資料3 広島市障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例 令和2年3月24日 広島市条例第16号 目次 前文 第1章 総則(第1条~第6条) 第2章 障害を理由とする差別の禁止(第7条・第8条) 第3章 障害を理由とする差別を解消するための体制の整備等 第1節 相談体制の整備等(第9条・第10条) 第2節 紛争解決のための体制の整備等(第11条~第14条) 第3節 広島市障害者差別解消調整審議会(第15条) 第4章 障害を理由とする差別の解消を推進するための施策(第16条~第19条) 第5章 雑則(第20条) 附則 都市づくりの最高目標となる都市像として国際平和文化都市を掲げる本市にあっては、全ての市民が、障害の有無にかかわらず、社会のあらゆる分野の活動に自由に参加し、その能力を最大限に発揮するとともに、相互に人格と個性を尊重し、支え合いながら共生していくことが必要である。 しかしながら、障害者は、今なお、障害及び障害者への誤解、偏見その他理解の不足から、日常生活又は社会生活の様々な場面において、不当な差別的取扱いを受け、又は合理的配慮がされないことにより、その自立や社会参加が妨げられている現実がある。 こうした問題を解消するためには、市民一人一人が、障害及び障害者に対する関心と理解を深めることにより、障害者の活動を制限し、社会への参加を妨げている要因を取り除いていく必要がある。 このような認識の下、本市、事業者及び市民が一体となって障害を理由とする差別の解消に取り組み、全ての市民が住み慣れた地域で支え合い、自立しながら、暮らしと生きがい、地域を共に創る「まち」広島の実現を目指し、この条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進に関し、基本理念を定め、本市の責務並びに事業者及び市民の役割を明らかにするとともに、相談及び紛争解決のための体制整備、障害及び障害者に対する関心と理解の促進その他の障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって地域共生社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 ⑴ 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)、難病による障害その他の心身の機能の障害( 以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 ⑵ 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 ⑶ 不当な差別的取扱い 正当な理由なく、障害を理由として、障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすることをいう。 ⑷ 合理的配慮 障害の状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ適切な変更又は調整(当該変更又は調整の実施に伴う負担が過重であるものを除く。)をいう。 ⑸ 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすること又は合理的配慮がされないことをいう。 ⑹ 事業者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。第10条第2項第2号において「法」という。)第2条第7号に規定する事業者のうち、その事業が本市の区域内において行われるもの(規則で定める事業者を除く。)をいう。 (基本理念) 第3条 障害を理由とする差別の解消の推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 ⑴ 全ての障害者は、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 ⑵ 全ての障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 ⑶ 全ての障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 ⑷ 何人も、不当な差別的取扱いにより、障害者の権利利益を侵害してはならないこと。 ⑸ 全ての障害者は、社会的障壁の除去を希望するときは、合理的配慮がされる必要があること。 ⑹ 全ての障害者は、障害があることに加え、性別、年齢その他の複合的な要因により、より困難な状況に置かれているときは、その状況に応じた合理的配慮がされる必要があること。 ⑺ 何人も、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決に当たっては、差別する側と差別される側とを分け、相手方を一方的に非難し、又は相手方に制裁を加えようとしてはならず、お互いの立場を踏まえた当事者間の建設的な対話による相互理解を基本とすること。 ⑻ 何人も、差別の多くが障害及び障害者に対する誤解、偏見その他理解の不足から生じていること並びに誰もが障害を有することとなる可能性があることに鑑み、障害及び障害者に対する関心と理解を深める必要があること。 ⑼ 全ての障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 ⑽ 全ての障害者は、災害時においてその障害の特性に応じた適切な支援がなされる必要があること。 (本市の責務) 第4条 本市は、前条の基本理念にのっとり、障害及び障害者に対する関心と理解の促進その他の障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。 (事業者の役割) 第5条 事業者は、その事業を行うに当たっては、障害及び障害者に対する関心と理解を深めるとともに、障害を理由とする差別の解消に向けた取組を積極的に行い、及び本市が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めることによって、第3条の基本理念の実現に積極的な役割を果たすものとする。 (市民の役割) 第6条 市民は、障害及び障害者に対する関心と理解を深めるとともに、本市が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めることによって、第3条の基本理念の実現に積極的な役割を果たすものとする。 第2章 障害を理由とする差別の禁止 (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 本市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、不当な差別的取扱いにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 (合理的配慮の実施) 第8条 本市は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者又はその家族その他の関係者(以下「障害者等」という。)から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合においては、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、合理的配慮をしなければならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者等から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合においては、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、合理的配慮をするように努めなければならない。 