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ページ番号:0000182560更新日:2020年8月21日更新印刷ページ表示

2020年8月21日記者会見「国の「黒い雨降雨地域の拡大も視野に入れた調査」について外1件」

動画は下記からご覧ください。

(「広島市公式チャンネル(Youtube)(市長記者会見)」のページへジャンプします<外部リンク>

 

■市政記者クラブからの代表質問■

【国の「黒い雨降雨地域拡大も視野に入れた調査」について】

記者

 市長は年度内を目途に方向性を出すことを国に求めるという意向を示されていますけれども、その後国からスケジュールについて何か報告があれば教えてください。また、厚生労働省内には年度内に方向性をつけるのは難しいとの声もあります。今後、どのような働きかけを行いスピード感を持って対応してもらうつもりなのかお考えをお聞かせください。

 

市長

 この件に関しましては、まずは本市としましては、今回の裁判で勝訴された原告の方々、そして黒い雨を体験された方々、高齢化が進んでいますので国に一刻も早く黒い雨降雨地域の拡大ということを実現していただく必要があると思っております。これがベースであります。そういったことを頭に置きながら、実は昨日、小池副市長の方に厚生労働省の方に出向いてもらいまして、黒い雨降雨地域の拡大も視野に入れた検証、これの早期実現等についての要請を行ってまいりました。要請のポイントは、まず検証ということをするということでありますが、その検証に当たりましては、これまで蓄積されてきたデータを最大限活用すると言われていますので、その活用の際には県市が出しているデータの活用を促すということをお願いしたい。そのためにも県市が参加するということで、ぜひお願いしたいということを一点、お願いしました。

 そしてもう一つ、繰り返しになりますが、黒い雨体験者、高齢化が進んでおります。この方々の援護ということを考えたときに、高齢化ということを、75年も経っているということを考えたらすぐ分かります。一刻も早く救済するということをやっていくためにも年度内には方向性をちゃんと出してほしいと。検証作業、なかなか大変だというふうに言われておるようでありますけれども、年度内ですからまだありますよね。方向性は出せるんじゃないかということで、しっかり要請してきたということであります。この要請に対しまして国の方からの発言は、「検証の内容やスケジュールについては現時点で固まっている訳ではないが、黒い雨地域の設定に関わる科学的な知見について最新の科学技術を用いて専門家などの御協力を得ながら、可能な限り検証を行うこととし、できるだけ早期に着手できるように取り組んでいきたいと考えている」と、こういう発言がありました。こちらの要請内容を実現するためにも、まずはですね、この検証の場を設定するという具体的なスケジュールを早く決めていただくということが要りますので、当面はこの場の設定を早くしてくださいということをしっかり求めていくということをやり、そしてその場で今申し上げたことを改めて本市の考え方を展開できるようにしていくということをしていきたいと考えておるところであります。

 

記者

 要望の方は県の方も一緒に行かれたのかということが1つと、市長の思いはよく分かっているんですけれども、一方で、よく原告団の方から聞くのが、控訴をしないまま、控訴をしないという選択肢も選びながら、かつ国の方に拡大もしくは制度変更を求めるという選択肢もとれなかったのかという意見も一方であるんですけれども、それはいろいろなやり取りの中でもなかなか難しいというふうに思われたのではないかと思うんですが、その辺の具体的な難しさみたいなところも含めて説明願えればと思います。

 

市長

 県の方は誰が行ったのですか。

 

市職員

 広島県は、東京事務所長です。

 

