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ページ番号:0000009424更新日:2019年10月21日更新印刷ページ表示

平成5年(1993年)

平和宣言

広島市民にとって忘れることのできない8月6日が巡ってきた。48年前、この地に現出した地獄絵図を思い起こしながら、私たちは改めて世界の人々の良心に、核兵器の開発・保有は人類に対する罪であることを、強く訴える。

広島・長崎の悲劇以後、今日まで核兵器は使用されなかったし、誤って爆発することもなかった。だが、今後もそうである、との保証はない。

最近、米国、ロシア、フランスは相次いで核実験の停止期間を延長した。一歩前進とはいえ、核兵器はなお地球上に大量に蓄積され、人類の生存を脅かしている。

それゆえ、4月の国連NGO軍縮特別総会でも提唱した通り、1995年に期限が切れる核拡散防止条約を、無期限の条約にしようとする核保有国の動きに、私たちは強い危惧の念を表明する。この条約が果たしてきた役割は大きかったが、その無期限の延長は、核兵器を持つ国と持たない国との関係を不安定にするだけでなく、核兵器廃絶の願いに反するからである。いま、朝鮮半島など各地域で核兵器をめぐる不透明さが世界に不安を醸し出している。核兵器保有国は、当面、包括的核実験禁止を同条約に並行させるとともに、少なくとも今世紀のうちに、すべての核兵器を完全に廃棄するよう、期限をつけた目標を世界に示すべきである。

原発事故や核廃棄物投棄による地球環境の汚染を、これ以上広げてはならない。技術の進歩が著しい原子力平和利用についても、安全最優先の見地から放射性物質、とりわけプルトニウムの国際管理体制を確立し、国家を超えて、その透明性を確保することが急務である。

広島でのアジア競技大会開催を来年秋に控え、私たちはアジアの人々の日本に対する思いに深い関心を抱いている。日本がかつての植民地支配や戦争でアジア・太平洋地域の人々に苦難を与え、その心に今も深い傷を残していることを私たちは知っており、率直に反省する。特に、隣国の朝鮮半島に住む多くの原爆被爆者がたどった戦後の足跡を思うとき、私たちの心は痛む。これらアジア・太平洋地域の人々との末永い友好を築くためには、いまだに清算されていない、いわゆる戦後処理問題に速やかな決着をつける日本政府の決断が不可欠である。

いま、広島では「第3回世界平和連帯都市市長会議」を開き、核兵器と戦争のない世界へ向けて国際世論の結集を図るとともに、多様な行動の可能性を探る討議を重ねている。

原子爆弾の非人間性を身をもって経験した内外の被爆者は年ごとに老いていく。被爆後半世紀を迎えようとしている今日、国家補償の精神に基づく、物心両面にわたる画期的な援護対策の確立を急がなければならない。

同時に、若い世代へ歴史を通して原爆や戦争を語り継ぐ教育も充実されなくてはならない。平和の創造を阻むものは、心の荒廃である。

ここに被爆48周年の平和記念式典を迎え、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の意を表し、恒久平和の実現に向け、ヒロシマの世界化を一層おし進めることをお誓いする。

1993年(平成5年)8月6日

広島市長 平岡 敬