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平和記念施設保存・整備方針 第5 平和記念施設保存・整備の基本方針
目次
平和記念施設保存・整備方針 第5 平和記念施設保存・整備の基本方針
1.原爆ドーム保存の基本方針
2.平和記念公園とその周辺の整備・利活用の基本方針
3.平和記念資料館の機能強化等の基本方針
4.平和記念公園周辺の民有地を含む空間整備の基本方針
5.市民や企業との協働
1.原爆ドーム保存の基本方針
(1)保存工事の基本方針
永久保存を究極の目標に置き、次の世紀に理想的な姿で確実に継承するための保存の措置に取り組む。
~原爆ドームの保存のあり方に係る検討の視点~
※以下、緑枠内
に記載
1.現在までの保存に係る方針
(1)文化財保護のスタンス
文化財保護法においては、文化財を保存するための基本的措置として、その現状を変更する行為を制限しており、現状を変更しようとするときは、文化財保護法に基づき、文化庁長官の許可を必要としている。
現状を変更する行為とは、現状に対し形状的あるいは質的に何らかの改変を招来する一切の行為を意味し、改良に当たる場合も含まれる。
(2)「史跡原爆ドーム保存整備計画」における考え方
平成11年(1999年)に策定した文化財としての原爆ドーム保存の技術的指針である「史跡原爆ドーム(旧広島県産業奨励館)保存整備計画」においては、次のような考え方が示されている。
保存目標(何を保存するか)
- オリジナル材の保存
- オリジナル材に残る痕跡(様々なメッセージ)の保存
- 外観形状の保存
文化財としての技術的保存の基本方針(どのように保存するか)
- 現状の原爆ドームの視覚上の外観変更は原則行わない
→原爆ドームの名称は、その外観に由来することに留意する必要があるため - 保存手法は可逆性を確保するとともに、原爆ドームのオリジナル部分には可能な限り保存の手を直接入れない。ただし、オリジナル部分に直接手がおよぶ場合には、施工上の効果・影響を確認のうえ、慎重に対応する。
→原爆ドームオリジナル材に残る痕跡(様々なメッセージ)の滅失を防ぐため - 保存工事周期の長期化を図り、最低100年を一つの目処とする。
→保存工事は、後世に継承すべき価値を破壊する側面もあるため
2.これからの保存に係るスタンスの検討
(1)原爆ドームの何を後世に残し伝えていくか
- 何を保存するか。それはどうしてか。
- 地震や将来の劣化の進行等の影響により、すべてを残せないとすれば何を優先するか。
1.原爆ドームの持つ価値・メッセージの保存
- 現位置において、外観形状の保存及びオリジナル材や被爆の痕跡の保存に努める。ただし、すべてを残せない場合においては、現位置での保存及び外観形状の保存を優先する。
- 工事手法の検討に際しては、原爆ドームの持つ価値・メッセージへの影響を評価することとする。
- 保存工事は原爆ドームの持つ価値等を破壊する側面もあるため、工事周期の長期化を図る。
ア.価値・メッセージの保存
原爆による被害の象徴としての形のみならず、被爆した煉瓦等の材料やそこに残る破壊の痕跡一つひとつに、後世に残すべき価値・メッセージが存在していることから、現位置において、外観形状の保存及びオリジナル材や被爆の痕跡の保存に努める。
ただし、地震や将来の劣化の進行等の影響によりすべてを残せない場合においては、平和記念公園の軸線(ビスタ)の頂点に位置する核兵器廃絶と恒久平和を求めるシンボルとしての象徴性を優先し、現位置での保存及び外観形状の保存を優先する。
イ.保存工事のもたらす価値・メッセージへの影響の評価
工事手法の検討に際しては、原爆ドーム保存技術指導委員会の委員を含む有識者により組織する検討組織を設置し、原爆ドームの持つ価値・メッセージへの影響を評価することとする。
ウ.保存工事の周期の長期化
保存工事は後世に継承すべき価値・メッセージを破壊する側面もあるため、保存工事の周期の長期化を図る(保存工事のサイクルは、最低100年を目処とする)。
(2)今後の保存工事の基本的方向の検討