市長

 今回の事態について、原告の方々、被爆した方々、いろいろな意見があるということ、皆さん方の情報、マスコミ情報等を通じて聞いていますし、こちらの方にもいろいろなお話があったということを伺っています。国がスピード感を持って対応すると言っているけど、片方で控訴するという行為をすることで、信用できないじゃないかというふうなコメントを出される気持ちもよく分かるわけであります。ただ私自身冷静に考えて、国が組織を挙げて、いわゆる政治決断も含めてというか、制度を作って運用してきているわけですね。そして、積み上げた制度運用については、今までの訴訟の中でも最高裁(最高裁判所)の判決も得て、自分たちの作った制度についての合理性を追求して、それなりに合理性があると最高裁も言っているじゃないかと。それをいわば、私自身ずっと平和宣言でも言っているように、ある意味で政治決着と言いますか、そういった行政手続き上の問題を超えてやるべき、そういった本質的な問題があるので、むしろ、政治判断で考えていただきたいと言っていたところ、私からすれば、地裁(地方裁判所)段階で最高裁の考え方にもある意味で問題提起をするという、そういった判決が出たわけでありますので、ここで考え方が1本にまとまったわけではないんですね。今までやってきていた救済措置の在り方をもう一回原点に立ち直って考えるということをやらない限り、訴訟に関わった方々以外にも同様の方がおられるわけですから、そういった方々への援護策の在り方も基本的に変えなきゃいけないわけであります。そういう場にしていただきたいということを前提に、訴訟については今までの考え方の整理がどうだったかということはやるとしても、新しい対応策を作ることで問題解決を図ってくださいと。ですから、そちらの方に力点を置きたいと。こういう整理であります。確かにどっちが本音なんだと、どっちに結論がいくんだということを御心配な部分もありますので、ぜひ今までの流れを変えるという、そのためのこの検討、検証をする場を早く作っていただいて、しっかり議論をするようにしていただきたい、切にそう願います。スピード感を持って対応するということを大臣に言っていただいているわけですから、我々がお願いする結論に向けて、その方向性をしっかりと踏まえた検証作業をするという方向性なりを示してはいただけないかと、いただけるんじゃないかと。そのために努力したいというふうに思います。

 

記者

 昨日、国と話をされて具体的なところは出ていないんだと思うんですけど、県と市がその検討の場に参加させてほしいという依頼をかけていらっしゃることに関しては、そこの参加の可否に関しては可能そうな雰囲気があるのかどうなのか、そこら辺はいかがでしょうか。

 

市長

 これは可否というか、我々としては当然出させていただいて、出させてもらえなくても、言うべきことは言うという覚悟でありますし、今回みたいに、また必要であれば直接お話ししに行くということをやりますので、そんなに気にはしていません、必ず言うべきことは言うと。どういう場であっても言うようにいたします。ただ、そういったことを国に言うのと、検証する場面で多くの方がおられて、その作業に参加する方々にもいろいろなことを直接訴えることができますから、場に出ることがまずは重要だというふうに思っていますけど。

 

記者

 そこは、場には参加できそうだというような状況と思ってよろしいですか。

 

市長

 昨日の段階でのやり取りを聞いていますと、この場の設定そのものも早期に着手できるようにというふうに言っているので、どう設定していいかということについての決断ができていないという状況であるということでありましたので、個々の問題についての回答まではいただいていないというのが現状であります。

 

記者

 分かりました。ありがとうございます。

 

記者

 昨日行かれて、県と市の要請に対する国の回答を聞いていると、結局、科学的な検証をするという方向に話がいっているという気がして、そこが何か、市長が求めている検討の場とズレがあるように感じるんですけれども、改めて、市長が国に求めたい検討っていうことの中身と、今、国が科学的な検証っていうところに、突き進もうとしている市長のお考えを教えてください。

 

市長

 考えですね。あの具体的に私が直接やり取りしているわけじゃないんですけど、こういう問題を考える上での基本的な認識を申し上げますと、最新の科学的知見を用いて、専門家などに協力を得ながら、可能な限りの検証を行うと言っておられますけれどもね、科学的な知見を用いた検証をするなとは申しません。多分、今の政府の今までの救済措置、援護措置を考える上でのコンセプトでしょうしね。それが多分、戦争行為、最終段階において国民が被害を受けた中で原爆投下による被害とか、その他、終戦末期に焼夷弾で多くの市民が亡くなってしまったと。そういった中で、どこまで国として支援の手を差し伸べるかといったときに、原子爆弾に関しては放射能の被害ということ、それが一過性のものではなくてずっと続くから、それが発症したときに支援してあげないということはあってはならないということでしょうね。そうするとその論拠としては、放射性の原因といいますか因果関係、それが原因となっているということを、ある程度、証明するというようなことがあるのは合理性があります。だから、それで科学的な知見を使って、当時の放射能とどういう関係があったかを見て、その方々を放射能被害者を救う中の放射能との関連があったということを説明できるような仕立てにして、支援措置を考えていると言われているのも重々承知しています。

