ひろしま市議会だより 第298号別紙
特別委員長報告


 3つの特別委員会は、所管をまたがる事項や重要な事項について調査・研究することを目的として令和元年6月25日に設置され、約2年間、鋭意活動してまいりました。今号では、6月15日の本会議において各委員長から報告のあった、これまでの調査・研究の概要について、主に委員の意見を掲載しています。

大都市税財政・地方創生対策特別委員会

委 員 長
豊島 岩白
副委員長
山内 正晃 定野 和広
委  員
山本 昌宏 山路 英男 宮崎 誠克
西田 浩 渡辺 好造 八條 範彦
中原 洋美 今田 良治 谷口 修
永田 雅紀 沖宗 正明 児玉 光禎
碓井 法明 木島 丘

【調査項目】
1 大都市税財政制度の充実強化
2 地方分権の推進
3 地方創生への取組
4 行政改革と財政健全化の推進
各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 大都市税財政制度の充実強化
(1)指定都市の国の施策および予算に関する提案
▼安定的な国民健康保険制度の運営や子ども医療費助成は国の責任において行うべき。国へ要望しながら、実現まで引き続き自治体としても支援してほしい。
▼今後さまざまな感染症の発生に備えて、保健所機能や衛生研究所の検査体制を充実してほしい。
▼公共交通事業者への支援だけでなく、地域交通への支援も加えた方がいいのではないか。など
(2)大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望
▼指定都市の地方交付税の総額は削減の一途である。コロナ禍により地域経済も回らなくなり、地方の税収も危機的状況になるため、国の責任を果たすよう強く申し入れてほしい。など
(3)主要事業に関する国への要望
▼核兵器禁止条約に批准しない国の方針に問題がある。同条約に批准することを徹底して要望していかなければ広島の立場はない。
▼災害復旧について、復旧しなければならない箇所数を書き込むことが必要ではないか。など
(4)党派別要望に係る広島市個別要望事項
 本市の主要事業に関する国への要望事項の中から以下の項目を選定し各党派に要望を行いました。
▼令和2年度に向けた要望項目
1 保健・医療・福祉サービスの充実
2 道路・交通ネットワークの整備
3 都市再生・都市基盤整備の推進
4 都市災害への対応
5 2020年までの核兵器廃絶に向けた取り組みの推進
6 教育の充実
▼令和3年度に向けた要望項目
1 原爆被爆者援護施策の充実
2 道路・交通ネットワークの整備
3 都市再生・都市基盤の整備
4 防災・減災のまちづくりの推進
5 平和への取り組み
6 教育の充実

2 地方分権の推進
▼少なくとも各局1件ぐらいは要望を上げるようにしてほしい。など

3 地方創生への取組
▼さまざまな市の施策において、個人間、地域間の格差が広がらないようにすることが地方創生の要である。
▼出生率を上げるためには、女性が働きやすい就労環境の整備が必要であり、特に母子世帯への支援策をより一層具体化するとともに、既存の制度を充実しながら、さらに使いやすい制度にしてほしい。
▼女性の働きやすさについては、保育施設の整備などハード面は進められてきているが、職場の中でのパワハラなどといったことは表面化していないので、その辺も考えて取り組んでほしい。
▼若い世代の東京圏や関西圏への転出超過に対応するため、新たなビジネスに対して積極的に支援し、若い方が起業しやすい環境づくりの取り組みも必要である。
▼東京一極集中という課題に対応するに当たって、200万人広島都市圏構想圏内で限られたパイを奪い合って、それで目標を達成したということに陥らないようにしてほしい。
▼広島の拠点性強化に向けたワーキンググループ会議の意見にある、大学生が生き方の見本となる大人と出会える機会をつくる、産学官連携のプラットフォームをつくる、小さいうちから郷土愛を育むといった取り組みを行ってほしい。
▼世界が注目する観光都市圏への挑戦については、目標値が低いため、世界が注目する事業を検討し、高い目標値を掲げて取り組んでほしい。
▼公共交通の満足度を上げるため、市民が望むバスのルート変更や中山間地域の公共交通について、しっかり検討してほしい。
▼公共交通の再編に当たっては、バス便が無くなると小さな集落は歴史を閉じることになる。乗る人が少ないからバス便を廃止することがないように、交通事業者と地域住民の両立を考えてほしい。
▼大学と連携した地域社会の発展に貢献する人材育成事業については、市立大学の取り組みを連携している市町へ報告し、連携できる体制を作ってほしい。など

