本文
平成30年度 第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(第1回水管理部会 同時開催)(会議資料・会議録)
平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(第1回水管理部会 同時開催) 次第
日時 平成30年9月18日(火曜日)午後1時00分~午後4時00分
場所 広島市役所 本庁舎14階 第3会議室(広島市中区国泰寺町一丁目6番34号)
議事次第
1.開 会
2.議 題
ア太田川再生方針に基づく取組状況について
イ 今後の取組方針について
(ア)太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会について
(イ)アユを増やすための方策について
短期・中期的な方策に基づく取組について
長期的な方策に基づく取組について
(ウ)シジミを増やすための方策について
短期・中期的な方策に基づく取組について
3..閉 会
配布資料
懇談会構成員名簿・水管理部会構成員名簿・出席者名簿・配席図
資料1 太田川再生に係るこれまでの経緯
資料2 太田川再生方針に基づく取組の今後の実施について
資料3 太田川再生方針に基づく取組状況について~アユを増やす短期的・中期的な方策に基づく取組~
資料4 太田川再生方針に基づく取組状況について~シジミを増やす短期的な方策に基づく取組~
資料5 平成31年度以降の取組体制について(案)
資料6 平成30年度高瀬堰における取組について
平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(第1回水管理部会 同時開催) 出席者名簿
所属 |
役職 |
氏名 |
懇談会 |
部会 |
広島大学 |
名誉教授(座長) |
松田 治 |
〇 |
〇 |
国立研究開発法人 水産研究・ 教育機構 瀬戸内海区水産研究所 |
生産環境部 干潟生産グループ長 |
濱口 昌巳 |
〇 |
〇 |
たかはし河川生物調査事務所 |
代表 |
高橋 勇夫 |
〇 |
〇 |
太田川漁業協同組合 |
代表理事組合長 |
山中 幸男 |
〇 |
|
広島市内水面漁業協同組合 |
代表理事組合長 |
鈴木 修治 |
〇 |
|
国土交通省中国地方整備局 太田川河川事務所 |
所長 代理出席(副所長) |
藤原 寛 |
〇 |
〇 |
広島県土木建築局河川課 |
課長 |
木村 成弘 |
× |
× |
広島県農林水産局水産課 |
課長 代理出席(参事) |
横内 昭一 |
〇 |
〇 |
広島市農林水産振興センター水産部 |
部長 |
北川 浩二 |
〇 |
〇 |
広島市経済観光局農林水産部 |
部長 |
宇都宮 斉 |
〇 |
〇 |
(水管理部会オブザーバー)
所属 |
役職 |
氏名 |
懇談会 |
部会 |
中国電力(株)電源事業本部 西部水力センター土木第四課 |
課長 |
砂子田 正和 |
|
〇 |
広島県企業局水道課 |
課長 代理出席(参事) |
坂本 聰 |
|
〇 |
広島市水道局設備課 |
課長 |
見藤 晋二 |
|
〇 |
(事務局)
所属 |
役職 |
氏名 |
経済観光局農林水産部水産課 |
課長 |
徳村 守 |
経済観光局農林水産部水産課 |
課長補佐 |
藤本 豊記 |
経済観光局農林水産部水産課 |
技師 |
古矢 健一郎 |
平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(第1回水管理部会 同時開催) 配席図
平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(第1回水管理部会 同時開催) 議事
(事務局 徳村課長)
お待たせしました。
ただ今から、平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会を開会します。
今年4月に事務局長を拝命しました、徳村と申します。
太田川再生の取り組みにつきましては、平成22年度以降、25年度の太田川再生基本計画の策定をはさみまして平成27年度まで担当させていただいておりました。
今回、事務局に戻ってきまして、再び大変重要な局面で取り組んでいくという事で、身の引き締まる思いでございます。
太田川という市民の大事な財産をよりよい生き生きとしたものにできるよう頑張ってまいりますのでよろしくお願いいたします。
本日は、ご多忙中のところ、当懇談会にご出席くださり、誠にありがとうございます。
さて、今回の会議も水管理部会を同時開催とさせていただくことにしております。
それでは、会議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。懇談会(水管理部会)構成員名簿、出席者名簿、配席図、資料1~6を配布させていただいております。
過不足等、ございませんでしょうか。
本日、ご参加いただいている方はお手元の出席者名簿のとおりです。
なお、本日は、国土交通省太田川河川事務所 徳元所長の代理として、藤原副所長に、広島県農林水産局水産課 飯田課長の代理として、横内参事にご出席いただいております。
また、広島県土木河川課 木村課長におかれましては、ご都合により、欠席されております。
続いて、今年度から新たに委員に就任いただいた方を、ご紹介させていただきます。
広島県農林水産局水産課 飯田課長、広島県土木局河川課 木村課長、(公財)広島市農林水産振興センター水産部 北川部長、太田川漁業協同組合 山中代表理事組合長です。
平成30年度は、太田川再生方針を策定し、5年目の節目の年となり、懇談会及び太田川再生方針に基づく取組の今後を決定する重要な年となります。
今回の懇談会では、これまでに実施してきた取組の総括と課題の整理を行い、今後の方針について検討していただきたいと思いますので、皆さんの活発な意見交換をお願いしたいと存じます。
本日は長時間にわたりますが、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、松田座長、本日は部会長も併任となりますが、進行をよろしくお願いいたします。
(松田座長)
本日はお忙しい中、平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会及び同水管理部会にご出席いただき、ありがとうございます。
座長・部会長を務めさせていただきます。松田です。
さて、今回の会議は、懇談会及び太田川再生方針に基づく取組の今後を決定するという重要な会議であります。
議事に入らせていただく前に、事務局からこれまでの経緯と今回の懇談会の目的を説明いただき、皆さんには、今回の懇談会の目的を改めて整理いただきたいと思います。
それでは、事務局から説明をお願いします。
(説明)
・資料1「太田川再生に係るこれまでの経緯」の説明
(事務局 古矢技師)
資料1をご覧ください。まず、これまでの経緯について説明いたします。
都市開発に伴い、森林の荒廃やダムの整備等が進み、太田川の水質は大きく変化しました。
太田川の環境の変化は、広島湾の環境にも影響を与え、カキの成育不良の原因になっているという意見が上がりました。
この意見を受け、平成18年度に太田川の現況を調査し、その再生策を検討するため、「太田川再生プロジェクト検討委員会」が立ち上げられました。
「太田川再生プロジェクト検討委員会」では、当初、森林保全、環境保全、ふれあいの場の検討など太田川が有する多面的機能からの再生策が議論され、その結果、「太田川再生プロジェクト検討委員会」から太田川の流量、河川環境、アユ等に関する提言が出されました。その後、「太田川フォローアップ委員会」では、その提言に基づく検討がなされました。
そして、その検討の結果、最終的に、水産振興の観点から太田川再生を目指す方向に集約されました。
太田川再生方針とは、これまで検討された水産振興施策を整理し、取組の対象を太田川を代表する「アユ」と「シジミ」に限定した方針です。
太田川再生方針は、種苗放流に依存した漁業から脱却し、本来の資源の再生産システムを復元して、天然資源を増大させるという基本理念のもと平成25年度に策定されました。
アユ、シジミに限定した方針ということですが、太田川におけるアユ・シジミの漁獲量についてご説明いたします。
アユについては、太田川漁業協同組合管轄内でのアユの漁獲尾数、シジミについては、農林水産統計値からデータを引用しています。
まず、アユの漁獲尾数についてです。
漁獲尾数は、最盛期には、約300万匹の漁獲があったものが、平成29年度には、約38万匹となっています。
なお、アユの漁獲尾数は、最も少なかった平成27年の約7万尾と比較すると平成28年、平成29年と徐々に回復の傾向が見られます。
次にシジミの漁獲量についてです。
シジミの漁獲量は、最盛期に300トンあった漁獲量が、平成29年度には約156kgまで減少し、危機的な状況となっています。
内水面漁業協同組合では、現状を鑑み、平成30年からジョレン掘りを禁止しています。
太田川産アユ、シジミの資源再生懇談会については、太田川再生方針をただ策定したままにするのではなく、その後の取組及び施策の実現に向けたフォローアップを行うことで、より具体的かつ効率的に太田川再生へ向けたアプローチを行うことを目的として、平成26年度に立ち上げられました。
資源再生懇談会の立ち上げは、特に複数の関係者が方法等を調整する必要のある中期的、長期的な方策に基づく取組の検討には不可欠でありました。
太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会は、行政機関、学識経験者、漁業関係者によって構成される懇談会、利水関係者にも参画いただく水管理部会という2つの枠組みを設け、議論を進めてきました。
