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包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(令和5年1月25日公表)

ページ番号:0000316885 更新日:2023年1月25日更新 印刷ページ表示

広島市監査公表第2号
令和5年1月25日

 広島市監査委員 政氏 昭夫
同 井戸 陽子
同 山路 英男
同 山内 正晃

包括外部監査の意見に対する対応結果の公表

 広島市水道事業管理者から監査の意見に対する対応結果について通知があったので、当該通知に係る事項を別紙のとおり公表する。

(別紙)

令和3年度包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(水道局)

1  監査意見公表年月日
  令和4年1月27日(広島市監査公表第2号)
2  包括外部監査人
    中川 和之
3  監査意見に対する対応結果通知年月日
    令和5年1月23日(広水財第113号~第116号)
4  監査のテーマ
  水道事業に関する経営管理について
5  監査の意見及び対応の内容

​(1) 広域連携に係る検証過程と記録の改善について
 (所管課:水道局企画総務課) 

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 広島県の「統合による連携」か「統合以外の連携」のいずれを選択するかの問いかけに対し広島市は「統合以外の連携」を選択決定し、広島県へ回答している。担当者に「統合以外の連携」という結論に至った経緯について例えば統合の場合の水道料金がどのように変更となるか、現在の水道関連施設、設備について共同使用となるものあるいは廃止すべきものがあるのか等のシミュレーション資料を作成しているものと考え、その資料の提示を依頼したところ、該当するような広島市独自の資料の作成・保存は行っていないとのことであった。なお、「統合以外の連携」の結論は水道局内で考えを取りまとめ、市議会の意見を受けた後に正式決定を行ったとのことである。

 

詳細情報

 水道局担当者においては「広島県が進める広域連携とは理念が異なるため、統合以外の連携を選択した」とのことである。広島県が進める企業団方式と広島市の単独事業方式の間で理念が異なることは理解できる。その理念を具体的に数値化(「統合による連携」「統合以外の連携」それぞれを選択した場合の使用者が支払う水道料金への影響、安全性・安定性を確保するための施設整備への影響など)して、「統合以外の連携」の選択判断に説得力を持たせる必要がある。

「広島県水道広域連携推進方針」は広島県が令和2年6月に公表した方針であり、この公表までに広島市も含む県内各市町と広島県の水道事業者で構成する「広島県水道広域連携協議会」で協議を重ねてきた上で取りまとめたものである。この「推進方針」を根拠資料とする広島市の回答を受けて、その内容について検証を行った。

 広島市水道局は、「推進方針」は広島県水道広域連携協議会で本市含め参加市町が意見を述べ議論を行ったうえで作成されたものであり、「推進方針」を根拠資料とすることに問題はないとのことである。そして、「統合による連携」と「統合以外の連携」の二つの選択肢を提示されたことを受けて本市は「統合以外の連携」を選択したとのことである。

 

監査人の意見

 水道局は「統合以外の連携」を選択した根拠となる資料、シミュレーション資料などの検証過程は文書として残しておくことがよいのではないかと考える。今後も企業団への加入(統合による連携に加わる)の議論が再度出てきた場合に、過去の検討資料を活用し、当時の判断の経緯を知り得るようにしておくことは有用であると考える。また、議会や水道利用者に当時の判断について確認や照会があった際に水道局として統一された論理的な説明ができる。当時の判断過程の詳細について引継ぎなどを容易にでき水道局職員全体で共有しうると考える。

 他方、「広島市水道ビジョン」にて基本理念を支える柱として「お客さまとともに歩む水道」を掲げ、具体的な取組として「広聴活動の充実」を挙げている。今回の広域連携のように市民の大部分に影響する意思決定を行う場合は、議会への説明、意見の聴取は当然であるが、さらに市民や事業者など「お客さま」である水道利用者へ水道事業の広域連携に関するアンケート調査などを実施するべきではなかったかと考える。水道利用者は様々な生活環境、経営環境に置かれているため多様な意見を得ることができるという利点がある。また、アンケートの結果、圧倒的多数で同意見であれば水道局としてもそれを背景に積極的に施策を推進することができる利点もあるため、今後同様の事例が生じた場合にはぜひアンケート調査の実施を検討されたい。

