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市営住宅事業に関する財務事務【概要版】

ページ番号:0000003687 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

「平成19年度包括外部監査結果報告書」の概要について(市営住宅事業に関する財務事務の執行について)

1 外部監査の概要

  1. 外部監査の種類
    地方自治法第252条の37第1項及び第4項並びに広島市外部監査契約に基づく監査に関する条例第2条に基づく包括外部監査
  2. 選定した特定の事件(テーマ)
    市営住宅事業に関する財務事務の執行について
  3. 監査対象期間
    平成18年度を対象とした。ただし、必要に応じて過年度及び平成19年度分の一部についても監査対象とした。
  4. 外部監査実施期間
    平成19年7月18日から平成20年1月16日まで
    なお、平成19年4月1日から平成19年7月17日までは、事件の選定を行うとともに、補助者の選定を行った。

2 監査実施の概要

 市営住宅は、所得が低額である等、住宅に困窮すると認められる者に賃貸するために、市が国の補助を受けるなどして建設・購入・賃借等した住宅をいう。広島市において市営住宅の総戸数は平成19年4月1日時点で準公営住宅も含めると15,226戸となっている。その公募倍率は概ね20倍以上と非常に高い状態にある。市営住宅の約6割は、建設から30年以上経過して老朽化が進んでいる中で、建替えによる建設費用や修繕など管理費用が今後増加すると考えられる。
 そして市の政策として、環境変化や人口変動、高齢化等の構造的な変化に対応して今後の住宅について計画を立案していく必要があるが、現在は行財政改革を推進しており、積極的な建設や大規模修繕は困難な状況にある。
 このような状況から効率的かつ公平な市営住宅の入居手続や家賃等収納事務の適正性は、市民にとっても重要な関心事であり、現状の検証と今後の方針を監査することが重要であると考え、特定の事件として選定した。また、市営住宅等条例の対象となる市営店舗、市営住宅等附設駐車場も監査対象に含めた。
 市営住宅等に関する財務事務の執行が、公営住宅法等の関係諸法規に従って経済的・効率的・有効的に行われているかを検証するために、概ね、以下の着眼点に基づき、監査を行った。

  1. 入居手続について、募集、申込み、入居者決定、家賃決定等の手続は適正に行われているか。
  2. 入居管理について、家賃収納事務、家賃減免手続、入居者の収入把握、滞納者への対応、収入超過者及び高額所得者への対応、敷金の管理、不正入居の対応、不納欠損処理等が適正に行われているか。
  3. 市営店舗について、店舗使用料は適正に算定されているか。
  4. 住宅の建設等計画について、建設及び修繕等に係る契約事務、取壊し及び未利用地の管理は適正に行われているか。
  5. 住宅の維持管理等に係る委託契約、目的外使用・不正使用への対応が適正に行われているか。
  6. 借地契約について、契約及び借地の返還に係る手続は適正に行われているか。

3 市営住宅の概要

(1)公営住宅の概要

 公営住宅とは、地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及びその附帯施設で、公営住宅法の規定による国の補助に係るものをいう。地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならないとされている。公営住宅の整備は、住生活基本法に規定する都道府県計画に基づいて行われ、地方公共団体が公営住宅の建設等をする場合においては、予算の範囲内において、当該公営住宅の建設等に要する費用の2分の1を国が補助することとされている。

(2)広島市の市営住宅

 市営住宅戸数は平成19年3月31日現在で総戸数15,226戸であり、広島市の世帯数のうち約3%を占めている。空家は1,590戸であり、市営住宅総数の10.4%である。広島市の市営住宅(住宅種別)を区別にしたものが以下の表である。

(単位:戸)

団地数 区分 公営 甲種 乙種 特賃 改良 コミュニティ 再開発 徒前 準公営
140戸 管理戸数 15,226戸 11,120戸 91戸 34戸 182戸 2,908戸 703戸 60戸 103戸 25戸
空家戸数 1,590戸 1,003戸 41戸 14戸 87戸 390戸 30戸 23戸 1戸 1戸
空家率 10.4% 9.0% 45.1% 41.2% 47.8% 13.4% 4.3% 38.3% 1.0% 4.0%

(平成19年3月31日現在)