第3章 障害を理由とする差別を解消するための体制の整備等 第1節 相談体制の整備等 (相談体制の整備) 第9条 本市は、障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずることができるよう、必要な体制を整備するものとする。 (相談の実施) 第10条 何人も、本市に対し、障害を理由とする差別に関する相談を行うことができる。 2 本市は、障害を理由とする差別に関する相談を受けたときは、障害を理由とする差別の解消を図るため、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずるものとする。 ⑴ 当該相談に係る障害を理由とする差別の事実の有無の確認 ⑵ 法及びこの条例の趣旨及び内容に関する説明並びに合理的配慮の実施に係る事例その他の情報の提供 ⑶ 当該相談に係る障害を理由とする差別の解消に係る助言及び調整 ⑷ 関係行政機関等への通報その他の措置 ⑸ 前各号に掲げるもののほか、当該相談に係る障害を理由とする差別の解消を図るために必要な措置 第2節 紛争解決のための体制の整備等 (助言又はあっせんの申立て等) 第11条 前条第1項の規定による相談を行った障害者等は、同条第2項の規定による措置が講じられてもなお障害を理由とする差別の解消が見込まれないと認めるときは、市長に対し、当該障害を理由とする差別に関する紛争の解決を図るために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。 2 市長は、前項の規定による助言又はあっせんの申立てがあったときは、当該申立てに係る事案(以下この章において「紛争事案」という。)の事実関係を明確にするための調査を行うものとする。 3 紛争事案の当事者は、正当な理由がある場合を除き、前項の調査に協力しなければならない。 (助言又はあっせん) 第12条 市長は、前条第2項の調査の結果、紛争事案の解決のために必要があると認められるときは、第15条に規定する広島市障害者差別解消調整審議会に助言又はあっせんを行うことについて諮問するものとする。 2 広島市障害者差別解消調整審議会は、前項の規定による諮問を受けた場合において、助言又はあっせんを行う必要があると認めるときは、助言又はあっせんの案を作成し、市長に答申するものとする。 3 市長は、前項の規定による答申があったときは、その趣旨を踏まえ、紛争事案に係る当事者に対し、助言又はあっせんを行うものとする。 (勧告) 第13条 市長は、紛争事案の当事者である事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業者に対して、紛争事案の解決に必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。 ⑴ 正当な理由がなく、第11条第2項の規定による調査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。 ⑵ 第11条第2項の規定による調査を行った場合において、虚偽の説明をし、又は虚偽の資料を提出したとき。 ⑶ 前条第3項の規定による助言又はあっせんを行った場合において、正当な理由がなく、助言又はあっせんの案を受諾せず、又は受諾した助言又はあっせんに従わないとき。 (公表等) 第14条 市長は、前条の勧告を受けた事業者が正当な理由がなくて当該勧告に従わないときは、その旨並びに当該事業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)を公表することができる。 2 市長は、前項の規定により公表しようとするときは、あらかじめ、公表の対象となる事業者にその理由を通知し、規則で定めるところにより、意見を述べる機会を与えなければならない。 第3節 広島市障害者差別解消調整審議会 第15条 紛争事案の解決を図るため、広島市障害者差別解消調整審議会(以下この条において「審議会」という。)を置く。 2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。 ⑴ 第12条第1項の規定による諮問に応じ、紛争事案について調査し、及び審議すること。 ⑵ 前号の規定による審議の結果に基づき、助言又はあっせんの案を作成し、市長に答申すること。 ⑶ 前2号に掲げるもののほか、紛争事案の解決を図るために必要な事務 3 審議会は、委員5人以内をもって組織する。 4 委員は、紛争事案の解決に向けて中立公正な判断をすることができ、かつ、障害者の権利擁護に関し優れた識見を有する者その他市長が適当と認める者のうちから、市長が任命する。 5 委員の任期は、2年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。 6 特別の事項を調査し、又は審議させるため必要があるときは、審議会に臨時委員を置くことができる。 7 審議会の臨時委員は、当該特別の事項に関し十分な知識又は経験を有する者のうちから、市長が任命する。 8 審議会の臨時委員は、当該特別の事項に関する調査又は審議が終了したときは、解任されるものとする。 9 審議会の委員及び臨時委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 10 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 第4章 障害を理由とする差別の解消を推進するための施策 (障害及び障害者に対する関心と理解の促進のための取組) 第16条 本市は、障害及び障害者に対する事業者及び市民の関心と理解を深めるため、次に掲げる事項に取り組むものとする。 ⑴ 障害及び障害者に関する広報その他の啓発活動を行うこと。 ⑵ 障害及び障害者に対する関心と理解を深めるために必要な情報を収集し、整理し、及び提供すること。 ⑶ 障害及び障害者に対する関心と理解を深めるための活動及び交流を促進すること。 ⑷ 障害及び障害者に対する関心と理解を深めるための教育を推進すること。 ⑸ 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項 (情報保障及び意思疎通の支援) 第17条 本市は、障害者が円滑に情報を取得し、及び利用し、その意思を表示し、並びに他人との意思疎通を図ることができるようにするため、手話、点字、文字の表示、分かりやすい表現を用いた表示、絵等を用いた表示その他の障害の特性に応じた意思疎通等の手段による情報の提供を行うとともに、意思疎通に係る支援、当該手段の普及等に関し必要な施策を講ずるものとする。 2 本市は、前項の規定に基づいて手話に関する施策を講ずるに当たっては、手話が独自の文法等を有する言語であるとの認識の下に行わなければならない。 (災害時の支援) 第18条 本市は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、障害の特性に応じた意思疎通等の手段による情報の提供を行うとともに、障害者の安全を確保するために必要な支援及び環境の整備を行うものとする。 (表彰) 第19条 市長は、障害を理由とする差別を解消するための取組に関し、顕著な功績があると認められるものを表彰することができる。 第5章雑則 (委任規定) 第20条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、令和2年10月1日から施行する。 (検討) 2 市長は、この条例の施行後、社会環境の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。