 そして、市内の一定範囲、一見して誰もが放射能を浴びたということであれば、例えば爆心地から1キロ、2キロ、3キロ、4キロ、5キロとか広げた中で、5キロぐらいまでは、建物の被害状況とかから見て、間違いないだろうというふうなことで、その広島市におられた方、それから後、救護措置に入っておられる方々、そういった方が放射能の影響が出ていだろうということで、お一人、お一人、検査したわけじゃないんでしょうけれども、おられたということで放射能被害があるだろうということで救済すると、その延長としてその日じゃないんだけれども黒い雨、その日もあったでしょうし、黒い雨をまた浴びたということで、その黒い雨に放射物質があって、それを浴びたことで体内に取り込んだりして内部被曝もあるだろうと。だからそれも、やはり科学的に証明できるからということで、その(黒い)雨を浴びた範囲がどこかということで、今までやってきていた救済措置がある意味で科学的といいますか、そういった形で支援を方向広げてきているわけですね。ですけれどもう一つ重要なのは、手帳を交付して、そして実際にその病理現象が現れたときに、その方々の医療費とかいろいろ手当てをすると、お困りごとについて支援するといったときに、支援策を講じていくということをやってきている中で、類似の症状が出ているのに、まさか、その後、同心円から遠いとこにいたとか、(黒い)雨は浴びているんだけれども元々設定した外にいるから、そこのところは逆に自分が証明しないと入れないよという制度になっているとそこなんですね。設定した所ですと、もう大体、蓋然性といいますか、それでオーケーしているんだけど、それ以外の所は悪いけど自分の方で証明してくれと、そこはちょっとギャップがあるんじゃないですかということを申し上げているつもりなんですね。そこまで来るんであれば、もう多くの方、ここまで何とか来られて、そういう病状もあるのであれば、もう少し科学的な知見の使い方も緩めるとかあるんじゃないでしょうかと。そうすることが、例えば政府としていろいろな支援策を講ずるときに、他の支援策と考えて、いわば緩すぎるという批判があるでしょうかと。そういうことを役人は心配するんでしょうけれども、この原爆症に関して、ここまで来て多くの方が、そこまで言わないのではないかと思うんですということを、それくらい国民の理解も行き届くのではないでしょうかと。国民に感謝しながら援護措置については今の国民が出す税金を使っているわけですから、もうひと手だて、支援の手を広げるということについて、多くの方の了解を得られるでしょうと。役人ベースでその決断は難しいとすると、それを決定する政治家がいいよと言ってくれれば、次の手続きに入れるんでしょうけれどもね、その手続きにいくという決断ができないから、引き続きこの科学的知見というものを使いながら、どう使っていいかということを、クリアしているしどう処理したらいいか分からないからと、こう言っていると受け止めているんです。だから、それを乗り越える判断をするためにも、我々の考えをよく、多くの方に聞いていただいて、判断していただくようにしたいということを申し上げているんです。

 

記者

 そしたら、あくまで市としては、国は科学的なこれまでの蓄積されてきたデータを最新の科学技術を使って再検討するとか言っていますけれど、市としては何か新しいものを見つけるために、協力をしますよというよりかは、科学的知見の使い方っていうところを、こう何か提言をしたりとか、そういったことをしていきたいってことでしょうか。

 