保存の手法等
区分 | 保存の手を加えない | 現状のまま保存 | 鞘堂、覆屋を設置 | 博物館に移設 |
---|---|---|---|---|
保存手法 | 一切保存の手を加えず、自然のまま時間の経過とともに朽ちていくにまかせる (地震対策は実施する) |
鞘堂・覆屋はせず、現位置において現状を保存するために必要な劣化対策(雨水対策、地震対策等)を実施する | 原爆ドームに覆いをかけ、劣化の進行を抑制する | 別の場所で現ドームは劣化しないよう博物館等の中で保存する |
保存位置 | 現位置に置く | 現位置での保存 | 現位置での保存 | 現位置以外での保存 |
課題 | 雨水対策などの措置を施さないため、地震を除く自然的、経年的劣化に対応できない | 雨水の完全除去ができないなど、すべての劣化要因に対応できない | 世界遺産としての価値を残すことができると言えるか 外観が変る鞘堂や覆いをしてまでの保存対策をすべきか |
世界遺産としての価値を残すことができない 現在地を離れることは、ドームの価値の一部を損なうこととなる |
保存工事の程度
保存工事の程度については、次の三つの考え方がある。
- 凍結保存(保存の手を入れない立場を取る)
- 壁体上部への鉛板の覆いは例えわずかでもシルエットに影響を及ぼすのでやめる。
- 構造体を残すためであってもオリジナル材には一切手を入れない。
- 自然崩壊もやむを得ない。
- 保存工事は必要最小限とする立場を取る
雨水対策などの措置を施した上での自然的、経年的劣化はある程度やむを得ないとする(必要な補修は行う)が、原爆ドームの持つ価値の人為的破壊につながるような保存工事は行わない。 - あらゆる保存工事を検討(積極的な不可逆的措置も選択)する立場を取る
- 内部の構造補強を積極的に行う。
- 構造体を残すためであればオリジナル材に手を入れることはやむを得ない。
- 構造体を残すためであれば形状が多少変わってもやむを得ない。
地震対策
- 地震対策の検討
地震対策を喫緊の課題と捉え、専門家による組織を設け検討を行う。 - 地震対策の程度(広島市大規模地震被害想定調査報告書:平成9年(1997年)による想定)
- 己斐断層地震震度6強 繰り返し発生する間隔は数千年~数万年と長い
- 芸予地震 震度6弱 繰り返し発生する間隔は比較的短く、その再来周期に近づいている可能性は十分にある
2.今後の保存工事の基本的方向
- 雨水対策などの措置を施した上での自然的、経年的劣化はある程度やむを得ないとするが、原爆ドームの持つ価値の人為的破壊につながるような工事は行わない。
- 鞘堂や覆屋は設けず、現位置において現状を保存するために必要な劣化対策(雨水対策、地震対策等)を実施する。
- 劣化対策においては、原爆ドームの視覚上の外観変更は原則行わず、可逆的手法を用いるとともに、オリジナル部分には可能な限り保存の手を直接入れない。ただし、オリジナル部分に直接手がおよぶ場合には、施工上の効果・影響を確認のうえ、慎重に対応する。
- 地震対策は、専門家による組織を設け検討を速やかに行い、必要な措置を講ずる。措置の程度は、芸予地震の想定震度(震度6弱)への対応を目安とする。
ア.保存工事の程度
保存工事の程度は、雨水対策などの措置を施した上での自然的、経年的劣化はある程度やむを得ないとする(必要な補修は行う)が、原爆ドームの持つ価値の人為的破壊につながるような工事は行わない。
イ.保存の手法
原爆ドームの耐用年限は、適切なメンテナンスを施すことにより地震災害などの場合は別にして長い期間があると推定されることから、鞘堂や覆屋は設けず、現位置において現状を保存するために必要な劣化対策(雨水対策、地震対策等)を実施する。
劣化対策においては、現状の原爆ドームの視覚上の外観変更は原則行わず、可逆的手法を用いるとともに、原爆ドームのオリジナル部分には可能な限り保存の手を直接入れない。ただし、オリジナル部分に直接手がおよぶ場合には、施工上の効果・影響を確認のうえ、慎重に対応する。
ウ.地震対策
