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昭和57年(1982年)

ページ番号:0000009438 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

平和宣言

燈燈無盡 — ヒロシマの平和の心は、すべての人々に受け継がれ、語り継がれなければならない。

広島のあの日の惨禍は、人類絶滅の不気味な暗雲の到来を告げるものであった。その危機を身を以て体験したヒロシマは、核兵器の廃絶と全面完全軍縮を世界に訴え続けてきた。

しかし、米・ソを始めとする国家間の対立は牢固として解き難く、核兵器はますます量的拡大と質的高度化の一途を辿り、限定核戦争や先制核攻撃論が台頭し、人類は今、まさに、核戦争の危機に陥ろうとしている。

軍縮と安全保障問題に関する独立委員会のパルメ委員長やペルティーニ・イタリア大統領は、いずれも、ここ広島の地で、原爆被害の苛酷さに慄然とし、核戦争に勝者も敗者もあり得ない、と深い憂慮の意を表明した。

今こそ各国政府は、世界各地で澎湃として高まっている核兵器廃絶への熱望を真摯に受け止め、一刻も早く軍縮を促進し、平和への道を急ぐべきときである。

この時開催された第2回国連軍縮特別総会は、遺憾ながら国家間の不信を克服しえず、「包括的軍縮計画」の合意には至らなかった。

しかし、核戦争の防止と核軍縮が最優先課題であるとの第1回軍縮特別総会の決議を再確認するとともに、新たに、軍縮への世論形成を目的とする「世界軍縮キャンペーン」の実施に合意し、さらに、日本政府が提案した広島・長崎への軍縮特別研究員派遣を採択した。

広島市長は、今回の特別総会でヒロシマを証言し、ヒロシマの悲願を訴えた。

今、重ねてここに訴える。

核実験を即時全面的に禁止し、あらゆる核兵器を凍結して、これを廃棄するよう強く求める。

また、ヒロシマと心を同じくする世界の都市が、互いに連帯することを呼びかける。

さらに、核保有国の元首をはじめ各国首脳が広島を訪れ、被爆の実態を確かめること、広島で軍縮のための首脳会議を開催すること、また、広島に平和と軍縮に関する国際的な研究機関を設けることを提唱する。

ヒロシマは、単なる歴史の証人ではない。

ヒロシマは、人類の未来への限りない警鐘である。

人類がヒロシマを忘れるとき、再び過ちを犯し、人類の歴史が終焉することは明らかである。

本日、被爆37年を迎え、犠牲となられた人々を弔うに当たり、今なお、肉体的・精神的に苦しみ続ける原爆被爆者及び遺族への援護が、国家補償の精神に基づいて充実・強化されるよう、わが国政府に求めるとともに、ヒロシマは平和の燈火を絶やすことなく、世界に平和を訴え続けていくことを固く誓うものである。

1982年(昭和57年)8月6日

広島市長 荒木 武