広島市障害者差別解消条例(仮称)制定に向けた医療機関聞き取り結果 ○障害者差別解消法施行後、若しくは施行以前からの、障害者への合理的配慮の提供などの取組状況について ・法律等は関係なく、以前から(最初から)障害者には特に丁寧に対応している。医療機関はそれが当たり前ではないか。【複数回答】 ・障害者は手帳を持っている人だけではない。特に高齢者は何らかの機能の衰え(目、耳、下肢、認知症等)があり、配慮が必要である。【複数回答】 ・特に障害者だからということではなく、すべての患者に対してソフト面の取組はちゃんと行っている(従業員は皆自然にできている)し、障害者の皆さんは結構自分で何でもやっている。(できている。) ○実施している合理的配慮の取組の、具体的な内容について ・段差の解消、エレベータの設置、自動ドアの設置、車イスの通行できるスペースの確保、点字表示、障害者用トイレの設置等のバリアフリー化【複数回答】 ・その他ハード面の対応として、スリッパ等に履き替えることなく、全て土足でいけるようにした【複数回答】、貸出用車イスの設置【複数回答】、床にラインを引いて院内の移動等を分りやすくした、電動ベッド(介護柵付)の導入、視覚障害者の指摘を受けて階段の途中で切れていた手すりを繋げた、入口へのインターホンの設置 等 ・主なソフト面の対応として、筆談対応【複数回答】、職員による院内の誘導【複数回答】、従業員研修・勉強会の実施【複数回答】、必要に応じて診察の順番や日時を変えたり、時間外(昼休み含む)に診療をしたり、往診をしたりしている。【複数回答】 ・建物の構造上エレベータが設置できないため、職員が介助して階段を上っている。介助があっても階段を上がるのが難しい人については、往診をしたり、駐車場で診察したりすることもある。 ・診察室に入れない患者については、待合室で診察する。 ・FAXやメールで診察予約をできるようにしている。また、基本的に予約者優先だが、障害により事前予約が難しい人は順番を早めるなどしている。 ・視覚障害の患者について、患者と話をしたうえで、毎回院内の移動ルートや待合室等の席を決めておき、職員がサポートしながらいつも同じ動きができるようにしている。 ・待合室で待つのが苦手な患者さん等には、個室を用意したり、車で待ってもらったり(順番になれば職員が駐車場まで呼びに行く)している。 ・駐車場までの付添いや、必要に応じてトイレ介助等も行うことがある。 ・カルテに障害の状況、必要な支援、診断結果や聞き取った内容、起こったこと等を細かく記載し、何かが起こったりしても、すぐに対応できるようにしている。 ・支援が必要な人はカルテに印をつけ、誰が見てもすぐわかるようにしている。 ・支援が必要な人の電子カルテを開いた際に、その内容が記載された画面が開くようになっている。 ・家族、ケアマネ、民生委員等の他、精神障害の方には精神科医など、支援者を探して繋ぐようにしている。 ・処方箋に患者ごとの注意事項(視野が狭いので注意して説明してください等)を記入し、調剤薬局に対応してもらっている。 ・飲み忘れ等がないように、視覚障害の方には投薬についてしっかりと説明するとともに、家族やケアマネ等支援者がいる場合には、そちらにも細かい指示をしている。 ・自閉症でじっとしていられない患者に痛みを伴う処置をする場合、短時間で済ませる必要があるので、事前に器具等全て準備した上で呼びに行き、すぐ処置を行うといった対応をしている。 ・障害者専門ではないが、コンシェルジュを2名常勤で配置し、患者やその家族の対応を行っている。 ・複数お子さんを連れてこられている場合、患者の付添いの子どもに障害がある場合等、職員が診察中や検査中に子守をしている。 ・行政の啓発のサポートをしている ○障害者差別解消法施行後、患者やその家族等から法律についての問い合わせや、合理的配慮を求める意思の表明等の有無と、その内容及び対応結果 ・特にない、患者は法のことは全然しらない。