ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

昭和62年(1987年)

ページ番号:0000009433 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

平和宣言

ヒロシマは、あの被爆の惨禍から、国際平和文化都市として再生し、ひたすら核兵器廃絶と、世界の共存と繁栄を訴え続け、ここに、42年目の8月6日を迎えた。

「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」この原爆死没者慰霊碑の碑文は、犠牲者への慰霊と、過去・現在・未来にわたる全人類への誓願(ちかい)であり、戒律である。このことに、改めて思いを致し、「ヒロシマの心」の世界化のため、われわれは、ねばり強い行動を展開しなければならない。

本日、核保有国の代表的ジャーナリストによるシンポジウムをここ広島で開催し、核兵器廃絶の更なる国際世論の醸成を図る。昭和64年には再び広島・長崎両市において世界平和連帯都市市長会議を開催し、都市と市民との連帯の輪をひろげる。核戦争防止国際医師会議も、同じ年に、広島で開催され、核兵器のない安全な世界が探求される。

一方、未来を担う青少年への被爆体験の継承がますます重要となっている。ここ10年間、日本全国からヒロシマを訪れる児童・生徒が5百万人にも達し、自らが被爆の実相に触れ、生命の尊厳を学んでいることは、大きな希望である。

然るに、核戦略は宇宙空間にまで拡大され、「力の哲学」と「恐怖の均衡」が依然として世界を支配し、地球自滅の危機を高めつつあることは、まことに憂慮に堪えない。

核時代の今日においては、人類の英知を結集して、対決から対話へ、不信から友好へと、国家間の対立を乗り越え、世界の恒久平和確立への大道を切り拓かなければならない。

こうした時、東西両陣営が米ソの欧州中距離核ミサイル廃絶の方向で同意したことは、核兵器に反対する幅広い国際世論の成果であり、ヒロシマは、その交渉の進展に強い期待をかけるものである。

また、飢餓・難民・人権抑圧も緊急な解決が望まれる。

折しも、本年は、国連軍縮週間創設10周年を迎え、来年は、第3回国連軍縮特別総会が開催される。ヒロシマは、その実りある成果を切望してやまない。

ヒロシマは、重ねて訴える。

核保有国は、直ちに核実験を全面的に停止することを。

米ソ両国は、首脳会談を開催し、全面的核軍縮条約を早期に締結することを。

世界の指導者は、被爆地広島を訪れ、直接、被爆の実態を確認することを。

日本政府は、唯一の被爆国として非核三原則を堅持し、憲法の平和理念に基づき、より積極的な平和外交を展開し、核兵器廃絶へ向けて先導的役割を果たすべきである。

本日、被爆42周年の平和記念式典を迎えるに当たり、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げるものである。老齢化が進む被爆者の実態をふまえて、国家補償の理念に立った被爆者援護対策が速やかに確立されるよう、日本国政府に強く要求するとともに、平和へのたゆみない努力を堅く誓うものである。

1987年(昭和62年)8月6日

広島市長 荒木 武