また、太田川再生方針に基づくアユ、シジミを増やす取組の具体的な内容については、次表のとおりです。
本日の懇談会の目的です。
平成30年度は、太田川再生方針を策定し、5年目の節目の年であることから、本日は、これまでの取組の総括を行い、今後の方針の検討を進めていただきたいと思います。
なお、取組状況については、議題1で検討していただき、今後の方針については、議題2で検討していただければと思います。
・資料2「太田川再生方針に基づく取組の今後の実施について」の説明
(事務局 古矢技師)
資料2は、これまでの取組状況と今後の方針(案)や課題をまとめたもので、本日の懇談会は、この資料に基づいて進行していきます。
また、本日の懇談会は、今後の取組を実施していく上で必要となる費用を広島市として確保するため、市の予算要求の前に開催させていただいており、今後の方針検討のため、意見をいただきたいと考えています。
このため、本日いただいた意見に基づいて、予算要求を行い、その結果を踏まえ、本年度の2月~3月の間で第2回懇談会を開催し、最終的に今後の方針をお示したいと考えています。
(松田座長)
ありがとうございました。
説明のとおり、今回の懇談会の目的は、取組の総括を行い、今後の方針を検討するものであるということから、順序立てて、議論を進めていきたいと思います。
では、議事に入らせていただきます。
議事1は、太田川再生方針に基づく取組状況についてです。
事務局から説明をお願いします。
(事務局 古矢技師)
太田川再生方針に基づく取組を開始してから現在までの取組の実施状況とその効果検証結果についてまとめましたので、説明させていただきます。
資料2の青色の部分にあたる事項です。
アユを増やす取組、シジミを増やす取組の順番で説明させていただきます。
なお、シジミを増やす取組については、これまで広島市水産振興センターで調査・研究を実施していることから、後ほど広島市水産振興センターから説明いたします。
では、アユを増やす取組について説明します。
アユを増やす方策は、現在までに取組を実施してきた短期・中期的な方策に基づく取組と昨年度から具体的な検討を進めている長期的な方策に基づく取組がございます。
なお、短期的・中期的な方策に基づく取組については、資料2に取組状況とその効果をまとめておりますが、説明にあたっては、長期的な方策に基づく取組状況とあわせて パワーポイントで説明させていただきます。
(説明)「太田川再生方針に基づく取組状況について~アユを増やす取組~」
(事務局 古矢技師)
アユを増やす取組としては、スライドのとおり、短期、中期、長期的な方策と段階的に方策を定め推進してきました。
なお、長期的な方策としては、高瀬堰の運用、祇園水門・大芝水門の運用について検討を進めてきました。
では、アユを増やす短期的、中期的な方策の取組状況について説明します。
まずは、短期的な方策に基づく余剰種苗の放流です。
余剰種苗の放流は、アユ種苗の生産過程で発生した余剰種苗を太田川河口域周辺に 放流し、天然遡上の底上げを狙うものです。
放流実績は、表のとおりです。
平成25年度から平成27年度にかけて実施した効果検証の結果、調査を実施した年度に関わらず、採捕した遡上期のサンプルの中には、余剰種苗が確認されました。
平成27年度が最も多く、サンプル中の約6割が余剰種苗であるという結果でした。
次に短期的な方策に基づく産卵場造成です。
こちらの取組は、アユの産卵環境を改善し、アユの産卵量を増やすことを目的に平成2 5年度から実施しています。
実施状況は、次の表のとおりです。
なお、平成26年、平成28年、平成29年度については、天候不良等の理由により産卵場造成は実施できていません。
では、効果検証の結果です。
検証の結果、産卵場を造成した平成25年、平成27年度ともに造成した産卵場のみで産卵が確認されました。
また、河床の硬さの目安となるシノの貫入度は、造成した産卵場では、アユ産卵場適正条件を示す、適正基準の10cm以上となりました。
次に中期的な方策に基づく取組についてです。
まずは、禁漁区、禁漁期間の設定についてです。
この取組は、産卵期のアユ親魚を保護することを目的に太田川漁業協同組合さんが実施されている取組です。
平成27年度からは、従来、祇園水門から安佐大橋までであった禁漁区間を高瀬堰まで拡大しています。
禁漁区の拡大に伴う取組の効果を試算したところ、少なくとも4,000匹以上の親魚が保護されている結果となりました。
なお、この試算は、太田川漁協の組合員さんを対象に行ったものであり、遊漁者が漁獲する親魚の尾数も考慮するとさらに大きな効果があると考えられます。
次に晩期親魚放流です。
この取組は、アユの産卵量を増やすことを目的に産卵直前の親魚を放流するものです。
放流実績は次表のとおりです。
なお、平成28年度からは、海水温が流下後のアユ仔魚の適正水温である20℃以下になるタイミングを見計らい、放流することで取組のさらなる効果を狙っています。
さて、次のスライドは、太田川漁協管轄内のアユ漁獲量と流下仔魚調査の結果を示したものです。
アユの漁獲尾数については、取組を開始した平成25年度と比較すると平成29年度の漁獲尾数が15.9万尾増加しています。
流下仔魚数については、年変動が大きく、取組との相関は確認できませんでした。
それでは、総括に移ります。
アユの寿命は1年であるため、漁獲尾数の年変動が大きいこと、アユの再生産には、複合的な原因が関係していることから、取組の効果を評価するにあたっては、注意が必要ではありますが、太田川漁協管轄内のアユの漁獲尾数は、近年、回復傾向であります。
このことから、短期、中期的な方策については、一定の効果があることが示唆されています。
今後の方針としては、短期、中期的な方策に基づく取組を継続し、さらなるアユ資源の増大を目指したいと考えています。
つづいて、長期的な方策に基づく取組について説明します。
長期的な方策に基づく取組は、平成29年度から国土交通省さんのご協力により、高瀬堰の試験的な運用を開始していただいています。
なお、平成30年度も試験的な運用を実施していただけると伺っております。
高瀬堰での取組については、昨年度の3月の懇談会において、国土交通省さんから平均流量を5トン増やすことで、高瀬堰を流下するアユ仔魚の推定降下量のピーク時間が1時間程度短縮されるという可能性を示していただき、今後の取組の効果が委員の皆さんからも期待されています。
一方、祇園水門・大芝水門の運用については、平成29年度に作業部会を開催し、試験的な運用にむけ、調整を進めていたところですが、取水業務への塩水遡上の危険性について問題が解決されておらず、運用の実現には至っていません。
なお、長期的な方策に基づく取組の今後の方針については、後の議題で検討いただければと思います。
また、太田川再生方針に基づく取組の一環として、太田川漁協さんが受精卵放流の取組を実施されていますので、組合長さんからご紹介いただきたいと思います。
(太田川漁業協同組合 山中代表理事組合長)
太田川漁協では、アユを増やす取組の1つとして、平成28年度から「受精卵放流」を行っています。
太田川漁協の養魚場で育てた親のアユから卵を絞り、受精させた後、「シュロ」と呼ばれるヤシの皮に付着させます。
その後、産卵場を造った場所の周辺に受精卵が付いた「シュロ」を設置します。
この取組によって、少しでもアユの遡上が増えることを願っています。
今後も漁協として、アユを増やすための取組を継続していきたいと考えています。
(松田座長)
ありがとうございました。
アユを増やすための短期・中期的な方策に基づく取組については、これまでの取組の実施と効果検証の結果、一定の効果があるということが判ったということは、懇談会の一つの成果といえるでしょう。
アユを増やすための長期的な方策については、今後の方針をどうするかという検討が重要であることから、次の議題で議論してきたいと思います。
ただ今の内容について、ご意見、ご質問はないでしょうか。
(広島県水産課 横内参事)
余剰種苗の放流について質問があります。
効果検証の結果をみると、採捕した余剰種苗の数やサンプルに含まれる余剰種苗の割合に年によってばらつきがあるように思うのですが、何が原因と考えられますか。
(事務局 古矢技師)
余剰種苗は、祇園水門で投網によるサンプリングを実施しています。
サンプリングを行うタイミングによって数や割合は大きく変化してしまいます。
(松田座長)
太田川再生方針の基本理念は、放流に依存しない天然再生による資源維持を目指すものであることから、天然の個体が多いという結果は、重要な結果なのですが、その点について何かご意見はございませんか。
高橋先生、このデータをあまり信用しないほうが良いということですかね。
年によっては、天然の個体が多いということは、ある意味では、いい傾向にあるのかもしれませんが。
(高橋委員)
分析結果そのものは、方法からすると十分に信頼性のあるデータだと思います。
サンプリング方法によるバイアスがかかっているということですが、こちらについては、サンプル数を増やす以外に方法はないのですが。
(松田座長)
そうですね。横内さんいかがでしょうか。
(広島県水産課 横内参事)
アユ資源の再生産には、いろいろなファクターがあり、それぞれが複合的に作用して、天然遡上が増えるというシナリオに繋がるのだと思います。
これまでに色々な取組を実施していると思いますが、どの取組が最も効果があったのか感触的な部分で構わないので、教えていただけないでしょうか。
(松田座長)
その点は、むしろ、これから検討する来年度からの新たな課題になるのではないでしょうか。
これまでの5年間の取組の結果をもとにして、さらに、議論を深め、天然の再生産を増やしていくにはどうしていくかを検討していくということで、いかかがでしょうか。
