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広島市子ども施策総合計画・第1編 計画の策定に当たって
第1編 計画の策定に当たって
1 計画策定の趣旨
広島市では、平成17年度(2005年度)に、子育て支援施策を総合的に推進するため、「子どもの自立をはぐくみ、子どもの笑顔のみえるまち“ひろしま”の実現」を基本理念として掲げる「広島市新児童育成計画」を策定しました。
この計画に基づいて、妊婦・乳幼児健康診査等母子保健医療体制の充実、発達障害者支援センターの設置など、子どもが健やかに育つための支援を行うとともに、学校教育や地域における体験活動の充実、電子メディアと子どもたちとの健全な関係づくりの推進など、子どもが豊かな子ども時代を過ごせるための取組を進めてきました。また、各区への常設オープンスペース設置の推進、保育園の整備、認定こども園設置の促進、一時預かりや病児・病後児保育等多様な保育サービスの充実、児童虐待防止対策の推進など、子育て家庭に対する様々な支援施策に取り組むとともに、公共施設等のバリアフリー化、「子どもの安全の日」の取組など、安全・安心に過ごせるまちづくりのための取組を進めてきました。
しかしながら、核家族化の進展、地域のつながりの弱体化などにより、家庭や地域の子育て力が低下するとともに、情報機器の普及、有害情報の氾濫、所得格差の拡大など、子どもを巡る環境が大きく変化する中、児童虐待やいじめの増加、子どもが被害者となる犯罪の多発などの子どもの人権にかかわる問題、子どもの貧困の問題が顕在化しています。
また、我が国においては、合計特殊出生率の低下傾向が続いており、平成17年(2005年)には過去最低の1月26日となりました。その後、上昇に転じ、平成20年(2008年)には1.37となりましたが、人口が安定的に維持できる水準を大きく下回っている状況に変わりはなく、本市においても、ほぼ同様の傾向にあります。少子化の背景には、結婚や出産に対する価値観の変化、子育てと仕事が調和する環境整備の遅れ、子育てに対する親の負担感の増大などの問題があります。
これらの問題に対応するためには、子育てを家庭の責任としてきたこれまでの考え方から社会全体で子どもを育てるという考え方へと転換し、すべての子どもとその家庭を支援するための施策を展開していく必要があります。
そのため、平成21年度(2009年度)に「広島市新児童育成計画」の計画期間が満了するに当たり、新たな計画として「広島市子ども施策総合計画」を策定するものです。
2 計画の位置付け
- 「第5次広島市基本計画」の部門計画として位置付けます。
- 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画(保育計画(注1)、保育所における質の向上のためのアクションプログラム(注2)及び母子保健計画(注3)を含む。)として位置付けます。
注1:児童福祉法第56条の8に規定する保育の実施への需要が増大している市町村(前年度(平成21年度(2009年度)の4月1日における待機児童の数が50人以上いる市町村)が策定することとされている保育と子育て支援事業の供給体制の確保に関する計画
注2:「新待機児童ゼロ作戦(平成21年(2009年)2月)」の中で、国及び地方公共団体が策定することとされた保育の質の向上の一層の推進のために取り組む施策に関する総合的なプログラム
注3時21分世紀における母子保健の国民運動計画である「健やか親子21(平成12年(2000年)策定)」の趣旨を踏まえて、母子の健康や生活環境の向上を図るために策定する計画
3 計画の対象
すべての子ども(概ね18歳未満)並びに子どもを育て又は育てようとする家庭、地域住民及び団体、事業者、行政など市内のすべての個人並びに団体を対象とします。
4 計画の期間
平成22年度(2010年度)から平成26年度(2014年度)までの5年間とします。
5 子どもと子育て家庭を取り巻く現況
下記のダウンロードファイルでご覧ください
現況・課題のまとめ
妊娠・出産期
流・早産、未熟児の出生などの要因といわれている妊娠中の女性の喫煙・飲酒が増加しています。また、高齢出産の増加などによる妊娠・出産への不安・ストレスが増加しています。
このため、安心して妊娠・出産し、子どもを健やかに育てるには、保健・医療・福祉の連携による妊娠期からの子どもと母親への支援が必要です。
乳幼児期
核家族化の一層の進行、近隣関係の希薄化などにより、子育て家庭の孤立、育児不安・ストレス・負担感が増加しています。また、親の長時間労働など共働きや就業形態が多様化する中で、睡眠・食事等が乱れている子どもの増加やテレビ、ビデオ等の長時間視聴と幼児の言葉の発達の遅れ等との関連性が指摘されています。
このため、行政・企業・地域が、それぞれ、子育てと仕事の両立支援への取組など地域における子育て力の向上に向け、子育て・親育てへの支援を進める社会づくりが必要です。
また、在宅で生活する障害児の増加や自閉症児等発達障害児への支援、増加傾向にある児童虐待への対応が必要です。
学童期(小学生)、思春期(中高生)
いじめ、暴力、不登校等の問題の深刻化とともに、テレビ、テレビゲーム、インターネット等電子メディアの長時間利用などにより、子どもの体験・交流活動の減少や子ども同士の交友関係の希薄化、出会い系サイト等に絡む青少年の非行・犯罪の増加など、子どもを取り巻く環境が変化してきています。
また、未成年者の喫煙・飲酒の増加や性情報のはん濫、性意識の変化、性や健康に関する知識不足などによる10代の人工妊娠中絶、性感染症り患率が増加しています。
このため、家庭・学校・地域の連携による子どもたちの健やかな育ちや自立への支援、心とからだの両面からの健康づくりや次代の親の育成が必要です。
また、共働き等の増加や身近な場所での犯罪の増加等により、放課後の安心・安全な児童の居場所の確保や地域の防犯活動の取組などが必要です。
年齢期に関わらず継続
離婚等によるひとり親家庭が増加しており、離婚直後の育児や生活等の問題解消のための支援が必要です。
また、子どもに対し時間的・精神的に十分に向き合うことができていない親などの問題が指摘されており、親の子育て力を高めるとともに、企業・職場、学校、地域など社会全体で重層的に支援していく環境づくりが必要です。
さらに、子育て家庭が、安心して生活することができるよう、子育て家庭に配慮した生活環境の整備、安全なまちづくりとともに、すべての子育て家庭が、安心して子育てできる社会に向けて、子どもたちの成長を社会全体で支えることが求められています。
これらのことから、安心して、子どもを生み育てることができる社会の形成に向け、今後の施策の方向性として、未来を担う子どもたちへの支援、すべての子育て家庭への支援、地域社会全体での子育て支援の3つの視点で取り組んでいく必要があります。