新たな芸予地震の発生が予想される中、さらなる地震対策は喫緊の課題である。現在、「史跡原爆ドーム保存整備計画」のもと取り組んでいる建物の構造解析や地下構造調査の結果を踏まえ、地震対策について、専門家による工事手法の検討を行い、必要な措置を講ずる。
また、地震対策の程度は、繰り返し発生する間隔が比較的短く、その再来周期に近づいている可能性が高い芸予地震の想定震度(震度6弱)への対応を目安とする。
なお、工事手法の検討に当たっては、原爆ドーム保存技術指導委員会に耐震対策を検討するための組織を設け、その検討を行う。
エ.その他
- (ア)劣化要因の調査・研究
原爆ドームへの影響が懸念される酸性雨や大気汚染等の劣化を促進させる要因について、原爆ドーム保存技術指導委員会において、その調査・研究を進める。 - (イ)自然環境への配慮
原爆ドームを保存するための措置を施す際には、材料としての鉛の使用を最小限にとどめるなど、自然環境に配慮する。
検討組織
(3)保存に関する情報公開等の検討
- 劣化状況の逐次公開(健全度調査の結果の公開等)
- 保存工事の実施の検討状況の情報公開(委員会等の公開を含む)及び市民意見の聴取
- 保存工事の内容の事前公開
- 保存工事の公開
3.保存に関する情報公開と市民意見の聴取
原爆ドームの保存にあたっては、保存工事の実施に際しての検討の状況を公開するなど情報公開に努める。また、保存工事の実施の検討に際しては、積極的に市民意見を聴取する。
原爆ドームの保存にあたっては、概ね3年に1回実施している健全度調査の結果等劣化状況の公開、保存工事の実施に際しての検討の状況の公開、保存工事の内容の事前公開、保存工事の公開など情報公開に努める。
また、保存工事の実施の検討に際しては、積極的に市民意見を聴取する。
- ア.劣化状況の逐次公開(健全度調査の結果の公開等)
- イ.保存工事の実施の検討状況の情報公開(委員会等の公開を含む)及び市民意見の聴取
- ウ.保存工事の内容の事前公開
- エ.保存工事の公開
(4)今回の保存の方針を見直す時期の検討
時期の選択
- 「核兵器廃絶のための緊急行動 2020ビジョン」の目標年次である2020年ないしは被爆80周年となる2025年
- 被爆100周年となる2045年
- 次の世紀(2101年)
- 今回の保存・整備方針に沿った措置では保存が困難となる時期
4.原爆ドームの保存の方針の見直し
被爆80周年等の節目の年において保存の方針の確認を行うとともに、被爆100周年となる2045年を目標に保存の方針の見直しを行う。
劣化の進行による原爆ドームの持つ価値・メッセージへの重大な影響が予想され、適切な保存が困難となる時期に至った場合には、優先的に残すべきものの検討、鞘堂・覆屋の設置や積極的な不可逆的措置の実施の検討など保存の方針を再検討する必要がある。
ただし、適切な保存が困難となる時期までは長い期間があることから、「核兵器廃絶のための緊急行動 2020ビジョン」の目標年次である2020年ないしは被爆80周年である2025年などの節目となる年においては、原爆ドームの保存の方針についてその確認を行うとともに、被爆100周年となる2045年を目標に、保存の方針の見直しを行うこととする。
(5)その他(原爆ドームのレプリカの設置)の検討
レプリカ設置の形態の例
- 被爆当時の原爆ドームを復元
- 世界遺産化のときの原爆ドームを復元
- 被爆前の産業奨励館を復元
5.その他
現状の原爆ドームを保存することを基本とし、原爆ドームのレプリカの設置については、将来的な検討課題とする。
【想定される新しい保存の手法】~「平和記念施設あり方懇談会」等の意見から~
鞘堂や覆屋の設置
「平和記念施設あり方懇談会」では、次の2つの意見が出されている。
- 外観を変えてしまう覆いは掛けず、原形を変えない範囲で必要な保存措置を講じる。その結果、自然劣化していくことはやむを得ない。
- 長期に保存するためには、覆いを掛けることも検討すべきである。
雨水等を要因とする劣化は長い期間をかけ緩やかに進行するものであることから、今後の技術革新により、外観に影響を与えない覆いが可能となる技術的可能性もあり、そうした状況も勘案しながら、引き続き研究する。
