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平成29年度太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会の開催(水管理部会同時開催)(会議資料・会議録)

ページ番号:0000018892 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

平成29年度 太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(水管理会 同時開催) 次第

日時 平成30年3月23日(金曜日)午後1時30分~午後4時00分
場所 広島市中区地域福祉センター 大会議室(広島市中区大手町四丁目1-1 大手町平和ビル5F)

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
    1. 太田川再生方針に基づく取組状況について
    2. 太田川再生方針に基づく取組の効果検証調査・解析業務の概要について
    3. アユにとって望ましい利水運用の実施に向けて
      ア 長期的な方策に基づく高瀬堰の運用について
      イ 長期的な方策に基づく祇園水門・大芝水門の運用について
    4. ヤマトシジミ資源増殖に関する試験について
    5. 今後の取組方針について
  3. 閉会

配布資料

懇談会構成員名簿・水管理部会構成員名簿・出席者名簿・配席図

  • 資料1 太田川再生方針に基づく取組状況について~概要~
  • 資料2 太田川再生方針に基づく取組の効果検証調査・解析業務の概要について
  • 資料3 平成29年度試験的運用時の流速調査結果(高瀬堰)
  • 資料4 長期的な方策(アユに適した利水運用)の今後の取組方針について
  • 資料5 ヤマトシジミ資源増殖に関する試験について
  • 資料6 太田川再生方針の今後の取組方針について

平成29年度 太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(水管理部会 同時開催) 出席者名簿

出席者名簿の画像

平成29年度 太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(水管理部会 同時開催) 配席図

配席図の画像

平成29年度太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(水管理部会 同時開催) 議事

広島市経済観光局農林水産部水産課 石津課長

お待たせしました。
ただ今から、平成29年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会を開会します。
本日は、年度末のお忙しい中、当懇談会にご出席くださり、ありがとうございました。
さて、今回の会議につきましては、議題が重複する内容がございますので、水管理部会も同時開催とさせていただくことにしております。
昨年度から、当懇談会・部会の開催が年1回となり、議論の回数は減りましたが、今まで以上に内容の濃いご検討を賜りたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、会議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
懇談会(水管理部会)構成員名簿、出席者名簿、配席図、資料1~6を配布させていただいております。
過不足等、ございませんでしょうか。
本日、ご参加いただいている方はお手元の出席者名簿のとおりです。
なお、国土交通省太田川河川事務所 徳元所長様におかれましては、先灘副所長様に、広島県農林水産局水産課 宮林課長様におかれましては、横内参事様に、太田川漁業協同組合 森代表理事組合長におかれましては、山中理事様に代理でご出席をいただいております。また、広島県土木建築局河川課 箱田課長 様が欠席されています。
本日の懇談会のスケジュールは、まず太田川再生方針に基づく枠組と取組状況を再確認いただき、29年度の効果検証調査の結果や取組の検討状況について、アユ、シジミの順にご説明させていただき、今後の方針を検討させていただきたいと思います。
特に、今後の方針につきまして、皆様の活発な意見交換をお願いしたいと存じます。
本日は長時間にわたりますが、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、松田座長、本日は部会長も併任となりますが、進行をよろしくお願いいたします。

松田座長

本日はお忙しい中、平成29年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会及び同水管理部会にご出席いただき、ありがとうございました。
座長・部会長を務めさせていただきます。松田です。
さて、今回の会議は、前回から1年ぶりということで時間が空いております。
その分、各種取組や検討も進んでいることと思いますが、我々も検討内容を少し忘れているところもありますので、最初に事務局から改めて全体の取組・検討状況をご報告いただきたいと思います。
それらを踏まえて、29年度の取組の効果検証の結果を説明いただくと共に、29年度からは、アユを増やす取組として、長期的な方策に基づく高瀬堰の運用を試験的に実施されたと聞いていますので、そのご報告もいただきたいと思います。
これらについて、皆様の活発なご意見を賜り、今後に向けて検討を深めたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
なお、会議の進行状況によっては、議題の順番を入れ替えて、進めさせていただきたいと思いますので、予めご了承ください。それでは、早速議事に入らせていただきます。
まず、議題(1)「太田川再生方針に基づく取組状況について」事務局より説明をお願いします。
説明 資料1「太田川再生方針に基づく取組状況について~概要~」

事務局 古矢技師

広島市では、著しく減少した太田川のアユ及びシジミ資源を増やすため、平成25年に「太田川再生方針」を策定し、平成26年度より「太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会」並びに同懇談会の「水管理部会」を立ち上げ、当該懇談会の提言に基づき、段階ごとの方策を定め、各機関や関係者と連携しながら、アユ及びシジミ資源を増やす取組の推進とその取組の効果検証調査を実施しています。
アユの取組としては、短期・中期・長期的な方策として、短期的な方策では、余剰種苗の放流や産卵場の維持・造成などを、中期的な方策としては、禁漁期間や禁漁区の設定などを実施してきました。
また、今年度は、アユに適した堰や水門の利水運用等を行う長期的な方策と定めた高瀬堰の試験運用と祇園水門・大芝水門の試験運用の実施に向けて、平成29年8月に作業部会を開催しました。
作業部会の結果、高瀬堰の試験運用については、国土交通省さんのご協力のもと、平成29年11月に取組が実施され、本市と国土交通省さんの両者で効果検証調査も実施することができました。
検証結果については、次の議題でご紹介いたします。
一方で、祇園水門・大芝水門の試験運用については、塩水遡上に関する懸案が解決されていないという理由から今年度の実施を見送ることとなりました。
なお、塩水遡上状況についても、急遽、本市の委託業務により、調査を行いましたので、次の議題でご紹介させていただきます。
次いで、シジミに関する内容ですが、シジミの漁獲量は156kgと壊滅的な状況となっています。
シジミを増やす取組については、広島市水産振興センターと内水面漁協さんを中心に活動を推進していただいております。
本年度においても。塩ビ管を活用した人工種苗成育試験等を実施し、新たな結果が得られていることから、こちらの取組の結果についても、後の議題でご紹介いただきたいと思います。

松田座長

ありがとうございました。
会議の枠組み、太田川再生方針に基づく取組の進捗状況、長期的な方策の実施状況について確認いただけたかと思います。
ここまでの説明で、何かご質問等があればお願いします。

参加者一同

質問なし

松田座長

質問はないようですので、次に進めさせていただきます。
なお、質問等がありましたら、前の議題に関するものであってもかまいませんので、随時、提案ください。
続きまして、議題(2)「太田川再生方針に基づく取組の効果検証調査・解析業務の概要について」です。
今回、広島市が発注している委託業務は、アユに関連するもののみであり、シジミに関連する検証については、(公財)広島市農林水産振興センターが実施されているということなので、シジミについては、後ほどご報告いただきます。
なお、広島市の委託業務では、長期的な方策に関係する調査も併せて、実施されていることから、次の議題(3)と重複する内容もございますが、この議題の中で併せて、ご報告いただきたいと思います。
それでは、広島市の業務を受託されている「(株)建設技術研究所」の担当者の方にご説明をお願いしたいと思います。