(広島県水産課 横内参事)
そうですね。
例えば、産卵場を作る取組では、生まれた仔魚が一旦、海に下って、再び遡上する。
そうすると海に余剰種苗を放流するのとは、回帰率が違うと思います。
受精卵放流についても同様ですが、放流する種苗のステップ(成育段階)によって効果の出方が違うと思うので、そのあたりも整理した評価が必要ではないでしょうか。
(松田座長)
色々な手法で取組が進められていますが、それぞれの取組のメリット、デメリットを判断した上で、有効に推進していくことが大切ですね。
(高橋委員)
補足ですが。
先程の説明で示された数値から考えて、天然資源による安定した再生産を行うためには、太田川の河川規模を考慮すると、(資源量を)概ね10倍のレベルにしないと安定しないと思います。
昨年は、太田川では、天然遡上が多く、漁獲量も増加していますが、アユの遡上が増加したという点は、九州から関東あたりまで、瀬戸内を含める太平洋側で統一的な傾向でした。
つまり、昨年は、数年に1回来るか来ないかのラッキーな年だったのです。
アユについて言えば、これをベースにして資源の安定化に繋げていきたいところでした。
昨年の資源量は、その足がかりに十分成りえる量だったのです。
しかし、産卵期の大雨により、(卵が流されてしまったことで)流下仔魚数は、大幅に減少し、それに伴い、資源量も大きく減ってしまいました。
昨年度の流下仔魚数(広島市の効果検証結果から試算される推定値)は、試算すると太田川漁協が放流している親(人工種苗)の数から求めることができる期待値(流下仔魚数)と概ね同じ値なのです。
このことを考慮すると、流下仔魚数のデータは、信頼性が低いという意見もありますが、11月の段階で太田川には、天然資源がいなかったという可能性も含んでいる数字です。
そのあたりも考慮すると(人工種苗を含む親魚数)ボリュームを大きくして、産卵期の多様性を持たせないと資源の安定化は難しいなと思いました。
(松田座長)
貴重なご意見ありがとうございました。
アユ資源の安定化のためには、アユ資源の総量を増やすとともに、昨年度のような豊作年の状況(環境原因等)を追及していく必要があるのではないかと考えます。
その他、いかがでしょうか。
(濱口委員)
よろしいですか。
先程、事務局から説明いただいたアユを増やす取組の効果検証結果のスライドに流下仔魚数の推定は、困難であると記載されていたのですが、これを記載してしまうと後の議題で検討される長期的な方策の評価も難しくなってしまいます。
例えば、今回の方法では、推定が困難であった等の補足を入れておく必要がありますね。
流下仔魚調査の結果(調査の精度)について、事務局は、意見をお持ちですか。
(事務局 古矢技師)
もちろん、流下仔魚調査の結果は、効果検証において重要な指標の1つだと考えています。
流下仔魚調査においては、流下仔魚数だけでなく、卵黄指数の状況等も確認し、毎年、継続的にデータを蓄積していることから、複数年のデータを見ていけば、データの信頼性が上がっていくと考えています。
しかし、年ごとの取組の効果を検証するには、シーズン別にデータを解析する必要もあります。
その場合は、広島市が実施できる流下仔魚調査の回数は3回/年と限られており、調査回数を増やすことも難しい状況です。
もちろん、1回1回の調査の精度が悪いというわけではありません。
しかし、3回という少ない調査結果からそのシーズンの流下仔魚数の総量を推定した場合、推定値の精度が落ちてしまうというのも事実です。
例えば、少ないデータからでも流下仔魚数を正確に推定する方法等が確立できれば、データの精度をあげることができると思います。
(松田座長)
確かに。流下仔魚の総数は、推定はできるけれども、調査回数が限られているため、単年のデータだけでは、精度は落ちてしまうという理解ですね。
(濱口委員)
了解しました。ありがとうございます。
(松田座長)
その他の意見はないでしょうか。
では、次にシジミに関する内容について、発表いただきたいと思います。
資料4「太田川再生方針に基づく取組状況について~シジミを増やす取組~」(説明)
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
広島市水産振興センターの瀬田でございます。
本日は、資料4としまして、発表スライドを印刷したもの、試験結果をまとめたA4
一枚の資料をお配りしています。
それでは報告をさせていただきます。
太田川のヤマトシジミ資源量は大幅に減少しており、事務局から説明がありましたが平成29年の漁獲量は約156キロとなっており、危機的な状況です。
大幅に減少したシジミの資源量を回復させるためには、人為的な対策が必要であることから平成26年から様々な取組を実施しています。
本日は、それらの取組の結果を紹介させていただきます。
まず、1つ目の取組は、他産地産の種苗放流です。
三重県産または宍道湖産の種苗を放流し、ネット被覆による食害防止対策を行いながら、ネット被覆の効果及び他産地産種苗の生残率などを調査しました。
結果、食害防止の効果があることは分かりましたが、ネット内に大量の川砂が堆積し、放流後に種苗の生残率が大きく低下していまいました。
こちらの写真をご覧いただきたいのですが、ネットの周りがえぐれてしまい、ネットの中に大量の砂が入ってしまいました。
平成26年、27年は三重県産の種苗、平成28年は宍道湖産の種苗を放流しましたが、いずれも生残率が大きく低下する結果となりました。
現在、ネット被覆による食害対策は、全国的にアサリ用の対策として普及していますが、
太田川つまりは、河川においては、ネット被覆の手法を用いることは非常に困難であるということが判明しました。
この結果、平成29年からは、ネット被覆による取組は実施していません。
次に資源状況等調査についてです。
広島市水産振興センターでは、太田川の27地点の左岸、右岸の計54か所を右の写真のスミス・マッキンタイヤ採泥器で用いて調査を実施しています。
調査時期は、毎年春の5月と秋の10月に実施しています。
それでは結果です。
スライドの上側の表は春の結果、下側の表は、秋の結果を示しています。
まず、春には殻長が小さい個体ですが、稚貝は確認されています。
一方で、秋には、稚貝も大幅に減少しています。
産卵成熟するシジミの殻長は約12mm以上と言われていますが、それに該当するシジミは非常に少ない状況です。
広島市と内水面漁業協同組合では他産地産の種苗を毎年6~8トン放流していますが、この調査では、それらの種苗もほとんど確認されていません。
調査の結果から春に確認された天然稚貝や放流した他産地種苗は、斃死している可能性、食害を受けている可能性、下流域に流されている可能性が示唆されました。
実際の現場状況ですが、太田川にはクロダイが多く遡上しており、クロダイの胃内容物からもシジミの殻が多く確認されています。
このことから、シジミの資源の減少の原因として、クロダイ等による食害の可能性が高いのではないかと考えられます。
ただし、少ない資源量にもかかわらず、毎年、春には稚貝が確認されていることから、母貝による資源の再生産が少なからず、行われており、再生産に適した水温や塩分濃度といった条件はある程度、整っている可能性が示唆されます。
よって、人為的に母貝を食害から保護し、さらなる再生産を狙えば、資源量を回復させることができる可能性が示唆されました。
しかし、ネット被覆による食害対策は河川では、困難です。
このため、検討を重ね、塩ビ管を用いた保護手法が有効ではないかという結論にいきつました。
次に人工種苗成育試験について説明します。
広島市水産振興センターで試験用に生産した人工種苗を用いて、成育状況等調査を実施しました。
ネット袋等を活用した手法の検討の中で、シジミの成育及び生残のためには川砂が必要であり、環境の変化に対応するためにある程度、潜砂深度が必要であることが明らかとなりました。
この結果を受け、さらに検討を進め、塩ビ管を川底へ埋め、その中に人工種苗を収容することで、高い生残率となることが明らかとなっています。
では、塩ビ管による試験が本格的に開始された平成28年の試験結果について説明いたします。
平成28年10月に広島市水産振興センターで生産した殻長1mmサイズの人工種苗を塩ビ管に収容し、ネットでふたをして河川に設置しました。
なお、塩ビ管に人工種苗を収容する際は、6,000個体、3,000個体、1,500個体と密度を変え、収容密度による成長率の違いを確認しました。
また、塩ビ管を覆うネットの目合いについても、収容時から0.78mmのネットを使用しつづけたもの、収容時は、0.78mmのネットを使用し、春先から1月5日mmのネットに変更したものと2種類の試験区を設け、比較を行いました。
こちらがその結果です。
まずは、ネットの目合いを変えていない個体群の成長率の変化です。
冬場は成長がほとんどなく、春先頃から徐々に殻長が大きくなっています。
次に5月にネット目合いを大きくした個体群の成長率の変化です。
冬場の成長率には、ネットの目合いを変えていない個体群と大きな変化はありませんが、ネットを変えてから、成長が大幅に良くなっていることが判りました。
河川に設置してから約1年半後の成長率の違いを比較するとネット目合いを変えていない個体群は平均殻長6月7日mm、ネットの目合いを変更した個体群は平均殻長12mmと約2倍の大きさになっていました。
さらに、殻長12mmというのは、産卵成熟サイズまで成長していることになります。
実際に、1年半後の種苗の写真をご覧ください。
左側がネット目合を変更していないもの、右側がネット目合を変更したものです。
写真でもわかりますように、同じ密度で収容していたとしても、ネットの目合いを変えるだけで成長率が良くなることが確認できました。
