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平和宣言
本日、わたくしたちは、原爆18周年の記念日を迎えた。
原爆の惨禍の中からかろうじて生き残ったわたくしたちは、この18年間、その恐ろしい傷あとをみつめながら、広島の悲劇をふたたび繰り返さないよう全世界の人々に訴えつづけてきた。
その間、わたくしたちは、常に人間の善意と英知を信じてきたが、今日ようやく、米、英、ソ三国による部分的核実験停止条約の締結をみたことは、まことに喜びにたえない。
この条約には、なお基本的な問題の解決は取り残されているが、わたくしたちの悲願達成に一歩を進めたものとして大きな意義を見いだすものである。
今こそ、すべての民族、すべての国家が、原子力時代の戦争は、ひとり戦争当事国のみならず、全人類を滅亡に導く手段以外の何ものでもないことに目ざめ、核兵器の全面的廃棄と戦争の完全放棄を目ざして一層の努力を傾注することを願ってやまない。
本日、ここに思い出もあらたに原爆死没者の霊を弔うにあたり、重ねてこのことを全世界に訴える。
1963年(昭和38年)8月6日
広島市長 浜井 信三