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恵下埋立地(仮称)整備事業に係る環境影響評価書 要約書(その5)

ページ番号:0000013499 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

目次

 第11章調査結果の概要並びに予測及び評価の結果

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7 地下水汚染

7.1 現況調査結果

 地下水の調査は、図7-1に示すとおり、水文地質並びに地下水の現況を把握するため、地下水水質等調査(地下水の水質、地下水溶存イオン成分)、水文地質調査(空中写真判断、地表地質踏査、弾性波探査、ボーリング調査、透水試験)及び地下水流動調査(地下水水位観測)を実施しました。
 弾性波探査はA~D測線、ボーリング調査はBr-1~7の7地点、透水試験はBr-1とBr-2の2地点で行いました。
 地下水水位観測はBr-1~7の7地点、地下水の水質と地下水溶存イオン成分Br-3、Br-6、Br-7の3地点で行いました。

図7-1 地下水調査は、水文地質並びに地下水の現況を把握するため、地下水水質等調査(地下水の水質、地下水溶存イオン成分)、水文地質調査(空中写真判断、地表地質踏査、弾性波探査、ボーリング調査、透水試験)及び地下水流動調査(地下水水位観測)を実施しました

図7-1 地下水調査地点

(1) 地下水水質等調査結果

ア 地下水の水質等

 地下水の水質調査結果は表7-1、表7-2のとおり、夏季調査、冬季調査では、Br-6の鉛とBr-7のふっ素が、環境基準値を超過していました。その他の項目については、環境基準を達成していました。

表7-1 地下水水質調査結果(夏季)

表7-1 地下水の水質調査結果は夏季調査では、Br-6の鉛とBr-7のふっ素が、環境基準値を超過していました。その他の項目については、環境基準を達成していました。

注1)調査日:平成21年(2009年)8月19日、
 2)ND:定量下限値未満
 3)環境基準値超過部分の画像1は、環境基準値超過を示します。

表7-2 地下水水質調査結果(冬季)

表7-2 地下水の水質調査結果は冬季調査では、Br-6の鉛とBr-7のふっ素が、環境基準値を超過していました。その他の項目については、環境基準を達成していました。

注1)調査日:平成22年(2010年)1月21日
 2)ND:定量下限値未満
 3)環境基準値超過部分のイメージの画像1は、環境基準値超過を示します。

イ 追加調査結果

 前項の調査において、Br-6の鉛とBr-7のふっ素が、環境基準値を超過していました。
 採水時に混入したSSが原因と考えられたことから、これを確認するための追加調査として、ろ過しない検液(無ろ過)と、ろ紙5種C(保留粒子径1μm)でろ過した検液(ろ過)とを試料とした調査を行い、結果を比較しました。 

 鉛とふっ素に着目して整理すると、表7-3、表7-4のとおりです。
 比較の結果、Br-6の鉛は、無ろ過では環境基準値を超過しましたが、ろ過では定量下限値未満でした。このことから、Br-6の鉛は採水時に混入したSSに含まれていたものであり、地下水自体には溶け出していないと考えられます。
 一方、Br-7のふっ素は、無ろ過、ろ過ともに環境基準値を超過しました。ふっ素は、自然界に広く分布し、花崗岩等にも含まれています。恵下谷川及び水内川の河川水質調査結果においても、環境基準値未満ですが、ふっ素が検出されていることから、Br-7のふっ素は、花崗岩等に含まれるふっ素が地下水に溶け出した、自然由来のものと考えられます。

表7-3 鉛(ろ過しない検液とろ過した検液の比較)(単位:mg/L)

表7-3 Br-6の鉛は、無ろ過では環境基準値を超過しましたが、ろ過では定量下限値未満でした。このことから、Br-6の鉛は採水時に混入したSSに含まれていたものであり、地下水自体には溶け出していないと考えられます。

注1)環境基準値超過部分のイメージの画像2は、環境基準値超過を示します。
 2)ND:定量下限値未満
 3)ろ過は懸濁物質の影響を把握するため実施しました。
 4)-:未調査を示します。

表7-4 ふっ素(ろ過しない検液とろ過した検液の比較)(単位:mg/L)

表7-4 Br-7のふっ素は、無ろ過、ろ過ともに環境基準値を超過しました。恵下谷川及び水内川の河川水質調査結果においても、環境基準値未満ですが、ふっ素が検出されていることから、Br-7のふっ素は自然由来のものと考えられます。

