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2020年8月12日記者会見「「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求等事件に係る第一審判決への対応」
動画は下記からご覧ください。
(「広島市公式チャンネル(Youtube)(市長記者会見)」のページへジャンプします<外部リンク>)
■市からの発表案件■
【「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求等事件に係る第一審判決への対応について】
市長
去る7月29日に広島地方裁判所における判決がありました、いわゆる「黒い雨」訴訟への対応について、本日、広島高等裁判所に控訴状を提出いたしましたことから、控訴に至る経緯と、その理由について説明をさせていただきます。
広島市といたしましては、7月29日の敗訴の判決を受けた後、国に対しまして、黒い雨体験者の切なる願いを実現して、そして救済するため、科学的知見を超えた政治判断を優先して、本市が控訴しないことを認めていただくよう要望を続けてまいりました。
そして、これまでの間には、国・広島県・広島市との間で鋭意協議を重ねてきたところであります。昨日は、私自身が厚生労働大臣とWeb会議を行いまして、大臣からは、広島市からの、「黒い雨降雨地域」の拡大についての強い要請を踏まえて、「黒い雨降雨地域」の拡大も視野に入れた再検討を行うべく、これまで蓄積されてきたデータを最大限活用し、最新の科学技術を用いて、可能な限りの検証を行うという方針が示されました。
また、本件訴訟に関しましては、本判決が、これまでの累次の最高裁判決とも異なり、十分な科学的知見に基づいたとはいえない判決内容となっているので、上訴審の判断を仰ぐべきとの強い要請を受けたところであります。
そのような中で広島市といたしましては、我々の強い要請を踏まえて、国から「黒い雨降雨地域」の拡大も視野に入れた再検討を行うという方針が示されましたことを重く受け止める次第であります。その上で、国からの強い控訴の要請に対しましては、被爆者健康手帳交付事務というものが法定受託事務であることを踏まえまして、法律上これを適切に履行していかなければならない立場にあるということから、国と足並みを揃えて、控訴せざるを得ないという判断をいたしまして、その旨を大臣に伝えたところであります。
勝訴された原告の方々のお気持ちを思うときに、誠に辛い思いではありますが、国に対しては、訴訟の対応とは別途で、黒い雨を体験された方々の援護を早急に進めることを強く求めていきたいというふうに思っております。以上です。
記者
2つお伺いしたいんですけれども、控訴しないように強く申し入れをされていた中の経緯もお聞かせ願いたいんですが、まあ、こういう結論に至った訳をもう少し詳しく、国に対してどういう働きをされてですね、また、それに対する国の反応みたいなものが、どうだったかっていうのを、経緯をもう少し詳しく教えていただきたいというのとですね、後もう1つ再検証を再検討するというふうな回答を得られたと思うんですが、その検討というのが、何と言うんでしょう、見方によっては、どういうふうに拡大につながるかっていうのが、はっきりしないところもあると思うんですね、それに対して市長の期待というか、国に対するしっかり検証してほしいという要望というか、その辺の思いというものを併せてお聞かせ願おうと思います。
市長
国とのやりとりとの詳細ということに尽きるかと思うんですけれども、先ほど申しましたように、7月29日の判決の翌日に、すぐに小池副市長が厚労省(厚生労働省)の方を訪ねまして、黒い雨体験者の切なる願いっていうものを実現して救済するために、まず今回の判決を重く受け止めてもらいたいということ、いわゆる科学的知見を超えた政治判断ということを優先してもらいたいと、そういうことを込めて、控訴しないことを認めてもらいたいと、こういう要請をまず行いました。