これは、ネットの目合いを変えることで、ネットが詰まりにくくなり、水の透過性が良くなることで、シジミが餌を多く食べることができるようになったことが原因であると考察しています。
次に平成29年度の試験です。
平成29年度試験は、平成28年度よりもさらに高密度で人工種苗を塩ビ管に収容した場合に生残率や成長率等がどのくらい変化するのかを調べるために実施しました。
平成29年度試験の狙いとしては、高密度での収容が可能となれば、河川に設置する塩ビ管の数を少なくできると考えています。
それでは、試験の結果です。
10月に、人工種苗を塩ビ管1本あたりに10万、5万、1万匹と密度を変えて収容し、現在6月までのデータを取っています。
生残率は、収容密度による差はなく、概ね90%以上で推移しており、成長率は、冬場だったので、あまり成長していませんが、平成28年度の試験結果と大きな差は確認できていません。
これから成長率が良くなる春先以降の状況を確認するところだったのですが、平成30年度の7月豪雨により、試験中の塩ビ管内の人工種苗がすべて河川に流失してしまいました。
平成30年度は、平成29年度に6月までしか確認することができなかったデータを改めて、取り直すため、平成30年10月から平成29年度と同様の条件で試験を行う計画です。
では、平成30年度の試験計画の詳細をご紹介します。
平成30年10月に人工種苗を収容し、平成31年9月までの1年間で試験を行う予定です。
狙いとしては、塩ビ管あたりの最適な収容数を検討したいと考えています。
また、平成30年度は、高密度収容だけでなく、低密度収容の試験区も設けてみたいと考えています。
高密度収容のメリットは、塩ビ管の設置本数を少なくできるということ、デメリットは、種苗が小さいうちは良いのですが、種苗が成長し、大きくなる段階で、間引く必要があり、管理が大変になるということが考えられます。
低密度収容のメリットは、間引き作業の回数が少なく、うまくいけば、間引き作業をしなくても、収容時の数をそのまま入れておけば、産卵サイズまで成長してくれるかもしれません。デメリットは、塩ビ管の設置本数が多くなってしまうことです。
以上の理由から、塩ビ管の設置本数とシジミの成長率等の最適なバランスを検討するため、平成30年度試験を実施したいと考えています。
では、最後に今後の方針として、「ヤマトシジミ再生産計画(案)」を提案させていだきます。
まず、宍道湖の事例を紹介いたします。
資源量が大幅に減少していた宍道湖のシジミが再び増加した原因の1つとして、産卵期の餌環境が良く、母貝の産卵回数が通常の2倍以上あり、再生産が活発であった年に大量の稚貝が資源添加されたことがあると言われています。
宍道湖でも鳥や魚の食害による被害が大きいと言われていますが、食害による捕食圧を資源量が大きく上回ったことで資源が回復したと報告されています。
宍道湖と同じ現象を太田川でも発生させることができれば、太田川のシジミ資源も回復させることができるかもしれません。
このため、人工種苗を用いて母貝団地を造成し、母貝の量を増やし、シジミ資源の再生産を活発にすることを目指したいと考えています。
母貝が増えれば、大量の稚貝が資源添加され、クロダイ等による食害による捕食圧を上回る可能性があります。
今後の方針としては、平成31年度から広島市水産振興センターが殻長1mm以上の人工種苗20万個体を生産し、広島市へ引き渡す。
そして、広島市が広島市内水面漁業協同組合へ販売する。
広島市内水面漁業協同組合は、太田川河川において、塩ビ管を設置し、その中に人工種苗を収容して成育させる。
そして、成育した人工種苗はあくまで、産卵母貝として管理していく。
つまり、母貝団地の造成です。
なお、母貝団地の設置場所については、現在、候補地を検討しており、資源量調査の結果で採泥器による1回のサンプリングでシジミの個体数が10個体以上確認された地点且つシジミの生息条件である塩分濃度24Psu未満の地点が良いのではないかと考えています。
実際に検討した候補地は、地図上の黄色い四角でプロットした地点です。
地図を見ていただきますと、(1)のエリアの天満川、(2)のエリアの本川上流、(3)のエリアの京橋川が候補地として考えられます。
今後の方針についてまとめます。
(1)から(3)のエリアに塩ビ管を設置し、その中に広島市水産振興センターで生産した人工種苗を収容し、広島市内水面漁協が母貝サイズまで成長させる。
毎年、その母貝が産卵するともに、人工種苗を添加し続けることで、母貝の総数が増え、再生産能力を向上し、それに伴い、シジミの資源量が増えていくという方針となります。
以上でございます。
(松田座長)
ありがとうございました。
シジミを増やす取組については、塩ビ管を活用した保護手法が確立され、来年度から人工種苗生産が事業化されるということは、懇談会の成果であると言えるでしょう。
また、説明では、今後の方針についても示していただきました。
それでは、これらについてご意見、ご質問はございませんか。
(濱口委員)
太田川再生方針に基づくシジミを増やす方策について、振り返って考えたのですが、一番予想外だったのが、平成25年から今までに広島市で大規模な水害が2回も発生していることです。
大規模な水害の発生は、大きな誤算でした。
先程の説明の中で宍道湖の事例紹介をしていただきましたが、宍道湖は、平成24年度まで資源が減少し続け、平成24年の段階で資源量が2万トンを下回りました。
しかし、平成25年に急激な回復を見せ、資源量は、6~7万トンまで回復します。
宍道湖でシジミ資源が回復した原因には、色々なものが考えられるのですが、先程の説明には、大切な要素が1つ抜けています。
それは、神戸川(斐伊川)に放水路ができたことです。
放水路が建設される以前は、神戸川(斐伊川)から大出水が起こっていたのですが、その出水が抑えられます。
特に、近年、河川では、出水によりシジミの稚貝等が流されてしまうリスクが上がっていることから、それを抑えることが重要です。
宍道湖のシジミ資源回復には、このような原因があることも考慮しておくことが重要です。
特に太田川で悩ましいのは、宍道湖と比べるとさらに出水の影響を受けやすいということです。
太田川での取組においては、出水によるシジミの流失をどのように防ぐかといのが大きな課題の1つでした。
(太田川再生方針に基づく取組を開始した)当時は、アサリの中間育成手法として成果がでていた保護網を活用する手法の導入を検討しましたが、太田川では、うまくいきませんでした。
また、広島市水産振興センターが実施する資源量調査の結果を見てみると、殻長10mm以上の個体がほとんど確認できていないとい状況であることから、クロダイによる食害がシジミ資源の減少の原因1つであると考えられます。
出水や食害と言った課題を解決するため、検討を重ね、塩ビ管による保護手法にたどりついたと思うのですが、塩ビ管を活用した取組の成果は非常に面白い結果になっていますね。
また、(塩ビ管を覆うネットの)目合いを変えるとシジミの成長が良くなるというのも非常に良いデータです。
ヤマトシジミの生態に関する研究では、(シジミの再生産には、)親個体はそれほど多くなくても良いという知見もありますので、この取組のように塩ビ管で稚貝を保護し、母貝団地をつくるという案は決して悪くないと思います。
これまでに検討してきた方法については、特に問題はないので、今後、洪水や出水のリスクに対してどのように対処策を行うかといことが知恵の出しどころですね。
太田川シジミの再生産システムを復活させるのはかなり難しいのですが、出水対策を考慮した上で母貝団地を設置する適地の検討を進めてもらいたいですね。
最後に適地を探すにあたっては、塩分濃度24Psuは高いので、実際は、10Psu位のほうがシジミにとっては快適かと思います。
ちなみ10Psuに絞った場合、候補地はどのくらいまで残るのかということが気になるのですが。
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
そうですね。
10Psuで絞りますと本川の上流のエリアか、さらに上のエリアになると思います。
(濱口委員)
太田川は、潮が差してくるタイミングと河川流量によって塩分濃度が変動するため、測定した時の条件で塩分濃度は、大きく変わるのでそのあたりの評価は難しいですね。
ただ、リスク分散の意味でも少し上流に設置した方が良いのではないかと思います。
(松田座長)
ありがとうございます。重要なご意見でした。
特にリスク分散の件については、近年、洪水による河川環境の変動が大きくなっているので、検討が必要ですね。
説明では、母貝団地の候補地として3か所を示されていますが、その3か所の中でも河床の高さや流量を考慮して、多様な設置場所にすると良いかもしれないですね。
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
はい。リスク分散を考慮した上で、現場の状況を確認しながら、検討を進めていきたいと思います。
(松田座長)
濱口委員からの意見にもありましたが、(塩ビ管を覆うネットの)目合を変えることでシジミの成長率が良くなるということですが、今回、説明いただいたデータ以外にも目合のサイズを変えたデータはないのですか。
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
今のところ、データがあるネットの目合いは、今回、説明した2種類です。
しかし、さらに目合い大きいネットを使用しても流失が少なく、成長もよくなるのではないかと考えています。
(高橋委員)
母貝団地を造ることに関しての質問ですが、シジミ資源の再生産を安定させるために必要な最低限の母貝数はある程度、計算できるのですか。
