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2019年4月17日平和首長会議の取組に係る説明会
動画は下記からご覧ください。
(「広島市動画チャンネル(原爆・平和)」のページへジャンプします)<外部リンク>
平和首長会議の取り組みに係る説明会会議録
説明案件
平和首長会議による世界の市民社会への働き掛けについて
市長
今日ここで、こういう説明会を開催いたしますのは、先の市長選挙の際に、いろいろな御意見がありまして、その中で市長として、「平和の発信」は十分ではなく、もっとしっかりとしたものにすべきであるというふうな御指摘があるというようなことがありました。そこで、私自身、今日はどういった発想のもとで「平和の発信」をしようとしているのかということについて、少し詳しく説明させていただくと、それを聞いていただくという場として、これを設けたところであります。
私の発想といいますか、考え方は、被爆地ヒロシマが、被爆直後から今日までそうでありましたように、これから先も、いつまでも平和の象徴であり続けるようにするということ、そのことが市長としての責務であるというふうに受止めています。そのために、被爆者の体験、あるいは、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の思い、こういったものが、広く市民社会に共有されるようにするということが重要であるというふうにまず考えています。そして、そうした考え方のもとで、毎年、発信し続けているのが「平和宣言」というふうに整理できると思います。そして、その平和宣言の礎、ベースとなりますものが、被爆の実相でありますから、同時にその被爆の実相を「守り、広め、伝える」ための努力も同時進行であると、こんな整理をしております。
そして次に、平和宣言に込めたその思いを共有する市民社会が、その思いを実現していくためには、どうしたらいいかというふうに考えたときに、いわゆる市民の安心でかつ安全な生活を守る責任を担っているであろう首長が一致団結した取組を行うようにしてはどうかというのが次の対応になると考えています。そこで、首長によって構成されています、超党派の組織である平和首長会議の存在と、その活動が重要になると、このような整理をしているわけであります。ある意味で市長というそのものの立場と平和首長会議というもの、その会長という立場でそういったものをうまく整理しながら、この問題に取り組むというふうにしたいと考えているわけであります。
そこで、この度は、英語版を作っていたのですけれども、昨日、日本語字幕版の平和首長会議のプロモーションビデオを公開いたしました。これを御覧いただいて、それから後で少し解説を加えようと思います。
このプロモーションビデオは、国内加盟自治体の皆さんに、世界の9つのリーダー都市が実践している取組を御紹介して、それを知っていただいて、できれば、自分たちの平和活動といったものをより活発に、あるいは、深化させていただくということをお願いする際のベースにするといいますか、参考にしてもらうというような意味合いもあります。
ビデオの内容の解説については、お手元に資料をお配りしていますので、それを見ながらこのビデオを御覧いただきたいというふうに思います。
視聴
市長
はい、ありがとうございました。今のビデオで御覧いただいた平和首長会議、海外においては、現在23都市が各国のリーダー都市という推進役になってもらっています。そのうちの9都市ということでありますけども。そういう意味で、海外での加盟都市約6,000都市ありまして、目標を2つ掲げています。「核兵器のない世界の実現」、それから、「安全で活力のある都市の実現」。この2つを目標に協働の取組を広げてきています。また、同時に、世界で1万都市加盟、こういった目標も立てておりまして、核保有国をはじめとして、各国の加盟都市の拡大に取り組んできているところであります。
ちなみに、今回御覧いただいたプロモーションビデオの英語版は先月末に作成いたしまして、Youtube(ユーチューブ)で公開するとともに、平和首長会議のウェブサイトやフェイスブックでも紹介しているところであります。
次に、国内に関しましては、全市区町村の99.5%と、ほぼすべての自治体が平和首長会議に加盟するに至っております。こういったことから、各自治体における平和の取組の活発化、これをやることによって、国内の核兵器廃絶に向けた世論を一層高めていくということが重要になっていると考えています。
そのために、全加盟自治体における活動の充実へと力点を移していく一環としての対応を今してきているところでありまして、私が東京都特別区等を訪問してトップセールスを行いまして、各自治体の平和の活動を促すとともに、本市でやっております平和学習とセットで、広島への修学旅行を行うといったことを誘致する、そういった取組を始めてきております。
こうした取組は、国内加盟自治体における青少年の広島・長崎派遣であるとか、平和への集いの開催といったことなど、いわゆる平和への活動を活発にしていくためのものというふうな位置付けをしております。
