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平和宣言
本日、わたくしたちは、ふたたび8月6日を迎えた。
19年前のこの日、広島市は、一瞬にして焦土と化し、無数の人命が奪い去られた。しかも、そのとき人体深く食い入った放射能は、今日なお、被爆者たちの生命を脅かし続けている。
わたくしたち広島市民は、この悲惨な事実に基づき、今日まで機会あるごとに、世界の人々に、その体験を伝え、核兵器の廃棄と戦争の完全放棄を訴えつづけてきた。
たまたま昨年、米、英、ソ三国による部分的核実験停止条約が締結され、世界の多くの国がこれに参加したことはまことに喜びにたえない。しかしながら、この条約はわたくしたちの悲願達成に一歩を進めたものではあるが核兵器の完全放棄を保障するものではなく、加うるに世界各所における国際間の小ぜり合いは大いなる危険をはらんで現在なお続けられている。
わたくしたちは、いまこそ、全世界の人々が原子力時代の戦争は、ひとり戦争当事国のみならず、全人類を滅亡に導く手段以外の何ものでもないことをあらためて深く認識し、戦争の完全放棄を目ざして一層の努力を傾注するよう望んでやまない。
本日、ここに、原爆死没者の霊を弔うにあたり、重ねてこのことを広く世界に宣言する。
1964年(昭和39年)8月6日
広島市長 浜井 信三