食害の捕食圧についても具体的な数値化は難しいと思うのですが、数値目標的な物が判れば、教えていただけないでしょうか。
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
人工種苗成育試験の結果だけでは、まだ具体的な数値目標を出せていません。
数値目標ではないのですが、塩ビ管の収容密度について課題があり、現在、設置している塩ビ管はそれほど大きいものではないことから、殻長20mm以上の種苗を50匹以上収容すると生存率が下がってしまうという結果がでています。
収容密度や塩ビ管の大きさ等は、今年も試験を行いながら検討を進めていきたいと考えています。
(濱口委員)
高橋先生のご質問に関して回答させていただきますとシジミの有効母貝数に関するデータは、今までにほぼ知見がありません。
例えば、宍道湖の場合であれば、湖沼であることから無効分散がそれほどありませんが、太田川では、シジミが分散してしまうことも多く、どれだけの数量が最低限必要であるか具体的な数値を求めることは難しいと考えられます。
このため、現状では、少しずつ、できるだけ、母貝を増やしていくという方針で取組を進めるしかありません。
もう一つは、塩ビ管だけで(稚貝を)育てるだけでなく、塩ビ管に母貝を収容し、産卵量を増やすという方法もありますので、そういったところも検討いただき、母貝を増やす取組を推進していただければと思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
最後から2番目のスライドに書いてあるのですが、シジミ1個体だけでも、かなり産卵すると思いますので、それとは別に魚からの食害やその他の減耗を上回る資源をなるべく増やしていこうという考え方ですね。
(広島市水産振興センター 瀬田技師)
そのとおりです。
(松田座長)
その他の意見はございませんか。
それではありがとうございました。
================議 題 2===============
(松田座長)
ここからは、議題1の内容をふまえた上で、議題2「今後の取組方針について」検討を進めていきたいと思います。
では、事務局から説明をお願いします。
(事務局 古矢技師)
では、懇談会及び太田川再生方針に基づく取組について、今後の課題、検討事項及び方針(案)まとめましたので、発表いたします。
この議題は、資料2の黄色い部分の検討になります。
また、平成31年度以降の体制(案)については、資料5にまとめていますのでご確認ください。
なお、説明については、パワーポイントで行わさせていただきます。
(説明) 資料2の一部 「今後の課題及び方針について」
(事務局 古矢技師)
まず、太田川産アユ・シジミ再生懇談会についてです。
懇談会は、太田川再生方針の策定から5年ということで、平成30年度が一旦の区切りとなりますが、来年度以降は、今後、漁協と広島市が中心となり継続する短期・中期的な方策に基づく取組の報告、長期的な方策に基づく高瀬堰の継続的な運用と祇園水門・大芝水門の試験的な運用について、議論を進めることを目的として、広島市が事務局を運営する形で、年1回開催していきたいと考えています。
なお、これまで懇談会と水管理部会を分けて議論を進めてきましたが、今後は、懇談会と水管理部会を統合し、運営していきたいと考えています。
懇談会の継続にあたっては、予算規模の縮小に伴う効果検証手法の検討、市民へのPr方法の検討、根拠に基づく具体的な目標値の検討等の課題がございます。
次に太田川再生方針に基づく取組についてです。
まず、アユを増やす取組について、方針(案)を提案させていただきます。
短期・中期的な方策については、今まで実施してきた取組と効果検証の結果、一定の効果があるということが判ったことから、平成31年度以降は、太田川漁協さんが中心となって取組を継続し、可能な限り、そのフォローアップを実施してきたいと考えています。
なお、フォローアップにあたっては、できるだけ費用がかからない方法で効果の検証を実施していきたいと考えています。
できるだけ費用がかからない効果検証の方法として、何か知見等がありましたら、ご意見をいただければ幸いです。
また、アユを増やすための短期・中期的な方策に基づく取組については、禁漁区間の拡大の検討や漁法制限の検討等、今後も取組の効果を増大させることができるようにフォローアップを行いつつ、活動を推進していきたいと考えています。
長期的な方策については、高瀬堰の運用及び祇園水門・大芝水門の運用が挙げられているところですが、今後、どのような運用を行うか検討をする必要があります。
まず、高瀬堰の運用については、国土交通省さんとの事前調整の中で、平成30年度は試験的な運用を継続していただけると伺っております。
しかし、それ以降の運用を検討するためには、広島市の効果検証調査の継続が必要であるということも伺っております。
事務局としては、来年度以降も高瀬堰の運用を継続し、今後も前向きな検討を行っていただきたいと考えていることから、広島市による効果検証調査の継続をする方向で調整を進めていきたいと考えています。
しかし、来年度以降、現在と同一規模の予算確保は難しい状況であることから、効果検証調査の実施にあたっては、限られた予算の中で行っていく必要があります。
次に、祇園水門・大芝水門の運用についてです。
祇園水門の運用にあたっては、河川管理者である国土交通省さんから水門の運用に伴う利水者への理解を求められたことから、試験的な運用の実施について、調整を図っておりましたが、取水業務に対する塩水遡上のリスクへの心配が解決されず、祇園水門の運用には至っていません。
その後、国土交通省さんと協議を進める中で、まずは、塩水遡上の可能性が少ない方法について検討してみてはどうかという助言をいただいたことから、祇園水門・大芝水門の運用につきましては、まずは、仔魚の流下促進という目的に絞り、塩水遡上の影響が少ない下げ潮時に数日間、試験的に運用を実施できないか、関係機関と調整を図っていきたいと考えています。
祇園水門・大芝水門の試験的な運用が実施できれば、同時に流下仔魚調査を行い、運用の効果を測定した上で、上げ潮時の運用等の実施についても検討を進めていきたいと思います。
続いて、シジミを増やす取組についてです。
シジミについては、内水面漁協さんからは、塩ビ管を活用した母貝団地の整備を行っていくという意向を伺っています。
広島市では、その整備に必要な人工種苗を来年度から正式に事業化して生産していきたいと考えています。
また、内水面漁協さんの取組をフォローアップするという目的で、広島市水産振興センターに資源量調査を始め、内水面漁協さんのサポートをお願いすることとなっています。
シジミの資源回復には、食害生物の除去手法の検討等、まだまだ課題もございますが、内水面漁協さんの取組をサポートする中で、課題解決に取り組んでいきたいと考えています。
(松田座長)
ありがとうございました。
事務局から今後の課題と方針(案)について発表いただきました。
事務局の提案としては、まず、会のシステムとしては、懇談会と水管理部会を統合し、年1回の開催を目指して、継続していく。
懇談会の内容としては、今後、漁協と広島市が中心となり継続する短期・中期的な方策に基づく取組の実施報告と長期的な方策に基づく高瀬堰の運用及び祇園水門・大芝水門の運用について検討を進めていく。
太田再生方針に基づく取組としては、これまでの取組と効果検証の結果、一定の効果が確認された短期・中期的な方策については、経常的な取組として継続し、モニタリングを継続していく。
長期的な方策についての高瀬堰の運用については、引き続き、本格運用の検討もふまえ、取組を継続するとともに効果検証調査も継続する。
祇園水門・大芝水門の取組については、塩水遡上のリスクなどを考慮した上で、まずは、仔魚の流下促進という点に焦点を絞り、塩水遡上のリスクが少ない下げ潮時の試験的な運用に向けての調整を行う。
最後にシジミについては、広島市が人工種苗生産を事業化し、内水面漁協さんの取組をフォローアップしていくということでした。
では、この議題に関して、ご意見をお願いします。
内容が様々ですので、1ずつ整理していきましょう。
まず太田川アユ・シジミの資源再生懇談会の今後の方針(案)についてご意見はございませんか。
(松田座長)
アユを増やすための短期・中期的な取組のフォローアップについて、予算の事情もありますが、費用をかけない効率的な調査手法等に関する知見はないでしょうか。
(濱口委員)
よろしいですか。
昨年度に引き続き、今年度も国土交通省さんの協力により、高瀬堰の試験的な運用を実施いただけるということですが、これは、科学的なデータを取る非常に良いチャンスです。
先程、松田座長がおっしゃられたように、限られた予算の中で効果検証調査を実施する必要があることから、どこに焦点を当てれば、より効率的に効果を検証することができるかを検討し、せっかくの良い機会を生かすという理解で良いでしょうか。
(事務局 古矢技師)
そのとおりです。
(松田座長)
関連してよろしいでしょうか。
説明にもありましたが、限られた予算というのは確定的なものなのでしょうか。
例えば、シジミの漁獲量の変化をみると危機的な状況ですよね。
同じ予算をかけるのならば、かけ時があると思うのですが。
(事務局 徳村課長)
方針が策定され、5年目の区切りということで話をさせていただいているのですが、今回、国土交通省さんから引き続き、前向きな検討が可能であるというご助言をいただいていることから広島市としても、できる限りと言う条件付きではありますが、予算獲得に向けて検討をすすめたいと考えています。
(松田座長)
アユの生態に配慮した堰や水門の運用というのは、他の河川では実施されていないので、濱口委員が言われるように、懇談会の関係者の中で非常に良い協力関係が構築され、成果がでているということだと思います。