私は、今後とも、国内外で被爆の実相を伝えて、被爆者の思いに共感する方々を増やす、そうすることによって、核兵器のない平和な世界こそが、今後目指すべき姿であるということの認識を、まず世界の市民社会の民意とするということが重要であり、そのために、ヒロシマが平和の象徴であり続けるようにしていきたいと考えています。また、そうすることが、各国の為政者の政策転換というものを促していく環境づくりになりますし、そうしたことをやっていくことが不可欠だという認識であります。
現在、世界の情勢を見ますと、敵対心をあおるようなリーダーが出てきているという国際環境ですから、そういった考え方が、どうなんでしょうかと。むしろ、そういったリーダーが出てる中で、市民社会が、そういったものを乗り越える共通の意識を醸成するようにするということが、重要だと思うんですね。環境を変えていくということを経て、そういった意味で、この取組は、非常に息の長い地道な取組ということになるかも分かりませんけれども、世界の市民社会が、我々人類の住む地球を持続可能なものにするためには、核兵器はいらないんだよという思いを、しっかりと浸透させていき、それが大きな潮流になっていくというふうにすることこそが、私はヒロシマの真の役割だと思っております。
華々しい様相ということも、皆の注目度を集めるために不可欠な面はありますけれども、そのベースをつくるということが広島の本務ではないかというふうな思いでおります。
なお、皆さんのお手元に、平和首長会議のニューズレター3月号の日・英語版、あるいは、4月号の日本語版を配布しております。平和首長会議の事務局による行動計画の重点取組事項に掲げている取組であるとか、加盟都市が行っている取組を紹介するために、毎月発行しております。そして、全加盟都市に送っていると、このような活動をしておりますので、こういった取組をもう少し皆さんの方でも、周知していただけるとありがたいなというふうな思いでいるところであります。以上であります。
記者
市長のおっしゃった中で、広島市長としての立場と平和首長会議の会長としての立場をうまく整理してという表現をされました。時に、これ使い分けてという表現をされているときもあるのではないかと思いますが、そうしなければならない理由は何でしょうか。
市長
これは、最初申し上げましたように、広島という都市の首長、これは原爆投下を受けたこの広島が被爆直後から今日までそうでありましたように、平和の象徴というその市長として揺るぎないものとして発信し続けるために、こんな思いを他の誰にもさせてはならないという思いとか、被爆体験を共有していただくというその目的のためにあるというふうに言い続けたいと思うのですね。それを受止めた後の行動・対応等について、どういったふうにお願いするかというのは、首長同士の連帯を図るというその組織の一員としてお願いをしていくということを申し上げているつもりです。そういう意味で、整理をして役割分担をしているというふうに申し上げているつもりであります。単独ではなくて、多くの市長さんたちと一緒にやるという立場と、市固有の主張をするという立場を整理して、使い分けながらやっていると申し上げているつもりです。
記者
先ほどのDVDにもありましたけど、核兵器禁止条約への加盟を呼びかけたというスペインの都市の例とかも出ていたと思うのですが、今回の市長選でも、例えば平和宣言で国に対して、広島市長として核兵器禁止条約への加盟というか参加を具体的に呼びかけた方がいいのではないかというような意見も出ていたと思うのですが、そこに対するお考えはいかがでしょうか。
市長
まさに、今の御質問に答えたつもりです。そのために、今言っているのです。平和首長会議は、その前の平和の思いを共有していただくための平和宣言という中で、広島の思いを皆さんにしっかり受止めてもらうというものとして位置付けて、今までも70年以上にわたって平和宣言をやってきている、それを揺るぎないものにするということをやった上で、次のそういう思いを受止めた市民社会が実現していくための次の対応はということについては、平和首長会議の会長として多くの自治体と一緒になってやっていきましょうというふうな対応をするように整理をしておりますということです。
記者
要は、あれですか。平和首長会議の会長として、それは広島市長が兼務しているのだと思うのですけれど、核兵器禁止条約への参加を、世界中の各地でいろいろ動くのだと思うのですが、じゃあ、日本としては、広島としては日本政府に対して積極的に呼びかけていくというような。
市長
呼びかけています。先ほど見ていただいたように、平和首長会議として日本国も批准してくださいと、すべきですよということを既に申し上げてきております。
記者
それでは、平和宣言の場で今年、具体的な呼びかけを行われるお考えはありますでしょうか。
市長