注1)環境基準値超過部分の画像2は、環境基準値超過を示します。
 2)ND:定量下限値未満
 3)ろ過は懸濁物質の影響を把握するため実施しました。
 4)-:未調査を示します。

ウ 地下水溶存イオン成分

Br-3、Br-6、Br-7の3地点で実施した地下水溶存イオン成分分析の結果より、以下の特徴が確認されました(図7-2参照)。

  • Br-3(上流部)、Br-6(中流部)は、全体の溶存イオン量が少なく、源流部に近い表流水によく見られるタイプです。
  • Br-7(下流部)は、経験的にCa-HCO3型の浅層地下水によく見られるタイプで、カルシウムイオン(Ca2+)や炭酸水素イオン(HCO3-)をやや多く含むため、Br-3(上流部)、Br-6(中流部)とは、ヘキサダイアグラムの形状が異なります。

図7-2 地下水溶存イオン成分は、より上流部に近い地点の地下水ほど溶存イオン量は少なく、相対的に下流部での地下水は溶存イオンが多くなっています。これらのことから、地下水は上流部から下流部に進むにつれてイオン成分を溶かし込み増加させていると考えられます。

図7-2 地下水溶存イオン成分結果図

 以上より、より上流部に近い地点の地下水ほど溶存イオン量は少なく、相対的に下流部での地下水は溶存イオンが多くなっています。これらのことから、地下水は上流部から下流部に進むにつれてイオン成分を溶かし込み増加させていると考えられます。

(2) 水文地質調査結果

ア 空中写真判読及び地表地質踏査(平成18年度(2006年度)調査)

 事業計画地は、標高400~800mの山間地に位置し、北東-南西方向とそれに直交する数条のリニアメントが確認されました。基盤地質は花崗岩類が主体です。既往資料では2km以上離れた谷に活断層の疑いがあるものが記載されていますが、事業計画地及びその周辺では認められませんでした。

図7-3 事業計画地の基盤地質は花崗岩類が主体です。

図7-3 事業計画地の地質図

イ 弾性波探査、ボーリング、透水試験(平成19年度(2007年度)調査)
弾性波探査

 弾性波探査の調査結果によると、尾根部(Br-5)の表層部で弾性波速度が1.5km/s以下の層(マサ、強風化花崗岩)が厚く分布しています。
 また、沢部や平地部(Br-1、Br-2、Br-3、Br-7)では弾性波速度が1.5km/s以下の層はほとんど分布していませんでした。沢底の下は深くなるにつれて弾性波速度が速くなっていることから、強風化花崗岩から弱風化花崗岩へ、さらに未風化花崗岩になるものと想定されます。

図7-4 尾根部(Br-5)の表層部で弾性波速度が1.5km/s以下の層(マサ、強風化花崗岩)が厚く分布しています。沢底の下は深くなるにつれて弾性波速度が速くなっていることから、強風化花崗岩から弱風化花崗岩へ、さらに未風化花崗岩になるものと想定されます。

図7-4 速度分布図(A測線)

 基盤岩は概ね弾性波速度が3.5~5.6km/s(弱風化花崗岩)でした。弾性波速度が2.0~3.4km/sの相対的に遅い部分(強風化~弱風化花崗岩)が局部的に分布しますが、連続性は認められませんでした。

図7-5 基盤岩は概ね弾性波速度が3.5~5.6km/sでした。弾性波速度が2.0~3.4km/sの相対的に遅い部分が局部的に分布しますが、連続性は認められませんでした。

図7-5 基盤速度分布図

ボーリング調査

 ボーリング調査は、事業計画地内の岩石の風化状況等の地質・地盤構造を把握するために行いました。ボーリングの掘削は、造成計画面までの掘削や透水係数1×10-5cm/s以下を5m以上確認するまでとしました。
 調査結果によると、事業計画地の基礎地盤は花崗岩を主体とし、尾根部ではマサ及び強風化花崗岩が厚く分布しています。沢部には礫混じり土の河床堆積物(最大約8.5m)が分布し、その下は弱風化花崗岩の良好な岩盤が主体となっています。