説明(資料2)「太田川再生方針に基づく取組の効果検証調査・解析業務の概要について」

建設技術研究所 瀬口氏

お手元の資料に沿って説明します。
太田川再生に基づく取組の効果検証のため、広島市の委託業務を受注させていただき、今回は大きく分け、4つの調査を行いました。
順にアユの買い取り調査、流下仔魚調査、高瀬堰の運用に伴っての流速測定調査、祇園水門・大芝水門の運用に向けての塩分遡上調査の4つです。
まず、今年度の調査結果をお伝えする前に前提条件について、説明させていただきます。
平成29年度については、雨が非常に多く、流量が非常に多い状況でありました。
流下仔魚の調査については、当初予定では、10月中旬頃から調査を開始する予定でしたが、流量が多く、流況が落ち着くまでの間、調査ができませんでした。
これにより、流下仔魚調査の結果にも偏りがでてしまった可能性があります。
また、高瀬堰の運用についても運用前後で比較を行いたかったのですが、降雨の影響で運用前の流量が運用時より、かなり多くなっていたことから、流速としても運用前のデータが速くなっている状況でありました。
では、本題に移ります。まずは、アユの買い取り調査結果についてです。
こちらの調査方法については、例年の手法とほぼ同様で、太田川漁協さんが高瀬堰下流で漁獲されたアユを買い取り、その由来等を調査しました。
今年度は計50匹の個体をサンプリングし、結果は、次のとおりとなりました。
体長別のグラフには、3ヶ年分の調査結果をプロットしておりますが、平成29年度の個体については、小ぶりなものが多い状況でした。
小ぶりな個体が多かった理由としては、漁獲量も平成29年度は、ここ数年の結果と比較するとかなり多かった状況であることから、アユの生息密度が高くなり、エサが不足してしまったのではないかと考えることもできます。
また、由来判別調査の結果については、従来、耳石による化学分析も実施しておりましたが、本年度については、形態判別のみで判定を行いました。
結果としては、50匹中40匹(約8割)が天然のアユであると判定され、天然のアユの遡上が多い状況でした。
また、漁協さんが放流された人工種苗や太田川再生方針の取組の1つである余剰種苗の放流実績から試算すると平成29年度は、約750万匹程の天然遡上があったのではないかと推定されます。
懇談会の検討が始まった当初から言われていたことですが、アユの天然遡上が増えると、全体的な漁獲量も増えるという見解と整合する結果となったのではないかと思います。
但し、サンプルの確保にあたって、漁法や天然魚と人工魚の生存率の差等、さまざまなバイアスを受けている可能性がありますので、その点については、注意が必要です。
また、この結果は、アユの個体数量で比較したものであり、重量で比較した場合は、また結果が違ってくる可能性があります。
では、次に流下仔魚調査の結果です。
先ほども、前提の条件としてお伝えしたように、今年度は、流量が多く、例年ですと、10月中旬に調査を開始していたところが、結果的に、産卵期の後半となる11月に集中的に調査した形になりました。
調査地点については、例年どおり、産卵場直下の安芸大橋、下流域の大芝水門及び祇園水門で調査を行っております。
調査前の予想は、安芸大橋での個体数が最も多く、下流にいくにつれ、個体数が減少する傾向になると考えておりましたが、実際の調査結果では、下流域の方が個体数が多い結果となりました。
また、例年、安芸大橋の調査結果をもとに流下仔魚数を推定しておりますが、平成29年度については、2800万個体と非常に少ないという結果になっています。
しかし、繰り返しますが、降雨の影響で調査ができておらず、10月の状況が判らないことから、偏ったデータになっていることも考慮しておくことが必要です。
次に安芸大橋、祇園水門及び大芝水門の3地点の調査データから年別の平均流下仔魚数を計算し、漁獲量との関係性についてまとめてみました。
グラフを見ていただきますと、例えば、近年の調査で、平均流下仔魚数が最も多かった平成28年度の翌年(平成29年度)の漁獲量が多くなっています。
この理由は、単純な考えではありますが、流下仔魚数の増加に伴い、翌年の遡上数が増えたと考えることができると思います。
では、平成29年度の流下仔魚数から平成30年度の漁獲量を試算するとどうでしょうか。
平成29年度の流下仔魚数は少ない状況であったことから、来年は遡上が少なくなる可能性もあります。
しかし、10月は流量が多かったこと、平成29年シーズンは、親となるアユも多かったと予測されることから、実際には、流下仔魚数がかなり多く、卵黄指数が高い状態で海域へと流下できている可能性もあることから、平成30年度も一定の遡上数が期待できるという可能性が消えたわけではありません。
では、次の内容です。
平成29年度は、仔魚の流下を促進するため、高瀬堰の運用が試験的に行われたという経緯があることから、流下仔魚の卵黄指数と河川流量の相関を求めましたのでお示しします。
では、まず、卵黄指数について補足させていただきますが、アユの仔魚はふ化後、体内の卵黄を消費しながら海域へ下ります。
ふ化して時間が経過していない個体ほど高い卵黄指数となることから、卵黄指数4の個体がふ化直後、卵黄指数1の個体がふ化後、ある程度時間が経過しているものということになります。
では、卵黄指数4の個体と卵黄指数1の個体について、流量との相関をお示しします。
どちらのグラフにおいても、平成24年からの各調査地点のデータをプロットしており、横軸には、調査時の平均流量、すなわち流速と考えていただき、縦軸には、流下仔魚の個体数ではなく、調査で採捕された流下仔魚の全体数の中に卵黄指数4又は1の個体がそれぞれどの位いたかという割合を取っています。
それを調査地点ごとに線回帰させ、相関を求めました。
まず、卵黄指数4の解析結果です。
結果としては、安芸大橋及び祇園水門については、流量が増えると卵黄指数4の個体が増えるということで相関が見られます。
しかし、祇園水門については、逆の結果となっています。
次に卵黄指数1の解析結果です。
卵黄指数1の個体については、流量が少なくなると多くなることが予想されます。
結果としては、ほとんど相関は見えませんでしたが、流量が少ないと卵黄指数1のものが若干ですが増えるという傾向が見えました。
このことからも流量が大きいとアユ仔魚が速く流下すると言えることができると考えます。
また、次の議題で国交省さんが流下時間のピークに着目し、解析をされていると伺ったことから、そちらの方法に併せて、解析を行いました。
調査時の平均流量に併せて、縦軸に流下仔魚数、横軸に時間を取り解析を行いました。
安芸大橋については、流量が多くなっても流下のピーク時間は変わっていない状況でしたが、大芝水門については、流量が多くなるにつれ、流下のピークが早くなる傾向があることが判りました。
祇園水門については、2014年11月のデータが例外的に多くなっていますが、このデータを除くと、流量が多くなるにつれ、ピークが早くなる傾向があると思われます。
安芸大橋の流下時間のピークが早くならないことについての考察ですが、安芸大橋は産卵場の直下であることが原因の1つではないかと考えています。
これらの解析から言えることは、高瀬堰の運用によって流量(流速)が増えれば、一定の効果があるといえるのではないでしょうか。
続きまして、流速の調査についてです。
流速の調査については、流速計による測定と浮子による測定を地点によって使い分けながら行いました。
調査地点については、高瀬堰直下、安佐大橋、安芸大橋で調査を行いました。
また、それぞれの調査地点において運用前、運用日の運用直前と運用後の3回調査を行いました。
理想としては、運用前の流速よりも運用後の流速が速くなれば良かったのですが、運用前の調査時は降雨の影響で河川流量が多く、実際に運用が開始された時よりも流速が速いという結果になっています。
このことから今回のデータとしては、運用日の運用の直前と後の結果の比較をみていただければと思います。
結果を見ていただきますと、高瀬堰直下及び安佐大橋では、運用後の流速が約1.2倍程、速くなっているという状況でした。
安芸大橋については、流速の変化は確認されていませんが、これは、潮汐による滞留影響を受けているからもしれません。
次いでは、塩分遡上調査の結果です。
塩分遡上の調査については、2つの調査を行いました。
まずは、メモリー式の塩分計による連続測定の結果です。
こちらについては、取水口の直下流とそれよりさらに下流の旧原取水場の2か所に
11月2日から11月21日まで塩分計を設置し、状況を調査しました。
なお、11月2日から5日、11月16日から19日までが大潮であったことから2回の大潮時の状況を記録しています。
結果としては、潮汐の変動に関係なく、淡水の基準である0.5PSU以下であり、塩分の遡上は確認されなかったという結果になりました。
なお、類似した調査を昨年度も実施していますが、昨年度の調査でも塩分の遡上は確認されていません。
では、水門上流から取水口の下流の状況がどうなっているのかというところですが、こちらについては、水門上流から安芸大橋の下流までの6地点の左岸、流心、右岸の計18地点で鉛直の塩分測定を行いました。
なお、調査は、11月6日の大潮で潮位が392cm以上とかなり高い時に実施し、上げ潮時、満潮時、下げ潮時と潮位変動に応じて状況を把握しました。
一般的に塩分は下層から流入してくることから、塩分遡上がある場合は、下層の塩分濃度が高くなることが予想されます。
結果はグラフのとおりですが、上げ潮時、満潮時、下げ潮時のいずれの場合もどの地点においても塩分遡上は確認されませんでした。
今回の調査では、水門の直上の地点においても同様の結果となっています。
では、ここまでのまとめになります。
今年、アユが多かったことですが、昨年の流下仔魚数が多かったこともあり、これが天然遡上の増加につながった。
これは、今まで言われていたことですが、改めてそれが判ったという状況でした。
流下仔魚の調査については、10月に調査できなかったことも原因の可能性がありますが、本年度の流下仔魚は少ない状況であった。
高瀬堰の運用の効果についてですが、流下仔魚は流速が速くなれば、流下が促進されるということが判ったとともに、流速もある程度早くなることが判ったと思います。
塩分の遡上については、現状では塩水遡上はないことが判ったというものです。
では、最後に昨年度作成しました数理モデルを活用し、今後の方針について、検討してみたいと思います。
なお、この数理モデルは、太田川再生方針に基づく取組の効果を数値的に検証するため、作成したものです。
いろいろな項目からモデルを構築しておりますが、今回は、高瀬堰の運用により流速が速くなることを考慮して、どのくらいの効果があったのかという事を検証しています。
モデルのイメージとしては、最初に親魚がいて、産卵することでアユの個体数が爆発的に増えるのですが、流下や遡上に伴い徐々に減耗していくため、この減耗を取組によっていかに減らしていくことができるかということを検討するものになります。
計算方法としては、まず、40万尾、親魚がいると仮定し、さらに、取組を行わない場合は、そのうちの約32万個体が繁殖に貢献すると試算します。
そして、取組を行った場合の効果を検討するため、各取組の調査結果に基づき、モデルのパラメ―タ―を変動させ、最初に試算した繁殖に貢献する個体数がどれほど増加するのかという点を確認します。
何も取組を実施しなければ、繁殖に貢献する親魚は、32万個体ですが、これまでの取組の結果を反映させ、計算するとそれが35万個体まで増加します。
このことから、これまでの取組に一定の効果があることが判りました。
つまりは、繁殖可能な個体が増えるということは、それだけ漁獲量も増加するであろうと予想することができます。次に、今回の高瀬堰の運用の効果を試算しました。
今回の高瀬堰の運用に伴い、今まで流下率として0.1というパラメーターを入れていた部分を流速が約1.2倍になったという調査結果を反映させ、0.12にすると、繁殖に貢献する親の数が約38万匹まで増加します。
取組を何もしていない時と比べると、約6万匹近く繁殖に貢献する親の数が増えることになります。
これは、近年の漁獲量のグラフですが、平成25年に太田川再生方針を開始して、すこしずつではあるものの、アユの漁獲が増えている状況です。
平成25年の漁獲量から比べると平成29年度は、15万匹以上増えていることから、取組の効果によるものも大きいのではないかと考えています。
このことから、もう少しの間は、モニタリングを継続していく必要があるのではないかとは思います。