4 行政改革と財政健全化の推進
(1)行政経営改革推進プラン
▼市民のためになるのであれば、お金を掛けるところには掛けなければならないという、市民の立場に立ったプランにしてほしい。
▼水道事業では、水道管の老朽化を多く抱えているので、これを改善し、市民の生命・財産を守ることを考えてほしい。など
(2)新たな財政運営方針
▼令和2年度から令和5年度までの4年間の財政収支見通しでは、市税収入は伸びるとなっているが、企業の景気の先行きは厳しい見方が強まっている状況である。厳しめに財政運営方針を立てた方がいいのではないか。
▼子どもたちがモラルを持った社会人として成長するよう、子どもたちの健全育成のためにしっかりと予算を使ってほしい。など

 本委員会で調査・研究した項目は、少子高齢化や人口減少により生じるさまざまな課題に的確に対応し、真の分権型社会の実現や地方創生の取り組みを推進していくとともに、新型コロナウイルス感染症の感染防止と社会経済活動維持の両立に向けて取り組んでいく上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取り組みを推進していただくよう、強く要望します。


都市活性化対策特別委員会

委 員 長
太田 憲二
副委員長
碓氷 芳雄 石橋 竜史
委  員
吉瀬 康平 椋木 太一 並川 雄一
平岡 優一 川村 真治 木戸 経康
三宅 正明 馬庭 恭子 母谷 龍典
元田 賢治 中森 辰一 木山 徳和
佐々木 壽吉 藤田 博之 中本 弘

【調査項目】
1 魅力ある都心づくりの推進
 (1)中央公園の在り方を含む旧広島市民球場跡地の活用
 (2)サッカースタジアムの建設と基町地区におけるまちづくりの推進
 (3)広島駅南口広場の再整備等
 (4)都心における土地の高度利用等
2 広島西飛行場跡地の活用
3 総合交通戦略の改定
4 観光の振興
各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 魅力ある都心づくりの推進
(1)中央公園の在り方を含む旧広島市民球場跡地の活用
▼中央公園内の各施設と連携し、協議体を立ち上げて中央公園全体をマネジメントしていくとしているが、市に対応できる組織体制を作り、さまざまな規制緩和など行政として何ができるのか能動的に考える必要があると思うので検討してほしい。
▼中央公園内の施設にはコンセプトが違う施設もあるので全体的な統一感のあるブランドづくりを進めてほしい。
▼サッカースタジアム単体で考えるのではなく、50年先、100年先を見据え、周辺施設のマネジメントも含めて検討してほしい。など
(2)サッカースタジアムの建設と基町地区におけるまちづくりの推進
1 サッカースタジアムの建設
▼良質の芝や観客の快適な観覧、人や物の出入・通路など基本的なサッカースタジアムの機能、また周辺環境と調和のとれた外観、近隣に迷惑を掛けない工事などについて、しっかり検討してほしい。
▼JRやアストラムラインを使って新白島駅の方から歩いてこられる観客が、安全に通行できる歩道の幅かどうかなど、周辺も含めて対応をしてほしい。
▼新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、今までどおりの設計でいいのかどうか、施設の在り方も含めて見直しが要るのではないか。
▼サッカースタジアムの建設によるビル風や騒音、ごみ問題の発生も考えられるので、周辺の環境対策も検討してほしい。
▼狭い敷地で行う工事になるので、安全管理を徹底して、十分な体制で取り組んでほしい。
▼3万人規模を収容できる避難場所として指定するのであれば、それに対応できるだけの体制や設備を検討しなければならない。
▼重慶市との友好の証である渝華園の移設については、重慶市の理解も得ながら、検討する必要がある。
▼地下道からの人の流れもあるはずなので、照明を明るくしたり、開口部を広げるなどの改修について、国土交通省と協議してほしい。など
2 基町地区におけるまちづくりの推進
▼基町第1アパートから第16アパートは、もうすぐ耐用年限を迎えるので、早めに方向性を出さないといけないのではないか。など
(3)広島駅南口広場の再整備等
▼新しいバスエリアは今よりも多くのバスが流入してくる計画であるが、バスの本数や時間などの計算やシミュレーションを行い、交通渋滞をさらに引き起こすことがないようにしてほしい。
▼広島駅南口のタクシー乗り場については、工事中はCブロック横の道路を一方通行にし、仮設乗り場を設置できないか、早急に協議してほしい。
▼比治山線に新たに電停を設置する場所は、道路が2車線から1車線になる可能性が大きいので、交通渋滞が起きないように早めに取り組んでほしい。
▼駅前大橋ルートは的場町と京橋町の間を電車が通ることになるため、両町のまちづくりについても考えてほしい。
▼事業を計画するに当たっては、概算といえどもしっかりとした事業費を出してほしい。など
(4)都心における土地の高度利用等
▼中心市街地に増えている平面駐車場に建物を建ててもらうためには、仕組みを作って、地域の実情を調査する必要があるのではないか。
▼容積率を引き上げれば、古いビルも建て直しやすくなるので、都市再生緊急整備地域の周辺にも適用できるよう見直してほしい。など

