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広島市日本語教育推進計画
令和2年2月 広島市
計画の趣旨
広島市に在住の外国人市民数は、平成26年(2014年)3月以降、約25%増加し、令和元年(2019年)12月時点で20,351人、総人口の1.7%を占めています。今後も、新設された特定技能外国人の受入れが本格化することなどから、外国人市民の増加は続くものと見込まれます。また、令和元年(2019年)6月には、国や自治体には日本語教育施策を策定し、実行する責務がある旨規定した「日本語教育の推進に関する法律」が成立し、施行されました。
こうした社会的背景のもと、外国人市民を地域社会の一員として受け入れていくため、彼らが生活に必要な日本語能力を身に付けられるよう、日本語教育施策の重要性が高まっています。
このような状況を踏まえ、本市の日本語教育に関する実態調査を行い、その結果をもとに、日本語教室等の関係団体や企業等と連携して日本語教育体制を整備し、具体的な取組を進めていくため、概ね5年間の広島市における日本語教育推進計画を策定しました。
当計画の着実な実施を図り、日本人と外国人が互いに文化的な違いを認め合いながら、安心して快適に暮らせる多文化共生のまちづくりを進めます。
【外国人市民数の推移(各年3月末現在)】
【在留資格別外国人市民数の推移(各年3月末現在)】
施策の柱と取組
1 日本語教育推進のための体制づくり
1-1 総合調整会議(仮称)の設置・運営
広島市と日本語教育機関、企業、大学、NPO、外国人市民代表者等から構成される総合調整会議を設置し、関係者間の意見調整や情報共有を行うとともに、日本語教育の推進や支援方法について協議、助言等を行います。
1-2 日本語教育コーディネーターの配置
日本語教育に関する専門的な知識及び指導経験を持つ日本語教育コーディネーターを配置します。
1-3 企業等との連携体制の構築
外国人就労者への日本語学習の機会提供の重要性について、企業等の理解と協力を得られるよう、日本語教育に関する企業等との連携体制を構築します。
2 日本語学習者のための情報提供
2-1 日本語教室の情報提供の充実
日本語教室の場所及び実施日、活動内容に関する情報を外国人市民のための生活ガイドブックやHPで随時発信するとともに、外国人市民へのリーフレットの配布等により情報提供の充実を図ります。
2-2 ICTを活用した学習方法の情報提供
市ホームページや公益財団法人広島平和文化センターの外国人市民向けポータルサイト「外国人市民のみなさんへ」、Facebook等を通じて、日本語教室の情報や、教室に行く時間がない学習者向けに個人で学べる様々な日本語学習サイトを紹介します。また、外国人市民が働く企業等へもメール等を活用し、日本語学習に関する情報提供を行います。
3 日本語学習機会の充実
3-1 入門レベル日本語講座の実施
ボランティアにとって対応の難易度が高いとされる日本語がほとんどできない外国人市民を対象に、日本語教師の有資格者の指導による入門レベルの日本語講座を実施し、生活に困らない程度の日本語能力の獲得を支援します。
3-2 日本語学習機会の拡充のための方策の検討
日本語教室に通うことが困難な外国人市民が、希望に応じて日本語を学ぶことできるよう、日本語学習機会拡充のための新たな方策を検討します。
3-3 企業等との連携体制の構築(再掲)
外国人就労者への日本語学習の機会提供の重要性について、企業等の理解を深め、協力を得られるよう、日本語教育に関する企業等との連携体制を構築します。
4 日本語教育を担う人材の育成と日本語教室への支援
4-1 日本語教育を担う人材の育成
日本語学習の指導に必要な知識や技能を学ぶ日本語ボランティア入門講座を開催し、地域の日本語教室の担い手を育成します。また、講座受講後、受講者の地域の日本語教室での活動につなげられるよう、フォローアップに努めます。
日本語教室のボランティアのニーズにあったスキルアップ講座を開催し、資質の向上を図ります。
日本語教育に携わることを希望する人のための情報提供を充実します。
4-2 日本語教室への支援
各日本語教室の運営方針と、それに基づく学習内容や指導方法を尊重するとともに、教室運営における負担や課題を解消するための具体的な支援策を検討します。
5 地域社会との連携
5-1 外国人市民と地域住民との相互理解の促進
外国人住民の母国の文化や日本の文化等を紹介するイベント等を開催し、外国人と日本人の交流を充実させるための取組を進めます。
5-2 やさしい日本語の活用
地域住民と外国人市民とのコミュニケーション促進の一助とするため、地域住民の「やさしい日本語」に対する認知、理解を深めるための研修会等を実施します。
計画策定にあたって
計画の期間と対象
本計画の期間は令和2年度から令和6年度までの5年間としますが、国及び県の動向や社会情勢の変化を踏まえ、必要に応じて見直しを行います。
本計画は「生活者としての外国人」である18歳以上の外国人市民の日本語教育を対象とします。
実態調査の実施
外国人市民や日本語教室等の関連団体及び企業を対象に、現状や課題等を把握するためのアンケート調査を実施しました。また、アンケート調査に回答していただいた企業及び日本語教室の一部にヒアリング調査を実施しました。
【実施期間】
アンケート:令和元年9月10日(火)~令和元年10月7日(月)
ヒアリング:令和元年11月16日(土)~令和元年12月14日(土)
調査区分 | アンケート | ヒアリング | ||
---|---|---|---|---|
発送数 | 回収数 | 回収率 | ||
外国人市民 | 1,000人 | 369人 | 36.9% | ー |
企業 | 84社 | 48社 | 57.1% | 10社 |
日本語学校 | 4校 | 4校 | 100.0% | ー |
日本語教師養成機関 | 1校 | 1校 | 100.0% | |
日本語教室 | 19教室 | 17教室 | 89.5% | 8教室(学習者37人) |
実態調査結果
外国人市民
全体の28.7%の人が「現在日本語を学んでいない」状況で、「日本語を学びたい」と思っている。
「仕事」や「病気になったとき」「郵便局・銀行の手続き」の場面で日本語が使えず困ったことが多い。
【外国人市民の日本語学習の状況】
【最近1年で日本語を使えなくて困った経験(上位5位)】
企業
「日本語学習を奨励・実施している(していた)」37.5%のうち、9割近くの企業で社員が日本語を教えている。
「日本語学習を奨励・実施していない」企業は56.3%となっている。ヒアリング調査では、その理由として、決まった日時に外国人を集めることが難しいことや、日本語が話せる人を雇用対象としているためなどが挙げられている。
【企業での日本語学習の状況】 【日本語の学習の実施方法】
【日本語学習を実施していない理由】
ヒアリング調査
- 日本語が上手な人が1人いれば、指示や細かいニュアンスを伝えられる。
- シフト制の場合、特定の開催日や時間に外国人の就労者全員を集めることが難しい。外国人が戦力化するとシフトに入れやすく、より実施日を決めにくい。
- ノウハウがないため、教育に対応できない。
- 単純作業や、身振り手振りで指示できる仕事内容だから、学習の必要性を感じない。
- 雇用の条件が日本語をある程度話せる人のため、話せない人は雇用しない。
日本語教室
学習者の募集は「学習者からの紹介や口コミ」(94.1%)や自治体の広報やホームページ(76.5%)を活用している。
日本語教室の運営では、ボランティアスタッフや教材の不足、学習者が長続きしないことや、運営費用の確保や教室の確保が難しいことが挙げられている。
【学習者の募集方法(上位4位)】
【運営で困ったこと(上位5位)】