  広域連携による効果の推計に当たっては、各市町等の決算や固定資産を基に、試算条件を統一した上でシミュレーションを行う必要があるため、平成30年4月に広島県が市町と設置した「広島県水道広域連携協議会」の中で、議論を重ねてきた。その結果を広島県において取りまとめたものが「広島県水道広域連携推進方針」であり、これが根拠を示す資料に該当するものである。

 また、「統合以外の連携」を選択した判断過程の資料として、同方針のほか、令和2年6月23日の消防上下水道委員会で「統合以外の連携」を選択することを説明した資料などを保存している。

 監査人の意見を受けて、水道局として統一された論理的な説明を行うため、これらの資料を引き続き適切に保存していく。

 また、水道利用者に意見を求めることは、市民の代表である市議会へ説明することで適切に対応している。

(2) 広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画について
 (所管課:水道局技術部計画課)

監査の意見
対応の内容
​現状(問題点)

 平成26年5月に作成後は一度も見直し・更新が行われていない。

 広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画には、「4 資料」で施設毎の更新・廃止予定年数が明記されており、基準年が平成24年度となっており、現状でも更新や廃止の予定と現状が乖離する施設が散在する。

 上記計画の「3 長寿命化(更新)計画 (6)PDCAサイクルの確立」においては、「全ての施設は、周辺環境や運用状況などにより老朽化の進行度合いがことなることから、今後も定期的に、日常点検、機能診断、劣化診断などを実施することで、劣化状況の把握を行い、随時、使用年数や更新時期の再検討を行っていく必要があります。」と記載されている。

 

監査人の意見

 計画途中の平成30年度に西日本豪雨災害が生じている。西日本豪雨災害に伴い、計画が大幅に変更せざるを得なくなっている。広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画についても大きな事象が生じた際は更新することが望ましいのではないかと考える。

 広島市水道局からの回答は以下のとおりである。

 「広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画は、予防保全型の資産管理により、おおむね50年先の長期間を見越して、施設の長寿命化と更新事業投資の平準化を行うための考え方を示したものであり、取組の方針としての性格が強い内容となっています。

 近年、頻発する豪雨等の災害により施設更新に遅れが生じてはいるものの、取組方針に関して変更がないことから、これまで広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画の見直しは行っておらず、予算計画等に変更内容を反映することで対応しています。

 また、広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画の見直しについては、使用年数や更新時期の再検討時、国や市の基準の改定時など取組方針に大きな変更が生じた場合に行うこととしています。」

 「広島市水道ビジョン」でもPDCAサイクルに基づく施策の実施を掲げている。計画の定期的な見直しを検討することとしているものの、具体的な定期的見直しの方針が決められていない。定期的な見直しの例としては、中期経営計画の4年毎等、あらかじめ計画の見直し時期を定めておくことが望ましい。
​ 広島市水道施設〔浄水場等〕維持保全計画は、施設の長寿命化と更新事業投資の平準化を行うための方針を示したものであり、具体的な取組については、中期経営計画等の実行計画に反映することで対応している。
 維持保全計画の見直しについては、使用年数や更新時期の再検討時、国や市の基準の改定時など取組方針に大きな変更が生じた場合に行うこととしている。

(3) 広島市水道管路維持保全計画について
 (所管課:水道局技術部計画課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 平成26年5月に作成後は一度も見直し・更新が行われていない。広島市水道管路維持保全計画の、「第4章 資料2」では、「既存管路(配水幹線)の評価結果(総合評価得点の高い順に50件)」が明記されており、その情報は基準年が平成24年度となっており、現状でも更改工事によって現状が乖離する管路もそのままとなっている。

 上記計画の「3 長寿命化(更新)計画 (6)PDCAサイクルの確立」においては、「水道管路は、水圧や土圧、埋設されている土壌の腐食性などにより常に劣化が進行していくことから、今後も計画的に漏水防止調査や管路巡視、管体調査を実施することで管路の劣化状況を的確に把握し、使用年数基準や更新時期の再検討を行っていく必要があります。したがって、PDCAサイクルにより、定期的に更新計画を見直すこととします。」と記載がされている。

 

監査人の意見

 計画途中の平成30年度に西日本豪雨災害が生じている。西日本豪雨災害に伴い、計画が大幅に変更せざるを得なくなっている。広島市水道管路維持保全計画についても大きな事象が生じた際は更新することが望ましいのではないかと考える。