松田座長

ここまでの説明で、何かご質問等があればお願いします。
まとめにもありますが、遡上アユは、天然物というか自然界で再生産したものが多かったが、サイズは小さい個体が多かったようですね。
一方、平成29年度の流下仔魚調査の結果については、流下数が少ない状況であった。
天然アユの遡上が多いことは、良い傾向でありますが、平成29年度の流下仔魚調査の結果からすると、良い状況が続かない可能性もあるということですね。

建設技術研究所 瀬口氏

平成29年度の流下仔魚調査については、降雨の影響により、河川流量が例年と比べ、かなり多かったこともあり、調査時期がイレギュラーになってしまったことで、アユ仔魚の流下のピークを捉えられていない可能性も考えられます。
もちろん、この可能性を考慮する必要があるのですが、平成29年度の流下仔魚調査の結果を素直に見るとすると、喜べる状況ではないかもしれません。

松田座長

わかりました。
調査の時期による誤差を含む可能性もあるということですね。
また、塩分遡上の状況は、今回の調査の結果限りでは、取水施設に影響を及ぼすような塩分の遡上はなかったということですね。
また、モデル解析においては、今までの取組の効果をシュミレーションするとそれなりの効果があることが示唆されているという状況ですね。
その他にご質問はないでしょうか。

広島県農林水産局水産課 横内参事

天然アユの遡上数に比例して漁獲量が増えるという見解を示していただきました。
おそらく、天然アユの遡上数のベースになるものが、前年の流下仔魚の数量だと思うのですが、流下仔魚の数量に影響を及ぼす要因というのは何があるのでしょうか。

建設技術研究所 瀬口氏

まず、流下仔魚の数量を決める根本的な要因としては、産卵した親の数が多いことが考えられます。
また、それに加え、ふ化した仔魚が速く、海へと下ることが必要です。

広島県農林水産局水産課 横内参事

産卵した親アユの数が要因だとすると、平成29年度はアユの遡上が多かったということですから、結果としては、親アユの数が多くなるはずです。
単純に考えると、本年度の遡上状況であれば、流下仔魚も比例して多くなるはずなのに、実際の調査結果では、今年の流下仔魚は少なかったという結果となっています。
これは何が要因なのでしょうか。

建設技術研究所 瀬口氏

先程も申し上げたことなのですが、本年度は、河川流量が多く、調査時期がずれたことが要因の1つだと思います。
このため、平成29年度の調査結果では、流下仔魚は少ないという結果となっています。
しかし、平成29年度は、親アユが多く、河川流量も多いという条件がそろっていたことから、実際の流下仔魚量はかなり多かった可能性も高く、平成30年度シーズンのアユの遡上が多くなる可能性も十分に考えられます。

広島県農林水産局水産課 横内参事

ということは、平成29年度の流下仔魚調査の結果は、本来の状況を正確に把握できていない可能性もあるということですね。

建設技術研究所 瀬口氏

はい。その可能性も十分にあります。

広島県農林水産局水産課 横内参事

ありがとうございました。
太田川では、太田川漁協さんを中心に人工種苗の放流が盛んに行われていると思いますが、やはり、根本的な資源量を増やすには、天然の資源の貢献度が大きいということですね。

建設技術研究所 瀬口氏

そうですね。
ここ数年の傾向を見ると天然資源の貢献度が大きいといえるでしょう。
ただ、平成4年頃のデータを見ると、当時は、人工種苗を放流しただけ、漁獲に繋がっていた状況であったことから、当時のことを考慮すると、本当であれば、放流した数量だけのアユが漁獲されないとといけないと考えることもできますね。
しかし、近年は、そのような傾向は見られません。

松田座長

そうですね。
この懇談会が発足した当時にも類似した議論がありましたね。
その内容とは、太田川の天然資源の再生産能力が低下し、太田川の天然のアユの遡上がなくなった。
このため、アユの漁獲量を維持するには、放流を継続することが必須条件となってしまった。
しかし、放流によって一時的にアユの漁獲量を維持することができるものの、放流に依存し続けるということは、ある意味、釣り堀的な考えであり、長期的に考えると望ましいことではない。
このため、放流だけに依存しない、天然資源の再生産能力を高めることを検討する必要があるというものでしたね。
この議論については、長年のテーマとして取り組んできました。
そういった点からすると、近年は、天然アユの遡上が多くなっている傾向が見えていることから良い方向にシフトしていると考えることができますね。
すぐに答えがでるものではないと思いますが、なぜ、近年、天然遡上が多くなっているのかということを明らかにすることができれば、今後の取組をさらに発展させることができるかもしれませんね。
アユの天然遡上が増加していることに関する知見はご存じないでしょうか。

建設技術研究所 瀬口氏

まず、平成28年の流下仔魚調査の結果では、平成28年度は、流下仔魚数が非常に多い状況でした。
単純な考えですが、流下仔魚数が多くなれば、翌年の遡上が多くなる可能性があるということは、1つの要因です。もちろん、海域の生存率による影響も大きいのですが。
また、平成29年度は、太田川だけでなく、瀬戸内海周辺の多くの河川でアユの遡上が非常に多い状況であったと耳にしております。
このため、流下仔魚数が多かったことに加え、何らかの理由により、海域に出た後アユ仔魚の生存率が高かったことがもう1つの要因としてあるのかもしれません。
この議論に関する知見については、高橋先生の方がよくご存じではないかと思いますがいかがでしょうか。

高橋委員

平成29年度は、九州から静岡あたりにかけての広い範囲、太平洋側の海域に面する河川でアユの遡上が多い状況でした。
おそらく、瀬戸内もその流れに乗り、アユの遡上が多くなっていることが推測されます。
部分的なデータであり、正確にはお伝えできませんが、平成29年度は、太田川だけでなく、他の河川の事例も含め、全体的に回帰率が良いのではないかと思います。
このため、この状況が続けば、平成29年度の流下仔魚調査結果では、流下仔魚数が少ない可能性があるということではありますが、回帰率から考えると、平成30年度もある程度のアユの遡上が期待できるのではないかと思います。

松田座長

全国的に資源回復の傾向が見られているということで、平成30年度の遡上状況が重要になってきますね。
その他には、意見はありますか。

濱口委員

よろしいですか。
平成29年度の買取り調査では、小ぶりなアユが多い結果であったとお伝えいただきました。
これは、アユの遡上数が多く、生息密度が高くなっていることが要因の1つではないかと推察していますが、このことで、高橋先生にお伺いしたいことがあります。
それは、近年、川の生産力が低下しているというような知見をお持ちでないかということです。
といいますのも、アユの遡上数を増やすための取組を行ってきましたが、せっかくアユの資源が増えたとしても今の河川の環境では、遡上が増えた分だけ、すべてのアユを大きく成長させるほどのキャパシティがなくなってしまっているのではないかとも思えるのです。