(事務局 徳村課長)
座長がおっしゃられるように、先駆事例になりつつあるということから必要な予算を獲得できるように検討を進めていきたいと思います。
一方で、フィールド調査の予算というのは、非常にコストがかかるのも事実ですので、堰の運用を継続的に実施するにあたって、最低限、押さえておく必要のある事項、調査地点等を良い意味で絞り込めるようにご助言をいただき、それを着実に実行していきたいという思いです。
(松田座長)
ありがとうございます。
さらに、細かい点になりますが、今まで取り組んできたシジミの試験が今度、事業化されるということは、つまりは、別建ての予算になるのですか。
例えば事業費のような。
(事務局 徳村課長)
はい。事業費として確保する予定です。
今までは、試験研究として取り組んできたところですが、もちろん、取組をある程度進めてみて、見込みがなければ、他の事業への転向も考えられたところです。
しかし、5年間の試験・研究の中で種苗生産技術が確立され、また塩ビ管による成育手法によって、人工種苗が産卵可能な大きさになるところまでは確認できたという状況であることから、事業化し、今後、経常的なものしていくことを判断した次第です。
(松田座長)
ありがとうございます。
ある意味、この5年間で成果があったということですね。
(事務局 徳村課長)
はい。手法が確立されたという点では成果があったと考えています。
しかし、資源の回復が見られていないという点が最大の課題であると考えています。
(松田座長)
そうですね。
(太田川漁業協同組合 山中代表理事組合長)
国土交通省さんが高瀬堰の運用を実施いただけるということは、漁協としても非常にありがたいことです。
一方で、砂の堆積についても検討していただきたいのですが。
と言いますのも、河川に砂が堆積すると、アユ仔魚の流下やアユの遡上を阻害するので、大芝水門の直上に溜まっている土砂と高瀬堰の直下に溜まっている土砂を撤去していただきたい。
(松田座長)
土砂の堆積ということは、7月豪雨の影響等も考えられますね。
国土交通省さんとしては、どのようなお考えでしょうか。
(国土交通省太田川河川事務所 藤原副所長)
現在、大芝水門・祇園水門の上流では掘削作業を実施しているところです。
今すぐのことにはならないのですが、今後、どの程度まで土砂をとった方が良いのかという意見をいただきながら、良い方向にもっていければと考えています。
また、高瀬堰の下流の土砂についても、今後、取り除くことができるように準備を進めているところです。
(松田座長)
ありがとうございます。
ところで、取り除いた土砂は、どうしているのですか。
(国土交通省太田川河川事務所 藤原副所長)
取り除いた砂は利用する場所がないので、有料で処理するか、埋立地にもっていくかを検討して決めていくことになります。
(松田座長)
濱口さん、今後の可能性として取り除いた土砂の活用方法はないでしょうか。
(濱口委員)
そうですね。二枚貝の研究者として、言わせていただきますと、この土砂は非常に良い砂です。
例えば、干潟域でアサリ等の二枚貝のために、うまく有効利用ができるのではないかと思います。
今、伺ったお話は非常にもったいないと思いました。
(松田座長)
今後の検討課題の中で、提案があるのではないかと思ったのですが、前回の懇談会の際に、広島市水産振興センターの藤井部長から発言がありましたが、アユの生活史から考慮すると、河口域の環境改善も今後、検討していく必要があるのではないかという意見がありました。
また、高橋委員からも東京湾の多摩川の事例の紹介がありました。
今後、将来的な検討課題の1つとして、河口域の環境改善のためにそういった土砂を活用することを検討してもよいのではないでしょうか。
すぐには、うまくいかないでしょうが、検討課題の1つになるのではないかと思うのですが、事務局はいかがでしょうか。
(事務局 徳村課長)
前回の会議でも海とのつながりについてご指摘いただいたところでございます。
そういった経緯もありますので、今後、海と川のつながりと言う点についても検討していきたいと考えています。
現在、別の事業ではございますが、漁場造成のため、藻場ブロックという漁礁のようなものを設置する取組を実施しています。
また、今後の水産振興を考えていく節目の年も近づいていることから、その中でも検討を進めていきたいと思います。
また、余談ですが、以前、アユの産卵場造成を行った際に、国土交通省さんから高瀬堰の下流に堆積した砂を提供していただいたこともございます。
堆積した砂は、本来なら徐々に流下し、海まで辿りつくはずのものですので、アユの産卵場造成に使うというのも有効な方法ではないかと思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
では、高瀬堰の運用について意見はありますか。
(内水面漁業協同組合 鈴木代表理事組合長)
高瀬堰の話ではないのですが。
大芝水門より下流(本川、京橋川、天満川)では、今年7月の豪雨、4年前の豪雨では、かなりの土砂が流れてきており、河床に土砂が堆積し、浅くなっています。
私は、30年以上、シジミを掘っていますが、河床がこれほど浅くなったことはございません。
特に、大潮の干潮時には、河川に水が流れていません。
これは推測ですが、河床が浅くなったことで干潟域が広がり、シジミが干出している
時間が長くなってしまったことで、餌を食べられなくなり、死滅しているのではないかと思うのです。
昨年も太田川漁協さんと一緒に国土交通省さんへ、私個人でも広島県の河川課さんへ浚渫をしてほしいとお願いし、今後、浚渫を実施する予定であると回答をいただいていたのですが、未だ実現されていません。
もちろん、治水の方が優先されるという意見もございますが、可能な限り、国土交通省さん、県の河川課さんにおかれましては、浚渫をお願いしたい。
河床が浅いままでは、何をやっても効果が見えてこないと思うのです。
クロダイ、エイもかなり多くなり、定期的に駆除を続けていますが、間に合いません。
河床が浅くなったことで、塩分遡上が早くなっており、これが原因で食害生物が増えたように思います。浚渫をしてもらわないと、川と呼べるものではありません。
どうかお願いします。
(松田座長)
土砂等の堆積により、シジミの生息環境が大きく変化しているということですね。
河床が浅くなったことにより、環境が大きく変化しているということですが、お話では、直近の5年間の変化が特に大きいわけですよね。
国土交通省さんで、川底の等高線図のようなものを持っていないのでしょうか。
(国土交通省太田川河川事務所 藤原副所長)
はい。
太田川河川事務所では数年に1回の頻度で、約200mピッチで河川の測量を行って、横断図を蓄積しているのですが、局所的なところは把握できないかもしれないです。
(松田座長)
ありがとうございます。
等高線のデータはあるということなので、実際の漁場の状況と比較してみてはどうでしょうか。
そういったデータがあれば、今後、そういった提案をしていく上で、根拠の資料となるかもしれないですね。
(太田川漁業協同組合 山中代表理事組合長)
太田川漁協でもそのデータを見せてほしいとお願いしているのですがね。
なかなか見せてもらえないのです。
現在、太田川では産卵場(大槙の瀬)の近くまで砂が堆積してきているので、アユが住める場所がだんだん狭くなっていると思います。
昔は、祇園新橋付近までは砂の堆積がなく、川石が見えていました。
それが今、安佐大橋の上流のまで砂が堆積しています。
アユが住めるような状態ではありません。
(松田座長)
特に、今年の豪雨の影響は、大きいと思いますが、豪雨が発生してから時間もたっていませんから、なかなか問題が解決していないかもしれませんね。
土砂の堆積の対策については、重要な課題の1つだと思います。
(高橋委員)
よろしいですか。
アユを増やす方策は、短期、中期、長期的とある程度、具体的な案がでているのですが、今後、これらがどのように作用して、アユが増えていくのかというシナリオをざっとでもいいので、皆さんが共通認識できるような形で検討してはどうでしょうか。
ある程度、シナリオ化しないと、今のままでは、単発的すぎると感じています。
できれば、数値目標を立てることが必要ではないでしょうか。
流下仔魚数でいくら、遡上数でいくら、親魚数でいくら、全部は、無理かもしれませんが、太田川の河川規模を考慮した上で、数値目標を立てて、それに向かって、取組を推進していく。
数値目標があれば、現時点の取組が、対策として全然足らないのか、ある程度、うまくいっているのかといったところが明らかになると思います。
どこに焦点をあて、力を入れていくべきか分かってくると思いますから、その辺について、もう少し肉付けを頑張った方がいいと思います。
(松田座長)
大変重要なご提案ありがとうございます。
資料2の表では、今までに分かったこと、今後の方針がよく整理されていると思います。
しかし、アユの生活史の全般、再生産、それに時間軸を加えたような見取図として考えた場合、これまでの5年間の中で、何が判り、何が判っていないのかさらに整理が必要ですね。
判っていない点については、これからからそれが明らかになる可能性があれば検討する必要があるし、既に判っているところについては、今後、数値目標を立て、具体化するという作業が必要です。
ある意味で、今年は、5年目の節目といういい機会です。
これから平成31年度以降の最終案をつくるために3月に懇談会を開催する予定であるということなので、その間の約半年で、事務局を中心に先程、高橋委員先生から提案のあった課題の検討を進めるということはできないでしょうか。
(事務局 徳村課長)