4 監査結果の概要

敷金の管理方法について

 敷金は、家賃の3か月分を徴収することが条例に定められている。この敷金の受払記録及び残高は、住宅管理オンラインシステム(以下「管理システム」という。)で区役所建築課が管理を行っており、入居者一人ごとの敷金を登録し、入居者の退去に際しては、管理システムに登録された敷金を還付している。市の会計上は、敷金の入金については、市の歳入歳出外現金として処理される。
 平成19年3月末現在の歳入歳出外現金(敷金)と管理システム登録額の金額には差異がある。歳入歳出外現金(敷金)は7億9,372万円、管理システムに登録された敷金の総額は7億9,652万円、差異は280万円であり、歳入歳出外現金のほうが少ない。
 この差異の原因究明がなされていない。
 差異の原因として、歳入歳出外現金(敷金)は、資金の入出金時に記帳され、管理システムは契約処理時に記録されるため、処理時点が異なることにより差異が生じる他、敷金の受領、返却等に際して、管理システムあるいは入出金処理のミスによるものなどが考えられる。管理システム上の全データについて、実際の入居者データと照合を実施し、まず管理システムのデータの正確性を検証し、整備する必要がある。その上で、再度、歳入歳出外現金(敷金)との照合を行うべきであろう。
 なお、記録の正確性を検証し保持するために、管理システムと歳入歳出外現金(敷金)は異動の都度、照合すべきである。

5 監査意見の概要

(1)募集手続について

 応募に当選したにもかかわらず、入居を辞退する件数が、毎年80件前後発生している。
 当選者、補欠者の相次ぐ辞退で、一定期間空家の状態に陥る物件もあった。
 辞退願に記載している辞退理由を確認すると、「申込み後に事情が変わった(転勤、引越し等)」、「体調不良で引越しが困難」のようにやむを得ないと思われる理由がある一方で、「住宅が古い」、「交通の便が悪い」、「エレベーターがない」、「近くに墓地がある」といったように、当選後に現物や近隣を確認して希望に合致しないとして辞退するケースが多くあることがわかった。理由を見る限りでは、とりあえず応募してみるという軽い応募動機による場合も少なくないと思えるが、現実に情報不足による場合も考えられる。いずれにせよ、多数の入居辞退者の発生は、市営住宅の需給のミスマッチを引き起こしている結果をもたらすので、低減するような方策を採る必要がある。
 募集物件については、これまでも、建設年度やエレベーターの有無、間取図などの情報が提供されているが、より情報の周知をはかるため、内容及び方法の改善を検討しても良いと考える。

(2)収入未申告者に対する扱い

 市営住宅の家賃は、入居者の収入(応能)及び住宅の便益(応益)に応じて決定されるため(応能応益家賃)、入居者に収入申告が義務付けられている。広島市は収入未申告者に対して年3回の収入申告催促を行っているが、それでも申告がない場合には、高額所得者と同様に近傍同種の住宅の家賃を課すことになっている。
 近傍同種の住宅の家賃とは、近傍同種の住宅の時価等を勘案して算定した家賃であり、市営住宅の本来家賃に比べると高額である。
 次ページの表にあるように、平成18年度末(平成19年3月31日)においても収入申告しなかった未申告者数は244名である。平成19年度の家賃は244名全員に近傍同種の住宅の家賃を課している。244名に対する近傍同種の住宅の家賃を平均すると約26,523円であった。

年度初(平成18年4月1日現在) 433名
転出 △43名
認定減免 △104名
承継、異動による収入再認定 △42名
年度末(平成19年3月31日現在) 244名

 収入未申告者に対して近傍同種の住宅の家賃を徴収するのは、申告義務を促進するための一種のインセンティブであるが、実質的な収入超過者や高額所得者にとっては近傍同種の住宅の家賃を支払いさえすれば、実質収入の把捉を免れ続けることが可能になり、インセンティブの効果がない結果となる。
 広島市の対応は、近傍同種の住宅の家賃の徴収をしているものの、収入調査、未申告者の中の収入超過者、高額所得者認定については、十分な対応をしているとはいい難いと考える。
 潜在的入居待機者がいるという現実を踏まえれば、法律で定めた義務を果たさない入居者については、原則的な対応を図ることが必要であり、近傍同種の住宅の家賃の納付をもって、収入未申告のまま居住を続けているとすれば、真に住宅に困窮する低額所得者を救済する公営住宅法の趣旨からして疑問である。
 収入確認の方法を十分検討する必要があり、例えば一案として市県民税の課税所得の調査を徹底することができれば、この問題は相当程度解決できると考える。