平和宣言は、何度も言っていますけど、平和の象徴であり続ける市長として、被爆の体験、被爆者の体験であるとか、こんな思いを他の誰にもさせてはならないというその思いをしっかりと共有していただくというメッセージを発信するものとしてやり続けたいなと思っているということであります。
記者
2点あるんですけれど、最初の質問なんですけれども、このプロモーションビデオを作られてですね、各国への、加盟都市へのこのプロモーションビデオの紹介とかそういった部分はどのようにやってらっしゃるのかっていうのが、まず1点ですね。
先ほど、ユーチューブの方拝見したんですけど、ビューが657っていうまだ数字で、ちょっとまだ少ないかなっていうような印象がありますのでですね、ええ。
市長
そういう意味でですね、こういった取組をしてるっていうことを皆さん方の立場でね、もっと広報していていただけるとどうかと思ってやってるわけであります。
実際に私自身は加盟都市を拡大するということについてはですね、日本に来る要人の方がその足で広島にみえる度に、加盟都市拡大と平和首長会議の取組を御紹介してですね、増やしてくださいっていって、内容は増やしていただくとこういった形で情報提供するということでやってるんですけどもね、ある意味で先ほど、平和宣言っていうのはすごく、著名っていうか、皆さん認識ありますんでね、それプラス平和首長会議としての共感を得た上での次の取組への、いろいろ促しと言いますか、やってるということまでもやっていただけるとトータルでこの広島のですね、取組を広めていただくとか、していただくことでですね、いわば何ていいますか、市民社会における、今のやや暗雲が立ちこめてるような世界情勢の環境を少しでも核兵器のない方向へ向かえるようなものにしていけるんじゃないかと、いかなきゃいけないかなというふうに思ってるということですね。
記者
もう1点質問なんですけど、この今回のビデオから平和首長会議のですね、その理念と各都市が平和へのさまざまな取組を行っていることはよく伝わってくるのですけれども、その一方でこの加盟してる都市同士が連帯して、何と言いますか、一種の各国の為政者に対する平和へのロビー活動的なそういったものっていうものはこれまでありましたでしょうか。
また今後予定があるかどうか教えてください。
市長
ここのところはですね、ノーパルチザンっていう言い方をしてますけども、民意そのものが各国ごとに事情が違いますんでね、複数の市民が特定の国家に対してですね、国家政策をこうしなければというのは、なかなか壁があるような気がするんですよね。
今は例えばロシアの都市の方、カナダ、アメリカ、スペイン、フランス、いろいろありますけども、そうした中で市民ベースでですね、共感できるところを広げるということが、いわゆる一番確実といいますかね、その市民ベースで共通な価値観を持った中で民主主義の国家群でありますからね、為政者を選んでいくときに、その市民の意をしっかりとくんだ方々を選ぶようにするという、そのプロセスをしっかりしたものにするというふうにしたいんですね。だから、一緒にやるときには若者などを通じて、平和意識の醸成、あるいは自国第一主義という言葉に象徴されるように排他的でですね、自分さえよければ良いという考え方が、いかに持続可能な世界を続けようとするときに害悪なものになるかとかですね、そういったことを皆が共通の価値観として持つようにするというところを連帯したいと。
そして、それを例えば分かりやすい、スポーツを通じてやるとか、芸術活動を通じてやるとかですね。そして、それをやるための若者の交流をする中で、個対個の人対人のつながりを深める中でやっていこうというところを平和首長会議、国境を越えてですね、取り組むということはやろうと思ってます。そういった中でおのずとそれぞれの政府に対する問題意識が出てくると。
それと、もうひとつは今言ったことを国家群と言いますか、国全体に対して届けるために、国連の場を通じてやるということをやってますね。これは今の世界190以上を超える国が組織した、いわば地球上で唯一認知された国同士の組織ですかね、その場でこの思いを伝えることで国連という場を通じて、また各国に、この考え方を周知すると。市民社会から国家にと。そして国連というところから、やはり国家に思いを伝えるというふうな対応をするという整理をしております。
記者
今の活動が裾野を広げるというかですね、土壌を作っていって、長期的に見て対応されているということはすごく感じているのですが、ただ一方で、平和首長会議は2020ビジョンを掲げられていると思います。その背景にあるのが、やはり被爆者の方が、高齢化が進む中で一人でも多く残られているときに核兵器のない世界を見せてあげたいというのが、その根底にあったと思うのですけど、2020年までもう来年に迫っているところで、そう意味で、特効性と言うとちょっと言葉では軽いかもしれないのですけれども、やはり、2020年という一つの目標年次に向かって、この1年で何か大きなことをやるではないですけれども、今までの年1回の総会とかではなくて、新しい何かをやる計画とか考えがあれば、ちょっと教えていただければと思います。