高橋委員

そうですね。
濱口さんが言われるように、川の生産力が落ちているという事は、言えると思います。
長期的かつ広域的なモニタリングデータはないのですが、私が研究を行っている高知県の河川でも、アユ遡上数の増加に伴い、アユの大きさが小型化している状況が確認されています。
また、長年、潜水調査を行っていますが、川底のコケが減少している状況が確認されています。
もちろん、河川の環境は、その年の降雨や流況の変化によって、毎年、条件は変わってくるので、一概に決めつける事はできないと思いますが、川の生産力が落ちている傾向はあると考えて良いと思います。

濱口委員

ありがとうございました。
実は、なぜ、川の生産力の低下についてお聞きしたかと言いますと、このことは、シジミの資源状況にも大きく関係している可能性が高いからです。

松田座長

川の生産力というのは、主に植物プランクトン等の一次生産力が基準になるのでしょうね。ありがとうございました。

高橋委員

1点、よろしいでしょうか。
平成28年度の安芸大橋の流下仔魚の推定値を見ると、約6.7億の流下があったと試算されており、平成29年度の遡上数と比較して、単純に計算すると平成29年度の回帰率が概ね1%になると思います。
アユ回帰率の調査結果においては、和歌山県の事例で300分の1というものや高知県の事例で500分の1といったものがあります。
この2つの事例の数値でも回帰率はなかなかに高い値であり、概ね1%と言う数値は、それ以上の値となっていますね。
流下仔魚数やアユ遡上数は、どちらも調査のバイアスがかかりやすいため、少ない調査回数で精度をあげるというのは、相当に難しい話なのですが、このあたりの精度も高めていけることができれば良いですね。
もちろん、調査費には限りがあるため、単純に調査回数を増やすと言っても難しいということは承知しています。

松田座長

ありがとうございました。
他に意見はございませんか。
なお、長期的な方策に関係する内容については、次の議題(3)で併せて検討いただきたいと思います。
では、続きまして、議題(3)「アユにとって望ましい利水運用の実施に向けて」に移りたいと思います。
先ほどの議題(2)においても、広島市の委託業務の検証結果として、長期的な方策に関係する調査結果を報告いただいたところです。
なお、平成29年度は、長期的な方策に基づく高瀬堰の運用を試験的に実施していただきました。
また、祇園水門・大芝水門の運用については、平成28年度までに実施に向けた検討がなされてきたところですが、平成29年度の運用に向けた調整の中で、塩水遡上による取水業務への影響が再度、問題視されたことから、平成29年度は、水門の試験的な運用を見送られたと聞いています。
高瀬堰の運用については、広島市の委託業務だけでなく、国土交通省でも効果検証を実施していただいていることから、この議題では、まず、その結果をご報告いただきたいと思います。
そして、議題(2)で報告いただいた調査結果と併せて考え、長期的な方策に基づく祇園水門・大芝水門の運用の検討を含め、長期的な方策の今後の取組方針についても検討したいと思います。
それでは、長期的な方策に基づく高瀬堰の運用の効果検証の結果について、国交省さんからご報告をお願いします。

説明(資料3)「平成29年度試験的運用時の流速調査結果(高瀬堰)」

国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所 高瀬分室 長谷川係長

太田川河川事務所管理第二課の長谷川でございます。
よろしくお願いします。
それでは、平成29年度の高瀬堰の試験的な運用に併せ、高瀬堰で行った各調査の結果についてご報告したいと思います。
では、まず、アユ仔魚の一般的な生態について説明します。
アユ仔魚の流下の時間帯は19時前後と言われています。
では、太田川における過年度のアユ流下仔魚調査の結果を踏まえて右上の図を見てください。
図の上の部分は、堰上流のアユ仔魚の流下のピークを示したものですが、概ね19時前後にピークが来ています。
次に同じ図の下の部分ですが、こちらは堰下流の仔魚の状況です。堰下流では、翌1時に流下のピークが来ていることから、アユ仔魚が堰を流下するのに概ね6時間かかっていることが判ります。
また、右下の図は、平成19年に時間別のアユ仔魚の流下状況を把握するために、1日を通じて調査を行った結果です。
この調査結果では、早朝・昼に流下は、ほとんど確認されておらず、夜間の流下量を100%とすると早朝・昼間の流下は、多くても5%とかなり低い状況でした。
次いで、高瀬堰の試験的な運用の概要を説明させていただきます。
まず、高瀬堰では、太田川再生方針に基づくアユを増やす取組として、アユ仔魚の流下を促進させることを目的とする試験運用を実施しました。
当初の計画では、アユ仔魚の流下時期である平成30年10月23日から11月30日までの期間に夜8時から翌4時の時間帯で放流を行う予定でした。
なお、高瀬堰が洪水警戒体制に入る規模の流入量が入る場合は実施しないこと、渇水のある場合は実施しないという条件付きではあります。
次いで、試験運用のイメージに関する説明です。
高瀬堰の上流には、太田川発電所と可部発電所があり、昼間はそれらの発電所で発電放流が行われていることから、昼間の流況は良く、運用水位の10.9mから11.1mの範囲の中で高瀬堰から放流を行っています。
今回の取組では、発電放流を活用し、昼間に貯水を行い、運用水位上限である11.1mまで水位を上昇させます。そして、アユ仔魚が流下する夜間の20時から翌4時までに運用水位の下限である10.7mになるまで放流を行うという方法で取組を実施しました。
しかし、前の議題でも言われていたように、今年は10月には降雨が多く、河川流量が多かったことから、実際に取組を開始できたのは、11月17日から11月30日までの期間となりました。
それでは、高瀬堰の運用に伴う効果検証調査の結果です。
グラフは、堰上流の貯流水を堰下流に放流することによる貯水池内の水位の変動を示しています。
昼間は、可部発電所の発電放流があることから、貯水池内の流況は良いのですが、発電放流が終わると、流況が悪くなります。
このため、発電放流が終わった時間帯に高瀬堰の試験運用を行うことで、放流量を約1トンから5トン増やし、流況(流速)を早くすることができ、アユ仔魚の流下が促進されます。
次に、貯水池内の流速をまとめましたのでグラフをご覧ください。
赤色のグラフについては、高瀬堰上流の3川合流(太田川、根ノ谷川、三篠川)の流速を示しています。
この地点は、発電放流の影響が大きく、発電放流がない時間帯だと、かなり流速がさがります。
今回の取組により、貯留水を放流しましたが、この地点では、効果が見られず、流速がはやくなることはありませんでした。
一方で、堰直上と堰中流部については、流速を一定量あげることができました。
次のグラフは、その結果を表したものになります。
結果として、堰直上付近では、約3cm/sの流速の増加がありました。
流速を約3cm/sあげることによって、アユの流下を約1時間早くすることができると試算され、取組の効果がある程度はあることが判りました。
次に運用時の流下仔魚調査の結果についてです。
11月20日から翌21に実施した調査結果では、堰上流では、18時にアユ流下仔魚のピークが確認され、堰下流では、20時頃にピークが確認されています。
概ね18時に流下のピークを迎えた個体が20時に堰下流に下っていることから約2時間で堰下流に降下していることが判りました。
しかし、これまでに繰り返しお伝えしましたが、今年度は、河川流量がかなり多く、例年の倍以上の流量(51立方メートル/s)があり、流下仔魚がかなり速く流下していたことから、高瀬堰の試験運用を開始する前に流下のピークを迎えてしまったという結果になってしまいました。
このため、今年度は、流量が多く、例外的であったことを考慮し、過年度の調査結果をまとめ、河川流量とアユ仔魚の流下のピークについて、取りまとめました。
通常(平均的な)の流量の時に試験放流を行った場合は、夜間の平均放流量10トン~20トンのところに貯留水を上乗せして、約5トン程度の水を放流することになります。
図で示しておりますとおり、5トン放流量を上乗せすることで流下仔魚のピークを次のステージに移すことができ、ある程度、早めることができることが示唆されました。
例えば、通常の10トンから20トンの流量であれば、試験放流により1時間程度流下のピークを速め、より卵黄指数の高い仔魚を流下させることが期待されるとおもいますので、平成30年度は、そのあたりにも注目していきたいと思います。

松田座長

ありがとうございました。
ここまでの説明で、何かご質問等があればお願いします。
高瀬堰の試験的な運用により、アユ仔魚が堰を流下するピークをはやめることができるという内容でしたが、非常に判りやすいデータを示していただけたと思います。

高橋委員

非常に理解しやすい、きれいなデータだと思います。
では、1点伺いたいことがございます。
アユ仔魚の流下のピークについて、堰の上流と下流で示したグラフがあり、この中で卵黄指数別に整理されているものがあるのですが、堰の下流で捕獲した仔魚については、卵黄指数0,つまり、3日以上経過したものがある程度含まれています。
この点については、どのように考えていらっしゃいますか。