市長

 ですから、我々の調べた資料などで、これを利用できるとか言っていただけないかということなんですね。ちょっと違うんですよ。同じ科学的知見と言いながら、それを今までの厳格な基準じゃなくて、我々だってこういうことでおられますよということをやっているわけですから。それが、立場が違えば、検証行為として優れて正確ではないと言われるかも分かりません。それは確かにそうかも分かりません。

 しかし事実、そういう状況があったということを証明する手段としても提供しているわけですからね。この値打ちを認めていただけないかという立場で物申したいということを言っているつもりなんですけどね。

 

記者

 分かりました。ありがとうございます。

 

記者

 すいません、ちょっと繰り返しになるかもしれないんですけれども、県と市がそういう国の検証の場に参加したいという意向で、その中で市として具体的に、今後被爆者の援護地域を拡大するにあたって、どういう役割を果たしていきたいというふうに市長はお考えでしょうか。

 

市長

 今申し上げたところに尽きると思うんですけれども、その科学的な知見を用いて援護措置を考えるというのは、こういった援護施策を打ち立てるときに日本全体のいろいろな支援策のバランスを取って合理性を説明できるようにするために、こういった判断を使用されているんでしょうと。それを厳格にやろうという気持ちも否定するものではありませんけれども、実際に、この被爆者の立場から考えるとここまでの年齢に達して、多くの方々、支援いただいているんですけれども、もう一段、その科学的知見というものについての扱いについて、特段の配慮をしていただくということができないものでしょうかと。それを、市県、行ってお話をするということをさせてもらいたいと。決して無茶なことを言っていると思っているわけではないんです。ただ、今までのルールからすると科学的知見という言い方が、多少違ってくるという、そこはもう、行政を超えた政治判断という、それを何とかお願いしたいということをしっかり言うということをしたいと思っています。

 

記者

 前回も会見でおっしゃった、市長が半年以内に、その方向性を出してほしい、その方向性という言葉なんですけれども、具体的に年度内にどこまでを求めたいのかっていう、そこの市長のイメージ、その求めるラインっていうのを教えてもらえますか。

 

市長

 私自身は少なくとも大臣から得た発言は、黒い雨降雨地域の拡大も視野に入れてということで検証と言われましたね。だから、視野に入っているわけですからね。拡大に一歩、拡大という方向性をちゃんと踏まえて検証するという、もう一歩でも踏み込むということを言っていただくのは可能じゃないかと思うから年度内と言っているんですね。全くニュートラルで、今までどおりの科学的知見の使い方でやって、それでいくかどうかを単にやるんですというのではなくて、目的意識といいますか、そういったものを年度内の中の検証作業の中で方向付けできるようにしていただけないかなというふうに思うんですけれどもね。あと、措置をするときに、じゃあそのためにどういった手続きがいるかとか、どういう制度にするかとか。本当に拡大地域を我々が要望している範囲にするのかどうかとか、様々、具体的なことにもなりましょうからね。やるにしても端から、例えば極端に、今の地域を縮小するために検証するなんてことはまずないわけですから。そうすると維持か拡大かというと、広げるということも踏まえるとか視野に入れていただいたとか、もう一歩踏み出すということを言っていただくのが、年度内にできなくはないんじゃないんですかということを申し上げているつもりなんです。

 

記者

 関連して、2012年に市の主張が厚労省(厚生労働省)の検討会で蹴られたとき、あれは、大体1年半以上かけて検討されて、結構時間としては長かったわけですけれども、市長として、その半年以内にある程度、方向性は出せるのではないかというふうに思われるその理由というのか、そこはどういうものになるんでしょうか。

 

