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2017年06月19日記者会見「核兵器禁止条約の第2回制定交渉会議への出席等について(帰国報告)外1件」
動画は下記からご覧ください。
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市からの発表案件
- 【核兵器禁止条約の第2回制定交渉会議への出席等について(帰国報告)】
- 【副市長人事について】
<会見録>
市からの発表案件
核兵器禁止条約の第2回制定交渉会議への出席等について(帰国報告)
市長
核兵器禁止条約の第2回制定交渉会議への出席等について報告します。
この度、核兵器禁止条約の第2回制定交渉会議への出席のため、6月13日(火曜日)から6月18日(日曜日)までの6日間の日程で、アメリカ・ニューヨーク市を訪問しました。ポイントはお話ししますが、配付資料を後ほど御覧ください。
会議は6月15日(木曜日)に始まりまして、終了予定は7月7日(金曜日)になっています。
私自身は今回、交渉会議の議論が本格的になされる前にということで、NGO(非政府組織)の最初のスピーカーとして発言する機会を得ることができました。
発言の内容としましては、長年核兵器廃絶を訴えてきた被爆者は、存命のうちに核兵器禁止を見届けたいと強く願っているということをまず前段で紹介しまして、この草案をもとに、新条約が核兵器に関する既存の法的な規制をさらに強化・徹底する禁止条約となるよう、各国政府に建設的でオープンな議論を重ねていただきたい、そして、今会期中に採択されることを切望しているということを述べました。
その上で、新条約の採択後にある課題としては、核兵器を保有している国が行っている核兵器近代化のための費用の投入、これは無駄な投入に思うということですが、この費用投入をやめるようにして、交渉に参加していない国とその傘の下にある国に、条約締結を促していくということが一つあると言いました。
そのため、核兵器に依存することは、現下の安全保障の問題解決には役立たないというだけではなく、人類全体の存続に危機を招くようなものであることを気付かせることが必要であって、条約を締結した国、そして市民社会の諸団体は、核兵器を持っている国とその傘下の国としっかり対話していく中で、そのことを気付かせるようにする必要があるということを言いました。
そして、核保有国は、真に核拡散の防止を願っているのであれば、自らが核軍縮のリーダーシップを発揮すべきだと。ちなみに1963年、部分的核実験禁止条約(締結)があり、1987年には中距離核戦力全廃条約(締結)があったということも思い起こしてもらいたいと申しました。
そして最後、平和首長会議の取組として、約7,400の加盟都市があるこの平和首長会議は幅広い国際世論を起こしていきます。そして、為政者が決然と洞察力を持ち、さらに統率力を発揮できるような環境作りを進めていくことをします。そうすることが紛争を平和的に解決するメカニズムというものを強化して、核のない平和な世界に近づくことになると確信しています。こういったスピーチです。そして、今日からそういったことを始めていきたいといったスピーチをしました。
このスピーチに関して、各国関係者が熱心に聞いてくださったということを感じました。それが終わったときに、多くの方から拍手もいただきましたので、今申し上げたことは充分に伝わったのではないかと思います。
そして、コスタリカのホワイト交渉会議議長やオーストリアのハイノツィ駐ジュネーブ国際機関代表部大使等とお会いしまして、被爆者の思いというものを伝えることもできました。また、平和首長会議として、条約案採択後も、世界中の加盟都市や他の市民社会の団体と協力して、核保有国あるいは核の傘の下にある国、こういった所に向けて条約参加を呼び掛けること、そして世論を形成していくこと、こういった、先ほど申し上げたスピーチで言ったことを確認するということをしました。
その他は、国連の中満(なかみつ)事務次長兼軍縮担当上級代表と面会し、そこで、今年の平和記念式典と平和首長会議総会、これは長崎でありますが、それに出席していただけるというお話をいただきました。国連軍縮部のトップが就任の年に、早々に両被爆地を訪れていただけるということは、被爆者にとって大変嬉しいニュースではないかと伝えておきました。また、今回の交渉会議について率直な意見交換を行ったところ、核兵器を持っている国を取り込むためには、やはり何と言っても対話を重視していくことだと中満上級代表は言われました。これは、平和首長会議としても全く思いを一にするものであり、こういった観点から、今後の国連との連携をさらに深めていく良い機会になったのではないかと感じました。
