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特命随意契約に関する監査の結果(平成19年9月7日)
広島市監査公表第49号
平成19年9月7日
広島市監査委員 松井 正治
同 野曽原 悦子
同 田尾 健一
同 元田 賢治
特命随意契約に関する監査結果公表
地方自治法第199条第2項の規定により、標記の監査を実施したので同条第9項の規定により、その結果を下記のとおり公表する。
なお、松井正治監査委員は、平成19年3月31日まで、社会局長として在籍していたため、社会局に係る監査については、地方自治法第199条の2の規定により、除斥した。
記
- 監査の対象
- 企画総務局
- 総務課
- 市長室 広報課、情報政策課
- 財政局
- 契約部
- 税務部
- 市民局
- 市民活動推進課
- 生涯学習課
- 文化スポーツ部
- 社会局
- 児童福祉課
- 保健部 保健医療課
- 環境局
- 施設部 安佐南工場、安佐北工場
- 業務部 業務第一課
- 経済局
- 競輪事務局
- 農林水産部
- 中央卸売市場 食肉市場
- 都市活性化局 市民球場管理事務所
- 都市整備局 住宅部
- 道路交通局 道路管理課
- 下水道局
- 経営企画課
- 計画調整課
- 管理部 管理課
- 区役所
- (東、安佐北)
- 市民部 区政振興課
- 厚生部 生活課
- (東)
建設部 土木課 - (安佐北)
農林建設部 農林課、維持課
- (東、安佐北)
- 広島市立大学 事務局
- 消防局
- 施設課
- 警防部 警防課
- 水道局
- 企画総務課
- 財務課
- 営業部 営業課
- 施設部 計画課
- 病院事業局
- 広島市民病院 事務室
- 安佐市民病院 事務室
- 教育委員会
(事務局)- 青少年育成部
- 学校教育部 給食保健課
- 企画総務局
- 監査の範囲 平成18年度に属する特命随意契約(契約金額が10万円以上のものに限る。)に関する事務
- 監査の期間 平成18年12月25日から平成19年7月25日まで
- 監査の方法
監査に当たっては、特命随意契約の状況について調査票により調査した上で、特命随意契約の件数の多い課等を対象とし、特命随意契約に関する事務が合規的、経済的、効率的及び有効的に執行されているかどうかを主眼として実施し、抽出により関係書類を検査照合するとともに、関係職員から説明を聴取した。 - 監査の結果
次に述べる事項を除いておおむね適正に処理されていた。- 競争性の導入等について
本市では、エレベーター、空調設備等の建築設備の保守点検業務(以下「保守点検業務」という。)について、機器の構造に熟知し、故障の対応、部品調達が迅速かつ円滑に可能であるなどの専門性を理由として、メーカーないしはメーカー系列のメンテナンス業者(以下「メーカー等」という。)と特命随意契約が多数行われている。
特命随意契約とすることについては、金額により各局等の委託業務等競争入札参加者等指名委員会で審査されている場合もあるが、所管課等のみで決定されている場合が多い。- ア 保守点検業務については、近年メーカー等以外にも保守点検を専門的に行う業者等が存在している業務もあることから、入札等の競争性のある方法により契約を行っている自治体も見受けられる。
地方公共団体の契約は、競争の方法によることが原則であることから、本市においても、従前からの専門性を理由として特命随意契約を漫然と継続するのではなく、施設の性質、機器・設備等の特殊性や老朽化度、安全性の確保などに十分配慮しつつ、競争性のある契約方法の導入について検討されたい。
さらに、現在特命随意契約により契約している上記の保守点検業務以外の業務等についても経済性、透明性の観点から、問題点を十分把握分析したうえで、競争性を取り入れた契約手法の導入について検討されたい。 - イ 業務委託等の契約方法を特命随意契約とする場合の取扱については、慎重に検討するよう通知が出されているものの、工事請負と異なり、事務処理要領(工事請負の場合は「特命随意契約事前協議等事務処理要領」による。)が設けられておらず、手続に関しては厳格化されていない。
ついては、業務委託等の契約方法を特命随意契約とする場合の手続について、工事請負と同様な事務処理要領などを設けることについて検討されたい。
- ア 保守点検業務については、近年メーカー等以外にも保守点検を専門的に行う業者等が存在している業務もあることから、入札等の競争性のある方法により契約を行っている自治体も見受けられる。
- 統一的な積算基準等の設定について、エレベーター、空調設備等の建築設備の保守点検業務及び機械警備業務(以下「保守点検業務等」という。)に係る仕様書の作成や設計・積算については、各施設の所管課等の担当者が行っているが、積算の根拠となる仕様書の内容が不十分なものや、設計・積算の方法が異なっている事例が見受けられ、同様の内容にもかかわらず積算額にばらつきが生じている。
保守点検業務等の仕様書の作成や設計・積算については、「委託契約事務の手引」等に基づき行うこととなっているほか、監査指摘(平成15年6月)を受けて人件費の積算単価の見直しについて通知されている。しかしながら、「委託契約事務の手引」には、詳細な積算基準等は示されておらず、実質的には各所管課等に任されており、担当者も必ずしも専門的知識を持っていないため、従来の仕様書や設計・積算の方法をそのまま継続してきたことなどにより積算額にばらつきが生じているものと考えられる。