透水試験

 透水試験は、事業計画地の基礎地盤の透水性を把握するために行いました。
 調査結果によると、表層部の河床堆積物や強風化花崗岩は透水係数が5.9×10-2~1.1×10-4(cm/s)と透水性の高い地盤ですが、その下の弱風化花崗岩には、透水係数が1×10-5(cm/s)以下の透水性の低い地盤が5m以上確認され、不透水性地盤とみなされる地盤が存在します。

(3) 地下水位観測

 地下水水位観測結果は、表7-5のとおり、谷底部にあるBr-1、2、3、7の水位差(最高値-最低値)は小さく、尾根部にあるBr-4、5、6の水位差は大きく、季節により変動する傾向がありました。
 また、地下水水位観測結果について、各ボーリング孔の標高と観測された孔内水位の関係を整理すると、図7-6のとおりとなります。
 これらのことから、地下水位は、事業計画地及びその周辺で斜面から谷底方向へ地形なりの分布をしており、流域地形に調和して定常的に上流から下流に向かって流動していると想定されます。

表7-5 地下水水位の最低値・最高値・平均値
地下水位 Br-1 Br-2 Br-3 Br-4 Br-5 Br-6 Br-7
最低値(m) 407.4m 445.9m 477.3m 487.7m 517.7m 432.0m 381.8m
最高値(m) 407.9m 446.7m 477.7m 493.0m 524.4m 440.4m 382.5m
平均値(m) 407.5m 446.1m 477.4m 488.8m 519.7m 434.7m 382.1m
最高値(m)-最低値(m) 0.5m 0.8m 0.4m 5.3m 6.7m 8.4m 0.7m

注)調査期間:平成19年(2009)年11月~平成22年(2010年)7月

図7-6 地下水水位調査地点の標高と地下水位高さの関係は、事業計画地及びその周辺で斜面から谷底方向へ地形なりの分布をしており、流域地形に調和して定常的に上流から下流に向かって流動していると想定されます。

図7-6 地下水水位調査地点の標高と地下水位高さの関係

7.2 予測・評価

地下水汚染の予測手法の概要は、表7-6に示すとおりです。

表7-6 地下水汚染の予測手法の概要

内容

予測事項

予測方法

予測地域

予測時期

存在・供用 廃棄物の埋立て 地下水汚染 水文地質調査、地下水流動調査の結果と事業計画を踏まえた定性予測 事業計画地周辺 埋立期間中

(1) 存在・供用

ア 地下水汚染
予測結果

 予測は、水文地質調査及び地下水流動調査結果をとりまとめ、事業計画を踏まえ定性的に予測しました。

水文地質調査結果及び地下水流動調査結果からの予測

 事業計画地及びその周辺に分布する基盤地質は、中~粗粒黒雲母花崗岩類が主体です。
 事業計画地及びその周辺には、小規模なリニアメントが認められましたが、活断層などの大規模な断層は認められないことから、これらのリニアメントは、断層活動による岩盤のずれによってできた地形によるものではなく、一般的な花崗岩中に見られる節理(規則性のある割目)に沿った浸食による地形であると考えられます。
 弾性波探査の結果、弾性波速度が相対的に遅い地層(強度の弱い地層)が局部的に認められましたが、連続したものではないことから、事業計画地には、地下水の水みちとなるような断層破砕帯はないと考えられます。
 埋立地の底となる部分の基礎地盤は、弱風化花崗岩が主体の十分な強度を有している岩盤であり、深部には透水係数1×10-5cm/s以下の透水性の低い地盤が5m以上確認され、不透水性地層とみなされる地盤が存在します。
 地下水流動調査の結果から、事業計画地の地下水は、上流側から下流方向へ、南北斜面から谷筋方向へ、地形なりに流れていると考えられます。

浸出水が漏出した場合の地下水への影響の予測

 埋立地の底部には表面遮水工として二重遮水シートを敷設し、その上部に浸出水集排水管、下部に地下水集排水管を設置しています。(図7-7、図7-8参照)
 浸出水(埋立地内の廃棄物に触れ、外部に排出される水)は、埋立地内の底部に敷設された表面遮水工(二重遮水シート)によって地中に浸透することなく、遮水シート上に設置された浸出水集排水管により、速やかに浸出水調整池へ導かれ、浸出水処理施設で処理を行った後、公共下水道へ放流します。従って表面遮水工により、浸出水が地下水に混ざらない構造となっています。