 広島市水道局からの回答は以下のとおりである。

 「広島市水道管路維持保全計画は、予防保全型の資産管理により、おおむね50年先の長期間を見越して、管路の長寿命化と更新事業投資の平準化を行うための考え方を示したものであり、取組の方針としての性格が強い内容となっています。

 近年、頻発する豪雨等の災害により管路更新に遅れが生じてはいるものの、取組方針に関しては変更がないことから、これまで広島市水道管路維持保全計画の見直しは行っておらず、予算計画等に変更内容を反映することで対応しています。

 また、広島市水道管路維持保全計画の見直しについては、使用年数や更新時期の再検討時、国や市の基準の改定時など取組方針に大きな変更が生じた場合に行うこととしています。」

 「広島市水道ビジョン」でもPDCAサイクルに基づく施策の実施を掲げている。計画の定期的な見直しを検討することとしているものの、具体的な定期的見直しの方針が決められていない。定期的な見直しの例としては、中期経営計画の4年毎等、あらかじめ計画の見直し時期を定めておくことが望ましい。

 広島市水道管路維持保全計画は、管路の長寿命化と更新事業投資の平準化を行うための方針を示したものであり、具体的な取組については、中期経営計画等の実行計画に反映することで対応している。

 維持保全計画の見直しについては、使用年数や更新時期の再検討時、国や市の基準の改定時など取組方針に大きな変更が生じた場合に行うこととしている。

(4) 計画的な管路更新の実施について
 (所管課:水道局技術部計画課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 中期経営計画における管路更新計画においては、延長距離が目標値になっており、管路更新距離の目標は4年間で120kmとなっている。現時点の5年間の平均は24.7kmとなっており、中期経営計画の目標値に達成していない。また、目標120km/4年を継続しても、使用年数基準の更新需要には間に合っていない。

 広島市水道管路維持保全計画(平成26年5月に策定)では年間26kmとなっているが、その水準も達成していない年度が散在しており、令和2年度において未達成となっている。

 広島市水道管路維持保全計画では、「腐食性地盤区分図」が記載されており、腐食性の高い地域、一般地盤、腐食性が低い地域に属性区分されている。既存管路の評価で用いる総合評価等を利用した、緊急性の高い順番等の細分化された優先順位付けがなされている。

 

監査人の意見

 広島市水道管路維持保全計画(平成26年5月に策定)においては、既存管路の評価で用いる総合評価等を利用した、緊急性の高い順番等の細分化された優先順位付けを行っている。令和2年度の進捗管理について、水道局からは、令和2年度の管路更新事業実施路線に関する予算・決算時の執行状況を示す資料により進捗管理を行っているとの説明を受けたが、広島市水道管路維持保全計画の優先順位に示されている細分化された管路の管理ではなく、それらを繋ぎ合わせた路線単位での管理となっている。路線単位での進捗管理も非常に重要であるが、広島市水道管路維持保全計画で優先順位付けされている細分化された管路の進捗管理も取り入れることが望ましいのではないかと考える。

 他方、広島市水道管路維持保全計画においては、更新事業量の平準化から更新延長を毎年26km/年と設定しているが、この試算は「腐食性が低い地盤」を前提とした管路評価となっており、腐食性が高い地盤及び一般地盤よりも使用可能年数が長く見積もられているおそれがある。今後、更新計画における「腐食性が低い地盤」について再検討した場合、更新延長が毎年26kmよりも増加する可能性がある。使用可能年数の見積については、適切な地盤区分に基づいた設定とすることが望ましいと考える。

 「広島市水道ビジョン」では年間40kmの更新延長を将来的な目標としているが、現時点では年間平均が24.7kmに留まっていることから、長期的な目標設定が形骸化しないよう、計画的に更新延長を実施することが求められる。

 中期経営計画に位置付けた管路更新の進捗の遅れの主な要因は、平成30年7月の豪雨災害の影響のほか、入札の不調、工事内容や発注時期の見直しによるものである。

 今後の管路の更新に当たっては、入札不調件数の低減及び工事の円滑な実施を図るため、引き続き、工事着手日選択型契約方式の試行や施工時期の平準化に取り組むなど、施工業者が安定的に応札できる環境を整えるとともに、工事発注前の関係機関との調整を更に徹底し、計画的な執行に努める。