私自身は、そういった事務手続きを先行させながら8月6日には改めて平和宣言で黒い雨降雨地域の拡大を訴えましたし、式典後には、厚生労働大臣と面会いたしまして、黒い雨を体験された方々に寄り添って、司法手続きですね、これを超えて黒い雨降雨地域の拡大、そのための政治判断を、是非ともお願いしたいということも申し上げました。そういった中で、事務的な調整をしながら、昨日改めて、また厚生労働大臣とWeb会議を設定いたしまして、お話しを申し上げたところです。広島の、この降雨地域拡大の要請ということを、しっかり受けていただきたいと申し上げましたところ、拡大も視野に入れて検討を行うんだと、そのために、これまで蓄積されたデータを最大限活用して、最新の科学技術を用いて、可能な限り検証したいと。こういうお話が、直接聞けましたのでね。仮に控訴しないとすると、今の手続き上は、今、訴えた方は手帳の交付ということが受けられますけれども、それと同じような環境の方、もっとたくさんおられるんですね。その方々については、次のまた訴訟を起こすとかですね、それで判断がどうなるか不安定なんですよね。むしろ、今おられる方全員を救済するための援護措置ということを、正面から認めないと、いわゆる、そういったことを体験された方々の間で、また区々な対応になるということがありますので、ここは訴訟を起こして、勝訴を得た方には本当に申し訳ないんですけれども、多くの関係者の方に向けていい対応が出せるように、そういった方向の方がいいんじゃないかという気持ちになったわけであります。
訴訟の方については、累次の最高裁の判決とも違う科学的知見に基づいたものになってないと。こういうことを言われて、それで、現状判断では控訴するんだが。というようなことを言われました。それで、私どもも、最高裁の判決とか、そういったものはよく精査させていただいていますけれどもね、ありていに言うと、例えば、原爆が落ちた5キロ内ですと、間違いなく放射線も、放射能も多いんだから被爆実態が明白だろうと。しかし、遠くなればなるほど一過性の放射能の影響についても科学的な知見はないんですね。それを救済するためには、より厳格に病状とか健康状態とかを調べて、そして、あえて具体的に言えば放射能との因果関係を、被爆した方が証明したら救えるというような制度になっているんですよね。半世紀以上経って、それを証明するだけの力がある被爆者がおられるわけがないんですね。で、あれば、ここまで、平均年齢83歳になるまで、大変な苦労しながら実際生活されてきた方々を思いやって、そういった科学的な知見に基づく救済措置っていうものを超えてですね、そういった方々を支援する。そして、そういう原爆被害が起こらないような状態を目指している国家だということを示す。それについては、今、国に税金を納めている多くの国民の方々の税金を使ってやるわけですから、こういった方向について多くの方が了解していただけると思うんですよね。対象者も少ないし。そして、そういった方々、今年8月6日、いわゆる、被爆者の名簿を慰霊碑に納めましたけれどね。ずっとここ最近、約5,000人ぐらいずつ、毎年亡くなっておられるんですよね。そういったことも大臣にお話しして、とにかく降雨地域拡大ということを、しっかりやっていただくということをお願いするというふうなことも言いました。そうすると、大臣の方から関係する方々もかなり高齢化されておるんで、そのことを念頭に置いて、スピード感を持って取り組んでいきたいというふうな言葉もありましたので、じゃあ控訴いたしますと。まあ、こんなやりとりになりました。
まあそういう意味ではですね、この検証と言いますか、これを一刻も早くやっていただくということ。これが重要だと思います。訴訟手続きの方は、淡々と進めていただければいいんであってですね。救済措置をどう考えるかということに重点を置いて、これから対応していただければというふうに思っています。
記者
すごくその、これまで県と市長がずっと訴えられてきたことがある意味届いたというふうなことも言えると思うのですけれども、やはりその2012年の検討会でやっぱり一度蹴られているっていうことがあって、そういった経緯を踏まえても、今回国が言ってきたことっていうのは、納得できる内容と思ったから受け入れられたということなのでしょうか。
市長
そこは内心の意図まで十分に聞き取れる状況ではないのですけれども、今回のこの広島の国に対するお願い事は地元関係の国会議員の方々も、そうだというふうに言っていただきましてね。途中で私は岸田(文雄)政調会長とも直接お話しして、こういったことやっているので、よろしくと言ったら分かったと。じゃあ、自分としても対応するというようなことを言っていただくということをやりながら。ある意味では、地元関係者、広く言えば国民の一般の方の総意みたいなものを背景に、国にお願いしてきたというふうに思っています。そして実際は、こういった支援をするというのは、国民の、多くの方の血税を使って被爆者に対する支援ということになるわけですから。そういった方々の理解がベースになるんですけれども、ある意味で黒い雨降雨地域についての知見で8年前に広島で実情調査してお願いしたこと、合理性に欠けるという判断だったと思うんですけれども。