レプリカの設置(本体は博物館等に移設)
世界遺産登録などの時点の原爆ドームのレプリカを製作してはどうかという意見とともに、レプリカ設置の意義に疑問を持つ意見も出されている。また、今の原爆ドームは自然のまま朽ちるに任せ、それに合わせて産業奨励館の復元を進め、原爆ドームが朽ちた時に新しいものが元の形で完成するという意見も出されている。レプリカ製作に対応できるよう必要なデータは記録・保存した上で、将来的にその必要性について改めて検討する。
※「平和祈念レンガ」を購入する形で世界から寄附を募りながら、被爆前の産業奨励館を復元しようという「イマジン・ハウス(産業奨励館復元)プロジェクト」がNPOを中心として始められている。
世界的なコンペティションの実施
原爆ドームの保存の機運を世界的に高める意味から、保存の手法について世界的なコンペティションを行ってはどうかという意見がある。現状での保存が困難となる時期における保存工事の手法の検討に際しては、コンペティションによる手法の選定についても検討する。
原爆ドームの劣化と保存のための措置
(2)周辺整備の基本方針
原爆ドーム周辺の瓦礫の活用や見学通路の設置など、被爆の惨状をよりリアルに伝えることのできる周辺整備を行う。
1.瓦礫の活用
平成15年度(2003年度)に実施した原爆ドーム周辺の瓦礫調査の結果、周辺の芝生で覆われた区域の地下に良好な状態で瓦礫が保存されていることが確認されている。被爆の証人としての遺跡の意義を踏まえ、原爆ドーム周辺の整備に当たっては、昭和20年(1945年)の8月6日の状況をより正確に伝えることができるよう、周辺の盛り土が原爆ドームの壁体に及ぼしている影響を除去するため周辺の盛土を撤去し、地下に保存されている瓦礫を露出させることを検討する。併せて、地下室に人為的に入れられている瓦礫を地上へ移動し、活用することについて検討する。
2.見学通路の設置
破壊の状況をより理解できるよう、原爆ドームを間近に見学できる仮設通路の設置について検討する。
3.樹木の整理
被爆後、原爆ドーム周辺に新しく根付いた樹木のうち、原爆ドームの保存に悪影響を与える恐れのあるものについては、必要に応じ剪定又は伐採等の措置を行う。
(3)現物保存以外の取組みの基本方針
- 原爆ドームの維持・保存工事等に備え、保存に関連する情報の集積を進めるとともに、産業奨励館としての歴史を含む原爆ドームに関する資料等の展示について検討する。
- 今後の大規模な保存工事の実施に際しては、市民や世界の人々が参加することのできるシステムである募金運動を活用する。
- 保存技術の検討・保存工事の実施に当たっては、国においても積極的な取組みがなされるよう働きかける。
1.原爆ドーム管理のためのシステムの構築
原爆ドームの維持管理、将来必要となる保存工事に備え、過去の調査・測量の結果、工事の内容、関連文献など原爆ドームの管理に必要な情報をデータベース化するシステムの構築に取り組む。
2.原爆ドームに関する資料館機能の整備
原爆ドームそのものが持つ、訴える力を補うため、「広島県物産陳列館としての建設」「被爆の状況」「保存運動」「保存工事」「世界遺産化」など原爆ドームの意義や歴史について、深く体系的に理解することができる資料館機能を、平和記念公園又はその周辺において整備することを検討する。
3.募金運動
昭和42年の第1回保存工事に際しては、「原爆ドームの持つ意義や保存の趣旨から、保存工事に要する経費は、国内はもちろん、国外からも平和を願う一人でも多くの人の協力をあおぐ」として、募金運動を実施した。その趣旨は、第2回保存工事にも引き継がれ、予定額を上回った寄附金は「原爆ドーム保存事業基金」として積み立てられ、その後の工事費用に充てられている。
世界恒久平和を願う人々の思いを浄財として集める募金運動は、財源確保のためだけのものではなく、募金運動に参加することで世界中のあらゆる世代の人々がヒロシマに思いを寄せ、平和への願いを新たにすることにつながるシステムであり、今後、大規模な保存工事が必要となる際等には、その活用を図る。