【複数回答】 ・特に問い合わせや意思の表明等はないが、何度も診察し患者とコミュニケーションをとっていれば、少しずつどんな配慮が必要かわかってくる。個別対応の積み重ねである。 ・法についてではないが、事前に障害等について相談の連絡があってから来院される方が多い。 ・当医院には問い合わせ等はないが、障害者の就労支援等も行っているので、企業に働きかけ等を行っている。 ・障害者差別解消法ではないが、障害のある子どもがいる母親(患者)から、子どもが65歳を越えた途端に介護保険に優先になり、受けていたサービスが使えなくなって困っているという話を聞いた。 ○障害者の診察や検査等の際、困った事案、苦慮した事案(合理的配慮の提供を含む) ・医療機関で合理的配慮を行うことは当たり前のこと(ずっとやってきていること)なので、特に困っているという意識はない。【複数回答】 ・基本的に親等の付添いの方と一緒に来るので(特に知的障害者)、困ることはない。【複数回答】 ・高齢者も認知症だったり、目や耳、足が悪かったりするので、障害者と特に差はない。むしろ高齢者の方が大変である。 ・知的障害者や精神障害者もよく来るが、特に困ることはない。病院とはそういうところ。 ・他の病院で断られた患者がよく来る。(困っているわけではないが、様々な要因で受け入れるのが難しい病院もあるのでは。)【複数回答】 ・以前は苦労した患者も、常連になりお互いにわかっているので問題はない。 ・申し訳ないと逆に気を使われてしまう。逆に叱咤激励される。 ・困っているというわけではないが、健常者と比べて診察に時間がかかる【複数回答】 ※特に聴覚障害。筆談だと3倍ぐらい、手話通訳がいても2倍ぐらいかかる。 ・毎日様々なことに困っている。(その都度個別対応しているが…) ・注射等の処置ができない人は、診断ができないので困る。 ・迷惑行為、過剰な権利意識による理不尽な要求等【複数回答】 上記の例:暴れる、居座る(入院させろと言い、聞くまで動かない。この時は警察を呼んだ。)、ペット(補助犬ではない)を連れて来る、(自分はかわいそうな人間なんだから、支援されるべき人間なんだから)金は払わないが診察しろと言う、(ちょっとでも対応が気に入らないと)障害者をバカにしている・障害者だから適当にあしらっている等クレームを言ってくる、電話での問い合わせ等でも過剰な要求を言ってくる(その際は録音している)、等→こういう場合は診察を断る、または必要に応じて警察を呼ぶ等の対応をしている。【複数回答】 ・車イス用の駐車スペースに健常者の方が停めてしまうが、それを抑制する方法がない。(コーン等を置いても、勝手にどけて停める人もいる。) ・視覚障害者の方から、手すりの長さと段数があっていないと指摘を受けたので、階段に点字ブロックを設置することを検討中だが、逆に高齢者や下肢障害の人が躓いて転んだりしないかという心配もあり、悩んでいる。 ・待合室で、障害者や介助犬の近くは嫌だという他の患者がいた場合の対応 ・お見舞いに来る患者の家族に障害者がいる場合、どこまで対応すべきか。 ・はっきりと障害があるかどうかわからない、疑わしい人は、どこまで配慮すればよいのか。 ・本当に必要なことと、ただのわがままとの違いが難しい。 ・知的障害の方は基本的に家族等と一緒に来られるが、一人暮らしで特に親族等もおられない方が、一人で来ることがたまにある。その場合、こちらの話をきちんと理解されているのかわからないので心配 ・職員が少ないので、診察などで暴れる人の対応は難しい。(どうしても診察が難しい場合は、大学病院等総合病院を紹介している。) ・視覚障害者等、ヘルパーが付き添ってくる場合があるが、時間が決まっている(待ち時間は実費)ので、1時間の点滴ができないなど、ベストな治療ができないことがある。 ・65歳以上は介護保険優先で、点数が余ると有料になり、使いきると無料になることから、障害者の方から実態より要介護度を下げてほしいとお願いされる。