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ページ番号:0000009452更新日:2019年10月21日更新印刷ページ表示

昭和47年(1972年)

平和宣言

きょうここに、被爆27年の原爆記念日を迎え、あの日の惨禍を心にえがき、痛恨の情まことにたえがたいものがある。核兵器の廃絶と戦争の放棄を訴え、真の世界平和を求めつづける「ヒロシマの心」は、世界人類の良心を呼びもどし、たしかに核戦争の歯止めとなっている。しかしながら力の均衡を過信する核大国は、巨額の富と知能を軍備競争につぎこみ、ぼう大な核兵器の集積を進め核戦争の危険をひろく深く潜行させてきた。

現下の国際政治の動向は、米中、米ソの首脳会談をはじめ、独ソ間の東方条約、日中国交回復をめざす政府間交渉が始まろうとしているなど、ようやく冷戦の雪解けがみられるが、他方ベトナムにおいては、大規模な戦闘爆撃による破壊が繰り返され、多くの婦女子を含む犠牲者の悲惨なる姿には、目をおおうものがある。しかも核大国は、ヒロシマの切なる抗議を無視し核実験を強行している。

われわれは、あらためてベトナム戦争のすみやかなる終えんを訴え、いかなる国の核実験をも許さぬ核兵器の全面禁止協定を早急に実現するよう切望してやまない。

われわれは、核武装によって自国の安全を高めることができるという考え方は、全くの妄想に過ぎないことをあえて断言する。

さきの国連人間環境会議は、自然環境の破壊と人口の増加、資源の枯渇により人類が陥りつつある多面的な危険に対し、70年代を生きる人間活動の理念を明らかにし、核兵器の完全な破棄をめざす国際的な合意を急ぐよう宣言した。これは戦争を否定した日本国憲法の精神に合致するものであり、真の平和への道に通じるものである。

今こそわれわれは、世界の国々とともに平和のための教育と、平和のための研究に真剣に取り組むべきである。われわれ人類は平和で生存に適した地球を次の世代に継承するため、地球上に生きる運命共同体であることを深く認識し、思想の相違を乗りこえて、知的および精神的な連帯のもとに、人が人を殺し、人が人に殺されることのない新しい世界秩序を創造しなければならない。これこそがあすの世界にヒロシマを繰り返さないための条件である。

原爆記念日にあたり犠牲者の御霊の前にわれわれの平和への決意を新たにし、これを内外に宣言する。

1972年(昭和47年)8月6日

広島市長 山田 節男