4.国への協力要請
人類全体の遺産である原爆ドームの保存の意義を踏まえ、保存技術の検討・保存工事の実施に当たっては、国においても積極的な取組みがなされるよう、働きかけを行う。
2.平和記念公園とその周辺の整備・利活用の基本方針
(1)平和記念公園とその周辺の整備の基本方針
- 原爆ドームを頂点とした平和記念公園の中央を貫く軸線上の見通しを大切にするとともに、原爆死没者慰霊碑を中心に、慰霊・鎮魂のための「聖域」としての静けさや雰囲気を確保する。
- 被爆の実相をより確実に理解でき、平和について学び・考えることができるよう、必要な整備等を 行う。
- 平和活動や平和文化を発信するための集いの場、来訪者のための憩いの場、賑わいの場を確保する。
- 来訪者の利便性と安全性を確保する。
- 来広者を平和記念公園まで誘導するための取組みを行う。
1.平和記念公園の軸線上の見通しの確保
平和記念資料館・原爆死没者慰霊碑方面からの原爆ドーム中央部への見通しを遮っている樹木の剪定等を行い、「聖域」としての景観を整える。
また、平和記念公園や世界遺産原爆ドームの周辺に相応しい景観形成に努める。
(具体的取組みは「4平和記念公園周辺の民有地を含む空間整備の基本方針」に記述)
2.旧中島地区の市民生活の復元等による追体験空間の整備
現在の平和記念公園には旧中島地区の町の被災説明板や慰霊碑・町跡碑などはあるものの、かつて広島市の中心的繁華街の一つであった当時の町並みや市民生活にまで想いを至らせるには十分とは言えない。
被爆の実相をより強く、確実に伝えるため、慰霊碑・町跡碑などへの説明板の設置や説明板の多言語化、音声ガイド機能の整備など説明機能の充実に取り組むとともに、地下に残る町並みの遺構の活用や町並みを復元した大型模型の設置などを検討することにより、追体験ができる空間づくりを進める。
また、平和記念公園や平和大通りにある繁茂した樹木については、石碑などの見通しを確保するため必要な剪定、移植等を行う。
3.平和学習の場の確保
平和学習に訪れる修学旅行生らが、被爆体験証言を聞き、平和について考える場所や雨天時の休憩場所が、春季・秋季の修学旅行シーズンには十分ではないため、その確保について検討する。
また、平和記念資料館を見学した後の気持ちを整理し、平和について考え、語り合うために必要な空間の整備について検討する。
さらに、修学旅行生らの見学が多い「原爆の子の像」周辺については、混雑時に修学旅行生らが行うセレモニーに対応できるスペースの確保を検討するとともに、8月のピーク時には1日程度で満杯となる「折り鶴ブース」については、現地における展示の期間を延ばすため、増設を検討する。
4.集い、憩う場の整備
平和活動・文化イベントに利用できる多目的広場機能の整備を検討する。
また、来訪者が、平和について考え・語り合い、くつろぐことができるよう、既存の施設の活用を図るとともに、休憩所・カフェなどのスペースの整備を検討する。
元安川の河岸などに、文化イベント等のための設備、屋台等を設置することのできる設備などの整備を検討する。
5.平和記念公園に接する平和大通りの整備
平和記念公園に至るアプローチ部は、ゲート性などに配慮し、公園への進入を演出する工夫をした整備を行うとともに、平和記念公園と平和大通りが接する部分は一体としてシンボル性の高い整備を検討する。
また、来訪者を安全、快適に平和記念公園まで誘導するための取組みとして、南側の入口に当たる平和大橋、西平和大橋について、将来的な橋のあり方を視野に入れながら、現在の橋の外側に歩道橋を整備する方策などを検討する。
6.駐車場の整備
平和記念公園への来訪者の利便性を高めるため、駐車場の整備を検討する。
7.公園内道路の車両通行の抑制
かつて西国街道であった公園内を東西に横切る道路については、平和記念公園への来訪者の安全性を確保するため、車両の通行を抑制する。
[車両通行抑制の具体的な方法の例]
- 車両の通行を禁止(時間・季節(8月6日の前後や修学旅行のピーク時など)を限った規制を含む)