2 広島西飛行場跡地の活用
▼多目的スポーツ広場は、日陰になる場所の確保と子育て世帯や高齢者にも配慮した施設としてほしい。など

3 総合交通戦略の改定
▼10年後の交通実態は加速度的に変わってくると思うので、先駆的、統計的に分析している文献なども併せて比較検討しながら、先進的な分析をしてほしい。
▼都心部の交通量はかなり多いため、どう抑制するのかという考え方が基本にないと、今後の交通政策として問題があるので、住民のニーズも把握しながら、きめ細かな公共交通ネットワークの形成に取り組むことが必要ではないか。など

4 観光の振興
▼観光を立て直していくためには、現場の声を聴いて、何をやらないといけないのかをもう一回見直していくべきではないか。
▼新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中で、将来の観光分野をどのように展開していくのか、ゼロベースで考えてみる必要があるのではないか。
▼SNSは経費が掛からない媒体なので、もっと活用し、観光政策として発信力を高めてほしい。
▼中小企業融資の枠について、景気が厳しい中での観光振興の観点から、どういう形であれば観光業の経営を続けていくことができるのかを考えてほしい。など

 本委員会で調査・研究した項目は、高齢化が急速に進展する一方で人口減少にも直面する中、持続的に都市の活力を維持・向上させ、中四国地方の中枢都市にふさわしい都市機能の集積・強化や利便性の高い公共交通ネットワークの構築、観光の振興など、活力や魅力にあふれ、にぎわいのあるまちづくりを進めていく上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取り組みを推進していただくよう、強く要望します。


安心社会づくり対策特別委員会

委 員 長
八軒 幹夫
副委員長
伊藤 昭善 海徳 裕志
委  員
川口 茂博 水野 考 川本 和弘
田中 勝 岡村 和明 石田 祥子
平野 太祐 近松 里子 森畠 秀治
桑田 恭子 大野 耕平 藤井 敏子
竹田 康律 若林 新三 金子 和彦

【調査項目】
1 災害に強いまちづくり
2 高齢者福祉の推進
3 子ども・子育て支援
4 地域コミュニティの活性化
各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 災害に強いまちづくり
▼避難の声掛けは、町内会・自治会を中心に行ってもらう必要があるが、加入率が下がってきていることから、加入促進に向けて関係部局と協力体制を作ってほしい。
▼広島県は土砂災害警戒区域が全国で最も多いことから、土砂災害に特化した教育を行うとともに、小学5、6年生や中学生が地域の防災の担い手となるジュニア防災士という仕組みを取り入れてはどうか。
▼避難所の生活環境について、炊き出しなどに使用する器具等を備蓄したり、小学校の給食施設を有効活用することで、温かい食事が提供できるよう検討するとともに、避難が長期間となる場合には、空調設備の整備に取り組んでほしい。
▼避難行動要支援者を支援するための個別避難計画については、福祉専門職とも連携強化を図りながら、作成を促進してほしい。
▼学生、一人暮らしの高齢者、町内会・自治会未加入者を含めて、誰一人取り残されないよう、防災情報の周知に努めてほしい。など

