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原爆被爆者への対策(請願・陳情・意見書・決議)
原子爆弾による障害者に対する治療援助に関する請願(昭和28年7月)
請願理由
原子爆弾による被害者中、今なお爆発時の熱線による火傷瘢痕を身体各部にとどめ、これがため運動障害を生じ職業能力を阻害されているものを始め、原子爆弾による諸種の身体障害者は広島市関係6、000人、長崎市関係2、900人を推定されているものでありますが、医学的見地よりすれば、現在がこれら障害者の治療に最適の時期とされておりますが、障害者の大部分は治療費の負担に堪えない人々であり、然もこれらに対する治療費は相当多額となり、市財政窮乏の折柄、市費のみによって入院加療せしめることは著しく困難でありますので、原爆障害の特殊性に鑑み、国費による援助救済につき格別のご配慮を賜りますようお願い致す次第であります。
原爆障害者治療費全額国庫負担に関する決議
本市議会は、世界最初の原爆によって障害をうけたる6千名の広島市民が、いまなお何らの国家補償を与えられず放置されており、その悲惨なる実情を見るに堪えず、速やかに安定した生活保護の下に全額国家負担による治療を実施し得るごとく、特別保護法を制定するため、茲に政府当局並びに国会に於いて適切な措置をとられることを要請する。
右決議する。
昭和29年5月25日
広島市議会
原子爆弾被爆者特別措置法制定に関する陳情書(昭和42年9月)
原爆の惨禍は、精神的、肉体的、経済的に市民生活を根底から破壊し、原爆スラム、原爆孤老、原爆小頭症等を生み、被爆者は終生消えることのない放射線障害を内包する生命の不安と焦燥とに今なお脅えつづけていることは、まことに悲惨な現実の姿であります。
政府におかれては、この実情を考慮され若干の被爆者対策を進められてきましたが、被爆者には今なお原爆症に呻吟(しんぎん)し、生活苦に喘ぎ、後遺症や遺伝の恐怖におののいている者が多数存在し、このことは、人道的社会問題として看過し得ざるところであります。(中略)
即ち原爆に起因すると考えられる病気に悩まされている被爆者に対しては、その病勢の進行、悪化を阻止する万全の医療方途を講じ、また一応健康は維持しつつも、正常なる労働力を失い、あるいは常人としての行動、生活力を持続することが出来ない日々を送り、生命の不安を感じつつある被爆者に対しては、安んじて余生を送り得るよう健康管理の強化をはかり、生計維持の困難な被爆者に対しては、その救済措置を実行に移す等、積極的に国家施策を講ずることこそ、衆・参両院の決議の主旨にそうものであると思われます。(中略)
原爆による悲劇は、かっての戦争手段による常識をもってしては到底理解し得ざる全く特異のものであります。この特異の戦災に対し、国として特別の施策が講ぜられることは当然のことで、既存の法律にこだわって援護措置を遅延せしむることは、もはや許されないことでありましょう。
(この陳情書には、次の項目を根幹とするような法案の概要が添えられた。)
- 医療制度の充実強化
- 健康管理、保養、保護等のための施設の充実
- 被爆者に対する強力な援護対策の実施
- 障害補償その他被爆にともなう補償制度の確立
- 放射能医学研究機関の拡充
被爆者援護法制定に関する意見書
広島、長崎に原爆が投下されて、すでに28年余を経過しましたが、全国に存在する34万人の被爆者の多くは今日尚原爆症に苦しみ、生活苦にあえいでおります。
政府は昭和32年原子爆弾被爆者の医療等に関する法律を制定し、若干の被爆者対策が進められてきたところでありますが、被爆者に対する国家補償にもとづく援護法はいまだに制定されていません。歴史上もっとも非人間的な核兵器の犠牲となった被爆者とその遺族の切実な願いと、広島、長崎をくりかえさないという国民の世論にこたえて、核兵器の完全禁止の実現をはかられるとともに、被爆者に対する国の補償責任をあきらかにして、1日も早く次の内容をふくむ被爆者援護法を制定されることを要望いたします。
記
1.国は被爆者に対し無料で充実した健康診断を行なうこと。
1.国は被爆者に対し、無料で療養の給付、更正医療の給付などを行ない、療養手当、介護手当を支給すること。
1.国は被爆者に対し、終身の被爆者年金を支給すること。
1.国は被爆者に対し、障害の程度に応じ十分な障害年金を支給すること。
1.国は被爆者の遺族に対し、遺族年金を支給し、すでに亡くなったすべての被爆者に対し弔慰金を贈ること。
1.国は生活に困窮する被爆者に対し、生活特別手当を支給すること。
1.国は被爆者の子、孫に対しても、保護者又は本人が希望した場合、健康診断、療養の給付、および更正医療の給付を行ない、療養手当、介護手当および障害年金を支給すること。
1.原爆被爆者援護審議会を設置し、その構成に被爆者代表を加えること。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出します。
内閣総理大臣 厚生大臣 あて
昭和49年3月28日
広島市議会議長名
原子爆弾被爆者に対する援護対策の確立についての意見書
原子爆弾被爆者は、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」及び「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律」によって、その健康管理及び福祉の充実が年々図られております。
しかしながら、現行の「原爆二法」による援護対策は、生存被爆者に限られ、福祉面についても、被爆の状況・疾病の状態等により、その一部を救済するにとどまっております。
被爆者及び遺家族は、原子爆弾の特異性により、長年にわたり社会的・医学的・精神的後遺症に苦しみながら、今後も終生悩み続けなければならない実情にあります。
ことに被爆者の高齢化が一段と進むなかで、ひとり暮らしや寝たきり等要介護者が年々増加しているなど、被爆者対策には、緊急に解決を要する多くの問題が残されております。
こうした状況の中で、被爆者援護法の早期制定を望む声が一層高まっており、今回の第116回国会においても「原子爆弾被爆者等援護法案」が参議院で可決されたことは御承知のとおりであります。
つきましては、これらの状況を踏まえ、国家補償の精神に基づく援護法の制定など画期的な被爆者援護対策を確立されるよう強く要望いたします。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出いたします。
内閣総理大臣 厚生大臣 あて
平成元年12月21日
広島市議会議長名
国家補償の精神に基づく被爆者援護法の制定を求める意見書
原子爆弾被爆者は、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」、「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律」によって、健康管理及び福祉の充実が図られてまいりました。
しかし、現行の「原爆二法」による援護対策は生存被爆者に限られ、福祉面についてもその一部を救済するにとどまっています。
来年は被爆50周年を迎えます。これまで国会におかれても数度にわたり、「被爆者援護法」への努力が繰り返されてきましたが、成立をみていません。今年の、広島、長崎両市の平和宣言では、改めて非核と国家補償に基づく被爆者援護法の即時制定を求めました。被爆50周年を前に、全国的にも被爆者援護法制定への気運が高まっています。被爆者の高齢化が進む中で、今、重要なことは、現行二法の改善ではなく、国家補償の精神による被爆者援護法の制定であります。
被爆50周年を前にして、本市議会は、改めて国家補償の精神に基づく被爆者援護法を制定されるよう強く要請いたします。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出いたします。
内閣総理大臣 厚生大臣 自治大臣 あて
平成6年9月2日
広島市議会議長名
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