市長

 少なくとも今言われた、市長になってすぐの年でしたよね。見させていただいて、それまで使ってきた知見での判断でとなれば、多分、ああいった判断になると思うんですよ。それが根本的に変わるというとこは、なかなか変わらないです。所与の条件設定が変わっているわけではないわけですから、だから、申し上げたのは、今度はっきり言うと、地裁(地方裁判所)などでも、こういう裁判所、いわゆる司法制度の場においても、もちろん最高裁(最高裁判所)から地裁とレベルがありますけど、最高裁が考え方、確かに政策論としてあると認めていただいているとしても、長年、平和宣言で、ずっと言っているようなことが、地裁レベルでも認めていただけるというふうな状況があったこと、これを踏まえるならば、今までの科学的な知見に立ってというやり方をもう少し、被爆者サイドに立ってとか人道的なといいますか、そういった視点も加味した上で、考えることはできないんでしょうかということに尽きるんですけどもね。どうでしょうかね。ある意味、そういう意味では、丸めて、政治状況をもう少し加味した判断をするという決断をしていただくと、そちらの方に、1歩でも2歩でも踏み出すということをやるための場にもしていただきたいとこういうふうに思っています。

 

【平和記念式典について】

記者

 (広島)平和記念式典についてお伺いします。異例の縮小開催となった平和記念式典後、今回初めての定例記者会見となりますが、今回の式典の総括と浮かんだ成果、課題について市長のお考えをお聞かせください。

 

市長

 御存知のように、今年の式典は、新型コロナウイルス禍の下で、参列する方を絞らざるを得ないと。だから、絞るに当たって、どんな式典にするかということを開催前から考えてきていた中で、実際、開催した結果といたしまして、被爆者の方々、そして、県外からの政府関係者、そして、83か国とEU(欧州連合)の駐日大使、そして、都道府県の遺族代表の方々、数は、ぐっと縮小いたしましたけれども、実際、参加いただいたということ。それから、そういう意味では、今申し上げたのは、規模は縮んだけれども、ある意味、例年どおりのプログラム実施のベースになったということであります。

 それから、新たな試みというふうに言ってもいいかも分かりませんけれども、今までですと、「ひろしま平和の歌」の合唱とか合奏ということで、大人数でやっていましたけれども、これも、全体参列者を絞るという考え方に横並びでやりまして、高校生4人と、それから、被爆ピアノを使いまして、演奏と歌唱にするという工夫をいたしました。これは、新たな試みというふうに言っていいと思います。

 さらに、大型ディスプレイを会場に設置いたしまして、式典の前に、各国首脳あるいは、被爆者からビデオメッセージを用意するとか、式典中は、その式典に参加できないけれども、重要な発信をしていただけるということで、国連のグテーレス事務総長にメッセージを発信していただいたりと、ある意味で式典自体が平和発信するという趣旨の式典でありましたけれども、こういったディスプレイ装置を使い、その場で、いろいろな方に平和のメッセージ、世界に向けてのメッセージを発信していただけるという場にもなったということで、これは、こういったコロナウイルス禍での新たな試みと言ってもいいんじゃないかなというふうに思います。

 それともう一つ、心配していた参加できない方々へのいろいろなこの式典のメッセージを届けるということで準備をしてまいりましたところ、例えば、平和首長会議加盟都市、世界にたくさんあって、その中で97都市等が、原爆投下されたその時刻に、それぞれの街で鐘を鳴らすというようなことをやっていただいたという報告も来ておりまして、同時進行で集まれないんだけれども、その思いを共有するということを具体化していただくというようなことも今回できましたので、これは今後も、コロナウイルス禍であろうとなかろうと、いろいろな意味で平和の発信をするのにいいんじゃないかなと思ったりしたんです。そういう意味で、そういったことを踏まえて、慰霊を中心にしながらやるということで、式典を縮小しましたけれども、平和発信もいろいろな工夫をすればできるということが分かりましたので、ある意味で、今回の式典開催を教訓にこれからも平和記念式典というものは、どんな状況の下であったとしても、原爆死没者の慰霊ということを、きちんとなるべく静粛な中で、粛々やるということと同時に、世界恒久平和のメッセージを発信し続ける式典として、催していくようにしたいというふうに思ったところであります。

 