国土交通省太田川河川事務所 高瀬分室 長谷川係長

サンプリング方法が異なるということが要因の1つと考えられます。
堰下流については、プランクトンネットを固定し、サンプリングを行っておりますが、堰上流については、船でネットを引きサンプリングしています。
また、サンプリングした個体の中には、指数判定が難しい個体も含まれており、そういったことによる誤差が生じた可能性も考えられます。

高橋委員

ありがとうございました。
卵黄指数0の個体については、物理的に卵黄が取れてしまった個体も含まれる可能性があるということですね。
通常、卵黄指数レベル4や3の個体がふ化した直後の仔魚であると考えられています。
しかし、河川の中には、ふ化後、礫の間から河川の水中に浮上するまでにかなりの時間がかかるところがあるようなのです。
そのように説明しないと説明がつかない河川も複数存在します。
ですから、卵黄指数の組成にこだわらず、流下仔魚の数量のみで判断した方が事実に近い可能性もありますね。太田川の傾向は判りませんが、今回のデータから考えると太田川についても、礫の間から河川水中に浮き上がるまでに時間がかかっている可能性はかなり高いのではないかと思います。

国土交通省太田川河川事務所 高瀬分室 長谷川係長

ありがとうございました。
今後の参考にさせていただきます。

松田座長

他に意見はありますでしょうか。
また、質問等がありましたら、議題の順番に関係なく、随時、遡りますので、都度、お伝えください。
それでは、長期的な方策の今後の取組方針を検討するにあたり、事務局から説明いただきたいと思います。

説明 資料4「長期的な方策(アユに適した利水運用)の今後の取組方針について」

事務局 古矢技師

説明

松田座長

ありがとうございました。
ここまでの説明で、何かご質問等があればお願いします。

(公財)広島市農林水産部水産振興センター 藤井部長

よろしいですか。議題の内容とは話が離れてしまいますが、先ほどの議論に河川の生産力の低下に関する話がありました。
もちろん、アユの生息場所として、河川の環境について考えていくことは重要でありますが、一方で、アユ仔魚の成育場所となる海の環境についても考えていく必要があるのではないでしょうか。
しかし、海の環境改善に取組むと言っても、我々ができる取組は、限られているのだと思います。では、どのような取組を推進していくことが良いのでしょうか。

松田座長

ありがとうございました。
海の環境に関する議論というのは、以前から重要視されてきたところですね。
過去には、アユ仔魚の成育には、海の環境が重要であり、広島湾においては、アユ仔魚の成育に適した場所が十分に整っておらず、汽水域となる放水路がその役割を担っているのではないかという議論もありました。
現時点では、海の環境改善という点で具体的な対策を行っていないと思います。
過去の議論の中でも高橋さんからもそのような情報提供をいただいたと思います。
急で申し訳ないのですが、高橋さん、ここで知見を紹介いただけないでしょうか。

高橋委員

はい。そうですね。
まず、海の環境がアユの遡上に影響を与えるという点に着目する場合、多摩川の事例があります。
それは、近年、多摩川のアユ遡上が増えた要因には、東京湾の環境変化が影響しているのではないかというものです。
広島湾をはじめとする国内の沿岸域では、都市整備が進み、垂直護岸となっていると思います。
このような状況の中で、近年、東京湾では、人工の干潟が整備され、アユ仔魚が成育できるような広い浅瀬ができました。
このことが、多摩川のアユの遡上が増えた要因の1つになっているのではないかと考えられています。
しかし、現実的に考え、広島湾で干潟の整備を行っていくとなると、かなり長期的に考えていかなければならない話になってしまうと思います。
また、もう一つの知見としては、高知県の事例があります。
まず、遡上してくるアユのふ化日を調べることで、どの時期にふ化したアユ仔魚の回帰率が良いかということをある程度、特定できるという手法があります。
高知県の事例では、この手法を活用し、ふ化日が遅いアユ仔魚の回帰率の方が高くなるという傾向が見られているという結果から、産卵場を造る時期をできるだけ遅らせて、後期ふ化期にまとめてアユに産卵させることで、回帰率を上げる取組が行われています。
ただし、アユの資源が急激に回復する場合というのは、前期ふ化期に生まれた個体の回帰率が高くなっていることも重要です。
アユの資源は突然に急激な回復をみせる場合がありますが、このような急激な回復を狙うのであれば、やはり、前期ふ化期の産卵量を確保することが重要です。
つまり、結局のところは、アユの産卵期を通じて、アユを保護し、いかに多くのアユ仔魚をふ化させ、海に送り出すことができるかという点が一番重要なことになりますね。
また、太田川再生方針に基づく取組としては、余剰種苗の放流を行っていると思います。
余剰種苗の放流は、ふ化直後の一番弱い期間を飛ばし、放流できるという点では、一定の効果が見込める取組ではないかとは考えています。
但し、余剰種苗の放流効果については、放流後の海域の環境に大きく左右されるというのも事実だと思います。

松田座長

ありがとうございました。
近年のアユの回帰率は、バイアスがかかっていることを考慮したとしても、良い傾向であったことだと思いますので、海の条件が揃えば、まだまだ、天然資源を回復させるポテンシャルは残っているということかもしれませんね。

広島県農林水産局水産課 横内参事

海の環境の話について、1点よろしいでしょうか。
広島湾におけるアユ仔魚の生息状況については、過去に、県水技センターの工藤さんが調査されていたことがあります。
すぐに答えが出るものではありませんが、工藤さんに改めて話を伺えば、広島湾におけるアユ仔魚の成育状況の詳細が判るかもしれません。
また、広島湾の沿岸域が垂直護岸であるという点について補足ですが、過去の知見では、沿岸域の船の巻き上げ施設等にアユ仔魚が集まり、生き残っているという状況があったことが確認されたものもあります。

松田座長

ありがとうございました。
広島湾では、アユ仔魚の成育に必要な浅場が減っている状況ですが、東京湾の事例や船の巻き上げ施設の事例のように、人工物が浅場の役割を補う可能性もあるということですね。
県水技センターの工藤さんの知見も入れて、今後を検討していくことも将来的な選択肢を増やすという点で良いものではないかと思いますね。

濱口委員

すいません。
今の議論とは少しそれてしまうのですが、よろしいですか。
今年度は、国土交通省さんの尽力により、高瀬堰の運用が試験的ではありますが開始されました。
このことは、非常に画期的なことであったと感じています。
ここで、質問させていただきたいのは、高瀬堰の運用に伴う効果検証についてです。
この効果検証については、単年や来年度の調査で概ねの結果がわかるのか、それともアユの資源状況に注目すると、もっと長い期間の検証が必要なのか。
事務局からのお話があったように、太田川再生方針に基づく取組については、平成30年度が一旦の区切りとなることから、平成31年度の体制や取組についても、そういった側面からも検討が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

高橋委員

個人的な意見ですが、高瀬堰の運用については、今回の結果だけでも十分に効果が出ていると言って良いのではないでしょうか。
国交省さんから示しいただいたデータを見る限り、放流量5トンにつき、流下時間が約1時間短縮されるというとてもきれいな結果がでていることから、高瀬堰の運用は、十分に効果があると言っても良いでしょう。
ただし、考慮する点があるとすれば、高瀬堰を流下した後に、海に流れ出るまで動向がどうなっているかということですね。
しかし、高瀬堰の運用の効果を下流域の動向まで含めて、検証していくとなると本質が見えなくなる可能性があります。
このことから、高瀬堰の運用については、今回の結果で整理しても良いのではないでしょうか。

松田座長

そうですね。
それだけでは、必要十分条件ではないため、必要条件を積み重ねていくことが重要ということですね。

濱口委員

そうですね。
今後、その方向で検討していけば良いですね。
しかし、一点だけ、今回のデータについて、注意する必要があるのは、平成29年度は、河川流量がかなり多かったという特異的な環境での結果であるということですね。
できれば河川流量が平年値位の時の傾向も見てみたいなと思いますね。

高橋委員

最後のグラフで示されたデータのトレンドから考えると、河川流量が30トンぐらいまでは、取組の一定の効果が期待でき、それ以上の流量があるときは、そのまま流していただければ良いのではないかと思います。

松田座長

そういう意味でも本当に良いデータが取れているという事ですね。

濱口委員

とっても良いデータなので、このデータを今後も生かしていけると良いですね。

松田座長

そうですね。ありがとうございました。
事務局からは何かありますか。

事務局 古矢技師

はい、祇園水門及び大芝水門の運用についても議論いただければと思うのですが。

松田座長

そうですね。
しかし、こちらはなかなかに繊細な問題ですね。
こちらの懸案については、祇園水門を開けることで市民が利用する水を作るための取水へ影響を与えかねないということが論点になると思います。
広島市が委託した調査の結果では、今回に限っては、塩水遡上は確認されていないということですが、実際に運用を行った場合どうなるのかわからないという問題もありますね。
これについては、ご意見はありますか。
繊細な問題ではありますが、どこかで結論をださないといけないというのも事実です。
確認ですが、取水施設は広島市だけですか。

