
また、市の主張のように立木の所有権を契約時にE企業体に移転させることは、公有財産の無償譲渡であり、所定の手続が必要となるが、そのような手続はとられていない。
よって、中間処理施設に搬入した時点で、伐採木を廃棄するという市の意思により市が所有権を失うと解するべきである。
平成28年6月上旬において、中間処理施設に搬入することなく売却された伐採木については、売却された時点では、まだ市は所有権を有しており、売却により買受人が動産を即時取得した場合に、市は所有権を失うことになると解される。
以上のことから、その売却は市の所有権を侵害する行為であり、その売却代金は不当利得であるため、その売却を行ったH組合に対し、市は不当利得返還請求権を有する。
イ 中間処理施設に搬入された伐採木に係る売却益について
請求人は、伐採木の売却益の返納を求めない本件請負契約では、有価物である伐採木の財産価値を失うことになるので市の損害が生じると主張するとともに、伐採木の売却益を返納させていないという状況が違法・不当に財産の管理を怠る事実に該当すると主張していると解することができる。
しかし、中間処理施設搬入後に売却された伐採木については、本件請負契約においては、本件工事において発生する伐採木の処理については中間処理施設に搬入することまでしか定められていないため(特記仕様書7頁)、搬入後に売却されたとしても本件請負契約上の債務不履行には該当しない。
また、上述のように、既に市が所有権を有しない物件であるため、その後の売却によっても市に損害が生じたとはいえない。
また、本件措置請求が、本件請負契約の内容が違法・不当であるとするものであったとしても、上述のとおり請求期限の徒過により住民監査請求をすることはできない。
以上のことから、中間処理施設に搬入された伐採木について、その後売却されたことによる売却益については、市はその売却行為者に対し、売却益の返還を求める法的根拠を欠き、違法・不当に財産の管理を怠る事実に該当すると認められないので、本件措置請求のうち当該部分については理由がない。
(3) 関係職員の懲戒処分について
請求人は、売却された伐採木について、発生木材運搬費及び伐採木処分費を支払ったこと並びに売却益の返還を求めなかったことを理由に、関係職員の懲戒処分を請求している。
しかし、本件においてE企業体及びH組合に損害賠償請求等を行う必要が生じたのは、これらの者が本件請負契約で定められた債務を履行せず、伐採木を中間処理施設に搬入することなく売却したことによるものであり、この点について、市の職員に過失等の帰責事由は見当たらないため、本件措置請求のうち関係職員を懲戒処分するよう求める部分については理由がない。
3 結論
以上のことから、本件措置請求のうち、中間処理施設に搬入されていない伐採木に関する部分については理由があると認め、E企業体に支払った発生木材運搬費及び伐採木処分費相当額について、E企業体に債務不履行に基づく損害賠償請求を行うとともに、当該伐採木の売却益については、H組合に不当利得返還請求を行うよう勧告する。
その余の請求については、これを棄却する。
第5 勧告
本件措置請求における請求人の主張には一部理由があるものと判断し、地方自治法第242条第4項の規定に基づき、市長に次のとおり勧告する。
1 広島市は、本件請負契約における元請業者E企業体が中間処理施設に搬入していない伐採木に係る発生木材運搬費及び伐採木処分費について、その額を算出し、これを既に同企業体に支払っている場合には、その額について、同企業体に対し、債務不履行に基づく損害賠償請求をするとともに、いまだ支払っていない場合には、その支払を中止するなど必要な措置を講ずること。
2 広島市は、H組合が中間処理施設に搬入せずに売却した伐採木の売却益相当額について、その額を算出し、その額について、同組合に対し、不当利得返還請求をするなど必要な措置を講ずること。
なお、本勧告に対する措置の期限は、平成29年12月20日までとし、地方自治法第242条第9項の規定に基づき、措置期限までに講じた措置の状況について、同月27日までに監査委員に通知されたい。
第6 意見
本件伐採地については、地権者への財産補償の際に立木の評価書面が作成されていたこと、恵下埋立地環境影響評価書には環境保全措置が規定されており、その内容として伐採木の建築資材等としての再利用・再資源化の実施が記載されていること、本件請負契約前に伐採予定地の一部地権者から伐採木を木材として売却してほしい旨の要請があったこと等の事情に照らせば、広島市としても、伐採予定地中に一定の財産的価値を有し、売却益を得る可能性のある有価物があることにつき、設計時に認識しあるいは認識し得べきであったが、これらの立木補償に係る事務や財産管理事務との関係を考慮することなく、漫然と「土木工事標準積算基準書の運用」及び「広島市建設廃棄物の処分に関する積算基準」等に記載された原則に沿って、伐採木の売却を想定していない契約内容としていたことが認められる。
このため、伐採木中に有価物があることを前提として、その処理についても配慮の上で契約がなされていたならば、今回のような問題には至らなかったものと考えられる。
本件請負契約締結が監査請求時点で1年を徒過しているため、契約内容そのものが住民監査請求の対象とならないのは上述のとおりであるが、本件請負契約が全体として最少の経費で最大の効果を挙げることができるよう検討し、今後予定される契約変更において協議するとともに、今後同様な請負工事等の設計に当たって、有価物の財産価値を認識した設計とするため、適正な事務処理を示した手引や設計積算基準の整備等に取り組まれたい。
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別紙 職員措置請求書に記載されている問題点の図化(254KB)(PDF文書)
このページに関するお問い合わせ先
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