合理性そのものよりか、むしろ、こういった中で苦労されてきた方々への、配慮、思いやりのある国だと、国民だということを示していただく絶好のチャンスというふうにも受け取っていただけているんじゃないかと思うんですね。実際、いわゆる人類に対する脅威ということで、新型コロナウイルス禍で多くの困った国民にいかに支援するかということについて、その類似判断をし、対策を打ち出している国家ですよね。ですから、そういった国民に対する目線というものをそういったとこに据えるならば、高齢化してどんどん少なくなっている方々、ここまで御苦労されている方に、理屈を越えるということに間違いなく被爆されて、いろいろな苦労されている方、そういうのはあれば支援の手を差し伸べるということがある方が望ましい国家じゃないかと思うんですけれども。そんな気持ちを込めてやっている中で、いわば8年ぶりに拡大ということを視野に入れて検討するという言葉を大臣からいただきましたので決断したということであります。
記者
これは国主導で何か調査チームを作るということなんでしょうか。
市長
はい。
記者
国主導で。
市長
ええ、国で作るということで。だから、我が方も職員なり出てもらって、以前、市県から出した調査をベースに判断をしっかりしてもらいたいということをしたいと思いますので、そういう検討の際には参加させていただくということを要請したいと思っております。
記者
スケジュール感っていうのはいかがですか。
市長
私自身は早急にということを申し上げているので、まだ具体的な話聞いていませんけれどもね。できればまあ年度内には方向性出すとか、そういった急ぎの対応をしていただくと有り難いなと思っております。そういうことも要望したいと思いますけどね。
記者
ありがとうございます。最後に1点。この控訴を受け入れる代わりにというか、その、降雨地域拡大の検討をしてほしいっていうふうなお話は、これは、副市長が(厚生労働省に)行かれた(7月)30日以降ずっと協議の場に出ていたようなお話ということで。
市長
ええ、終始一貫してそういう話をして参りました。
記者
それは県市がずっと国の方に求めていたということですよね。
市長
はい。
記者
ありがとうございます。
記者
先ほど市長のお話の中に、たくさんの方がおられると訴訟の降雨雨域にたくさんの方がおられるとおっしゃっていましたけれども、その規模感といいますか、実際広島市として救いたい方というのは、だいたい何人規模ぐらいでおられるというふうに、ざっと見ておられるのかというあたり教えていただけますでしょうか。
市長
可能性のある方、推計になりますけれど、今度市がお願いするのは爆心地から30キロ圏内で黒い雨を浴びたという方々がおられるということで言っていますので。大滝雨域とか言っていますけれども、ざっくり言った推定ですと、県市で1万3,000~4,000人かな、おられるはずですよね。該当っていうか、なると思います。そんな中で、今の仕組みだと健康診断して確かに病状があれば手帳を出すと、そんなことになるんじゃないかと思いますけどね。
市職員
その数字については正確なものはまだ出ておりません。
市長
分かってないよね。ざっくりとそうした推計ですけれどもそれくらいになろうかと思います。
記者
すいません、もう1点。先方から、国の方からスピード感を持って対応するという言葉があったというふうに先ほどおっしゃったように記憶しておりますが、やはりあの、例えば原爆症の認定訴訟でも2009年の時点で、一応合意するような形でやろうと言って、まだ最終的には被爆者団体側からすると決着を見ていない状態が11年続いているという状態がございます。その辺も踏まえて市長の思いとしてはですね、このスピード感については高齢化が続く中で、これぐらいにということを、少なくとも先方にこう、具体的なタイムラインで伝えたかどうかをちょっと教えていただきたいんですが。
市長
その場ではそのスピード感を持ってというお答えをいただいたので、大臣との話は終えています。だから今申し上げましたように、スピード感を持ってやっていただくために、そういう検討会を立ち上げるんであれば、我がスタッフを送り込んで、きちっとその場での会議に参加させていただくということ。そして、できたら年度内ぐらい目途に方向性を出していただくということを言っていきたいなとは思っています。まあ、そうしないと言っていただいたことそのものは成立するかどうかがまた不安定な状況になりますのでね。言うべきことは言っていこうというふうに思っています。
記者