(5) 計画的な施設更新の実施について
 (所管課:水道局技術部計画課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 中期経営計画における目標管理「施設の更新か所数」の進捗が、前中期経営計画の次期持越金額が2,790,000,000円(14施設のうち13施設)であり、現中期経営計画における施設更新計画の進捗は31.5%(最終的に令和3年度は、18施設のうち7施設が更新される見込)と予定から大幅に遅れている。

 

監査人の意見

 中期経営計画毎に投資予算を設定しているものの、前中期経営計画から持ち越し及び予算額の変更が散在する。前中期経営計画における執行率は60.5%及び持ち越し額は2,790,000,000円となっている。施設更新の進捗管理及び見積の精度を慎重に実施することが求められる。

 中期経営計画に位置付けた施設更新の進捗の遅れの主な要因は、平成30年7月の豪雨災害の影響のほか、入札の不調、発注時期の見直し、用地取得に関する地元との調整に時間を要したことによるものである。

 今後の施設の更新に当たっては、入札不調件数の低減及び工事や用地取得の円滑な実施を図るため、引き続き、工事着手日選択型契約方式の試行や施工時期の平準化に取り組むなど、施工業者が安定的に応札できる環境を整えるとともに、工事発注前の関係機関等との調整を更に徹底し、計画的な執行に努める。

(6) 水需要の低下を補う新たな収益源の模索について
 (所管課:水道局企画総務課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 「広島市水道ビジョン」や「中期経営計画」において、水道局は将来的に水需要の減少を見込んでいる中、その必要性を認識し、中長期的な収益源の確保の検討は行っているものの立案~実行フェーズに至っておらず、必ずしも検討が十分に行われているとはいえない現状がある新たな収益源の確保に向けて一層、積極的な取組姿勢が必要である。

 広島市水道局において現在行っている水道事業とは異なる収益事業の主なものとして庁舎の一部賃貸事業や広報印刷物への広告掲載事業がある。しかし、これらの事業による収入は限定的で、長期的な財政収支の改善に直ちに寄与するとは考えられない。そこで長期的視野に立った収益改善に寄与する新たな事業を水道局全体として模索する必要があるのではないかと思われる。まずは幹部会議等で新規事業の検討を行い、幹部から率先して知恵を絞る場を設けるなど環境を整えることも一案である。

 新規事業を考える場合、水道事業と全く異なる異業種へ進出することはリスクが大きくなるため、まずは水道局がこれまで蓄積してきた技術を他方面へ活かす方法を模索することも一つの案と思われる。

 「広島市水道ビジョン」P38 施策目標Ⅳ 健全経営の推進 1財政基盤の強化の具体的な取組(4)において「本市の有する経営資源を生かし、水道水の多様な活用など新たな発想による収入の確保に取り組みます。」と記載していることから、広島市水道局としても新たな収益源の確保は課題として認識していると認められ、早急な取組が求められる。

 

詳細情報

 一つの案として考えられるのは水道技術の海外移転・販売による収入向上である。総務省の「自治体水道事業の海外展開事例集(令和3年3月)」にある民間連携・海外展開事例に他の自治体の採用事例が公表されている。安全な水を提供する技術は海外のどこにでもあるというものではなく、今現在も飲用水が満足に届かず大変な苦労をしている人々がいる海外地域も多い。それだけに海外においてもコストを掛けてでも日本の水道技術を自国へ導入したいというニーズは多いものと思われる。

 この点に関して広島市水道局も関心は高く、自治体水道国際展開プラットフォーム(海外展開に関心の高い21水道事業体と日本水道協会で構成)に参画し、参考事例などの情報収集に努めているとのことである。この中で水道技術の海外移転・販売を新たな収入として位置づけているのは1事業体のみであったことが判明し、広島市水道局はこの事業体へ出向き現地で調査を実施した結果、採算性は乏しく、現時点で採算確保は困難とした。

 今回の調査結果は他の事業者の例として現在のところ水道局内に保存されているが、今後技術進展や海外の経済情勢が変化した際に事業化をいつでも再検討が行えるようにしておくことが必要である。

 また、民間企業と共に新事業を開発していくことも一つの方法と考えられる。他自治体の事例として民間企業と協議会を立ち上げ、会員企業と定期的に会合を持って情報を共有し連携を深めている北九州市海外水ビジネス推進協議会(KOWBA)のようなケースもある。このような民間企業の情報から新たな新事業へのヒントが得られることも少なくないと思われる。民間企業などからのリソースやノウハウを積極的に習得していくことも新事業開発のみならず、既存の事業にも好影響を及ぼす可能性もあり、検討の余地がある。その上で独自の取組すなわち新事業を見出し、地方公営企業としての社会的意義を高めることにより若い優秀な人材獲得にも好影響を期待できる。