(3)家賃滞納者のうちの収入超過者、高額所得者について

 公営住宅は住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することを目的としていることから、収入超過者及び高額所得者については、一定の措置がある。

  • 収入超過者:3年以上入居している場合で一定の基準を超える収入のある者本来の家賃よりも高い家賃を負担する。上限は近傍同種の住宅の家賃である。住宅の明渡し努力義務が課せられている。
  • 高額所得者:5年以上継続して入居し、一定の収入月額を超える者近傍同種の住宅の家賃を負担する。広島市は期限を定めて、住宅の明け渡しを請求できる。

 収入超過者であるにもかかわらず、家賃を滞納している居住者は167名であり、このうち3か月以上滞納者は64名である。これらの滞納者は経済的な困窮等の家賃を払えないような特別な事情があるわけではない。これについても、真に住宅に困窮する低額所得者を救済する公営住宅法の趣旨からして、法律で定めた義務を果たさない入居者については、原則的な対応を図ることが必要であり、3か月分以上滞納しているという事実の発生を根拠として契約を解除(使用許可取消し)した上で、市営住宅の明渡しを請求するべきである。これにより生じた空家を入居待機者へ回すべきであろう。

(4)不正入居への対応

 広島市は、不正入居防止策として、入居時に審査を行い、入居後は、年1回、収入申告による世帯状況等の確認の実施を行っている。また滞納整理や管理人からの通報により、不正事実が発覚した場合は個別に対応することにしている。
 これらは、不正入居防止策として一定の評価はできるものの、例えば、収入未申告者については、対応が不十分である。
 監査人としては、不正入居に対して、より積極的に調査をする必要があると考える。一斉調査は無理としても、例えば当年度は収入未申告者に対象を特定して現地調査をする等が考えられる。

(5)家賃滞納者に対する延滞金の取扱い

 滞納額4億92百万円(平成19年5月末現在(出納閉鎖))に対して、年間の延滞金額が、53万円(平成18年度実績)となっている。
 「広島市税外収入金の督促及び滞納処分に関する条例」では、やむを得ない理由があると認めたときは延滞金額を減免することが出来る規定があり、広島市はこれに基づき、延滞金の対象者を次の2つの場合に限定している。

  1. 明渡等請求訴訟を提起した者
  2. 即決和解を違約し、使用許可を取り消された者

 これは、「やむを得ない理由」を余りに広く解釈しすぎている。現状の扱いでは、いくら延滞しても最終的に支払えば延滞金は課せられないことになる。
 延滞金は、滞納に対するペナルティであるが、これでは滞納防止の役目を果たしていない。滞納者と期限どおり納付している入居者との公平を欠く。
 まず、延滞金を免除できる「やむを得ない理由」を具体化した規程や取決めを作成する必要がある。それ以外の滞納者には原則どおり延滞金を請求すべきである。

(6)不納欠損と時効について

 市では家賃の5か月以上の滞納者を対象に明渡請求等の法的措置をとるが、5か月未満の滞納者には法的措置をとらないため、例えばある月の家賃1か月を支払わず、未払のまま5年を経過すると時効になり、広島市は不納欠損処理をする。したがって、時効後もそのまま市営住宅に居住を続けることが可能である。
 平成18年度において、現に入居中の者に対する不納欠損は5,320,006円(77名)である。市は未収家賃の担保として3か月分の敷金を預かっているが、賃貸借契約存続中には未収家賃へ敷金を充当できないため、時効成立後は、その退去者に過去に不納欠損処理された滞納額があるにもかかわらず、退去時には敷金の3か月分は全額返済されることもありえる。
 平成18年度において不納欠損が発生した入居者(77名)の平成19年11月27日現在の滞納状況をみると、滞納者数42名で滞納金額は、8,337,039円であり、不納欠損処理後も滞納家賃が発生している。
 したがって、このような入居者に対しては、時効になる前に、広島市市営住宅等条例第40条に基づき、入居者が家賃を3か月分以上滞納したときという事実の発生を根拠として契約の解除(入居取消し)を行うべきである。そうすれば、少なくとも預かっている3か月分の敷金を滞納家賃に充当することができ、その分は不納欠損処理とはならなかったはずである。また、駐車場使用料の不納欠損もあるが、市の条例上、駐車場の敷金を収受することにはなっていない。駐車場使用料には滞納が発生しており債権担保のためには、民間と同様に駐車場の敷金を収受することを検討すべきである。