県や国とずっと協議を続けられていたと思うんですけれども、その控訴するという判断は最終的に市としてはいつ判断されたのかということと、国はその地方裁判所の判決を十分な科学的根拠に基づいたものではないと受け止めているというお話が先ほどありましたが、市としてはその地方裁判所の判決をどのようにこう考えられているというか、そういう判決に不服というかおかしいと思うところがあられるのかというところを教えてください。
市長
最終決断は昨日大臣とやりとりさせていただいて、私の口から直接お伝えしたところで判断決定したということになろうかと思います。だから4時過ぎだったかな。うん。4時過ぎからやったのでね。その中でのやりとりですから。Web会議やりましたのでね。
記者
昨日の夕方ですか。
市長
いや、4時半ぐらいですかね。
市職員
昨日の16時15分から10分程度です。
市長
はい。まあその中でやりとりをしました。で、最高裁判所の判例とかいうのは国の言っているとこですけれども、これ、少し自分なりに見ますと、判例は主に長崎の被爆体験者の訴訟に関わる最高裁判所の判決なんですよね。平成28年、29年、30年と出ていまして、ポイントはまず先ほども申し上げた5キロ圏内にあるかどうかということで、そういう5キロ圏内にあった方々については、なんといいますか、被爆して放射能被害があったのは一見明白だというようなことは、政策を作っていますからね。とか、それ以外ですと放射能被害に遭った可能性というものは否定できないけれども、その居ただけで一概に証明できない。だから、その外のところは証明するために検査するための手続きがいるという、今、救済制度になっていて、その仕立て自体は最高裁判所も認めているという、そういう判例の積み重ねなんですね。で、その上で例えば7.5キロから12キロメーターなどについて被爆の可能性はあるけれども、実際にその健康被害が出たときに、その放射能との因果関係が明確に証明できるかどうかというようなことがあれば、それがないと救済の対象になってないとかっていう判例が積み重なって、さらには、いわゆる黒い雨地域に関係しそうなのは、直接遭ってなくても後々こう被害が出たとしても、例えば年間のその放射能の被曝量などですね、100ミリシーベルト以下の一定線の被曝量のときの健康被害が出てくるという可能性があるということについての科学的な知見が確立しているわけではないので、その辺のところの制度論もあるので今の制度そのものについてダメだということはできない。こういう判例が積み重なっているということなんです。それを今回の地方裁判所は、そういった制度論ではなく実際に被害というかその雨を浴びたということは分かっていて、その方々が言っていれば助けてあげたほうがいいんじゃないかという、そういう、まあ、いわば制度論ですよね。今の制度についての検証をしたという。私から言わせれば、政府にお願いしていた政治的な決断をしていただいたような判決なものですから、むしろこの今までの願いが判決で叶えられたかなというぐらいの思いなんです。ですから、それをベースにということを申し上げている。だから訴訟手続き上は確かに国の言うように、あえて言えば司法部が立法手続きをやったような面があるということなので、そこは司法制度の中できちっと整理をしなければいけないということを言われているというのも分かるんです。そんな中で問題は被爆者を救済する。そちらに論点を移すべきであって、手続き論でやるのは枝葉といいますか救済するための一方法論についての議論ですから、この黒い雨降雨地域を拡大するというような方向性についての考え方を政府に早く出してくれと。今まで8年前に否定されたままなのでそこを突破するということに力点を置いたというのが今回のやりとりだというふうに思っています。
記者
市としては地方裁判所判決は評価しているということでいいですね。
市長
そういう意味ではヒロシマの思いを受け止めていただいた判決だというふうに思っています。
記者
あと、すみません。もう1点。今回の控訴ですけれども、市としては積極的控訴ではなくて、ある意味では仕方なく控訴するということ。
市長
やらざるを得ないというか法律の手続きに基づいて、あえて言えば大げさですけれどもソクラテスの弁明じゃないですけれども、毒杯を飲むというような心境かな。自分の言っていることは間違いないんだけれども、その当時の制度化の中で決まっている法律に基づく手続きをやらざるを得ないというようなことかなと思います。
記者