- ハンプ(車道上に設ける小丘)やドライバー・歩行者の注意喚起を図るためのカラー舗装など車両の速度を減速させるような改良を実施
8.夜間照明の増設等
夜間の安全性を確保するとともに、平和記念公園の持つ多様な機能に対応するため、夜間照明の増設・改良を行う。
また、元安川左岸の「灯和の径(とわのみち)」のようなライトアップや樹木に照明を当てるなど、光の演出について検討する。
9.平和記念公園への誘導手法の工夫
来広者が広島駅・バスセンター・広島空港、広島港等に降り立った際に、ヒロシマを訪れたことを実感できるような展示・表示等の設置を検討するとともに、「平和の道」や「西国街道」等の活用など、平和記念公園までの誘導手法について検討する。
また、平和記念公園への「近道の表示」の主要な交通結節点への設置や「案内マップ」の作成などを検討する。
10.ユニバーサルデザインに配慮した整備
平和記念公園等の整備にあたっては、安全で快適に利用できる施設となるよう、ユニバーサルデザインに配慮する。
11.その他
世界の核の状況を示す「表示板」、平和に関わりの深い人物の名前や言葉を記した「平和のベンチ」など、公園を訪れた人が原爆や平和への理解を深めることができる設備の設置を検討する。
なお、平和記念公園に相応しいサウンドスケープ(音の風景)の導入については、他の事例なども参考にしながら、その効果や課題を踏まえて慎重に検討する。
(2)平和記念公園とその周辺の利活用の基本方針
- 芝生広場を含む、平和記念公園等の使用許可の運用に当たっては、季節や時間帯等といった要素を勘案するとともに、社会実験等によりその開放について検討する。
- 被爆の実相を広く効果的に伝えていくため、平和記念公園や平和大通り等の慰霊碑・記念碑・詩碑等を活用する。
平和活動や文化イベントに参加するため人々が集い、平和や平和文化を発信していくため、平和記念公園、平和大通り、河岸緑地等の開放について検討する。
芝生広場については、原爆死没者慰霊碑を中心とした「聖域」としての静けさや雰囲気の確保とのバランスを考慮するとともに、平成17年(2005年)8月に社会実験として開催した平和コンサートの結果を踏まえ、その開放について検討する。
1.使用許可の取扱いの緩和
平和記念公園の果たすべき役割を踏まえ、これまでの限定的な使用許可の取扱いの見直しを行うこととし、以下の視点から、今後、その具体化を図る。
- (ア)使用する内容、エリア、季節・時期、時間帯等の要素を勘案した取扱いとするなど、使用許可基準の緩和を図る。
- (イ)社会実験的な手法により、効果や課題を検証しながら、段階的に緩和を進める。
- (ウ)使用許可基準の制定に当たっては、例えば市民を含む制定委員会を設置するなど、市民の合意のもとに平和記念公園を活用していく仕組みを工夫する。
- (エ)周辺の河川や河岸を含め、一体的な活用ができるよう、関係機関との連携を図り、可能な範囲で窓口の一元化を図る。
2.慰霊碑・記念碑等の活用
平和記念公園や平和大通り等に点在する慰霊碑・記念碑・詩碑等の持つメッセージを活用し、被爆の実相などを来訪者に広く効果的に伝えていくため、碑の由来などを説明した碑めぐりパンフレット等を作成するとともに、碑の説明板・案内板を周辺との調和やデザインの統一性などに配慮しながら充実する。また、音声ガイド機能の整備について検討する。
3.平和記念資料館の機能強化等の基本方針
- 平和記念資料館更新計画を策定し、「1945年8月6日のヒロシマを次世代に伝える」ため、被爆体験継承の場、平和学習の場としての機能の充実を図る。
- 修学旅行等の入館者を増やすための取組みや親から子へ、子から孫へといった世代を超えたリピーターの増加につながる取組みを進める。
- 本市の平和学習の取組みを強化し、平和学習・平和教育の体制整備を図るとともに、国における平和教育推進のための取組みの強化を働きかける。
1.平和記念資料館の機能強化