 上記のことについて、水道局に見解を求めたところ、「本市においては、節水型社会の進行や今後の人口減少等により、給水収益の減少が見込まれます。このため、これまでも人件費の削減をはじめ、徹底した経費の削減に取り組むとともに、未利用地の売却など収入の確保策を実施するなど、継続的に経営効率化を推進しているところです。新規事業については、これまでも民間企業のリソースやノウハウを活用したものを含めて検討を行っています。水道技術の海外移転・販売による収入の向上については、現時点では事業化することは困難であるため、他の事業体の調査結果を適切に保存するとともに、今後、技術進展や海外の経済情勢が変化した際には、事業化を再検討できるように体制を確保しています。また、職員提案制度においてアイディア等を募集するとともに、若手職員を中心としたワーキンググループを立ち上げて検討を行うなど、職員が自由に発言できる職場環境を整えています。」とのことであった。

 

監査人の意見

 新規事業は当初思いもよらないところから始まって展開していくことが少なからずある。そのためには水道局職員が自由に発言できる社風や斬新な発想を許容するような職場の雰囲気を作り、日頃の水道事業業務の中で感じる不便さや遊び心から生まれるアイディア等が評価されるような職場環境の醸成も検討されたい。

​ 水道局では、新たな収益源の確保に向けた取組として、これまで職員からのアイディア募集を実施するなど、職員一人一人の経営改革に対する意識付けや組織風土の醸成を図ってきたところであり、今後も継続して取り組んでいく。

(7) 事業体としての研究開発業務の活性化について
 (所管課:水道局技術部調整課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 令和2年度の決算書をみると技術企業として研究開発関連支出についての記載がなく、研究開発費としての計上金額も見当たらない。

 会計上の研究開発の定義については以下のとおりである。

 研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいう。(研究開発費等に係る会計基準)

 開発とは、新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいう。

 水道事業は市民の命の源泉となる水を扱うものであるため、高度な技術と大規模な設備をもって展開される装置産業であり、他方で常に科学技術の進歩を取り込むものでなければならない技術産業とも考える。当然そこには最新技術の導入によるコスト削減も含まれる。現在直面している設備更新コスト削減の問題であれば耐用年数を伸長するような新素材の研究、災害時でも水の安定供給が可能となるような濾過技術や新薬品の開発、海水の淡水化、水道管や水道水に異常が発生した場合の検知システムなど今後も新たに創り出さなければならない技術は少なからずあると考えられる。産学連携により大学との共同研究なども可能と思われる。

 

監査人の意見

 中期経営計画(平成30年度~平成33度)のP13では以下のような記載がある。

 「…(前略)…財政収支計画(平成30年度~平成33年度)では事業運営に必要な資金を確保できるものの、このまま推移すると次期の財政収支計画(平成34年度~平成37年度)では資金不足を生じることが見込まれる状況にあります。」

 このような記載にもあるとおり水道事業の将来は決して楽観視できる状況ではなく、事業にとって起爆剤となるような革新的技術の開発が求められているといえる。これらは一朝一夕に達成できるものではなく、成果が得られるか否か不明な中でも日頃から研究開発活動を積み重ねることが必要となる。一見、費用対効果の観点から無駄な業務と考えられるが、知識・技術(ノウハウ)の蓄積だけを見ても一定の効果は得られるものと考えられる。水道局においては新技術の研究開発に本格的に着手するための検討を求めたい。

 新技術の研究開発については、令和2年度に民間企業などとの共同研究制度を設け、これを活用して令和3年度においては、スマートメーターの導入に向けて共同開発に取り組んだ。

 今後も、当該制度を活用し、継続して新技術の研究開発に取り組んでいく。

(8) 水道料金逓増料金制度の見直しについて
 (所管課:水道局財務課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 広島市水道料金は、従前より水道使用料が一定量を超えると水道料金単価が上昇する「逓増型料金制度」を採用している。

 逓増型料金制度は、使用水量が「1~10立方メートル」、「11~15立方メートル」と増加するごとに単価が5円/立法メートル、106円/立法メートルと上昇するものである。

