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陳情第66号
生活保護収入認定等について
(要旨)
自動車による交通事故の発生件数は減少傾向にあるが、高齢者の交通事故の発生件数は増加傾向(横断歩行中に自動車と接触する事故が多発)にある。
自動車損害賠償保障法は「…自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り…」(第1条)、「自動車損害賠償責任保険(自動車損害賠償責任共済)(以下「自賠責保険」)の締結を強制している」(第5条)、自動車損害賠償保障法施行令は、「死亡による損害・傷害による損害・後遺障害による損害その他」の保険金額(自賠責保険の支払基準)を定めている(第2条)。
上記「自賠責保険」の支払基準(保険金額)は40年増額していないが社会保障の性質を有する「自賠責保険」は、公的社会保険・生活保護等が認めていない「慰謝料」(精神的苦痛に対する損害)を認容している。
しかし、被保護者(生活保護受給者)が、交通事故被害者となり自賠責保険から損害賠償金として、「慰謝料」が支払われた場合、資力があるとして原則その受けた生活保護費全額の返還が求められる(生活保護法第63条)。
国(厚生労働省)は、慰謝料についての定めはないとしているが、ドイツでは、「精神的損害に対する慰謝料は、これに対応する給付が社会扶助には定められていない」として収入認定除外としている。
国(厚生労働省)の通知でも、「冠婚葬祭の祝儀・香典、慈善的金銭等や自立更生のために使われるものだけでなく、弔慰金や精神的な慰謝激励等の目的で支給されるものについては、社会通念上から、収入認定除外」とされている。自賠責保険の「慰謝料」についても、上記の趣旨と同様であると解されるから、「収入認定除外」とするべきものと考える。
したがって、貴職が下記の事項につき地方自治法の趣旨を活用し、関係機関に対する要望や意見書提出等の措置をされるよう陳情する。
記
生活保護法第63条に基づく収入認定から慰謝料(精神的苦痛に対する損害)の一定額を収入認定除外とすること。