図7-7 表面遮水工により、浸出水が地下水に混ざらない構造となっています。

図7-7 表面遮水工のイメージ図(縦断図)

図7-8 表面遮水工は、強度特性に優れ、実績も豊富で信頼性の高い二重遮水シート方式を採用しており、二重のシートが破損し浸出水が漏れ出すことはないと予測されます

図7-8 表面遮水工のイメージ図(横断図)

 表面遮水工は、強度特性に優れ、実績も豊富で信頼性の高い二重遮水シート方式を採用しており、二重のシートが破損し浸出水が漏れ出すことはないと予測されますが、万一、事故等により二重遮水シートが破損した場合には、以下に示す安全対策により、汚染された地下水が下流域の河川や地下へ流出することはないと予測されます。(図7-9参照)

安全対策1:浸出水集排水管

 表面遮水工(二重遮水シート)の上に、浸出水集排水管を葉脈状で密に敷設することにより、万一表面遮水工が破損した場合でもほとんどの浸出水は速やかに浸出水調整池に導かれ、漏れ出す浸出水はわずかとなります。

安全対策2:遮水管理システム

 遮水シートの間に遮水管理システムを設置することにより、遮水シートの損傷位置を早期に発見することができ、迅速な修復を行います。

安全対策3:鉛直遮水工

 遮水工は、埋立底面部に設置する表面遮水工(二重遮水シート)を基本としますが、万一、二重遮水シートが何らかの原因で破損し、浸出水の一部が地中に漏れ出した場合に備えて、これを下流域に流出させないように、最終バリアの機能として貯留堰堤末端部に鉛直遮水工を設置することにより、浸出水を含んだ地下水が下流域へ流出することはありません。

安全対策4:地下水モニタリング設備

 二重遮水シートの下を流れる地下水は、葉脈状に配置された地下水集排水管により集められ、埋立地末端部で一系統に集水します。その地下水は地下水モニタリング設備で電気伝導度や塩化物イオン濃度を常時監視し、防災調整池を経由して河川へ流します。
 万一浸出水が地下水に混入し、電気伝導度や塩化物イオン濃度の上昇等、水質に異常が確認された場合には、排水系統を切り替え、浸出水を含んだ地下水を浸出水調整池へ導入することにより、浸出水を含んだ地下水が下流河川へ流出することはありません。

図7-9 遮水工全体システムの安全対策では、万一、事故等により二重遮水シートが破損した場合には、汚染された地下水が下流域の河川や地下へ流出することはないと予測されます。

図7-9 遮水工全体システムの安全対策

 以上のように、万一、二重遮水シートが事故により破損したとしても、ほとんどの浸出水は浸出水集排水管から速やかに浸出水調整池に導かれ、シート破損部から漏れ出す浸出水はごくわずかと予測されます。
 また、漏れ出した浸出水により地下水が汚染された場合でも、汚染した地下水が岩盤を通り抜けて地中深く浸透し広範囲に拡散することはなく、地形なりに埋立地の末端方向(下流方向)に向かって流れていくと予測されます。
 さらに、貯留堰堤末端部に設置した鉛直遮水工で一系統に集水した地下水は、電気伝導度や塩化物イオン濃度を常時監視している地下水モニタリング設備で排水系統を切り替えて、浸出水調整池へ導入することにより、浸出水を含んだ地下水が下流河川へ流出することはないと予測されます。

環境保全措置

 予測結果より、廃棄物の埋立てに伴う地下水汚染の影響はないと考えられるものの、さらに万全を期すため、遮水シートの破損を未然に防ぐとともに、万一遮水シートが事故により破損した場合の影響を回避することを目的とした環境保全措置の検討を行いました。環境保全措置の検討内容等は表7-7のとおりです。