事務局 古矢技師

取水施設は、広島市だけでなく、呉市、広島県の取水施設が隣接しています。
祇園水門・大芝水門の運用については、平成28年度から具体的な調整をはじめ、関連調査の実施や平成29年度には、作業部会を開催する等、検討を進めてきました。
しかし、検討を進める程に、さらなる問題点が上がってくる状況です。
このような状況において、はたして本当に、祇園水門・大芝水門の運用を行うことができるのかと事務局としても苦慮しています。

松田座長

そうですね。
こちらの運用については、事務局にお話いただいたように慎重な検討が必要ですね。
祇園水門・大芝水門の運用については、本日、問題提起があった部分を考慮した上、引き続き、事務局に調整を進めていただき、最終的な方針を決定したいと思います。
また、高瀬堰の運用については、平成30年度も試験的な運用の実施を検討いただけるとのことから、引き続き、取組を推進していただければと思います。
それでは、一旦、アユの取組についての話は終わりにしたいと思います。
では、議題のきりが良いので15時まで休憩を取りたいと思います。

~ 休憩 15分 ~

松田座長

では、後半のパートに移り、シジミに関する議論を進めていきたいと思います。
議題(4)は、「ヤマトシジミ資源増殖に関する試験について」です。
事前にいただいた情報では、今年度は、シジミの漁獲量が156kgと過去最少と壊滅的な状況なっていると聞いております。
シジミを増やす取組については、平成26年度より(公財)広島市農林水産振興センターと広島市内水面漁業協同組合さんが共同で取り組んでおられます。
その効果検証につきましては、(公財)広島市農林水産振興センターが中心となって実施していますが、この1年間でいろいろと新しい発見もあったと思いますので、その内容についてご報告いただきたいと思います。
また、本日は、濱口先生からも宍道湖の取組事例についてもご紹介いただける予定です。
では、まず、(公財)広島市農林水産振興センターさん、よろしくお願いします。

説明(資料5)「ヤマトシジミ資源増殖に関する試験について」

(公財)広島市農林水産振興センター 佐藤技師

それでは、はじめさせていただきます。
当試験は、他産地の種苗放流を継続的に実施しているが、資源の回復にはつながっていないこと、全国的なシジミの資源の減少から放流量の種苗の確保が難しい状況にあることから、太田川産の天然母貝から人工種苗を生産し、放流手法を検討することを目的に開始されました。
広島市では、その基礎的な内容として、市センターで生産した人工種苗が太田川でも生存・成育するのか、また河川での中間育成が可能なのを検討するため、試験を実施してきましたので、その結果をご報告させていただきます。
試験場所は、西区大芝の地先です。
平成26年から開始した試験ですが、平成27年度までの試験により、表の3つのことがわかり、最終的には、塩ビ管を用いた成育手法が有効だとわかりました。
このことから平成28年度からは、塩ビ管を用いた成育試験を本格的に開始しております。
では、平成28年度の試験概要です。
本センターで生産した殻長1mmの個体を河川に設置した塩ビ管の中に収容数(6000,3000,1500)を変え収容し、成育状況を観察しました。
塩ビ管の設置状況は図のとおりです。
平成28年度産の種苗を活用した試験では、管理途中でネットの目合いを変更し、成育状況に差が出るのかと言う点にも注目しております。
サンプリング方法については、毎回50c立方メートルのコアサンプリングを行い、人工種苗の生残を確認しました。
では、平成28年の試験結果です。
まず、左の図は、ネットの目合いを変更していないデータになります。
平成28年の11月に収容個体数別(6,000,3,000,1,500個体)に平均殻長1mmの個体を塩ビ管に入れ、約1年間飼育した結果、平均殻長は、約4mmまで成長していました。
なお、収容個体別の成長差はありませんでした。
一方で、右の図は、途中でネットの目合いを変更したデータになります。
人工種苗の収容時は、ネットの目合いを変更していない場合と同様の手法で殻長1mm種苗を入れ、平成29年5月にネットの目合いを約2倍の1.5mmに変更しました。
結果、ネットの目合いを変更した個体群は、急激な成長を見せ、平均殻長9mmまで成長しました。
なお、こちらについても収容個体数による違いはありませんでした。
ネット目合いの変更に伴う成長差については、すべての収容密度において、優位な差が確認できています。
また、河川環境下でのシジミ人工種苗の成長速度に関する研究事例はないことから、今回の得られたデータがどの程度、妥当なものであるのかということを判断するため、既存の研究データがある他の河川や湖の天然の個体との成長速度の比較を行いました。
比較の結果、他の河川の天然個体の成長速度とも極端にはなれたデータではなかったことから、妥当なデータであると判断されました。
次いで、平成29年度の試験概要についてです。
当該試験は、河川での効率的な中間育成方法を検討するという目的で開始されている経緯があることから、平成29年度は、高密度飼育を行い、どの程度までならば塩ビ管に収容しておけるのかという調査を行っております。
平成29年度の調査では、平均殻長約1mmの個体を10万個、5万個、1万個とこれまでの試験と比べてかなり多くの個体を収容し、経過観察を行いました。
設置状況は次のとおりです。
現時点での経過は次のとおりです。
生存率については、収容密度にかかわらず、90%以上となっていました。
成長率についても収容密度による変化は見られていません。
なお、シジミは冬場にほとんど成長しないことから、収容密度によらず、殻長は大きくなっていない状況です。
今後、水温が高くなる4月以降の成長率に着目し、経過を観察したいと思います。
この写真は、殻長1mmの人工種苗の写真になります。
平成29年度産種苗の平成30年度4月以降の試験の今後の方針としましては、平成28年度4月同様にネットの目合いを大きくし、これまでどおり、コアサンプリングを行い、経過を観察するとともに、コアサンプリングを行っていない塩ビ管の状況も併せて確認したいと思います。
その結果と平成28年度までの結果から当初、塩ビ管に収容する最適な個体数を導きだしたいと思います。
では、これまでのまとめです。
塩ビ管のネットは、適正な時期に大きくすることで成長を促進させることができる。
高密度で収容した個体についても現時点では高い生存率を維持している。
では、最後に今後の課題について検討しましたので、ご紹介します。
人工種苗成育試験の当初の目的は、人工種苗を生産し、放流することで、資源添加を図るという目的で開始されました。
この目的を達成することをめざし、試験研究を進め、塩ビ管による中間育成手法の確立により、ある程度大きなサイズの人工種苗を生産することに成功しました。
しかし、ここで1つの問題が浮上します。
広島市水産振興センターでは、太田川流域の27地点で資源量調査を行っています。
資源量調査の結果では、春には、殻長10mm以下の個体が一定量確認されていますが、
秋になると、資源量が大幅に減少するとともに産卵可能なサイズとなる15mm以上の個体が非常に少ない状況となります。
また、内水面漁業協同組合では、宍道湖産の種苗(約20mm)を購入し、毎年6トンから8トンの種苗を放流しているにもかかわらず、それも消えている状況です。
この要因としては、食害、斃死、下流に流されている等の理由が考えられますが、明らかとはなっていません。
こういった条件から塩ビ管による中間育成手法がある程度、画一されたとしても、放流場所の検討、シジミが減少した原因の究明などの課題が残ります。
こういった中、今後の人工種苗の取り扱いについて、この会議の場で意見いただければと思います。
では、最後に内水面漁協さんが今年度から開始された取組をご紹介します。
漁協では、水産多面的事業を活用し、人工種苗成育試験の中で検討された塩ビ管の手法を活用し、母貝保護の取組を行っています。
それに併せて、母貝の生残状況や成熟度を確認されているという状況です。
では、これで、発表を終わります。

松田座長

ありがとうございました。
研究結果の報告とともに検討内容についてもご提案いただきました。
鈴木組合長さんから何か補足はありますか。

広島市内水面漁業協同組合 鈴木組合長

補足させていただきます。
広島市内水面漁協では、センターが調査する際には、一緒に調査をしています。
これまでに、ネットをかける取組等、いろいろ試みましたが、期待したような効果は得られず、試行錯誤の末、行き着いた手法が塩ビ管による保護です。
今年からは、塩ビ管の設置数を増やすとともに、設置場所も大芝水門の下流1か所から京橋川と天満川にも増やし、塩ビ管の中には、太田川でとれた天然のシジミを入れて経過を見たいと考えています。
また、濱口先生にご紹介いただいた宍道湖漁協から、今年も種苗を購入し、宍道湖産種苗の放流も継続しようと思っています。
漁協としては、このくらいしかできることが残されていません。