市長
まさに、今言われた問題意識が強くあることで、今日のこういった発表もさせていただけるというのが、実は、自分の内心の意図なのですね。2020年という日を決めて核兵器廃絶をやろうという運動を、もちろん市長になる前からやってきている話なのですけども、現実問題として今の社会情勢が、むしろ、それに逆行するかのごとき状況が民主主義国家の中で起こっているというのが、多分多くの方の受止めではないかと思うのですね。そして、都市においても、難民問題・移民問題を中心として、排他的な意識を醸成して、それをリーダーがあおりたててそれぞれの自治体を治めるとか、さらには、国家としての統治をやらんとする機運が起こりかけておりますからね。だからこそ、特定のリーダーうんぬんが選ばれるプロセスがあってここのわけですから、改めて市民社会の意識というものを根底から変えていく取組をもっともっとしっかりやるということで、この2020年を迎えるべきではないかというふうに思うのです。何か象徴的な一事を成せば物事が変わるというものではないのではないかと。もっと根源的なことをしっかりとやっていくことを改めてやっておかないと、非常に危ういという面があるのではないかということを申し上げたいのです。ですから、それをやらないというわけではないのですよ。でも、もっと根源的なことをしっかり、地道だけども真面目に取り上げていくということをぜひやってみようじゃないですかと。そして、それをやっているヒロシマ・ナガサキ、被爆地があるということをもっともっと知らせていただけないかなということです。今年、ハノーバーで理事会がありますし、来年、総会でどういった対応をしていくかということをもう一回改めて議論する機会がやってまいりますけども、私は、今言われるような即効薬と言いますか、改めて何かしっかりしたことをやるべきではないかという御意見が十分あることを承知の上で、そういった取組を追求しますけども、もっとベースとなる、長期にわたるしっかりした取組を、地道かもしれないけどやり続けることこそ、いろいろな問題への解決の基礎になると思っているわけであります。
記者
確認なのですけれども、今言われたことが、先ほどちょっと言われた平和宣言の注目度とかいうこともありましたけれども、そういうことを続けることで、平和首長会議の発信力というか、そういうのも高めていけるというふうにお考えということでよろしいですかね。
市長
高めていきたいと思っています。
記者
2点ほど。1点は、海外と国内、平和首長会議を見て、今日の話を聞いていると海外ではまだ1万都市いっていない。だから加盟都市をもっと増やしたいと。そういうことでビデオも、作っていると。で、国内に目を向けてみればちょっと取組を紹介したいということは、もう少し取組を充実させたいというお考えがあるように思えるんですが、そこの点の確認を1点と、もう一つは、じゃあ取組が、今までの取組について国内についてはですね、どういうふうに感じられているのかなと、率直な感想を。この2点をお願いします。
市長
今言われたとおり、国外に関しましてはもっともっと加盟する都市を増やすということ、まず量的なですね、拡大を目指すということがまずは重要だということで、1万都市増やすということを目標にやろうということを今やってきております。そして国内においては、もうほとんど加盟していただいているということでありますので、じゃあ加盟するだけで足りるということではないですよと。むしろ先ほど申し上げたように、日頃からのですね、こういった問題意識、市民社会として意識を共有するようにするための活動ということをやることが重要だということを、もっともっと加盟している都市に認識してもらいたいと思います。そして、ヒロシマ・ナガサキがメッセージを発信していれば済むということじゃない。ヒロシマ・ナガサキだけの問題ではないということ。日本国全体、あるいは世界全体のですね、市民社会の問題として捉えていただくようにできないかと。「ヒロシマが言っているから頑張ってるね」、「ナガサキが言っているから頑張ってるね」ということじゃないと。これは長崎の市長さんといつも言っているんですけどね。この核兵器廃絶がヒロシマ・ナガサキの問題という受止めをするんではなくて、市民社会全体の問題と受止めていただくようにするための対応をもっともっとやろうと。そういうことで一つは若い方が、青少年あるいはお子たちにそういった問題意識、特に戦争などを経験していない世代がどんどん増えてくるわけでありまして、その問題を、政争の具にするといったことではなくて、もっと自分たちの生活に直結する問題として、考えてもらうような環境づくりをどうしていくかということを問題提起し、そのための具体的な対応をするということ。その点について、皆さん方にもっと評価して、やっていこうじゃないかというふうなメッセージを発信していただければ、各自治体の首長さん方も、そういった方々はおおむね選挙で選ばれる方ですからね。そういったことに市民社会が、注目しているということを発信していただければ、もっと、申し上げたヒロシマ・ナガサキの思いが、通りやすくなるんじゃないかなというふうな思いでおります。