表7-7 環境保全措置

環境保全措置

環境保全措置の効果

遮水シート敷設部の除根の徹底 遮水シートを敷設する部分の除根を徹底することにより、植物の根によるシートの破損を防止することから、地下水汚染の影響が回避されます。
遮水シート下の地盤の整形 遮水シート施工時に地盤を均すことで、遮水シートへの負荷を減らし破損を防止することから、地下水汚染の影響が回避されます。
遮水シートの適正な施工及び遮水管理システムの検査・確認 遮水シートの接合後、接合部の全てについて、重ね幅、接合幅、水密性について検査を行い、また遮水管理システムの正常動作を確認し、初期不良を防止することから、地下水汚染の影響が回避されます。
遮水シート上の保護砂の設置 良質な砂を使用し、十分な層厚を確保して、遮水シート上に保護砂を敷均すことにより、埋立機械や廃棄物による遮水シートの破損を防止することから、地下水汚染の影響が回避されます。
遮水シートの埋立前点検 遮水シートが確認できる時点では、変形等の異常がないことを定期的に点検し、遮水シートが適正に敷設されていることを確認することにより、地下水汚染の影響が回避されます。
適正な埋立作業の徹底 埋立地底部に突起物を埋め立てないこととし、埋立作業を慎重に行うよう徹底することにより、シートの破損を予防することから、地下水汚染の影響が回避されます。
遮水管理システムの定期的な点検・整備 遮水管理システムについて、定期的にメンテナンスや通電試験等を行うことにより、システムの正常動作を確認することから、地下水汚染の影響が回避されます。
地下水モニタリング設備の定期的な点検・整備 地下水モニタリング設備について、定期的に点検やメンテナンスを行うことにより、設備の機能が適正に維持されていることを確認することから、地下水汚染の影響が回避されます。
評価
回避又は低減に係る評価

本事業の実施にあたっては、環境保全措置として、遮水シート敷設部の除根の徹底、遮水シート下の地盤の整形、遮水シートの適正な施工及び遮水管理システムの検査・確認、遮水シート上の保護砂の設置、遮水シートの埋立前点検、適正な埋立作業の徹底、遮水管理システムの定期的な点検・整備、地下水モニタリング設備の定期的な点検・整備を実施し、地下水汚染の発生を回避する計画としています。このことから、周辺の地下水汚染に対する影響を回避した計画であると評価します。

8 水象

8.1 現況調査結果

 水象の調査は、事業計画地及びその周辺の河川及び地下水の水象の現況を把握するため、「5.水質」で実施した降雨時の河川流量調査結果及び「7.地下水汚染」の地下水汚染調査で実施した地下水水位観測結果を引用しました。

8.2 予測・評価

 水象の予測手法の概要は、表8-1のとおりです。

表8-1 水象の予測手法の概要

内容

予測事項

予測方法

予測地域

予測時期

工事の実施 造成等の施工による一時的な影響 降雨による河川流への影響 現地調査結果及び事業計画を踏まえた定性予測 事業計画地の下流河川 工事期間中における降雨時
掘削工事等による地下水への影響 現地調査結果及び事業計画を踏まえた定性予測 事業計画地周辺 工事期間中
存在・供用 最終処分場の存在 河川流への影響 現地調査結果及び事業計画を踏まえた定性予測 事業計画地の下流河川 工事期間中

(1) 工事の実施

ア 降雨による河川流への影響
予測結果

 工事の実施に伴い事業計画地及びその周辺への雨水が、防災調整池に集水され河川へ排水されることにより周辺河川の流量に与える影響について定性的に行いました。
 予測地点は、「5.水質」で濁水調査を行った調査地点のうち、防災調整池からの排水の影響が最も大きいと考えられる恵下谷川上流(No.1)としました。(図8-1参照)

図8-1 工事の実施に伴い事業計画地及びその周辺への雨水が、防災調整池に集水され河川へ排水されることにより周辺河川の流量に与える影響について定性的に行いました。予測地点は、防災調整池からの排水の影響が最も大きいと考えられる恵下谷川上流としました。
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の1:25,000(地形図)を複製したものです。
(承認番号平22中複第33号)

図8-1 恵下谷川上流(No.1)の集水域

 また、表8-2に示すとおり、対象面積毎の流出係数と降雨量を設定し、工事の実施前と実施中の雨水量を求めました。事業計画地及びその周辺の流出係数は山地としての0.7、事業計画地内の改変区域の流出係数は開発区域としての0.9を用いました。また、降雨量については、「5.水質」において設定した値を用いました。

表8-2 事業計画地及びその周辺の面積と流出係数の設定
項目 対象区域 対象面積
(ha)
流出係数注1) 設定した降雨量注2)
(mm/日)
工事実施前 恵下谷川上流(No.1)の集水域 242ha 0.7 34mm/日
工事実施中 恵下谷川上流(No.1)の集水域
(改変区域以外)
214ha 0.7
事業計画地内の改変区域 28ha 0.9

