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広報紙「ひろしま市民と市政」

広島市ホームページ令和2年1月1日号トップページトピックススポーツの力

新春対談 2020
スポーツの力

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 今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。今回は、元サンフレッチェ広島監督で現サッカー日本代表監督兼U-23日本代表(23歳以下で構成・五輪代表世代)監督の森保一さんと松井市長が、昨年を振り返りながら、スポーツの力とスポーツがもたらす活気あるまちづくり、オリンピックへの思いなどを語り合いました。

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広島市長
松井 一實(かずみ)

あけましておめでとうございます。2020年が市民の皆さんにとって良い年でありますよう、お祈り申し上げます。

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サッカー日本代表監督
兼U-23日本代表監督
森保 一(もりやす はじめ)

 小学校から高校卒業までを、長崎県長崎市で過ごす。高校卒業後、当時の日本サッカーリーグのマツダサッカークラブ(現サンフレッチェ広島)に入団。平成5年にJリーグが開幕するとサンフレッチェ広島の選手としてプレーし、平成6年のサントリーステージ(1st(ファースト)ステージ)優勝に貢献した。
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 日本代表選手としては、平成4年から平成8年までレギュラーとして活躍。平成5年のワールドカップアメリカ大会アジア予選で、ドーハの悲劇を経験したメンバーでもある。
 現役引退後はいくつかのチームのコーチを歴任し、平成24年にサンフレッチェ広島の監督に就任。同年にJ1リーグ優勝を果たす。翌年も優勝して2連覇、平成27年にも優勝し、広島を指揮した平成24年から平成29年の間で3度のリーグ優勝を果たす。
 サンフレッチェ広島の監督を退任後、平成29年に、東京オリンピックを目指すU-20日本代表の監督に就任する。その後、平成30年には、サッカー日本代表(SAMURAI BLUE(サムライ ブルー))の監督に就任。

日々の努力の積み重ねの先に、目標の達成がある

市長 森保さんは昨年、日本代表監督とU-22日本代表(※1)監督を兼任されて臨まれた1年でしたが、振り返っていかがでしたか?

森保 どちらのチームも、海外の強豪チームと試合をするなどして充実した活動ができた1年だったと思います。もちろん私の体は一つしかないので、両方の監督を同時に務めるのは簡単ではありませんが、選手たちのレベルアップは確実にできたのではないかと思います。

市長 実戦を通して、チームとしても個人としても基礎固めができたということですね。それにしても、両方の監督を兼任するのはとても大変だと思います。けれど、そうやって頑張ってやってきたことは必ず成果に表れるはずです。努力して報われないことはありませんから。

森保 ありがとうございます。すごく自信がつきます。試練や困難はあって当たり前だと思っているのですが、その壁をしっかりと乗り越えながら、前に進んでいきたいと思います。

市長 日頃からの努力の積み重ねが結果につながりますからね。高い目標に向かって一気に行くのではなく、らせん階段を上がっていくように、ぐるぐると何回も繰り返しながら、時間をかけてでもしっかりと前進していく。そうすることで、初めて目標に到達するのだと思います。

森保 私もそう思っていて、チームのみんなには「目の前のやるべきこと、やらなければならないことにしっかりと目を向けて、日々努力をして積み上げた先に、目標の達成がある」と言っています。市長の話を聞いて、改めて、それでよいのだという確信が持てました。

※1 男子五輪サッカー競技では、出場できるのは23歳以下という年齢制限が設けられている(24歳以上のオーバーエイジ枠あり)。森保監督は令和2(2020)年開催の東京五輪に向けた日本代表監督であるため、就任当時の平成29(2017)年はU-20代表監督として就任し、その後U-21、U-22、U-23代表監督としてチームの強化に努めている。


スポーツと平和をつなげるまちづくり

市長 森保さんはサンフレッチェ広島の選手と監督を長年務められ、また、小学生から高校生までの時期を、広島と同じ被爆都市である長崎で過ごされていますよね。そういったことを踏まえ、広島への思いや平和への思いを聞かせていただけますか?

森保 市長が言われたとおり、私は今までの人生の多くを長崎と広島で過ごしており、いわば長崎生まれ広島育ちです。両市は世界でただ二つの被爆都市ですが、たくさんの方の絶え間ない努力があって、今の平和で豊かな「まち」があるのだと思っています。そのおかげで、今こうして自分の好きなことをやって穏やかに生活ができるのだということをかみしめて、日々過ごさなければいけません。
 広島と長崎に起きたことを伝えたり、平和について発信したりすることは、自分のこれまでの経験や立場を生かしてやっていきたいと考えています。オリンピックは、シンプルに言うと「平和の祭典」だと思っています。平和だからこそスポーツができるのだと。私たちは平和をかみしめてプレーしなければならないし、見てくださる方にも、平和をかみしめて見ていただきたいです。そして、国内外の多くの人に広島と長崎を訪れていただき、歴史を振り返り、平和を感じてもらえるような活動ができればと考えています。