先ほどもちょっと出た話ですけども、2008年に3万7,000人調査されて、その結果、黒い雨が降った範囲が、国が主張する雨域よりも広い範囲を示されたと、それで国に援護区域を拡大する要望をされて、結果、要望は退けられたわけですけれども、今回先ほど市長おっしゃったように、厚労省の言い方をしたら、拡大も視野に入れて再検討を行うということで、そのいったん退けられている中で、その降雨地域の再検討を行って、その降雨地域が広がる可能性っていうのは、市長としてどのくらいあると見ていらっしゃる。要は、この受け入れた根拠というか、そこはどういうふうなものなのかなと思いまして。
市長
私自身は、こちらの論点とすれば、政治的な判断ということですよ。今までの組み立てた制度論の中で、明確にこれぐらいの被害、放射能との因果関係が、一見明白に分かるものについては救済すると。それが怪しいものについては、その当事者が立証する、あるいは証明する厳格な手段があって、初めてやっていくと。そして、そのできたら、健康被害と放射能の因果関係も、少なくとも証明するというようなことをやればという。ある意味で、すごく絞り込んだ救済制度ということで設定されているから、こんな議論になっていると思うんですね。ですけども、例えば市内におられて被爆した方々なんかは、証明する方がおれば、この放射能の基礎量なんかいうことなく、救うとやっているんですよね。その事態をもっと受け止めていただけないかと。放射能の被害を受けて、ここまで生きておられるわけです。その過程でいろいろな苦悩もありましたでしょうし、それを温かく支援してあげるという国家であっていいんじゃないかと。またそういった政策判断のベースになる政治判断をして検討していただければ、救済の道が開けるはずなんですね。それのできるかどうかに、その一点にかかっていると思っています。まさに政治決断だと思います。行政判断ではありません。
記者
では今回は、もう降雨地域は拡大されるっていう、そういう期待感はすごく強い。
市長
もちろんそういうことをやっていただくべくお願いした中での、今度の回答だったという受け止めでありますので、それをしっかりフォローしていくというか、やっていただくようにお願いしていこうと思っています。
記者
今の話の関連なんですけれど、広島市として今後、国に求めていく、その拡大のエリアなんですけど、それはその以前、広島市・県とかも調査をして示された、いわゆるその大滝雨域と呼ばれる、あのエリア全体、全てへの拡大というものを市として求めていくという理解でいいですか。
市長
はい。求めていて、今も求め続けていますから。その方向は変わりません。
記者
かつですね、判決だといわゆる複数の雨域の中にいなかった方も、個別に状況を判断して否定する要素がなければ、疑わしければ、救済の道を開いていくというふうに理解するんですけど、そういう大滝雨域に入っていない方であったという方への救済というのは、どういうふうに考えていらっしゃる。
市長
そこはですね、まさに制度をどう仕組むかですよね。実際に遭われて、その遭ってもいないのにね、遭ったからという方もおられるとは思いたくないですし、それとこの今の制度ですと、健康診断をして、そういった中で健康被害があれば、それを救うという具体的な措置まで、かませていますよね。だから、そういった制度をどういうふうに取り込んでいくかという一つの方法なんですね。だから、これはやっぱり政治判断ですよ。行政で、「ここ、ここ、こうね、証明して、これだけのもんがなきゃね、できない」というふうにやるのか、その年齢とか、全体的に推定して、広島の地域にずっと居住されていて、その当時もいたことは間違いないと、そして今、現にその放射能被害で生じてくる病状、そういうものがあれば、因果関係が絶対否定されないかぎり、例えば救うという、そういう判断を示すとかっていう政策論もあるわけですよね。これらが多分問題は、広島のこの降雨地域のいわゆる援護措置と、長崎における被爆者の援護区域の問題とどう調整するかとか、そういったことになってくるんですけども、基本をどこに置くかということで、様々な制度設計ありますので、その際にぜひ被爆者の御苦労、大変な思いをされてきたこと、そこに思いを置いた上で、そして今の多くの国民は、そういった支援を支持していただけるんじゃないかと思うんです。もっともっとその被爆直後であれば、原爆以外にも焼夷弾で東京・大阪・名古屋といったところで、亡くなった方々がおられて、そういった方々のバランス論があるので、厳格にといったこともあったのでしょう。しかし、現に75年も、何とかやってこられて、ここにおられる方々をそういったこととの比較で、救うのを厳格にしなければならないという、そういう政治判断が今いる状況でしょうかということを、しっかりと皆さんが訴え、納得いくようなことをやっていただければ、救済の道もあるんじゃないかと、そういう思いなんですね。