2 高齢者福祉の推進
▼高齢者地域支え合い事業について、求心力のあるリーダーが存在しない地域の実情を丁寧にリサーチし、関係課が連携して、それぞれの地域に合うようなアドバイスをしてほしい。
▼特別養護老人ホームの整備は、計画どおりに進んでいないので、介護職員の人材確保のための処遇改善と併せて、最重要課題として取り組んでほしい。
▼地域包括ケアシステムの取り組みにおいては、介護する方にも配慮しながら進めてほしい。
▼若年性認知症については、有病者数を把握し、社会から孤立させないための居場所や相談できる場所を増やすなど、対策を進めてほしい。など
※高齢者施策推進プランは、令和3年2月に策定されました。

3 子ども・子育て支援
(1)第2期広島市子ども・子育て支援事業計画の策定
▼児童虐待防止対策は、行政だけではなかなか手の届かないところもあるので、民間やNPOの力も借りながら、相談支援体制の充実を図ってほしい。
▼児童相談所には、医師、保健師、弁護士が既に配置されているが、児童虐待相談・通告の件数は増加傾向にあるので、さらに職員を増員するなど、職員体制の充実を図ってほしい。
▼市民意識調査で、本市を子育てしやすいまちと思わない理由が明らかになっているので、その辺りを重点的に取り組んでほしい。など
※この計画は、令和2年3月に策定されました。
(2)広島市幼児教育・保育ビジョンの策定
▼公立幼稚園においても、3歳児保育や預かり保育を実施するよう検討してほしい。
▼保育士の処遇改善について、とりわけキャリアアップに見合う処遇の改善に努めてほしい。
▼小学校教育との円滑な接続のため、幼稚園や保育園で実施しているアプローチカリキュラムの取り組みを推進してほしい。など
※このビジョンは令和2年3月に、実施方針は令和3年3月に策定されました。
(3)第3次広島市男女共同参画基本計画の策定
▼政策の立案や決定の場に女性を登用していくことについて、市民の中で望む人の割合が増えてきているので、審議会委員や市職員の管理職への女性の登用に向けて、市の組織が一体となって、数値目標を達成できるよう、実効性のある取り組みを進めてほしい。
▼交際相手からの暴力、いわゆるデートDVについては、これまであまり注目されず、相談しにくかったり、情報を入手しにくかったりするので、対策を強化していく必要があるのではないか。
▼民間企業の男性の育児休業取得が進んでいないことについては、業種や職種ごとにさまざまな要因があるので、改めて掘り下げてほしい。
▼第2次の計画に掲げるほとんどの目標が達成できていないので、第3次の計画においては、多くの目標が達成できるよう取り組んでほしい。など
※この計画は、令和3年3月に策定されました。

4 地域コミュニティの活性化
▼小学生に対して、地域防災における共助の重要性や、共助において町内会・自治会が担う役割について、地域の防災リーダーと一緒になって教えてほしい。
▼市民一人一人の役割、地域の役割、行政の役割をはっきり示さないと、地域住民も高齢化している中で、助け合うことはできないのではないか。
▼地域団体を今のままの形で充実させていくのは難しい面もあるので、例えば若い人たちが地域の中の担い手として活動しやすいような仕組みを構築していくことも必要なのではないか。
▼地域団体は統合すべきであり、そのために、有識者・関係者懇談会において、地域団体の役割を整理した上で、検討してほしい。
▼町内会・自治会等実態調査の調査結果については、結果の理由について繰り返し分析し、課題を整理して、今後の方向性に結び付けてほしい。
▼町内会・自治会は任意団体であるものの、地域活動において重要な役割を果たしているということを、市組織の中で周知徹底を図ってほしい。
▼今後開催される有識者・関係者懇談会については、テーマごとに分科会を設置するなど、丁寧に議論してほしい。など

 本委員会で調査・研究した項目は、自然災害が頻発化、激甚化する中、防災力の向上を図ること、高齢者一人一人が、いきいきと暮らせる社会を実現すること、全ての子どもを社会全体で支える、子どもと子育てに優しいまちを実現すること、持続可能な市民主体の地域づくりを進めることなど、今後、市民が安心して社会で暮らせるまちづくりを進める上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取り組みを推進していただくよう、強く要望します。