注1)流出係数は「開発事業に関する技術的指導基準」(2009年4月、広島県)を引用しました。
2)日降雨量は、地域気象測候所(佐伯湯来)の平成19年(2007年)~平成21年(2009年)の3年間のデータを用い、年間に1mm/日以上の雨が降った日の全降雨日数の90%を占める日降雨量を日常的な降雨と設定しました。

 予測結果は、表8-3のとおりです。
 恵下谷川上流(No.1)の雨水量は、工事の実施に伴い、約1,900m3/日程度増加するという予測結果から、増加した雨水量を調整する必要があると考えられます。
 しかし、改変区域の調整を行う防災調整池の容量は、45,500m3を計画していることから、工事の実施中、改変区域からの雨水量が約1,900m3/日増加したとしても、防災調整池への流入量は8,568m3/日であることから、十分に調整することが可能です。

表8-3 工事実施前・実施中の恵下谷川上流(No.1)に集水される雨水量
項目 対象区域 雨水量(m3/日) 工事実施中に増加する集水される雨水量
面積毎 合計
工事の実施前 恵下谷川上流(No.1)の集水域 57,596m3/日 57,596m3/日 約1,900m3/日
(約3.3%の雨水量増加)
工事の実施中 恵下谷川上流(No.1)の集水域の改変区域以外 50,932m3/日 59,500m3/日
事業計画地内の改変区域 8,568m3/日
環境保全措置

 予測結果より、工事期間中の降雨時における、防災調整池からの放流水による周辺河川の河川流に与える影響を回避又は低減することを目的として、表8-4に示す環境保全措置を実施します。

表8-4 環境保全措置

環境保全措置

環境保全措置の効果

防災調整池の定期的な点検・管理 防災調整池の点検・管理を定期的に行うことにより、適正に排水量が調整され、防災調整池から出る雨水量の安定化が図られます。
評価
回避又は低減に係る評価

 本事業の実施にあたっては、環境保全措置を実施し、工事期間中の降雨時における、防災調整池からの放流水による周辺河川の河川流に与える影響を低減する計画としており、工事期間中の降雨時における河川流への影響を回避又は低減した計画であると評価します。

イ 掘削工事等による地下水への影響
予測結果

 工事の実施において、掘削工事等に伴い発生する地下水水位の低下について予測しました。
 予測地点は、図8-2のとおり、改変区域全域としました。

 また、予測に用いた地下水水位は、改変区域内の地下水水位観測孔で平成19年(2007年)9月より月1回観測を行っている地下水水位調査結果を用いました。

図8-2 予測に用いた地下水水位は、改変区域内の地下水水位観測孔で平成19年9月より月1回観測を行っている地下水水位調査結果を用いました。

図8-2 改変区域の平面図

 切土工事により、縦断距離約250mにわたって地下水水位が低下し、この間の最大水位落差は約13mと予測されます。しかしながら、地下水位が低下する範囲(上流部)より下流側の地下水水位は低下しないと予測されました。

図8-3 切土工事により、縦断距離約250mにわたって地下水水位が低下し、この間の最大水位落差は約13mと予測されます。しかしながら、地下水位が低下する範囲より下流側の地下水水位は低下しないと予測されました。

図8-3 現地盤の掘削工事に伴う地下水水位の低下範囲

環境保全措置

 掘削工事等に伴い、一部掘削部での地下水水位は低下しますが、周辺に民家や井戸等がなく、地中下部に不透水性の花崗岩が谷筋に沿って存在することから、埋立地周辺部の地下水位水位への影響は小さいと考えられます。しかし、掘削工事等による地下水水位への影響を回避又は低減することを目的として、表8-5に示す環境保全措置を実施します。

表8-5 環境保全措置

環境保全措置

環境保全措置の効果

現況地形の有効利用 現況地形を有効利用した計画とすることにより、掘削工事区域が減少することから、地下水水位に与える影響範囲が抑制されます。
評価
回避又は低減に係る評価

 本事業の実施にあたっては、環境保全措置を実施し、工事の実施において、掘削工事等に伴う地下水水位への影響を低減する計画としています。
 このことから、掘削工事に伴う地下水への影響を回避又は低減した計画であると評価します。