はい。ご助言いただいた内容は、今後、アユ資源を増やすためには、重要な検討課題であると思いますので、関係機関の皆さんのご協力を得ながら、まとめていきたいと思います。
(松田座長)
これまでの経緯を事務局から説明いただきましたが、太田川再生方針を立てるにあたっては、それまでに検討を進めてきた色々な内容をある意味、かなり絞ったのです。
そのため、短期、中期及び長期的な取組だけだと、高橋委員の意見のようにそれぞれの取組が単発的で、それがどのような繋がりで現在の状況になっているのか、どこが穴(検討不足)になっているのかを必ずしも十分に検討できていないと思います。
私も高橋委員と同じ意見ですので、是非、お願いしたいと思います。
それから、本日、もう一つの課題として、祇園水門・大芝水門の運用について議題になっています。
祇園水門・大芝水門の運用については、特に塩水遡上の影響を考慮する必要であるということでしたが、今後の課題や調整が必要な部分について国土交通省さんのご意見をいただけないでしょうか。
(国土交通省太田川河川事務所 藤原副所長)
祇園水門の試験的な運用については前回の懇談会でも、塩水遡上の影響が考えられることから、慎重な検討が必要であるとご意見を頂いています。
祇園水門の運用には、塩水遡上による利水者への影響が心配されることから、その点が払拭され、利水者の了解が得られた場合には、国土交通省としても可能な限り協力をいたしますので、御理解いただきたいと思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
シジミについては、何かご意見はないでしょうか。
(濱口委員)
よろしいですか。
シジミについては、今回、具体的な方針を示していただいており、この方針は正しいと思います。
松田座長からも発言をいただきましたが、太田川再生方針の基本理念は、種苗放流に頼らない、天然の再生産に基づく資源回復を目指すというものです。
しかし、現在の太田川では、シジミの資源が少なすぎるため、今回の提案のように
人工種苗に頼らざるを得ない局面にあるということは、皆さんにも御理解いただきたいと思います。
また、広島市が生産される人工種苗を活用することについては、メリットが2つあります。
まず、親を直接的に増やすことができるという点。
次に、生物多様性に配慮して、他地域産の種苗を使わない方が良いという意見があるなかで、地場産の種苗を放流することができるという点です。
さらに、先程の説明にあったように、塩ビ管で(ネットの)目合いを変えることで、人工種苗を母貝サイズまで約1年で成長させることができるということは、かなり画期的な方法であると言えます。
つまり、人工種苗をわずか1年で母貝にすることができる技術ですから、この手法が確立されたことゆえに、今回のこの方針が正しいと言えます。
取組の効果検証についてですが、春の資源量は、一定量が確認されているということだったので、春の資源量を経年的に確認し、前年と比較していくことで、ある程度、直接的な効果をみることができると思います。
例えば、母貝が健全であるといかにシジミの資源量が増えるかということについて紹介させていただきますと、今、宍道湖にいるシジミの資源は約6万トンと言われています。このうち、毎年、冬場に渡り鳥に食べられる量が約2万トンと試算されています。
しかし、健全な母貝群が育っていると多少なり食害があったとしても、それを乗り越えていくことができます。
今の太田川においては、母貝が少なすぎます。
このような点からも今回の提案のあった母貝団地を整備するという方針はかなりよくねられていると思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
濱口委員からもできるだけ他産地の種苗を使わない方が良いのではという意見があることを発言いただきましたが、これまでの取組では、三重県産種苗や宍道湖産種苗の放流を行ってきたと思います。
例えば、地場産の種苗が足りないから他産地の種苗を入れるという目的以外にも他産地産種苗を入れるメリットはあるのでしょうか。
今回の発表では、その点については、あまり触れられていないように感じたのですがいかがでしょう。
(内水面漁業協同組合 鈴木代表理事組合長)
他産地産種苗のメリットは、漁獲サイズに成長した個体をすぐに放流できることだと思います。
今までに宍道湖産、三重県産の種苗を放流してきましたが、特に宍道湖産は、午前中にとったものを夕方に放流することができることから、活力が良く、次の日には、砂に潜っています。
一方、三重県産の種苗は運搬に1日以上かかり、さらには、氷が張られた状態で輸送されることから活力が悪く、かなりの量が死んでしまいました。
そういった意味で宍道湖産の種苗は、良かったのですが、結局のところ、残ってはいません。
流されてしまうのか、クロダイの食害を受けるのかはわかりませんが。
以前、着色したシジミを放流し、動向を調査したことがありましたが、結局、色を付けたシジミを見つけることはできませんでした。
このような経緯もありますので、今後は、他産地産の種苗の放流量は減らしていこうと考えています。他産地産の種苗では太田川の環境には合わないのかもしれません。
(松田座長)
ありがとうございました。
宍道湖産の種苗は、活力の良いものを移入しやすが、現状は放流効果は出ていないということですね。
ここまでの議論を通じて、何かご意見はないでしょうか。
(高橋委員)
高瀬堰の運用について、伺ってもよろしいでしょうか。
運用の効果があるということは、去年までの調査結果で、かなりはっきりとでていると思っているのですが。
これをまだ、試験的な運用として継続するのは、今後、運用方法に改善余地を見つけていくためなのか。
それとも、現時点では、アユのために高瀬堰を運用するということは決められないということなのか。どちらなのでしょうか。
(松田座長)
高瀬堰の運用について、補足をお願いします。
(事務局長 徳村課長)
国土交通省さんとの事前の協議の上、この度の提案をさせていただいているのですが、今後、高瀬堰の運用を継続するにあたっては、効果を具体的な数値に基づき示す必要があると伺っております。
例えば、運用により、流速が上がること、仔魚が早く流下すること等を直接的(具体的なデータとして)に押さえる必要があるという話になっていますので、そういったデータを取りたいと思います。
この点については、国土交通省さんからも補足いただけないでしょうか。
(国土交通省太田川河川事務所 藤原副所長)
高瀬堰の運用については、アユ仔魚の流下時期にゲートを通常よりも大きく開けているという状況ですが、試験的な運用を行い、効果があるということになれば、本運用として実施することも考えられるのですが、それを検討するには、効果検証データが不足していると考えています。
(松田座長)
これまでの議論であがった意見については、事務局で取りまとめをお願いしたいと思います。
あと、今年度の取組の一部を紹介いただけるのですよね。
では、今年度の取組を紹介いただくとともに、平成31年度以降の計画についてお示しいただきたいと思います。
(事務局 古矢技師)
まず、平成30年度の取組として、高瀬堰の試験的な運用を今年度も継続して実施していただける予定であることから、今年度の運用についてご紹介させていただきます。
なお、高瀬堰の取組については、国土交通省さんからご説明いただき、それに伴う効果検証調査については、広島市からも調査内容をご紹介します。
(説明)資料6「平成30年度 高瀬堰における取組について」
(長谷川第二係長)
太田川河川事務所管理第2課の長谷川です。
平成30年度高瀬堰の試験的な運用について、説明します。
では、高瀬堰のこれまでの取組と調査の概要について説明します。
まず、高瀬堰におけるアユ仔魚の降下促進に関する取組として、平成28年度に一時的に試験的な運用を行い、その際に貯水池内の流速調査を行うことで、夜間にゲート操作を行うと貯水池内の流況にどれくらいの変化を及ぼすのかという事前調査を行いました。
流速調査の結果、一定の効果が見込まれるという確認ができたことから、平成29年度及び平成30年度については、アユの産卵期において、試験的運用の実施し、それに伴う効果検証調査を行っています。
なお、平成29年度は、10月の降雨が多く、流量が多かったことから、実際に試験的運用が実施できたのが、11月19日からのわずか1週間程度でした。
このため、平成30年度は、10月下旬から11月下旬にかけて改めて試験的な運用とそれに伴う効果検証調査を行う予定です。
次に平成30年度の調査概要についてです。
まず、遡上期の調査として、まず、高瀬堰の両岸の魚道において遡上する魚類の調査を行いました。
魚道の上流に定置網を設置し、12時~18時の期間で魚類を採捕し、アユについては、体長、体重、下額側線孔数、側線上側横列鱗数を測定しました。
この調査を遡上期間中に6回を行っています。
なお、遡上調査の結果については、説明の最後にご紹介いたします。
続きまして、ふ化仔魚降下調査についてです。
高瀬堰の試験的な運用の際に、貯水池に流入する河川、貯水池内、堰下流において、プランクトンネットによりふ化仔魚を採捕します。
10月から11月に調査を5回実施する予定です。
産卵場調査については、堰上下流にあるアユの産卵場の調査を行い、産卵場を捜索する予定です。
調査は、10月から11月の間に1回実施する予定です。
次に高瀬堰の試験的な運用の目的です。
平成25年度に太田川再生方針が策定され、それに伴い平成26年度に太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会が立ち上げられ、関係機関が連携し、アユ資源を増やす取組を実施しています。
