《目的》
第1条 この法律は、恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴として、広島市を平和記念都市として建設することを目的とする。
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(解説)
この法律の目的は、広島市を他の戦災都市と同じように単に復興するだけでなく、恒久平和を象徴する平和記念都市として建設していこうというものです。
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《計画及び事業》
第2条 広島平和記念都市を建設する特別都市計画(以下平和記念都市建設計画という。)は、都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第1項に定める都市計画の外、恒久の平和を記念すべき施設その他平和記念都市としてふさわしい文化的施設の計画を含むものとする。
2 広島平和記念都市を建設する特別都市計画事業(以下平和記念都市建設事業という。)は、平和記念都市建設計画を実施するものとする。
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(解説)
道路、公園、下水道など都市の基盤となる公共施設をはじめ、土地の使い方や建物の建て方のルールなど、まちづくりに必要な多くのことがらは、すべての都市に共通して、都市計画法により定められています。
しかし、この都市計画法には、恒久の平和を象徴する平和記念都市にふさわしい計画まで含みきれていません。このため、普通の都市計画のほかに、平和都市にふさわしい文化的施設や「平和を記念する施設」などを含めることができるものとされました。
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戦災後の中島地区
1946(昭和21)年
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現在の中島地区
(記念施設「平和記念公園」)
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《事業の援助》
第3条 国及び地方公共団体の関係諸機関は、平和記念都市建設事業が、第1条の目的にてらし重要な意義をもつことを考え、その事業の促進と完成とにできる限りの援助を与えなければならない。
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(解説)
本法では、恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴として、広島市を平和記念都市として建設するために、関係諸機関はできる限りの援助を、積極的に行わなければならないものとされています。
本法に基づく関係諸機関からの援助の事例は以下のとおりです。
(1)国による平和大橋・西平和大橋の整備
(2)旧日本銀行広島支店の広島市指定重要文化財への指定に伴い、2000(平成12)年7月より、日本銀行から同建物、土地が市に無償貸与されています(将来、国の重要文化財に指定された時点で、日本銀行は本法の適用により、市に譲与する方針を決定しています)
(3)国庫補助金の補助率の引き上げ(1950(昭和25)年度から1955(昭和30)年度)
(4)国庫補助金の別枠配分(1944、1945(昭和19、20)年に他の戦災都市とは別枠で広島市に配分)
これらのうち(1)、(2)については、「広島平和記念都市建設法の関連施設」のコーナーで詳しく紹介しています。
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《特別の助成》
第4条 国は、平和記念都市建設事業の用に供するために必要があると認める場合においては、国有財産法(昭和23年法律第73号)第28条の規定にかかわらず、その事業の執行に要する費用を負担する公共団体に対し、普通財産を譲与することができる。
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(解説)
国が所有している土地などの財産は、通常、国有財産法で地方公共団体が無償で譲り受けることは困難になっていますが、旧軍用地等の普通財産は、本法により、平和記念都市を建設するために国が必要と認めた場合に、譲りうけることができるものとされています。
本法に基づく旧軍用地等の普通財産の譲与事例は以下の表のとおりです。
用 途
別
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施設の内容
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譲与土地面積(u)
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教育施設
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白島・似島・宇品東・吉島の各小学校、
江波・二葉・似島・幟町(一部)の各中学校、基町高等学校
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146,888.26
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水道施設
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広島市水道の牛田町外9町所在の施設
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171,153.39
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厚生施設
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京口門児童公園
金輪島墓地火葬場
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1,513.44
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保健・衛生施設
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市民病院・東清掃事務所
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25,974.91
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合
計
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345,530.00
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注)国有財産の無償譲与は1967(昭和42)年の基町高等学校が最後です。
上の表の一部については、「広島平和記念都市建設法の関連施設」のコーナーでも紹介しています。
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《報告》
第5条 平和記念都市建設事業の執行者は、その事業が速やかに完成するように努め、少なくとも6箇月ごとに、国土交通大臣にその進捗状況を報告しなければならない。
2 内閣総理大臣は、毎年1回国会に対し、平和記念都市建設事業の状況を報告しなければならない。
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(解説)
本法制定後、広島市における都市計画事業はすべて平和記念都市建設事業として行っています。その事業の実績は毎年国会へ報告しており、2012(平成24)年度末までの、街路事業、下水道事業、土地区画整理事業、公園事業を合わせた累計事業費は、約2兆8,080億円に達しています。
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《広島市長の責務》
第6条 広島市の市長は、その住民の協力及び関係諸機関の援助により、広島平和記念都市を完成することについて、不断の活動をしなければならない。
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(解説)
広島市長は、広島市民などの協力により、広島市を平和記念都市として建設することに、たゆまぬ努力をすることが義務付けられています。
本法に基づく住民その他からの援助事例は以下のとおりです。
- 市緑化推進本部において大々的な供木運動が行われた。なかでも、1957、1958(昭和32、33)年の2ヵ年には県内の市町村から合計約6,000本の供木が寄せられた。この供木運動により平和大通りは緑豊かな景観を有する道路となった。
- 1967(昭和42)年、1990(平成2)年の過去2回にわたり、市民からの寄付金により原爆ドームの保存工事を行った。
- 広島市民球場建設費について,法第1条の目的に則し平和記念都市にふさわしいスポーツの殿堂を建設する財源の確保に資する趣旨の市長と建設費寄付者との覚書などにより、地元財界から1956〜1958(昭和31〜33)年度に寄付を受けた。
- 平和記念公園内の公会堂が地元財界により1955(昭和30)年に建設され、寄付を受けた。
- 広島の児童たちのためにという米国ロサンゼルス市南加広島県人会からの寄付金を受け、1952(昭和27)年に児童図書館が建設された。
- 平和都市の建設に役立ててほしいという市民や団体等の寄付金は、これまでも、また現在も多く受けており、世界平和推進のための各種の事業を実施している。
このうち、1.〜3.については、「広島平和記念都市建設法の関連施設」のコーナーで詳しく紹介しています。
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《法律の適用》
第7条 平和記念都市建設計画及び平和記念都市建設事業については、この法律に特別の定がある場合を除く外、都市計画法の適用があるものとする。
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(解説)
通常、都市に必要な道路、公園、下水道などは、都市計画法という法律により計画し、建設するものですが、平和記念都市については、都市計画法及び本法によって計画し、建設するものとされています。
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