記者
もう一つ、すいません。国が最新の科学技術とかデータで再検証ということなんですけど、その中で、判決の中で、内部被曝の影響っていうものを考慮するべきだということを、地方裁判所も支持しているんですけど、その内部被曝については、市長、やっぱり今後の再検討の中で考慮すべきというお考えでいらっしゃいますか。
市長
繰り返しますけども、今申されたのは、科学的知見で因果関係を明確にしなければ救済しないという立場での話ですから、それを超えた判断というものをやるという方向を打ち出していただけないかと申し上げているんです。年間通じて放射能が一定量なければ、自然界の放射能もあるんだから、相当なければ因果関係を証明できないとかいうことを言われていますよね。だから、そういった部分、否定もできないんですけども、ただここまで被爆しながらやってこられた方々への支援というものを、どういった形でやるかという、そういう考え方をすれば、もう少し視点が変わるんですよね。先ほど申し上げた救済措置の他の方々との因果関係、バランスの中で放射能被害ということを特定して、それによってのみ救うという決断をしたんだから、その因果関係を証明しないと絶対救わないですよと。それを確認する手続きをかまさないと救わないですよというふうな今の仕立てが、こういう問題を起こしているわけですから、そこの考え方を政治決断で突破していただきたいと申し上げているということを理解してください。
記者
分かりました。
記者
今後、検証を行っていくということですけれども、まだどういった内容になるかは明らかではないですけれども、原告、今回、全員を救済というか、科学的なところで検証したら、距離とかそういうのによって切り捨てられてしまう原告の方が出てきてしまうのではないかと思うんですけども、市としては、今回、勝訴した原告は全員、認める範囲での距離の拡大を求めるんでしょうか。最低限、どこまでのラインで拡大していくことを求められますか。
市長
何度も申し上げて恐縮ですけども、今の救済制度を前提に救済してくれということを言っているんではなくて、そういった今の因果関係をどうするかという、今の制度にとらわれての御質問なんですよ。そういったものを超えて救済するということはできないでしょうかという問いかけをしているということを分かっていただきたいんですけど。物事を、救済措置を考えたときに、こういう基準、こういう資格がなければ、救済をしないといけないとやりますでしょう。そのときに原爆に遭った、あるいは黒い雨を経験したという中で、その方が現にそういったその原爆症に該当する病状などで苦しんでおられれば、そういった方々を救うというふうな措置ができないだろうかということを申し上げている。境界線うんぬんじゃなくて、救うという方法を考えていただきたい。少なくとも今、「黒い雨降雨地域」を拡大していくという中でいけば、門前払いをしている方々を救済する道が開けるでしょう。
記者
最新の科学技術という点が。
市長
そこは科学技術。私自身は科学技術というよりか政治判断をしていただきたいと。科学技術に頼るんではなくてということを申し上げたいということを言っているんです。
記者
ただその厚労省側は科学技術というのを盾にとって、検証するといっても、最悪、空手形のような形になる可能性も否定はできない。
市長
ありますね。向こうが判断するんです。私が判断するわけじゃないんで、どうしたってこちらの考え方を伝えるときに、今申し上げた考え方でお願いすると申し上げたんです。
分かりますか。私、制度を作るわけじゃないんで、だから今の制度とは違った立場で検証してくださいということを申し続けるということを申し上げたいんです。そこを分かっていただきたいです。
記者
政治解決で今回の協議も、言ったら、こういう形になったわけでして、政治解決してください。もう皆さんの苦労をというのが、どこまで受け止めてもらえるかな。
市長
そうですよね。全くおっしゃるとおりです。それがこれからの問題ですよね。スピード感を持って、拡大も視野に入れて検証するということですから、拡大方向でやっていくと。そのときには、今ある科学的知見うんぬんというときには、因果関係みたいなことを証明する術という。それにとらわれていますから、実際に黒い雨を経験し、被爆した方々を救うという考え方でやれば、もう少し援護方法が変わるんじゃないでしょうかという立場でお願いをすると申し上げているんです。
記者
国への信頼に懸けるという。
市長