また、平和首長会議の米国内でのリーダー都市を務めていただいているデモイン市のカウニー市長に尽力いただき、ニューヨーク市のデブラシオ市長との面会ができるようになりました。そこで、デブラシオ市長に、米国内でもとても影響力のある街であり、是非、平和首長会議に加盟いただきたいと要請したところ、都市というものが共通の課題を持って連帯するということは大変重要なことであると考えているが、平和首長会議への加盟ということに関しては、国連における会議の状況等をもう少しよく検討して、少し時間をかけて検討してみる必要があると考えているとの返答でした。そういう意味では、逆に平和首長会議への加盟ということは、国際世論にもいろいろな影響を与えるぐらいの重要なマターとして捉えられていると実感したわけです。現在、米国では210都市が平和首長会議に加盟していますが、私自身はこういった意味でニューヨーク市やワシントンD.C.、アメリカ国内でいろいろな意味で影響力のある都市にも加盟してもらうことをしっかりやることで、平和首長会議の考え方を、いわば市民ベースでしっかり広げていくということができればと思ったわけです。その後、帰りの飛行機でいろいろ考えながら思ったのですが、国連の機関がある都市の首長さん方にも、しっかりと平和首長会議の意義を認識してもらい国連との連携を促進することをやっていただくことが、平和首長会議の考え方を世に広める世論形成の上で結構重要なことだと思ったのが、今回の出張でした。以上です。
記者
今、市長がおっしゃった、国連の機関がある首長さんへの働き掛けというのをもう少し具体的に言うと、どういうものですか。
市長
ニューヨーク(市)があって、後は(スイス・)ジュネーブ(市)や(オーストリア・)ウィーン(市)、その他にも国連の専門機関等(が所在する都市が)あります。そういった都市全てに入っていただき、連携を強化するとか、今、言ったアメリカ(・ニューヨーク市)にもお願いしていますが、核兵器を持っている国の主要な都市、とりわけ首都にあたる都市にもしっかりと言って、この市民ベースの考え方を理解していただくよう働き掛けることは良いことだと思いました。
記者
それは影響力が大きいからということですか。
市長
こういった考え方を認知してもらうことにもなると思います。国家の立場としてはいろいろあるだろうが、究極的に核兵器をなくすという理想についての同意を取り付けることをアピールできる。そして、それをやっていくための「dialogue」、「対話」が重要だということもしっかりと認識し、そして各国の事情なども考慮した上で、この平和首長会議の構成員になるという判断が働くようだということが、ニューヨーク市長の話の中で分かりましたので、時間をかけてでもそういった働き掛けをするということは、市民社会の世論形成のためにプラスになるのではないかと考えました。
記者
世界中に平和首長会議に加盟している都市がありますが、そういう各国の都市と連携しながらという意味ですか。
市長
私自身は、もうすでに2020年までには都市の数を1万都市にしたく、(平和)首長会議理事会でも確認していますが、今回は量の問題と共に質の問題というか、加盟していただく都市の性格などもよく吟味して入っていただくことをやれるか。そういう意味では、この夏に長崎で開く平和首長会議総会などでも、そういったことを皆さんに説明して、取組強化の一つの視点にするのはどうかと思いました。
記者
(条約案についての)議論の中で、一点お聞きしますが、傍聴された中でも、核兵器の使用の威嚇についても、議論があったということが報告書に書いてありますが、使用の威嚇については、別に(条文に)書かなくても良いという話と、あえて核抑止を否定する意味で書くべきだという意見がありますが、市長の御意見はいかがでしょうか。
市長
それは(条約案の)前文の議論、個別の条約審議に入った中での動きが関わっていまして、前文を13パラ(グラフ)くらいに分けて、一個ずつ条約文を検証します。そういった中での話で、私自身は全体の会議の中でごく一部という思いですが、例えば「Draft Convention(条約案)」など、単語の話なのですが、「convention(協定、条約)」という用語が(核兵器の禁止を検証措置等を含めて包括的に定めることを意図した)「Nuclear Weapons Convention(核兵器禁止条約)」というところで使われたりしています。(今回の条約は、禁止を先行させて明確にした上で、検証等の細部は将来詰めるものですので)誤解があったりしてはいけないから、「Draft Treaty(条約案)」として、タイトルから変えていってはどうかという、正に、しっかり禁止項目に焦点をあてて条約をコンパクトにしてから、シンプルに書こうという提案もあったりしました。あるいはそうした中で、もっと重要な議論などは、「核抑止力」、「Nuclear deterrence doctrine」、そういったものにもしっかりと反対する前文にしてはどうかということです。核抑止力という考え方そのものに反対するということなどもしっかりと書くべきとの話もありました。また、(禁止事項として)単に「use of nuclear weapon」、「核の使用」だけではなくて、「threat of use of Nuclear weapon(核兵器の使用の威嚇)」についても禁止すべきだとの議論もありました。(一方で、)「use(使用)」を否定するのだから「threat(威嚇)」は(核兵器が)なくなってしまえば使いようがという意見もありました。会場で私自身、あまりピンと来なかったのですが、(「威嚇」が禁止事項に入ってい)なかったから決定的にどうかという議論でも必ずしもないのかなというのが、そのときの私の感じでした。