また、点数を使いきるために、余分な訪問看護等を使っている人もいる(そういった場合、訪看がボランティアになってしまう)ので、介護保険優先ではなく、障害の制度(ヘルパー、生活援助等基本無料)を65歳以上も使えるようにしてほしい。 ○合理的配慮の提供について、どの程度までなら可能か(どのようなことが過重な負担だと感じるか) ・医療機関なのだから、合理的配慮をするのが当たり前【複数回答】 ・ソフト面の対応は問題ない。 ・障害は個性なので特に意識することはない。 ・ハード面の改善は難しい部分もあるが、ソフト面での改善はその都度対応する。 ・大体のことはマンパワーで何とかなる。(何とかするしかない。) ・今後高齢者もどんどん増えるので、心や時間に余裕を持って、配慮することが当たり前になるのでは。そういった世の中になってほしい。 ・具体的な場面になってみないと分らない。 ○合理的配慮の提供について、最も必要となるもの、また障壁となるものは何か ・時間(健常者に比べて診察に時間がかかる。)、コスト、人員【複数回答】 ・人の気持ち ・障害者の相談にのってくれる人がたくさんいると助かる。(区に一つでは少ない。) ・本人と家族だけでは生きづらい。サポートする人を増やし、地域で支援していく必要がある。 ・様々な団体(医療・福祉、また児童・高齢・障害等)のネットワークづくり。 ・市民への「見える化」。必要な情報の発信(障害者に対して制度や取組の周知等)、情報の共有(いろいろな団体がそれぞれで行っており、横のつながりが少ない。) ・研修会、講習会等の開催や、障害ごとの対応マニュアルがあると良い。 ・障害によっては見た目が恐ろしい人もいる。単純に子どもはそういった人を怖がる。知らないということが結局は差別等に繋がっていくので、啓発が重要 ・しっかりと対価を得て、安定した障害者支援ができる事業者 ・高齢者の場合は、地域包括ケアがありすごく助かっている。同じようなものが障害者にもあれば良い。 ・認知症のサポート制度(東区では小学校まで広げてやっている)が参考になるのでは。【複数回答】 ・意外と今の若い人たちは理解があり、普通に受け入れていると思う。むしろ年配者の方が、障害者に対して差別的な意識がある人が多いように感じる。(患者の付添いの親が、障害者に近づくな、と言っているのを見たことがある。) ・手話、要約筆記を使ってもらえると助かる。(制度を知らない人がいるので、制度の周知をしてほしい。本人に手紙を送るだけではなく、ケアマネ等を通じて勧めてほしい。)※制度を知っていても、プライバシーの問題であえて使わない人もいる。 ・事前(初診時)に障害の有無やどういった配慮がいるか話してもらえると助かる。(周りを気にしたりして、障害があることを言わない人(隠している人)がいるので、そういう人はヘルプマーク・ヘルプカードを携帯する等、事前に障害や必要な配慮等がわかるようにしてもらいたい。) ・事前相談等をしてもらえれば、対応もスムーズにできる。例えば(聴覚の方は)当日、予め相談したいこと等を(本人若しくは付添の方等が)書いてきてもらえると、筆談がスムーズにできる。 ・障害者側も自身のことや法のことをきちんと理解する必要がある。(過剰な要求をしたりしないように。) ・必要以上に優遇しすぎることも問題 ・相談員がどこにいるか分らない、相談窓口がどこかわからない。 ・一旦治療が終わればその人と繋がりが切れてしまい、支援に繋がらない。 ○障害者差別解消法では努力義務となっている合理的配慮の提供について、市の条例で法的義務とした場合、どの様な影響が出ると思うか ・法律や条例があるからといって、今まで普通にやってきていることなので、何かを変えることはない。 ・医療機関は法律等に関係なく、昔からやっている。そもそも障害者が来るところなので、特に法があっても無くても(義務化してもしないでも)関係ないのでは。また、高齢者への配慮も同じでは。 ・義務化して違反者には罰則を与えるといったことを考える前に、差別が起こらないように啓発していくことが重要ではないか。 ・法や規則を整えるだけではだめだと思う。