記者

 今の話でいくと、良かった点、非常に挙がっていたかと思うんですけれども、一方で、その問題あるいは課題ですね、来年、こういうところを変えていった方がいいんじゃないかというような、そういった工夫をもっとできるような改善点というところは、気づきのようなものというのはあったんでしょうか。

 

市長

 改善うんぬんとは、ちょっと別なんですけれど、新型コロナ(ウイルス)感染症の状況が、また来年続くかどうかということが、ちょっと見通せないので、その際、例年どおりみたいに戻すというふうにしたときに、私としてはディスプレイ装置を使ってやるっていうのは、結構良かったんじゃないかと思ったりもするし、それから、いろいろな意味で次の世代を担う高校生とか、ああいったところが被爆ピアノを使ってというのは、これもコロナウイルス禍だからというんじゃなくて、やっていくかとか、そういう意味で式典のプログラム内容そのものの基本は変えないとしても、今回うまくいったかというようなことを加味する運営方法をもっともっと工夫していくことがあっていいんじゃないかなと思ったりもしました。どこが悪かったかということについては、ちょっとごめんなさい。担当の方からまだチェックが入っていませんので、もう一遍よく聞いてみますけれども、もしそれで不都合なところがあれば、それは当然改善していくということはやりたいと思います。

 

記者

 後、もう一点なんですが、今年も原爆ドームの周辺でデモが行われて、会場までその音声が聞こえたかどうかというところは、まあ、はっきりしないまでも音声を測られていたかと思うんですが、今時点、市長として規制条例がこれまでも取り上げられてきましたけれども、その規制に関しての考えという部分で現状どのように思っておられるかというのをお聞きしたいんですが。

 

市長

 実は、この規制に関しては、改めて今回も式典に出られる方についてアンケートを取って前回やったのと比較しながら、いろいろ対応策を講じた上で御意見をと思っていたんですけれども、全然、式典の規模が変わりましたし、アンケートを求める対象者の方がまずは減り、それから、被爆者とか被爆者遺族席の方に聞くとしても、聞ける方はほとんどいなくなりましたが、アンケートはある意味で聞いた部分もありますので、どう使うかはありますけど、とにかく、以前のように思っていた比較・検討の対象にするということについては不発で、ちょっとうまく機能しないということになりました。ただ、一定の御意見はありましょうから、それを踏まえてどうするかということは別途考えますけれども、ただ、いずれにしても基本は変わりません。先ほど申し上げましたように、慰霊というようなことも重要な要素でありますので、式典の静ひつ確保は皆さんの協力を得てやるという基本方針は変えません。ただ、この議論をする中で、もう一つ、いわゆる表現の自由とかそういったものについての規制のやり方については慎重にということも言われています。そのことも重要であるということは重々承知しております。だけど、この式典のこの短いプログラムの間に、なんとか祈りをやるということは、広島のこの式典の切なる、何と言いますか、願いとして、こう叶えられないかということは、ずっと変わりませんので、皆さんの協力を得るように工夫したいと思います。決して、強制措置ありきなんていうことを考えているわけではないということを分かっていただきたいと思うんです。以前、長崎の式典にも出ていましたけど、やっぱり長崎の方でも声が上がっていましたよ。だけど、声を上げる方々は、それなりにやっぱり思いがあって、こういうタイミングじゃないと自分たちのこの思いが発せられないんだから、ぜひともということを言われているということも承知していますけれども、だけど、そこのところをもう少し工夫の余地はないんだろうかということをもう少し研究したいというか突き詰めたいですね。式典全てじゃなくても、本当に祈りをやるところの部分を静かに迎える、黙祷をするんじゃないんですけど、やるということはあったっていいんじゃないかと思うんですけどね。そういう意味で、まだまだ問題は続く気がしますけど、式典の静ひつ確保ということは必ず皆さんに協力をお願いするということは、やり続けたいと思います。

 