 特に高度経済成長期においては水道使用量が増加傾向にあったため、節水の奨励の意味合いも含めて逓増型料金制度の適用は有効であった。しかし、近年の人口減による水需要の減少や節水設備の普及、ミネラルウォーターを小売店で飲用水として販売していること等もあり、水道事業を取り巻く経営環境が変化してきていることも事実である。こうした中、逓増型料金制度が実態に合ったものかどうか検討を要する状況であると思われる。他方で市民や事業体の節水努力が報われる制度も担保される必要がある。平成22年度の広島市包括外部監査でも逓増型料金制度について取り上げられ、当時は用途別料金体系の格差解消を提言するものであった。しかし、現在は給水収益が減少に転じ、将来における資金不足が懸念される状況となり、水道事業そのものの存続を図ることを踏まえての水道料金改定を検討しなければならない状況といえる。

 

詳細情報

 このような状況のなかで、国(厚生労働省)は、平成25年3月公表の『新水道ビジョン』において、「逓増型料金制度の検証」として、水需要減少傾向の中で緩やかな逓増型料金体系の見直しを提言している。国においても事業存続を念頭に置いた提言になっている。

7.3新たな発想で取り組むべき方策

7.3.1料金制度の最適化

(1) 逓増型料金制度の検証

 …(前略)…料金制度を2部料金制として、収入の7割程を水量の増減で変動する従量料金で回収している事業がほとんどです。さらに、大量に使用する業務・営業用などの給水契約において、逓増型体系をとっているところも依然多い状況です。これら、従量側に偏った、かつ逓増型の料金体系は、水需要が右肩上がりで水資源が不足していた時代には適応していましたが、水需要が減少傾向にある現状においては、需要減少以上の速さで収入減を招き、固定費部分の料金回収も出来なくなる恐れがあるなど、安定経営に資する料金体系とは言い難い状況です。このため、社会環境の変化に伴い、経営の安定に向けた料金体系の見直しを検討する必要があります。

 (出典:厚生労働省「新水道ビジョン」(平成25年3月公表))

 以上のように水道料金の見直しは広島市水道局のみならず、全国の水道事業者で重要な課題となっている。具体的に見直しに着手している水道事業者や、既に水道料金体系を変更し運用を開始している水道事業者もある。

 

監査人の意見

 広島市水道局では、これまで財政収支や水道利用者への影響を踏まえ、従量料金の逓増率を緩やかにする料金見直しの検討は行っている。しかし、前に述べたとおり給水収益が年々減少することが見込まれ、事業を取り巻く経営環境が大きく変化するなかで、水源が豊富で水不足の懸念が少ない広島市においては逓増料金制度の中でも部分的に需要促進型の水道料金体系の導入等、料金制度を検討する時期に来ているものと思われる。

 現行の中期経営計画の計画期間である令和4年度から令和7年度までの間は、水道料金の改定を予定していない。

 このため、令和8年度以降の中期経営計画の策定に当たって料金体系の見直しを行うときには、国(厚生労働省)の「新水道ビジョン」で示された考え方を視野に入れつつ、包括外部監査の意見も踏まえ、水道施設の更新財源を適切に確保するとともに、市民生活へ与える影響や大口利用者と小口利用者の負担の均衡を考慮した料金体系のあり方を検討することとする。

(9) 月次損益の報告について
 (所管課:水道局財務課)

監査の意見
対応の内容

現状(問題点)

 月次損益及び月次分析は幹部会議で報告されていない。

 

監査人の意見

 期中の損益の状況や予算と実績の状況を把握することは経営管理の観点から重要である。令和2年度6月23日開催の幹部会議(課長会議)で、令和元年度水道事業決算概要について報告されている。しかし、月次の損益状況や予実分析については、その損益状況や分析結果の共有が幹部会議で報告されていない。少なくとも幹部会議で四半期に一度程度は共有してはいかがか。

 地方公営企業である水道事業では、年度中途においても常に財政状態及び経営活動の状況等を把握しておく必要があることから、地方公営企業法に基づき、管理者は毎月末日をもって計理状況報告書を作成しているところであり、適切に経営管理を行っている。

 また、予算の執行に大きく影響を及ぼすような事案が発生したときには、これまでも必要に応じて幹部会議において共有を図っている。

 今後においても、監査の意見を踏まえつつ、適時適切に幹部会議へ報告することとする。