被爆体験継承の場、平和学習の場としての機能の充実を図るため、現在、広島平和記念資料館更新計画を策定中である。この計画に基づき、平和記念資料館の建物整備、展示更新、被爆体験証言活動などの充実等に向けた方策の具体化に取り組む。
また、修学旅行生等の平和学習や休憩の場所の確保、特に雨天時における被爆体験証言を聞く会場の確保、平和団体の活動のための場所の確保に取り組む。
広島平和記念資料館更新計画における具体的な方策
建物 | 整備方針 |
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具体的な方策 | 建物整備案の検討 | |
展示 | 展示の構成 |
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展示の動線 |
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展示の手法 |
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展示を見た人の感情に応える場の提供 | 「思索する」「感情を出す」「表現し、行動する」機能を持った空間の提供 | |
被爆体験証言活動などの充実 | 被爆体験証言活動の支援と展開 |
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情報資料室とホームページによる情報発信機能の充実 |
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平和に関する博物館・研究機関などとの連携・交流 |
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来館者サービスの向上 |
|
2.入館者を増やすための取組み
原子爆弾による被害の実相をより広く伝えていくため、修学旅行等の誘致活動などの資料館入館者増加対策を実施するとともに、親から子へ、子から孫へといった世代を超えたリピーターの増加につながる取組みを進める。
3.平和学習・平和教育の取組みの強化
被爆体験継承推進プログラムのもと、本市における平和学習の取組みを強化し、平和学習・平和教育の体制整備を図るとともに、国に対し平和教育推進のための取組みの強化を働きかける。
4.原爆文学等の普及
ヒロシマの記憶を伝え残していくため、図書館や国立広島原爆死没者追悼平和祈念館等において、原爆文学や原爆・被爆に関する書籍の普及、被爆体験記の収集や被爆体験記、原爆詩等の朗読事業の普及に努める。
4.平和記念公園周辺の民有地を含む空間整備の基本方針
平和記念公園や世界遺産原爆ドームの周辺に相応しい景観形成に努める。
1.平和記念公園周辺の景観誘導
新たな景観形成の取組みである景観法に基づく景観計画の具体化を通じ、バッファーゾーンを含む世界遺産「原爆ドーム」の周辺において、対象区域の拡大や手続きの義務化など景観誘導の強化を図る。
2.原爆ドーム背後の景観誘導
平和記念公園から見た原爆ドームの背景について、世界遺産に相応しい景観を誘導する。
[想定される誘導例]
- 背後の建物の改修時におけるファサード整備(建物の壁を周辺の環境に馴染む材質・色に変更する)
- 背後の建物の改築時における低層化又は移転
建物等がなく、山並みが原爆ドームの背景となる場合のイメージ〔合成画像〕
5.市民や企業との協働
平和記念公園等の整備・活用に当たっては、市民や企業の参画を得るよう努める。
1.市民や企業との協働
平和記念施設の整備・活用に当たっては、ピースボランティア、観光ボランティアガイド等との連携、市民の参画を得た整備・活用策の検討(平和記念公園の使用許可に係る委員会の設置、イベントの実施など)、地場の企業との協働による取組み(公園内での安価なサービスの提供、企業名入り説明板の設置など)について検討を行う。
このページに関するお問い合わせ先
市民局 国際平和推進部 平和推進課 被爆体験継承担当
電話:082-242-7831/Fax:082-242-7452
メールアドレス:peace@city.hiroshima.lg.jp