(2) 存在・供用

ア 河川流への影響
予測結果

 予測は、最終処分場の存在時において埋立区域内に降った雨水は、下流河川に流さず公共下水道へ放流することから、事業計画地周辺の河川流量の減少について定性的に行いました。
 予測地点は、「5.水質」で濁水調査を行った調査地点のうち、防災調整池からの排水の影響が最も大きいと考えられる恵下谷川上流(No.1)としました。(図8-4参照)

図8-4 最終処分場の存在時において埋立区域内に降った雨水は、下流河川に流さず公共下水道へ放流することから、防災調整池からの排水の影響が最も大きいと考えられる恵下谷川上流量の減少について定性的に行いました。
この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の1:25,000(地形図)を複製したものです。
(承認番号平22中複第33号)

図8-4 恵下谷川上流(No.1)の流域面積

 また、表8-6に示すとおり、対象区域毎の流出係数と降雨量を設定し、改変区域以外、改変区域内の埋立区域以外、埋立区域のそれぞれの雨水量を求めました。
 事業計画地及びその周辺の流出係数は0.7、事業計画地内の改変区域の流出係数は0.9と設定しました。また、降雨量については、「5.水質」において設定した値を用いました。

表8-6 事業計画地及びその周辺の面積と流出係数の設定
対象区域 対象面積
(ha)
流出係数注1) 設定した降雨量注2)
(mm/日)
恵下谷川上流(No.1)の流域
(改変区域以外)
214ha
(242ha-28ha)
0.7 34mm/日
改変区域内の埋立区域以外 17ha 0.9
事業計画地内の埋立区域 11ha 0.9

注1)流出係数は「開発事業に関する技術的指導基準」(2009年4月、広島県)を引用しました。
 2)日降雨量は、地域気象測候所(佐伯湯来)の平成19年(2007年)~平成21年(2009年)の3年間のデータを用い、年間に1mm/日以上の雨が降った日の全降雨日数の90%を占める日降雨量を日常的な降雨と設定しました。

 予測結果は、表8-7のとおりです。
 事業計画地の埋立区域の雨水量は、約3,360m3/日であり、恵下谷川上流(No.1)の雨水量と比較を行った結果、約5.7%の雨水量が公共下水道へ導水されると予測されました。
 埋立区域の雨水が浸出水集水施設に集水され公共下水道へ導水されることにより、降雨時の雨水量は、3,366m3/日減少すると予想されましたが、防災調整池の放流方式が自然流下方式であり、防災調整池に集水される雨水量が多少減少したとしても、防災調整池からの排水量が維持されることから、恵下谷川上流(No.1)の河川流量に与える影響は少ないと考えられます。

表8-7 存在・供用時の恵下谷川上流(No.1)の雨水量変化
時期 対象区域 雨水量(m3/日) 存在・供用時の恵下谷川上流
(No.1)に集水される雨水
工事の実施中 恵下谷川上流(No.1)の集水域 59,500mm/日 56,134
(約5.7%の減少)
存在・供用時 改変区域内の埋立区域 3,366mm/日
環境保全措置

 予測結果より、最終処分場の存在時における、河川流への影響を回避又は低減することを目的として、表8-8に示す環境保全措置を実施します。

表8-8 環境保全措置

環境保全措置

環境保全措置の効果

残地森林の適正な管理 残地森林の間伐を行うことにより、残地森林の保水能力が向上し、残地森林からの地下水量の増加及び安定化が図られます。
防災調整池の定期的な点検・管理 防災調整池の点検・管理を定期的に行うことにより、適正に排水量が調整され、防災調整池から出る雨水量の安定化が図られます。
評価
回避又は低減に係る評価

 本事業の実施にあたっては、環境保全措置を実施し、最終処分場の存在時における河川流量の変化の影響を低減する計画としています。
 このことから、河川流への影響を回避又は低減した計画であると評価します。

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関連情報

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第11章調査結果の概要並びに予測及び評価の結果
・7地下水汚染~・8水象(998KB)(PDF文書)

このページに関するお問い合わせ先

環境局 環境保全課 環境管理係
電話:082-504-2097/Fax:082-504-2229
メールアドレス:ka-hozen@city.hiroshima.lg.jp

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