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市長 私は、「平和」という概念の中に、相手の生存を脅かさないこと、そして合意して出来上がったルールを守りきること、というのがあると考えています。競争することは決して悪いことではありません。ただし、ルール違反をするとか、人の道に外れたようなことはやってはいけない。スポーツは、まさにそれを具現化したものです。相手を傷付ける争いではなく、ルールを守って競い合い、高め合うこと。これが、スポーツと平和に共通する考えであり、平和の原点だと思います。いわば、スポーツとは平和を学ぶためのトレーニングであるとも言えるのではないでしょうか。

森保 オリンピズム(※2)の根本原則の中に「平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」という言葉があります。これがまさに今言われたことと通じるのではないかなと感じます。平和を学ぶトレーニングの場として、スポーツを平和の推進や人類の発展に役立てる、ということですね。
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市長 そのとおりです。そして、相手の存在を認めた上で、ルールに基づいて競い合う。国同士でもそうでなければならないですよね。相手の国を滅ぼして勝つなんていうのは間違っています。それなのに、最近はルール違反をして、さらにそのルールを「やめよう。作り直そう」としていることが多いように感じます。そういった行為を抑えるためにも、ルールを守ろうという人たちを増やしていかなければならない。ルール違反に対して「それはおかしい」と言える人たちを増やすことが、平和に向けて前進することになるのではないでしょうか。私は、「平和を求める広島」の取り組みとして、そういった思いでまちづくりを進めているつもりです。

森保 まさに、平和都市でありスポーツ王国でもある広島だからこそのまちづくりですね。

※2オリンピズム フランスのピエール・ド・クーベルタンが提唱した、近代オリンピックを支える理念のこと。スポーツを通して、体と心を鍛えよう、世界のいろいろな国の人と交流しよう、そして平和な社会を築いていこうという理念であり、その根本原則は、オリンピック憲章において定められている。
日本オリンピック委員会ホームページ「オリンピズムってなんだろう」より

まちにうるおいと活気をもたらすスタジアムを

市長 まちづくりといえば、サッカースタジアムの建設場所が中央公園広場に決定して、本格的に動き出しました。森保さんは、新しいサッカースタジアムに望むことなどはありますか?

森保 抽象的な言葉になってしまうのですが、まちにうるおいをもたらすものになれば良いなと思っています。訪れた人たちに、笑顔になってもらえるような場所であってほしいですね。そして、サッカーを通していろいろな人々のつながりができて、それが広がっていき、広島がさらに活気あるまちになれば良いですよね。
 また、世界的に見ても、現代のサッカースタジアムはサッカー以外でどう活用できるかという観点で作られることが多いと思います。そういった意味でも、人々の日常に溶け込み、まちにとって財産となるようなスタジアムができることを期待しています。

市長 ありがとうございます。今言われたお話なども取り込んで、どのようなスタジアムがまちにとって良いのか、これからも多くの方の意見を聞きながら進めていきます。応援をよろしくお願いします。

歴史に残るようなオリンピックに

市長 今年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。森保さんの、オリンピックに向けての思いなどを聞かせていただけますか。

森保 私自身、金メダルを取ると言っていますし、選手たちも当然そのつもりで頑張っています。スタッフも含め、皆が日々、最善の努力をしてレベルアップしていき、オリンピックに向けて最強のチームを作っていけるようにしたいと考えています。そして、応援してくださる全ての人々に喜んで笑顔になっていただけることを目指して、また、日本のサッカーのさらなる発展のため、今できることを最善を尽くしてやっていきたいと思います。

市長 ありがとうございます。非常に頼もしく、期待できるお話ですね。
 私自身の話になるのですが、私にとって日本で開催されるオリンピックといえば、小学生の頃に教室のテレビで見たという印象が強く残っています。当時、はやっていた炭酸飲料があり、その王冠(瓶ジュースのふた)を集めるとオリンピック選手のフィギュア(人形)がもらえるというのがありまして、一生懸命飲んだのを覚えています(笑)。そのオリンピックが半世紀以上経って再びやってきて、子どもの頃とはまた違った思いで迎え、そして今の子どもたちも、当然私の子どもの頃とは違った思いでいるのだろうと思います。オリンピックというのは、そういった思い出でもあり、もっと言えば自分の人生の歴史の一部と言えるような大きな出来事だと思うんです。その中で、自分たちの誇りでもある日本代表が勝つことができれば、とても感慨深いものになると思います。高い目標を掲げて、しっかりとやり切っていただければ、きっと歴史に残る大会になるのではないでしょうか。

森保 そうですね。そして、サッカーはもちろん、スポーツ全体でのオリンピックですので、オリンピックによってスポーツに興味や関心を持つ人が増え、スポーツを通して人々がより元気になれる、そんなオリンピックにできればなと。スポーツが、地方にとっても国にとっても必要なんだということを、オリンピックを見て感じていただければ何よりだと思います。

市長 期待しています。よろしくお願いします。

森保 この広島で経験したことを生かしながら、日本代表を引っ張っていきたいと思います。ぜひ、皆さん、これからも応援をよろしくお願いします。

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平成29(2017)年、東京五輪世代の代表監督に就任

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日本代表の試合で選手に指示をする森保監督

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平成27(2015)年のサンフレッチェ広島優勝パレードでファンの声援に応える森保監督(当時)

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