皆が当たり前に合理的な配慮をできる社会にしていく必要がある。 ・良い取組をした事業者に○適マーク(更新性の優良マーク)のようなものを交付する方がいいと思う。 ・行政の対応(できていないこと)について指摘されるのでは。 ・ソフト面については義務化したほうがいい。ハード面については経費がかかるのであれば問題 ・ソフト面の義務化は良いと思うが、ハード面の義務化は難しいのでは?義務化に対応できない事業者は廃業に追い込まれる可能性がある。 ・いきなり義務化するのではなく、例えば平和公園(人の多いところ、観光地等)など地区を区切ってまずは義務化し、モデルケースを作ってはどうか。 ・法的義務にしたらそれを逆手にとられるのではないか。権利意識の高い人もいるので逆効果になる。 ・法的義務にすると、過剰な権利の要求が加速する恐れがあるので、反対である。 ・義務化することは良くない。義務化すれば高いハードルになり、それに縛られてしまって、みんな引いてしまう。ちょっとしたこと、ささやかな事でも合理的配慮の提供になるんだ、というところから始めないと失敗すると思う。 ・皆気にしない(関心がない)と思う。 ・具体的な事例等がないとわからない。 ○障害を理由とする差別の解消に向けた取組を実施するにあたり、行政に期待することは ・(24時間対応の)相談窓口(機関)の設置【複数回答】、啓発活動【複数回答】、研修会等の実施・講師の派遣、マニュアル作り、情報発信や共有の仕組み作り、様々な団体等とのネットワーク作り、ワンストップの制度作り、障害者と関わることのできる場作り、人材育成、現行の支援の継続 ・ハード面ではなく、団体の活動等のソフト面への金銭的援助 ・障害者の支援センター等を整備し、システム化してほしい。 ・ICTやAIを活用して、良いコンテンツ(スマホをかざすと音声案内が流れる等)を作ってほしい。 ・ボランティアや介護支援員のサービス量を増やしてほしい。 ・診察に同伴者(付添人・介助人等)を配置できるようにしてほしい。 ・ヘルプマーク、ヘルプカードをもっと周知してはどうか。 ・医療的ケア児のことも考えてほしい。(受け入れる施設が少ない。) ・我々ともっと連携し、一緒にアイディアを出し合って仕組作り等をしていってほしい。 ・協議会等の場で、いきなりいろんな人が集まって協議するが、結局それでは高いハードルを設定することになってしまうので、もっとシンプルに、簡単なことから始められる協議の場があってもいいのでは。 ・事務的に処理する人、丁寧に説明してくれる人、相談したこと以上の対応をしてくれる人、一生懸命やってはくれるが制度をよくわかってない人等々、知識の差、意識の差で担当によって対応が違う。皆が同じ対応をしてもらえないのは不公平。短いスパンで異動するのもわかるが、広島市としてそういった慣習を見直して、スペシャリストを育成し、配置してほしい。 ・苦情処理(差別に関する専門)の市の窓口を作ってほしい。そしてその相談内容等をフィードバックしてほしい。 ・自分達だけでは気付かないこともあるので、医療機関だけでなく、様々な場面でのケースをホームページ等で公開してほしい。また、その周知もしっかりしてほしい。 ・行政が自らを律し、まずは自分たちがやってノウハウを教えてほしい。そして目標を示して、リーダーシップを発揮して取り組んでほしい。 ・行政の説明はわかりにくいので、とにかくわかりやすくしてほしい。各制度を実施する際は、条件等の説明は事前にきちんとしてほしい。 ・市政全般に言えることだが、窓口がどこかわかりにくい。困りごとをどこに相談すればいいかわからない。ホームページの改善等、わかりやすい情報発信に取り組んでほしい。 ・みんなが協力して地域で支え合うことができる「まち」にしていってほしい。 ・障害者が泣き寝入りするようなことにならないような条例にしてほしい。 ・介護保険優先に対する対応(助成等) ・健常者に比べて診察に時間も手間もかかるが、報酬は同じ。診療報酬加算があってもいいのでは。(国に言うことだが…)【複数回答】