松田座長

ありがとうございました。
塩ビ管の手法は今のところ生残率が良いので、漁協さんとしても平成30年度は、塩ビ管の設置数や場所を増やそうということでした。
では、只今の報告に対してご意見はあるでしょうか。

広島県農林水産局水産課 横内参事

よろしいですか。
私は、今回、はじめてこの会に参加させていただいたので、質問させていただきたいのですが。
シジミが急激に減少した要因については何が考えられるのでしょうか。
思いつく限りでは、食害や温暖化による影響があるとは思うのですが、要因については、どのくらいわかっているのでしょうか。

松田座長

食害の対策については、ネット被覆の取組に濱口先生が尽力されていると思います。いかがでしょうか。

濱口委員

はい。
まず、結論から言ってしまいますが、アサリの事例とも類似するのですが、シジミも保護をしないと残らない状況です。
佐藤さんが示されたデータにもありますが、現在の太田川では、殻長10mm以上の個体がほとんど確認できていないと思います。
この要因として考えられるのは、おそらく、食害です。
しかも、クロダイによる食害が一番の要因ではないでしょうか。
食害を防止するには、海であればネットを張ることが有効ですが、河川においてネットを張ることはできません。
保護のため、ネットで被覆したとしても、砂に埋まってしまい、種苗は死滅してしまいます。
このことから、これまでの検討のすえ、塩ビ管に行きついたのです。
今のところは、塩ビ管による保護しかない状況だと思います。
また、塩ビ管手法での成長率が良いこともこの手法の良い点の1つと言えるでしょう。
資料では、太田川以外の成育状況と比較されていますが、比較された事例のほとんどが湖沼になります。
河川の中では、かなり成長率が良いと言えるでしょう。
この点からも、塩ビ管による保護区を増やしていくというのは、最も妥当な方法であると考えますので、今後は、この手法を進めていくしかないと思います。

松田座長

やはり、シジミが減少した一番の要因は、食害被害が大きいということですね。
食害防止の手法としては、ネットで被覆することが一般的ですが、河川の場合、流動が盛んであることからメンテナスが困難である。
今のところ、塩ビ管による保護が妥当であるということですね。
では、ここで、濱口先生からも話題提供いただきたいと思います。
よろしくお願いします。

濱口委員

太田川再生に基づく取組についても、平成26年度から活動をされていると思いますが、宍道湖においても「宍道湖保全再生協議会」という組織があり、そこでシジミを増やす取組を行ってまいりましたので、ご紹介いたします。
まず、宍道湖のシジミの資源量は、平成24年頃まで、急激な減少が続いていました。
宍道湖は、シジミの漁獲量が全国1位であり、この資源の減少を防ぐための取組がちょうど、この太田川再生方針に基づく取組が始まった頃と同じ位の時期に宍道湖でも開始しました。
そして、その取組が今年で5年目を迎えたことから、つい先日、取組の成果を宍道湖の漁業者さんにご紹介してきたばかりでございます。
結論からお伝えしますと、宍道湖のシジミ資源は、平成24年まで減少している状況でしたが平成25年に急激に資源が増えました。
資源量は、それまでの4倍まで増えており、この期間は、わずか半年です。
その後も資源量が多い状況が5年後の今まで続いているという事例があります。
皆さんもご存じのとおり、シジミに限らず、ほとんどの二枚貝は全国的に資源が減少しており、我々は、アサリを増やす取組についても長い間、尽力してきましたが、これほど急激に資源が増えたという事例はありません。
この宍道湖でのシジミに関しては、大変貴重な事例を調査・研究することができました。
この調査・研究で得ることができた知見を、ここでは、紹介させていただきたいと思います。
まず、我々は、初期生態、いわゆるシジミが産卵した後、浮遊幼生がどのように着底し、増えていくのかということを調査しました。
そして、急激に資源が回復した平成25年は、宍道湖の比較的いろいろなところで稚貝が増えていることが判りました。この傾向は、それまでに見られなかったものです。
では、なぜ、このような傾向になったのか。
その理由は産卵回数に着目してみると1つの推測がたちます。
それは、平成25年の産卵回数は、例年の2倍以上もあり、このことで、大量に資源が加入したことが、要因ではないかということです。
そして、宍道湖保全再生協議会では、シジミの産卵回数がなぜ増えたのかと言う点に着目しました。
そこで一番に考えたことは、餌の量が多かったのではないかということです。
産卵回数を増やすには、餌の量が多くないとできません。
シジミの再生産は、餌の条件が良ければ、急激に増加します。
また、今、食害という話をしましたが、年間でどのくらいの被害を与えるのかというイメージはつきにくいかもしれません。
宍道湖では、資源量が約6万~7万トンあると推定されておりますが、そのうち、約2万トンが食害により失われます。
宍道湖の場合は、クロダイではなく、鳥による食害ですが、それが約2万トンです。
しかし、先程もお伝えしたとおり、餌条件等の環境が良ければ、再生産が活発になり、食害があったとしても、それでも、資源が残るのです。
平成24年など、資源量が少なく、餌環境も悪い年には、食害による影響がかなり効いており、食害が原因となり、資源量が減少し、回復しなかったことが考えられます。
餌の条件さえよければ、食害の影響でも、軽く乗り越えることができる可能性があります。
また、シジミには、塩分濃度が重要でありますが、宍道湖は平成25年以降、適切な塩分濃度になっているのですが、太田川においては、塩分遡上の問題があり、若干、高めに推移しています。
また、塩分遡上の影響により、海産魚類による食害が大きくなっていることも考えられます。
太田川の環境は、シジミの生息には、塩分濃度が高い状況であることと塩分遡上に伴う海産魚類の食害が増加していることが、資源の再生産を妨げる要因になっていると考えられます。
では、宍道湖の話をまとめますが、平成25年に資源が急激に増加し、前年度の4~5倍まで資源量が回復し、今現在まで、高水準で推移しています。
資源の急激な回復の要因としては、塩分濃度がシジミの生息に適正な範囲で安定化したこと、餌が増加したことでシジミの再生産が活発になったと考えられます。
さて、先ほど、高橋委員にも伺った内容になるのですが、河川の生産力が今どうなっているのかという点で疑問に思う部分があります。
それは、海洋環境については、貧栄養化が懸念されていると思いますが、河川においても海と同じことがいえるのではないでしょうか。
今後、増え続ける食害を上回る量まで資源を回復させるためには、大量の餌が必要となります。
しかし、太田川においては、シジミの餌、つまりは一次生産(基礎生産)がどうなっているかということがわかりません。
しかし、本日の議題でも説明のあった報告の内容から考えると、現状では、太田川においても生産力が低下しており、シジミが爆発的に増える環境は整っていないのではないのかと思うのです。
餌料環境の改善による資源量の回復の可能性が低いのであれば、食害を防ぐことがさらに重要になってきます。
食害対策として、これまでの広島市さんや内水面漁協さんの現場の取組によって、塩ビ管による手法が有効ではないのかということが判ってきました。
このことから、当面の間は、塩ビ管による保護を拡充し、母貝を残しながら、何らかの環境改善が起こり、爆発的に資源が増える機会を待つしかないと感じています。

松田座長

ありがとうございました。
宍道湖で得られた大変貴重な知見をご紹介いただけましたね。
食害の対策というのが今後のキーポイントになってくるということですね。
今の話題に対してご意見はありますか。

広島市内水面漁業協同組合 鈴木組合長

よろしいですか。
取組に関する内容ではなく、議論がそれてしまうかもしれませんが、太田川の河床の状況について意見がございます。
それは、以前と比較すると、川床があがり、水深が非常に浅くなっているということです。
私は、30年以上、太田川で漁業していますが、昔から比べると干潮時に船が動かなくなる地点が増えたと感じております。
さらに、干潮時には、みお筋がなくなってしまいます。
特に、冬場の大潮の干潮時には、京橋川には、水が流れていません。
このようなことは、以前では、考えられませんでした。
このことは、何かしらシジミの減少に影響を与えているのではないでしょうか。
この原因は、大芝水門の上流から砂が流れてきても、それを海域まで押し流すだけの流量がなくなっているのではないかと感じています。

濱口委員

そうですね。
河川管理によるシジミへの影響というのは、ある程度は考えることができると思います。
例えば、宍道湖でも流入してくる河川の環境が大きく変わってしまったことでシジミの生息環境に影響が発生した事例があります。
具体的には、宍道湖に流入する河川の上流に洪水防止のための施設が作られ、河川の流入量が減少したことで、湖内の水草が増え、環境を悪化させてしまいました。
ただし、河川管理には洪水防止といった人の生活を守るための重要な目的があるので、単純に悪いことであると言い切れません。
しかし、シジミは、微妙な変化でも生産性が劇的に変化するというのが示唆された事例となりました。