アユ資源が減少した原因の1つとしてふ化したアユ仔魚が海域へと辿り着く前に死滅している可能性が示唆されているため、ふ化仔魚をいち早く海へと降下させ、アユ仔魚の生存率を高めるという効果が期待されていることから、高瀬堰の夜間時の放流量を増やすという取組を実施します。
運用の方法については、前段で説明したとおりですが、放流の時間帯は、20時から明け方4時ということで、下に運用のイメージを載せています。
太田川における発電放流は、昼間の(電気使用量の)ピーク時の発電の際に実施しているため、14時から20時かけて、可部発電所から放流水が流れ、この時間帯については、流況が非常に良い状況です。
しかし、アユの仔魚が海域へと降下する夜間については、発電が行われていないことから、流況が悪くなるため、夜間に高瀬堰の試験的な運用を行い、貯水池内の水を放流することで、放流量を増やすという取組を行います。
なお、試験的な運用は、増水時、渇水時については、調査等が実施できませんので、運用を中止させていただきたいと思います。
では、昨年度の効果検証結果についてです。
試験的運用時の貯水池内の流速調査の結果でございます。
こちらに示している図は、貯水池内の距離表ごとに200mピッチで貯水池内の流速を測定した結果です。
14km800(図右)は、3川合流付近で河川の流況が一番多いところであることから、河川の流速も早い地点です。
発電をしている時は、一番上の線で示したように流速はかなり早くなる状況ですが、発電をしていない時は、下の線で示したとおり、流速が10cm/秒程遅くなるという状況です。
このような状況を少しでも改善できるのかということを確認するため、平成28年度に一時的に試験的な運用を行い、その結果、赤色のグラフで示しているとおり、試験的な運用中は、発電をしていない時でも流速が早くなるという結果を確認することができました。
平成29年度は11月19から試験的運用を実施したのですが、その際に記録された流速の結果をグラフ上の赤い点で示しています。
平成28年度の試験的な運用時に実施した調査結果と同様に発電放流がないときも貯水池内の流速が速くなっていることを確認しました。
続きまして、調査結果から想定される試験的運用の効果についてです。
昨年度は流況が多く、一番下の表に示したとおり、放流量で49~90トンと流況がありました。
その際は、試験的運用を予定していた時間帯の20時~翌4時より前に、アユ仔魚の降下のピークが来ており、試験的運用の効果検証のデータとしては、十分ではなかったことやまた堰下流の産卵場の調査についても良い結果が得られず、正確な仔魚の降下数が検証できませんでした。
このため、平成30年度も引き続き、調査を行い、平常時の20トンから30トン程度の流況時にアユ仔魚の降下数がどのように変化するかを検証していきたいと思います。
調査概要についてです。
高瀬堰においては、試験的運用の効果検証をするため、高瀬堰の貯水池内を含む上流3地点、堰直下流1地点の計4地点でモニタリング調査を行う予定です。
運用操作時に高瀬堰を挟む計4地点で実施し、上流側2地点と堰下流1地点では、プランクトンネットを設置し、濾水量が約30立米になるよう、採取時間を調整しながらサンプリングを行います。
貯水池内1地点では、プランクトンネットを船で曳いて仔魚を捕獲する予定です。
なお、上流側2地点と堰下流1地点では、1時間ごとに流下仔魚を捕獲して、仔魚降下量を推定し、貯水池内1点については、20分間隔で網を上げる方法で調査を行う予定です。
最後に平成30年度の4月~6月に高瀬堰の魚道で実施した遡上調査の結果をご紹介します。
上のグラフには、今年の3月から6月下旬までの流況と雨量を示しています。
流況のグラフの中に赤い点がついていると思いますが、その日にアユ稚魚の遡上状況を調査しました。
第1回~第6回と計6回の調査を実施しているのですが、昨年度の調査結果と比較するとアユの遡上数は、少ないという結果になっています。
しかし、調査を実施した時期よりも早い時期に、特に3月に流況が良く、洪水があったことから、アユの稚魚は、かなりはやい時期に遡上しているのではないかと考えられます。
太田川漁協さんからいただいた情報では、3月中旬くらいから、遡上を開始しているということでした。
調査の結果だけで判断すると、遡上状況は、あまり良くないことになるのですが、漁協さんの情報等も考慮して、総合的に判断すると今年もかなりアユの遡上が多かったのではないでしょうか。
また、天然物と人工者の判別結果においては、既に人工種苗が放流された後の調査ではありましたが、約8割以上が天然物でした。
これらの結果も考慮した上で、アユ仔魚降下調査を行い、より良い結果になることを期待したいと思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
今年度の遡上状況等の最新の調査結果も含めて、発表いただきました。
ただいまの報告にご質問やご意見はございませんか。
続きまして、事務局から平成30年度の広島市の委託調査内容についてご紹介いただきます。
(説明)「平成30年度 広島市委託調査内容の紹介」
(事務局 古矢技師)
それでは、資料6(補足)をご覧ださい。
高瀬堰の試験的な運用に伴い、広島市が実施する委託調査の内容を紹介いたします。
流下仔魚調査と流速調査を実施します。
まず、流下仔魚調査については、安芸大橋、祇園水門、大芝水門で10月中旬から12月中旬の間に3回以上実施する予定です。
なお、高瀬堰周辺の調査については、国土交通省さんに実施していただけることから、
広島市では、高瀬より下流の状況を調査したいと考えています。
確認事項としては、国土交通省さんの調査と同様に流下仔魚数、卵黄指数、流下のピーク時間等としています。
また、国土交通省さんは期間中に5回調査を実施される予定であることから、広島市もそのうち3回の調査日を併せる形で実施する予定です。次に流速調査についてです
流速調査は、安佐大橋から安芸大橋の間にある産卵場(大槙の瀬)で測定する予定です。
高瀬堰の運用開始前後にそれぞれ1時間ごとの測定を行い、高瀬堰の試験的な運用に伴う流速の変化を細かく見ていきたいと考えています。
(松田座長)
ありがとうございました。
ただいまの説明についてご質問、ご意見はございませんか。
(高橋委員)
よろしいですか。
国土交通省さんが産卵場の調査を実施されるということですが、堰の上流と下流で産卵規模がどれくらい違うのかを把握しておいた方が良いと思います。
広島市さんの方でも時期を合わせる形で、どれくらいの面積に産んでいるか、ごく簡単でもいいので、確認しておいたほうがいいと思います。
(事務局 古矢技師)
以前、産卵場の造成にご協力いただいた際に潜水調査を実施されていたと思うのですが、そのような手法で産卵状況を見ておくということでしょうか。
(高橋委員)
国土交通省さんの調査と比較できるように調整を図られた方が良いと思います。
例えば、資料には簡単な記述しかないので調査手法の詳細はわかりませんが、産卵面積を出されるのであれば、堰の下流でも産卵面積を出しておいた方が比較ができるので良いと思います。
(事務局 古矢技師)
ご助言ありがとうございます。
国土交通省さんと調整をさせていただきます。
(松田座長)
それでは、事務局と国土交通省さんで調整をお願いしたいと思います。
その他はございませんか。
では、今後の計画(案)について、事務局から説明をお願いします。
(説明)「今後の計画(案)」
(事務局 古矢技師)
では、先ほど、ご説明させていただきました資料5をご覧ください。
平成31年度以降の体制ついては、懇談会と水管理部会を統合し、懇談会として、年1回の開催とし、長期的な方策に基づく取組の検討と短期的、中期的な方策に基づく取組のフォローアップと報告を行いたいと考えています。
懇談会をいつまで継続するかということについては、予算状況にもよりますが、平成35年度までの5年間を目標に、高瀬堰の試験的な運用後も同じような運用が継続的に実施できるような、前向きな検討及び祇園水門・大芝水門の試験的な運用を目指した検討を進めていきたいと考えています。
(松田座長)
ありがとうございました。
大きな方針、今後の概要について説明いただきました。
後、細かくは、今日出た課題について、もう少し検討を進めていただき、計画に反映すると言う理解でよろしいですか。
(事務局 古矢技師)
はい。本日、いただいた意見を基に事務局で調整を進めていきたいと思います。
本年度の2月から3月に懇談会を開催し、そこで最終的な方針を決定していただきたいと思います。
(松田座長)
ありがとうございました。
これで一応、すべての議題について、発表がなされました。
5年間の取組状況とこれからの方針について、様々な多面的な意見をいただきありがとうございました。
全体を通じて、ご提案やご意見がありましたら、ご発言をお願いします。
ないようでしたら、これで終わらせていただきます。
懇談会は、次のステージに進み、平成35年度までの5年間を目標に高瀬堰の継続的な運用や祇園水門・大芝水門の試験的な運用を含め、前向きな検討を進めていきたいということでした。
では、懇談会は、水管理部会と統合した形で継続する方向で調整を進めていただくということで、引き続き、よろしくお願いします。
それでは事務局にお返しいたしますので、連絡事項があればお願いします。
(事務局 徳村課長)
皆さん、大変長い間お疲れ様でした。今回の議事録については、事務局でとりまとめて皆さんにお送りいたします。
また、平成31年度以降の方針については、本年度中に第2回懇談会を開催し、最終的な方針をお示ししたいと思いますので、引き続き、ご協力をお願い致します。
それでは、以上を持ちまして、平成30年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会・水管理部会を終了いたします。
本日はどうもありがとうございました。