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市長コラム 忙中有閑 第31回

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核兵器廃絶への歩みを加速させるために

 2020年も残すところあと10日余りとなりました。被爆75年の節目を迎えた今年は、昨年末に、フランシスコ・ローマ教皇をお迎えして国内外から注目を集めていたこともあり、広島から「ヒロシマの心」を世界に向けて発信する絶好の年になると期待していました。
 ところが、新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、本市においても感染者が確認されるようになった3月以降は、フラワーフェスティバルをはじめ多くのイベントが中止に、8月6日の平和記念式典も規模を縮小して開催せざるを得ない状況となり、年初の期待は裏切られてしまいました。そのような中、日に日に増える感染者の治療に忙殺される医療現場、感染拡大を防止するために休業せざるを得ない飲食店をはじめとする各種店舗などにおいて、大変な不安や負担を抱えながらも懸命に取り組んでいただいている関係者の皆様には、頭の下がる思いであり、心から感謝しています。また、市立学校の一斉臨時休業、時差出勤やテレワークなどで、外出もままならず、生活のリズムも変更せざるを得ない中、不便な生活に耐えておられる市民の皆様にも、そのご協力に心から感謝しています。
 そんな中、こうした市民の皆様による未知の脅威へのくじけることなき取り組みが天からの褒美につながったのか、10月24日に、核兵器禁止条約が来年1月22日には発効するという明るいニュースが届きました。同条約の発効は、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の方々の強い思いが結実したものと言えますが、世界に未だ1万3000発を超える核兵器が存在し、その9割を保有する米国とロシアは核軍縮に向けた協議すら停滞させるなど、事態を後退させています。核保有国や核の傘の下にある国は、同条約に反対するのではなく、核兵器はいらないという市民社会の声が多くの人や国を動かし、条約発効に導いたこと、世界恒久平和の実現を願う「ヒロシマの心」が世界の潮流となりつつあることを、しっかりと受け止める必要があるのではないでしょうか。今、世界中の国々は新型コロナウイルスという人類の脅威に対し一丸となった取り組みができているのですから、この条約の実効性を高めるとともに、署名・批准国の一層の拡大を図っていくための取り組みができないはずはありません。このような視点に立つとき、被爆都市である広島の役割はますます重要になっていると考えます。
 来年も、新型コロナウイルス禍の中で、人々の活発な交流を望むことは難しいかもしれませんが、「核兵器はいらない」という市民社会の声が、条約の発効を契機として、世界の潮流からさらに大きなうねりとなって、世界中を席巻するよう着実に歩みを進めるという決意を胸に、新しい年を迎えたいと思います。

市長コラム