(7)店舗使用料の算定方法について

 店舗使用料の算定方法について見直しをするべきである。
 店舗使用料に関する広島市市営住宅等条例は平成9年にそれまでの市営住宅に準じる方法から、近傍同種の店舗使用料以下で市長が定める方法に改正されたが、広島市はそのまま従前の方法を採用している。また、物価変動等による見直しもされていないため、極めて低額な店舗使用料のままである。また、広島市が賃借して、転貸している店舗では使用料よりも支払の方が大きく逆ザヤになっているケースがある。
 使用料の算定方法を再検討し、近傍同種の店舗使用料に準じた算定方法に改め、店舗使用料の適正化を図るべきである。

(8)遊休施設について

 元住宅敷地で、現在は遊休地となっているものがある。売却可能な物件(旭住宅跡地、仁保本浦引揚者住宅跡地等)は元々住宅跡地であり住宅地として十分利用可能であるので、売却を図るべきである。

(9)一時使用承認者について

 一時使用承認者は、実態は戦後から長期にわたって若草町の国有地内に家屋を建てて住み着いている住民をいい、広島市が国から土地を借地して住民に転貸している。
 国からの借地は約729平方メートルであるが、このうち約480平方メートルは未使用地(一部不法占有者居住地)である。不法占有者については、実態に応じた適切な処置を求めるとともに、未使用になっている土地については、国に返還すべきと考える。
 当該国有地について、国に対して年間2,881,849円を支払う一方で、居住者からの徴収は1,017,357円にすぎない。これは主として未使用土地があるためであるが、差額1,864,492円は、広島市が負担していることになる。むろん、これが法的に認められた公営住宅であれば、広島市の負担は行政目的上何らの問題はないが、制度的な裏付けのないまま、広島市が負担し続けるのは、問題と考える。

(10)借地の返還について

 民間及び国から借上げて、市営住宅等敷地としている物件がある。それらについても、何れ返還する時期が到来するが、その際の返還について貸主側は種々の条件を出して交渉が難航する可能性がある。既存の契約の多くは、合併前の旧町村時代の個人地主が貸主となっている契約であり、契約書は極めて簡単なものが多い。そのようなトラブルを避けるためにも、次回の更新時に、既存の契約を見直して、返還時の扱いを契約上明確に定めるのが双方にとって有益と考える。返還に際しては広島市の果たすべき義務を法的に明確にしておく必要があると考える。

(11)特定優良賃貸住宅制度実施業務の委託について

 特定優良賃貸住宅については、都市整備公社が事業者(土地所有者)と一括借上契約を交わし、管理業務を受託し、契約家賃(満室状態での最大家賃)の12%相当額を事業者から管理料として受けとることになっている。実際は、都市整備公社が契約家賃の88%相当額を事業者へ支払う形で精算される。
 都市整備公社は、他方で広島市と業務委託契約を締結し、下記の業務を受託している。平成18年度の都市整備公社へ支払われる業務委託料の内訳は、次のとおりである。

  1. 都市整備公社のプロパー人件費相当分782万円
  2. 情報誌掲載料、不動産鑑定料相当分579万円 1,361万円

 平成18年度は、1.については1名退職があったため額が減少しているが、平成19年度予算では約11百万円を見積もっている。
 広島市と都市整備公社の業務委託契約に基づいて行う業務は以下のとおりである。

  • ア 入居者募集広告に家賃補助制度に関する広告を併せて掲載すること。
  • イ 入居者の収入認定事務を行うこと。
  • ウ 不動産鑑定評価を鑑定業者へ依頼すること。
  • エ 国に行う家賃減額補助金申請の資料をつくること。
  1. プロパー社員に対する人件費相当額の妥当性について
    これらの業務は、都市整備公社のプロパー社員が本来業務(事業者との一括借上契約に基づいて行う業務)と並行して行っているため、市との委託契約に基づく業務時間と本来業務時間に按分して、その比率で人件費相当額に対する業務委託費を算定する等の方法により、実態に即した委託料の算定を検討されたい。
  2. 情報誌掲載料について
    情報誌への掲載は、特定優良賃貸住宅制度の制度広告であるから、広島市の行なうべき業務であるというのが広島市の考え方であるが、現実には入居者募集の広告であり、それぞれの事業者に掲載量に応じた相応の負担を求めることが妥当と考える。