記者
もう一点、ホワイト議長との面会の中でも、条約採択後に(核)保有国と(核)非保有国のオープンな議論のための環境作りを支援したいということを伝えたとありますが、具体的には、何かアイデアをお持ちでしょうか。
市長
具体的には、今回の条約作りに関して、条約の個別の条文などで(議論が)あったのですが、できあがる条文作りに、例えば、検証、立証といいますか、検証措置といいますか、核兵器をなくしたときの「検証措置」がどうなっているだとか、そういったものは「future issue(今後の課題)」で、今ここで、がちがち取り上げなくても、まず禁止を明確にするところから「begin(始める)」。これから(条約案採択後も、検証措置等に関する事項についても)引き続き詳細を詰めていくことにして、(まずは条約を)非常に分かりやすく、シンプルなものにしていこうということでまとめ上げたいということで、そのこと自体は、とても良いことではないかと思います。
(ホワイト議長とは、)いろいろな条文の要素をはじめから書き込もうとしすぎることで、かえってこの条約が今後、締結・批准の障害になるということにならないようにという気持ちを込めて良い議論をしましたから、その点は同感だと受け止めてもらったと思っています。禁止条約を実のあるものにしていくためのスタートとして、本当に分かりやすく、簡潔な条約作りということを目指すということでスタートし、それに向けての熱心な議論が始まったという状況だったと思います。
記者
今の質問とも少し重なるのですが、恐らく7月に条約が成立する流れだと思いますが、広島市として成立後に何かしら動きをするというか、(核)保有国に独自に、また、新たに呼び掛けたりなど、その辺りのお考えなどはありますでしょうか。
市長
私自身は、条約ができあがった後の対応ということで、先ほど言ったスピーチの中でも言っていますが、平和首長会議としての取組、できあがった条約の締約国を増やしていくための取組を(平和)首長会議として皆さんにどう呼び掛けていくか。世論の形成、その世論の形成の中身として先ほど申し上げたように核兵器というものが、いわゆる色々な意味での安全保障のツールとして機能しないのではないかと。そのための(核兵器を)維持するための様々な費用は無駄なのではないかと言いつつ、さらに(核)兵器そのものが人類の存続に危険を及ぼすということを多くの方に理解していただいて、現状を少しでも改めるための努力、それに向けての為政者の努力がしやすい環境を市民社会の中で作り上げる、国境を超えてそういったものを作り上げていくために何が有効だろうかと、何が必要だろうかということをしっかり詰めていきたいと思います。具体的には、また後々に考えながら、平和首長会議総会までにもう少し具体的なものを固めていきたいと思います。
副市長人事について
市長
7月3日付けで退職する室田副市長の後任につきましては、総務省と協議を進めた結果、谷史郎氏を副市長として選任することといたしました。谷氏は昭和62年に自治省に採用されて、総務省人事・恩給局参事官、内閣府本府地方分権改革推進室参事官などを歴任した後に、平成27年7月に総務省自治行政局公務員部公務員課長に就任して現在に至っております。また、この間、北九州市財政局長も務めるなど、都市の行政の実務も経験しておられます。
谷氏は豊富な知識と経験を有していて、国とのパイプ役を的確に担える人物であることから、副市長として適任であると判断したものです。今後は選任同意議案を追加提出して、所要の手続を進めたいと考えているところです。以上です。
記者
これで松井市長就任以来4人続けて副市長の一人が総務省出身ということになりますが、総務省出身の方を起用するメリットをお聞かせください。
市長
総務省は、旧自治省系統の方をお願いして来ているわけでありまして、地方行政についてのエキスパート(専門家)を多く抱えている組織であるというのが私の基本認識であるとともに、地方の行政を進める上での所要財源の措置などについて、もちろん各省ごとの補助金ベースや、色々な個別施策の予算措置確保についての知識やノウハウも重要ですが、全体的な最終調整をする、例えば地方交付税や、あるいは地方公務である職員の処遇等に関する知見やノウハウは持っている組織でありまして、そことのしっかりした関係を作っておくということ、それに関する情報をしっかり入手できるということは、我が市政をしっかりしたものにする上で、有効だという判断で今まで総務省の方をお願いしておりまして、今回また引き続き、年齢的には今までよりも少し若い方をということでお願いしたら、その点も叶えていただきました。今期はこの体制でやることで、我が市の市政運営の基盤をしっかりしたものにできると思います。
記者
確認ですが、担当としては室田副市長の担当を引き継がれるのですか。
市長
はい。そのまま引き継ぐようにしたいと考えています。
※( )は注釈を加えたものです。