国の「黒い雨降雨地域拡大も視野に入れた調査」について

記者

 すみません、代表質問に戻ってしまうんですが、申し訳ありません。黒い雨で1点もう少し聞かせてください。控訴するという判断になったところなんですけれども、やっぱり法的には県市が独自で控訴をやめるということは、可能だったという指摘があると思います。国は参加行政庁なので、本当の被告である県市と矛盾する判断はできないということで、そういったことは事実だと思うんですけれども、県市としては原告以外を救済したいという思いが強くあったことは、もちろん私も理解しているんですけれども、その上で、どうして原告と原告以外を救済するために、独自に控訴が断念できなかったのかというか、どういった苦悩があったのかということを教えいただいてもよろしいですか。

 

市長

 苦悩の内訳というかね、あれですけれど、端的な言葉で言うと、法定受託事務ということに収斂させていますけれども、いわゆる日本は法治国家ですよね、法律に基づいて行政体は動いていますし、市民も皆そうですけれども。基礎自治体である市とすれば、本来、被爆者の援護措置というものは国が制度を作って、それを運用するわけですから、理念型で言うと、国の制度として、国で働いている職員がその組織を使って一連の事務をやるということも不可能ではないんです。それを法律を使って国で作った制度なんだけれども、この事務運営に関しては、原爆が落ちた土地は広島と長崎なのだから、そこにある自治体にその仕事をさせるという法律になっているということなんです。そして、その制度内容を単に実施するという形で自治体に業務命令が下りているということであります。それを「出す、出さない」の判断基準も、今、国が作っているそれに従ってやっていると。それについてトラブルが起こったんだから、それを支給していないのならば、その判断を、「こうこうこう言われているんだから、裁判所で争え」と、こういうことだというふうになっているわけであります。そこで、この担当者が、先ほど申し上げたようなことで、どうも今の制度そのものが行き届いてないんじゃないかと。だから、あの地裁で言ってくれた判断の方がいいなと思いますと、例えを言えばね。それに従って、そのとおりで、おっしゃるとおりですよと、判断をここでするという事実上の行為をできなくはない。それが控訴断念ということなんです。そうしますと今の法律は国の意図を手足として動くというふうに命じているその法律に反することになるでしょうということなんです。だからそれを、その法律を超えた価値判断としていいことなんだからやった方がいいじゃないかというのが、控訴断念という話なんですけれども。個別問題について自治体がいいと思えば法律手続きをどんどん違反してっていうかそれをサボってもいいということは、いかなる場合も言えるんでしょうかということになるので、困っているわけですね。それで私が即だって弁明っていうことも言ったわけです。自らの主張、内容が正しいとしても、当時の都市国家の中で、裁判が起こって、あなたが言うことは正しいとしても毒杯を飲めと。どっちにするかと、飲まなくたっていいじゃないですか、言っていることが正しいんだからと言うけれども、その法治システムを守るためには、あえて飲むということそういった心境にも近いと申し上げた。実際いろいろな法律について守りましょうと言っている立場の中で、これは、いやいや法律を超えて自分の判断、みんなが言っているんだから、それはサボっていいですよということを1個1個やっていくということはできないじゃないですか。たまさかそれはいいかも分かりません。でも一般論化するということは、難しいということが一つ。

 そして後は、その法定受諾事務の中でも、具体例で申し上げると、例えば、この自治体にやらせている仕事なんだけれども、自治体が持っている例えば財産とか、権利行使ができるものを使って何かしろという命令があったとします。広島の土地とか、市が持っているような。それが、やっている仕掛けを使ってやれと来ているときには、そのときには、この権利主体として、価値判断を含めて国に申して、そうは言われるけれども自分たちの行政としてこうだということ、意見を言ってですね、それで争うということはあり得るんですね。だけど、この支援措置については国が作った支援措置を単に運用するということだけ言われているもんですから、個々の内容についてオフィシャルに議論するということは、法律上、今は認められていないということなのでということを申し上げているつもりです。そこを分かっていただきたいということなんです。

 