仕様書は、業務に要する経費を積算する根拠となるものであり、設計・積算は、仕様書に基づいて適正に行われなければならないものである。現在、建築物清掃業務等4種類の施設の維持管理業務については、労務単価、経費率等の統一した基準が設定されている。保守点検業務等についても、事務の効率化や適正な積算を行うために、統一的な積算基準等を設けることや、仕様書及び設計・積算方法を示す現行の「委託契約事務の手引」の見直しについて併せて検討されたい。 - 総合評価落札方式等の活用について
本市における情報システム開発については、システム導入時には競争性のある方法により契約されているが、その後の保守・運用や改造等については、ほとんどが専門性を理由とした特命随意契約となっている。
また、機械装置等の購入等についても、情報システム開発と同様に機械装置等の導入時は競争入札により契約されているが、その後の保守点検は、ほとんどが専門性を理由とした特命随意契約により行われている。
これらの契約について、当初の競争入札で安価に契約できたとしても、その後の保守等に係る経費を加えるとむしろ不経済になる場合も考えられる。国は、情報システム等の調達に係るライフサイクルコストの適正化に向けて総合評価落札方式による入札とするなどの見直しを行い、さらに適用対象事業の範囲を拡大し、研究開発、調査研究等にも導入している。
本市においても大規模な情報システム開発や公共工事について、総合評価落札方式が導入されているが、ライフサイクルコストの適正化や、民間の優れた技術・ノウハウの導入に向けて、国や他都市の状況も参考としつつ、総合評価落札方式のさらなる活用について検討されたい。
また、総合評価落札方式は、通常の入札と比べて事務量が大きいため事務処理の効率化の観点から債務負担行為を活用してライフサイクルコストの適正化を図るなど、より簡便な契約手法の活用についても検討されたい。 - 特命随意契約の妥当性について
- ア 水道局における被服の購入について
水道局職員に貸与する夏業務服、冬業務服等の被服(以下「業務服」という。)の購入については、平成16年度にデザインが変更された際に一般競争入札により契約相手方を決定し、それ以降は、同相手方と特命随意契約を行っている。その理由としては、特別仕様で発注していることや他の業者から同一仕様のものを納入させることが困難であること、また、地方公営企業法施行令第21条の14第1項第1号の規定により随意契約を締結する物品の買入れ等の契約について、見積書の徴取が一人でよいとする「物品の買入れ等に係る随意契約の見積書の徴取についての運用基準」(以下「運用基準」という。)の第4号「追加して契約をする場合で、当該契約に係る入札による最低価格者から同価格で契約をすることが有利と判断できるとき。」に該当するとしている。
しかしながら、生地規格、付属品規格及び縫製仕様等を明記した同局の仕様書と、市長事務部局で購入している被服の仕様書とを比較して見ると、生地規格は双方とも繊維メーカーのものであり、付属品規格についても双方の仕様書の内容に大きな差は見受けられなかった。
他業者から同一仕様の被服の納入が困難であるという理由も、平成16年度に同局が提示した仕様書に基づき一般競争入札を実施した際に、複数の参加業者があったことや、市長事務部局では、原則、被服の仕様の違いや数量の多寡にかかわらず競争性のある契約方法により契約が行われていることから合理的なものとは言いがたい。
さらに、運用基準第4号の最低価格者から同価格で契約する方が有利と判断できる具体的な根拠が明確ではなく、運用基準第4号に該当するかどうかの検証が十分ではない。
ついては、現在、特命随意契約により行われている業務服の購入について、特命随意契約の妥当性について十分検証したうえで契約を行われたい。 - イ 施設の機械警備業務について
機械警備業務については、「長期継続契約を締結することができる契約を定める条例」(平成17年11月1日施行。以下「条例」という。)が施行され、最長8年の契約を締結することが可能となった。契約方法については、原則、一般競争入札などの競争性のある契約手続により相手方を決定するものとして条例施行要領に規定されている。
しかしながら、市民局及び社会局が契約した施設の機械警備業務において、長期継続契約の導入を検討すべきところを、従前の理由をそのまま使用し、業者から見積を徴するなどにより経費比較を行うことなく、1か年の特命随意契約を行っている事例が見受けられた。特命随意契約の理由としては、毎年競争入札を行うと機械装置の設置経費を含んだ減価償却費を法定耐用年数の8年でなく1年で計上することとなるために経費が割高となり、また、毎年業者が変わることで機械装置の撤去・設置により施設の損傷を引き起こす可能性がある等としており、特命随意契約の妥当性について十分な検証がなされていなかった。
ついては、条例の制定趣旨を踏まえて、特命随意契約の妥当性について十分な検証を行い、条例施行要領等に従って適正な契約手続きを行われたい。
- ア 水道局における被服の購入について
- 競争性の導入等について