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昭和46年(1971年)

ページ番号:0000009453 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

平和宣言

世界の大勢は、科学技術の総力をあげて、激烈な軍備競争に狂奔し、核兵器体系は、日を追うて巨大化と多様化の一途をたどりつつある。その想像を絶する凄まじい破壊力と放射能が、世界の恐怖を極限まで高めてきた。しかも、ベトナムにおいては、依然として軍事行動がとめどもなく繰り返され、数千万の民衆が悲惨な死と救いなき苦しみにさらされている。いま、原爆犠牲者の霊前に立ち、われわれはこの事態を深く悲しむとともに、かかる現実を断じて許してはならないと切に思う。

すべての人間は、生まれながらにして自由であり、その尊厳と権利とにおいて平等である。戦争は人間共存の基本的権利を踏みにじる許しがたい犯罪であり、現代戦の極まるところ核の報復を招き、全人類を滅亡の危機に陥れることは明らかである。

26年前のこの日、広島が受けた原子爆弾の傷は深く、奪い去られた人命は20数万におよび、その放射能障害は今日なお被爆者の生命を脅かしつづけ、その影響力の深刻さはさらに計り知れない。この無惨な被爆体験の教えるところは、核兵器の廃絶と戦争の放棄である。

ここにわれわれは提言する。今こそ人類生存の理念を明確にし、地球人としての運命一体観を強く認識し、世界市民意識を基調とした新しい世界の構造を確立して、戦争なき人類共同社会を建設しなければならない。すなわち、すべての国家は日本国憲法にうたわれた戦争放棄の基本精神に則り、一切の軍備主権を人類連帯の世界機構に委譲し、解消すべきである。そのためには、まず地上におけるすべての戦争の即時停止と、核不使用協定の締結をすみやかに実現するよう強く要請する。さらに、次の世代に戦争と平和の意義を正しく継承するための平和教育が、全世界に力をこめて推進されなければならない。これこそ、ヒロシマの惨禍を繰り返さないための絶対の道である。

本日ここに、被爆26周年の記念日を迎え、つつしんで原爆犠牲者の霊を弔うにあたり、これを広く世界に訴える。

1971年(昭和46年)8月6日

広島市長 山田 節男