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内閣総理大臣 岸田 文雄 様
核兵器禁止条約に関する日本政府の対応について
貴台におかれましては、「核兵器のない世界」の実現に向けて多大なる御尽力をいただき、広島・長崎両市民を代表し、心より敬意を表します。
特に、第10回NPT再検討会議に、総理自らが出席され、長崎を最後の被爆地にしなければならないと宣言し、世界の若者に広島、長崎を訪れてもらうための基金の創設を含む「ヒロシマ・アクション・プラン」を表明されたことに深く感謝申し上げます。
この会議に先立ち開催された核兵器禁止条約第1回締約国会議では、会議の最終成果として、核兵器の脅威を断固として拒否し、廃絶への決意を示す「ウィーン宣言」と、その具体的な手順や行動を定めた「ウィーン行動計画」が採択され、今後につながる価値ある一歩を踏み出しました。その中で、核兵器禁止条約が、NPTと対立するものではなく補完する関係にあることが再確認されました。
この締約国会議には、核の傘の下にありながらオブザーバー参加を決断した国もありました。それらの国は条約に署名・批准できない理由を示した上で、核兵器のない世界の実現というゴールは共有していること、締約国と対話をしていくこと、そして核軍縮のために役割を果たしていくことを率直に述べられ、こうした考えは日本政府の見解と何ら相違はないものと感じたところです。日本政府がその議論に加わることは、被爆者の切なる願いと被爆の実相を踏まえた対応となるだけでなく、核保有国と非核保有国との分断を解消し、核兵器廃絶に向けた議論の共通の基盤を形成するための橋渡し役を果たすことにもなると考えます。
ついては、日本政府におかれましては、唯一の戦争被爆国として一刻も早く核兵器禁止条約に署名・批准することを強く要請するとともに、まずは来年11月開催予定の同条約の第2回締約国会議にオブザーバー参加し、対話による外交努力により核兵器のない世界の実現に向けた推進力となっていただくようお願いいたします。
令和4年(2022年)12月13日
広島市長 松井 一實
長崎市長 田上 富久