松田座長

ありがとうございました。
私からもよろしいでしょうか。
宍道湖の状況に関することなのですが、シジミの資源には珪藻類等の餌の量が重要であるというお話ですが、宍道湖では、エサの指標としてクロロフィルの量などは測定しているのですか。

濱口委員

はい。クロロフィルの量だけでなく、餌の組成等も詳細に調査しています。
また、シジミの餌料環境については、水中の珪藻類の量だけでなく、陸の植物から由来するPOM(分離有機物)量も影響が大きいので、その点も考慮しています。

松田座長

ありがとうございました。
また、宍道湖の流況はどのような状態でしょうか。
もちろん、太田川の流況とは異なる部分も多いと思いますが。
流況による浮遊幼生の分布という議論もかつてありましたね。

濱口委員

はい。流況については、浮遊幼生の分布をみるとわかりやすいです。
宍道湖であれば、無効分散することなく、湖の中で完結しますが、太田川においては、雨の降り方によって浮遊幼生が分散されてしまう可能性が高くなります。
松田先生のご指摘のとおり、浮遊幼生の拡散というのも、資源量の減少の要因の1つと考えられますね。
かつては、雨の時期にシトシトとゆっくり雨がふることが多かったのですが、近年は、局所的にまとまったゲリラ豪雨のような雨が降ることが多くなり、一時的に河川流量が多くなり、洪水のように流れてしまう状況です。
シジミの産卵期は夏であることから局所的な雨が多く、浮遊幼生が流れてしまっている可能性も考えられるのです。

松田座長

ありがとうございました。
その他に意見はありますか。
広島市内水面漁業協同組合さんにおかれましては、来年度から母貝保護の取組に力をいれていかれるとのことですので、引き続き、(公財)広島市農林水産振興センターを中心とするサポートをお願いします。
それでは、最後の議題となりますが、議題(5)「今後の取組方針について」を検討させていただきたいと思います。
太田川再生方針に基づく取組は、取組を開始して5年となる平成30年度に一連の取組の効果を評価し、平成31年度以降の方針を検討する必要があることを事務局から確認しております。
この議題では、今後の方針について、議論していきたいと思います。
なお、検討にあたり、事務局から説明をお願いします。

説明 資料6「太田川再生方針の今後の取組方針について」

事務局 古矢技師

広島市では、平成25年に「太田川再生方針」を策定し、平成26年度より「太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会」並びに同懇談会の「水管理部会」を立ち上げ、当該懇談会の提言に基づき、段階ごとの方策を定め、各機関や関係者と連携しながら、アユ及びシジミ資源を増やす取組の推進とその取組の効果検証調査を実施してきました。
平成30年度は取組を開始し、5年目となる節目の年となることから、これまでの取組内容を統括し、平成31年度以降の方針を検討する重要な年になります。
また、平成29年度は、アユを増やす取組として、国土交通省さんの協力により、長期的な方策に基づく高瀬堰の試験運用が開始される等、取組がまた1歩前に進んだ年となりましたが、こちらの取組については、本運用に向けて検討を進めていきたいと考えています。
祇園水門・大芝水門の運用については、本市が実施した調査の結果では、水門の運用をしていない場合では、塩水遡上は確認されていませんが、実際に運用を行った場合にどのような結果になるかということについては、実際に運用してみないと判断できません。
このためには、国土交通省さんや利水関係者の方の賛同が必要でありますが、現状では、運用の凍結ということも選択肢として、考える必要もあるのではないかと思っております。
さらに、今後の方針を検討していくにあたっては、効果検証調査の調査費用など、金銭的な部分についても考慮していく必要もあります。
以上をふまえ、事務局としましては、予算要求時期の前である6月~7月を目途に検討会のような形で、皆様にお集まりいただき、今後の方針を決めていきたいと考えております。

松田座長

ありがとうございました。
先程の事務局の説明では、平成30年度というのは、今後の方針について検討を進める重要な年になるということでありました。
事務局の提案では、予算要求前の6月~7月において、今後の方針を検討するための会議を開いてはどうかというものでありました。
本日の懇談会の結果をふまえた上での検討が重要だと思いますので、今後の方針について、皆様の活発な意見交換をお願いします。

広島県農林水産局水産課 横内参事

よろしいですか。
取組を評価するということですが、具体的にはどのような評価をするのですか。

事務局 古矢

平成30年度までの懇談会で議論し、積み上げてきた成果をもとに、各取組の効果を評価し、それぞれ取組の継続の有無や効果検証調査の規模及び実施の有無について精査していきたいと考えています。

松田座長

他に意見はありませんか。
では、私からもよろしいですか。
長期的な方策についてですが、高瀬堰の運用については、本年度、試験的に運用をいただき、効果検証結果としてもきれいなデータを出していただいているところです。
こちらの取組については、現時点で試験的な運用であることから本格的な運用に向けて、検討を進めていくことはできないでしょうか。

国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所 先灘副所長

本年度の高瀬堰の運用については、運用規則の範疇で対応を行いました。
このことから来年度については、本年度と同様に試験運用として対応することは可能と考えています。
しかし、本格的な運用については、運用規則の兼ね合いもあるため、さらに検討が必要であると思います。

松田座長

ありがとうございました。
また、祇園水門・大芝水門の運用については、塩分遡上があるという点を考慮した上、引き続き、最終的な判断に向け、検討をすすめる必要があるということですね。

高橋委員

よろしいですか。アユに関する意見です。
松田先生のご意見に関連するものですが、平成29年度はアユの遡上が多い状況であったことから、太田川に、これほどのポテンシャルが残っていたということを確認できたという点では非常によかったと思います。
正直なところ、今まで、太田川にアユ資源を維持していくポテンシャルが残っているのかと疑問に思うところもありました。
しかし、残念だったのが10月21日、22日の台風です。
この辺であれば、産卵した卵が相当にあったと思います。
しかし、水位が2m上がっていることからもおそらく卵が全滅してしまったのではないかと思います。
台風がなければ、再生産の規模が大きくなることも期待されたので、非常に残念です。
ただ、再生産のポテンシャルがある程度残っていることが確認できていることから、これまでの取組を整理し、効果がでていそうな取組を中心に継続し、簡単なモニタリングをしていけば良いのではないかと思います。

松田座長

ありがとうございました。
天然アユの遡上が増加してきていることから、それをさらに増やしていけるような検討が必要ですね。

濱口委員

私からもよろしいですか。
シジミについても5年間の調査である程度の方向性が見えてきたと思います。
先程もお伝えしましたが、シジミは、わずかな環境変化によって、突然に資源が増える可能性があることから、塩ビ管で人工種苗や母貝を保護しながら、その機会をうかがっていくというのも1つの手であると思います。
今後どのような方法で取組を継続していくかは検討が必要ですが、今までの検証結果や簡単なモニタリングをもとに塩ビ管で育成した人工種苗をどのように添加するか、より効率良く成長促進させるにはどうするのが良いかというような細かな点を詰めていけば、対策の絞り込みはできると思います。
絞り込んだ方法を中心に対策を継続することができるでしょう。

松田座長

ありがとうございました。
川の取組については、それぞれに方向性が見えてきたところですが、藤井さんからの意見にもあったように海へのアプローチも検討していくことも重要かもしれませんね。
平成29年の「瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸法)」の改正を受け、昨今、「豊かな海」づくりへの検討が、各方面で盛んに行われています。
また、国交省系列の広島湾再生推進会議と環境省が窓口となっている瀬戸法体系では、森・川・海の繋がりを大切にしています。
広島湾再生推進会議については、行政中心だったものが市民参画を推進するような流れも開始されています。
本日、ご参画の行政機関の皆様におかれましては、広島湾再生推進会議のメンバーになっている方もいらっしゃるかと思いますが、当懇談会を、あちらの会議とリンクさせていくような動きも必要ではないかと思います。
それでは、他に意見はないでしょうか。
それでは事務局にお返しいたしますので、連絡事項があればお願いします。

広島県経済観光局農林水産部水産課 石津課長

皆様、大変長い間お疲れ様でした。
今回の議事録については、事務局でとりまとめて皆様にお送りいたします。
また、平成31年度以降の方針については、平成30年度の早い段階で検討会を開催できるよう事務局で調整したいと思いますので、引き続き、ご協力をお願い致します。
それでは、以上を持ちまして、平成29年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会・水管理部会を終了いたします。
本日は、どうもありがとうございました。

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