記者
もう1点の方ですが、だから率直に感想としては、今までの国内の方の取組についてはもう少し頑張ってほしいというような…。
市長
はい。やっぱりヒロシマ・ナガサキだけに任せてね、先ほど言われたように、平和宣言をしているから良いじゃないかというんではなくて、平和宣言を超えて自分たちの自治体の問題として、いろいろな生活部門でですね、問題意識を浸透させる。日々の行動の中で自治体ごとに皆が考えていただくようなテーマ設定をしていただけないかなというふうなことなのであります。
記者
ちょっと話を戻して恐縮なのですが、最初の広島市長としての役割と、平和市長会議の会長としての役割というのは分けて考えていると、「被爆の実相を共有して象徴性を持つ」ということと、「行動や訴えの部分」を切り分けているのだと。考え方としては、理解はできたように思うのですけれども、一方で、ひとつよく分からないのが、広島市が具体的な行動をすると、その広島市の象徴性というのは、例えば、それは弱まったり損なわれたりしてしまうものだろうかと、何かちょっと引っ掛かっているのですけれども、そこを、あくまでも切り分けないといけないというのは、その必要性といいますか、象徴性が何らか損なわれるというお考えがあるのでしょうか。
市長
「損なわれる」というふうに言ったつもりはありません。整理をしているというのはですね、こうすることでより効果、効果を高めたいと申し上げたつもりなのです。平和宣言というのは、象徴的な広島市長としての対応で、先ほど申し上げたように、戦後70年続いていますよね。ですから、この市長としての平和宣言がとても大事ですから、これは、もう一回言いますけれど、市民の被爆者の思いを伝えて、皆さんがこのファクトファインディングをして受止めてもらうというものにし続けておきたいというのが、平和宣言なのだと。そして、その受止めをした次の行動などを促すときには、広島市単独ではなくて、長崎市も広島市も加盟している多くの都市が加盟しているその組織体の会長として行為を促すということをしたいと言っているわけです。そして、それで世界との連帯をつなげれば、国家ではない、市民社会全体が多くの社会が、こういうふうに考えているよと平和の思いを受止めた、こういうふうに行動しようと言っているよと、だから為政者はそれをちゃんと受止めるようにしてくれという使い分けをしたいと申し上げました。損なうと言っているつもりはありません。使い分けをしたいと。
記者
その平和首長会議の会長としてのこの広島市という位置付けは、それはやっぱり同時に広島市でもあるというのは、常にお考えにあるということですか。
市長
はい、もちろんです。
記者
先ほどの平和宣言のところの話で、市長は被爆者の思いを共有してもらうための発信の場にしたいというようなことをおっしゃっていましたけれども、ということは、その市長の中で平和宣言という立ち位置が具体的には、例えば、核兵器禁止条約に日本政府が入ってほしいとかというような具体的な要望をするということではなくて、もう少し大きな…。
市長
もっと根源的なところですよね。象徴的に申し上げると、何回も言っているのですけれど、このような思いを、ほかの誰にもさせてはならないという、その思いを、皆さんが「そうだな」と受止めていただけるような、メッセージを発信し続けるものにしておきたいなというのが、私が平和宣言を書き続けるときのスタンスであり、かつ、今までも、そういったものがずっと貫かれているというふうに思っていると申し上げました。
記者
それが、先ほど平和宣言というものが必要で著名なもので、影響力があるということだからこそ、そういうことをおっしゃりたいと。
市長
そして、それを受けて具体的な対応策とすれば、その思いを遂げるためには、国際情勢、さまざまな取組方法はあると思うのです、方法論として。こういう方法が良い、こういう方法が良いとかと方法論の問題になりますでしょ。そのときに、今、都市間で、こういうやり方で、しかも国際社会で核兵器禁止条約を作っていこうというやり方もきていると。一方で、まだまだNPT(核兵器不拡散条約)体制の中で核軍縮不拡散のやり方、ステップバイステップでやろうというふうにやることも核兵器廃絶に向かうというふうに言われているという事実もあるわけです。だから、それについて、どちらが良い悪いではなくて、両方とも核兵器のない世界ですね、こんな思いをさせない世界を目指すときの手法なのですけれど、その中でお互いが喧嘩するのではなくて、よりそれに向かった対応をしていただくように、してほしいというような具体的な動きについては、平和首長会議の会長という立場で多くの都市がそう望んでいるということを踏まえて、しっかりとアピールしたいと申し上げています。そういう意味では、同志を増やそうと。皆が思っているのですよという手続きを踏まえながら、その立場で申し上げているというふうに主張したいと思っているつもりなのです。
※( )は注釈を加えたものです。