そうですね。実際に判定権限は法律を通して、援護制度も今、国会を通して作っているわけですから、市が作ったわけじゃありません。だから制度そのものについての問いかけをしたいということを申し上げているんです。
記者
国はやっぱり、科学論争的な話にすごく引っ張られていて、市長がおっしゃっているのは、被爆者援護法の趣旨に立ち返ろうっていうふうな提言だと思うんですけれども、市長として、この黒い雨被爆者に対する目指す援護の最終的な目標っていうところは、どういうところになるんでしょうか。
市長
実際、黒い雨を浴びたり、放射能浴びて、今生きている方が、放射能に由来するような病理現象が起こっているのは大変ですよね。今までだって苦労されてきた可能性が高いわけですから、そういった方々を救うという方法を講ずるということが、あってもいいんじゃないかと思うんですね。
先ほど申し上げましたように、平均年齢83歳で毎年のように5,000人ぐらい亡くなっておられるわけです。これから増えることはないんですよ。ここまで生きてこられたこと、そしてこういった方々が、世界に向けて自分のこの悲惨な思いを超えて、世界中に原爆を作らない、なくそうと。そして、皆が幸せになるということを、意義代表で言っておられるわけですよ。そういったことについての感謝の意も込めて、そういう制度があっていいんじゃないかと。そのための財源捻出を多くの国民が駄目だと言う状況じゃないんじゃないかと。先ほど申し上げたコロナウイルスだって、大変だとなれば、国がどんと予算を措置できるという、そういう今、状況にあるわけですよ。どうでしょうか、そういった意味では、まさに政治判断をされる、あるいはそういうことができる政府ですから、そういったことでやってもらいたいということを言い続けるということであります。
記者
ただやっぱり、原告84人の方が手帳が交付されますよっていうことが認められた判決だったので、すごくそれに期待を寄せていらっしゃる原告も、黒い雨被爆者もいらっしゃると思うので、やはり市長としては、その手帳の交付を目指して、これからも交渉を続けてほしいっていうのが現場の思いだと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
市長
第一義的にはおっしゃるとおりです、まずは。そして、訴訟で勝った人だけしか出さないっていうことになると、もっとそれ以外の方たくさんおられるわけですよ、先ほど言ったように。何千、何万の単位で請求でもおられるわけでありますから、そういった方々の道も開いとかないと、そちらずっと後倒しになって、たまさか、訴訟でやったからというのでは、今申し上げた援護措置の本来の望ましい姿から遠い中で、暫定救済みたいなものでしょうから、どうかということ。そして、そういった手続きをすることそのものが、今後の対応についてのトラブルを起こしかねないわけですよね。市とすれば新規に来た方々、また受け付けないということ、同じ当事者がやらなきゃいけないんですよ。あの方よかったけど、あなた方は訴訟に入ってなかったから駄目ですよっていうようなことをやるって、窓口は大変だと思うんです。そんなこともありまして。
記者
まだ答えが出てないところなのかもしれないですけれども、原告と原告になれなかった方も含めて、究極的には手帳を交付したいという目標でされているのか、その点については。
市長
それは先ほども申し上げたように、そういう被害に遭った方への救済措置というものを、現行制度では手帳に象徴をされますけれども、何らかの支援をするというそういったことにしていただきたいと思います。
記者
分かりました。ありがとうございます。
記者
5年近くにわたって、訴訟の場で、思いは一にして、ただ統治システムの関係で相対する形で法廷で対峙されてきた原告の皆さんがおられます。控訴審に続くというふうになったわけですけども、ひと言、原告の皆さんには今、市長何かおっしゃるとすれば、どういう言葉になりますでしょうか。
市長
せっかく訴訟で勝訴を勝ち取った原告の方々のお気持ちを思うと、本当につらい思いはあるんですけれども、今申し上げましたように多くの方々をきちっと救うというか、援護の手を差し伸べるという検討の余地ありということを、今の大臣のお言葉から聞き、国としてもそういう方向に舵を切ったと8年ぶりですけれども。ということに期待をつないで、申し訳ないけど、皆でもう少し頑張っていただく。その代わり、その結論を出す期間をうんと短く、スピード感持ってということをやる中で、もうひと頑張りしていただく。申し訳ないけども、やっていただけないかというふうな思いです。
※( ) は注釈を加えたものです。