記者

 なので、独自に控訴を断念するということも、国が定めた法的なシステムからズレるというふうな判断ということですかね。勝手にその議論、交渉というか、援護を拡大してもらうこと、そういった議論が難しくなるからっていう理由もあったのかなとか思ったんですけれど、そういったことでは全くないということですね。

 

市長

 当然ありません。全然、違います。

 

記者

 分かりました、ありがとうございます。

 

【平和記念式典について】

記者

 代表質問2問目の延長上のような質問ではあるんですが、今年その実際に、人が例年より10分の1ぐらいの式典に出られ、その状況を御覧になって、実際に会場の周りを歩いてみても例年だと、もう本当に人がひしめくような状況であったのが、本当にまばらな状況になっていると。日常でも平和記念公園の雰囲気がかなり変わっているんですけれども、一方でこの「迎える平和」というのが広島市の平和行政の一つの柱であり続けたと思うんですけれども、来てもらって知ってもらうという一つの柱がですね、かなりもう機能しにくい状況になっていると思うんですね。この状況をどう受け止めていて、例えば今後の広島市の平和行政というのが、この状況を受けてどう変わっていこうと考えているのか、今回の平和記念式典の現状を見た、それを踏まえて今どうお考えになっているのかというのを少し聞かせていただければと。

 

市長

 確かにその「迎える平和」ということ、今までの流れの中で言えばですね、なるべく多くの方にとにかく広島に来ていただいて、平和記念資料館を見ていただくという非常に分かりやすい構図で、「迎える平和」、「そうですね」という理解を得ていたと思うんですけれども、新型コロナウイルス禍等々で人々が動き回ることそのものについて、自分の安全性の確保ができない。だから広島そのものが安全だとしても、その来る過程での問題とか、国を越えたときに出国問題、入国問題等々で様々な規制がかかっている中で、「迎える平和」ってどう考えるんだろうと、そういう問題にもなっているわけであります。そこで、「迎える平和」のコンセプトをよく考えてみますと、いわゆる世界中に多くの方がいる中で被爆したという、いわゆる人類史上原爆を使って戦争行為を終結させたという、あるいは戦争、違法行為をした国家があるということをどうも知らない人がまだまだいると。そして新しい世代がどんどん生まれてきますからね。そういった方々はお勉強しないと分からないということですから、そうした中で原爆そのもののあり方について、議論しようとしてもできないのであれば、使ったときにこんなことになるんだということを知る方がまずいて、それについての問題意識を持って、そういうものがあってはならないということを思っていただく方を確実に増やさないと、政治レベルでの問題意識があやふやになる。だから、広島に来てもらって被爆の実相を知っていただきたいと。こういうことで「迎える平和」を言っているわけですよ。そして為政者の方をはじめ、多くの国民市民に来ていただきたいと言っているわけです。だけど移動できない。そこで今度は、いわばインターネットとかそういった情報を通じて、こちら側から被爆の実相を配信する。いろいろな都市でもそういったことを積極的に見ていただいて、知るということをやりながら究極、いわば聖地の、聖地という言い方はおかしいですけれども、被爆の経験を受けて、そして、街がきれいになって、そしてそういうことを感じれば感じるほど原爆というものがあってはならないというふうに実感する都市が、この地球上にあるんだよということをいろいろな情報収集をしながら知った上で、でも現場を見ようというふうに思っていただくということを究極目標にするということにして、迎える平和ということを維持するということにすれば、来ていただくということが可能であれば来ていただくし、そうではないとしても少なくともこちら側から来ていただける施設群がありますよということを情報配信して、来ていただけるような動機付けをし続けるということをやっていくのがいいんじゃないかなと思っています。そういう意味で式典などについて、ビデオメッセージを出す。それをまた放映していただいて、あの土地でいろいろなことを配信できるんだなということをまた知っていただくというようなことで、具体的な移動のチャンスは少なくても来る機会を有効に生かせるようにするための事前情報発信を今以上にしていくということをやれば迎える平和の本来の狙いが引き続き維持できるんじゃないかなというふうに思っています。

 

※(  )は注釈を加えたものです。

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