本文
陳情第52号
令和2年度 「私立幼稚園関係助成金の増額と、それらの補助率を撤廃し従前どおりの定額補助にすること。あわせて、長期の預かり保育補助の基準緩和と増額をすること」、「第60回政令指定都市私立幼稚園団体協議会広島大会に対して助成すること」、「子ども・子育て支援新制度に関する幼稚園・認定こども園の施策の充実を図ること」、「幼児教育無償化への円滑な対応のための施策の充実を図ること」、「特別支援教育の充実強化を図ること」、「公立と私立の役割分担を明確にした幼児教育の充実に向けての長期的なビジョンを示し、それを踏まえた幼児教育施策の充実を図ること」について
(要旨)
私ども一般社団法人広島市私立幼稚園協会に加盟する私立幼稚園・認定こども園には、広島市民の多数の幼児が就園しており、広島市の幼児教育に多大な貢献をしているものと自負している。
広島市は、平成28年12月に、「広島市教育大綱」を策定され、未来を担う子どもの育成こそが、これからの広島の発展の礎とされ、一人一人が大切にされる教育システムの構築を掲げておられる。私どもも、市長の思いと同感である。また文部科学省の委託事業「幼児教育の推進体制構築事業」に名のりを挙げられ、3年間の事業を策定、実施された結果、本年度は広島市乳幼児教育保育支援センターが広島市教育委員会教育企画課内に設置され、乳幼児教育保育アドバイザーの派遣による支援体制の整備を図っていただいたところである。この事業は、長年にわたって我々協会が陳情してきたものであり、今後より一層私立幼稚園及び認定こども園と密接に連携しながら、人材育成など幼児教育の質の向上に向けた取組や、各園のニーズや課題に応じた的確な対応を希望する。
平成27年4月より、「子ども・子育て支援新制度」がスタートした。しかし、本市では、新制度に移行した園は約36%にすぎず、全国的にも私学助成の幼稚園のままの園は多数存在している。令和2年度からの見直しも検討されているが、こうした私学助成の幼稚園関係者に制度的な不安が生じないよう、国への働き掛け等、御配慮いただきたい。また、平成29年12月8日に「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定され、子育て世帯を応援し、社会保障を全世代型へ抜本的に変えるため、幼児教育の無償化を一気に加速する。広く国民が利用している3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化することなどが打ち出され、令和元年10月1日から、原則として満3歳児から5歳児の保育料(私学助成の幼稚園月額25,700円を限度)や住民税非課税世帯の0歳から2歳までの保育料及び保育の必要性のある子どもの預かり保育料(月額11,300円を限度)、さらには一定の条件を満たす者に対する副食材料費の補足給付も行われることとなった。こうした幼児教育・保育の無償化により、子どもたちが健やかに成長し生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の充実につながるものと確信している。
また、私立幼稚園や認定こども園の役割として、全ての家庭の幼児が集団教育を受けられるように体制を整備する必要があると考えられる。共働き家庭の増加や、核家族化の進行で家庭における子育て力の低下も指摘されており、幼児虐待事件の報道等、子育て環境は悪化していると思われる。広島市の将来を担う子どもたちに、人生の礎となる幼児教育を体験させる場となるべきであると考える。私立幼稚園や認定こども園は、通常の保育に加え、預かり保育(延長保育)、障害児の受入れ、未就園児への園開放や育児相談、子育て支援事業の実施等、地域の子育てセンターとしてのニーズに応えている。しかしながら、各園とも園児の定員割れで経営が厳しい中、運営の多様化に伴う人的・経済的負担が経営を困難にしている。このままでは、休廃園を憂慮せざるを得ない状況である。
今こそ、広島市当局におかれては、緊急の課題としての少子化対策の柱として、私立幼稚園等の幼児教育・保育の充実と建学の精神に基づく健全で円滑な運営が確保できるよう格段の御配慮をお願いする。
加えて、公立幼稚園においては、高度かつ専門的・先進的課題の調査研究を行い、その成果を、私立幼稚園・認定こども園が活用できるよう公私が密接な連携を図れる取組を検討していただくとともに、全ての子どもが質の高い幼児教育が受けられるよう公立・私立の役割を明確にしたビジョンを示していただきたい。
ついては、下記の陳情内容を御高覧の上、令和2年度の広島市私立幼稚園関係助成費の増額交付と補助率の改正を始めとする要望に対処していただくよう連署をもって陳情する。
記
1 広島市私立幼稚園関係助成費(令和2年度分)
⑴ 広島市私立幼稚園に対する補助
ア 継続分
幼稚園振興事業補助の補助率2分の1では、財政基盤がぜい弱化している園の過重な負担となっているため撤廃し、従前どおりの定額補助にしていただきたい。
預かり保育事業について、条件の緩和(保育時間を8時間以上、夏季休業日のみ実施を認める等)及び保育従事担当者の加配並びに単価アップをしていただきたい。
区分 |
平成15年度補助額 |
平成30年度補助額 |
平成31年度補助額 |
令和2年度要望額 |
教職員研修費補助 |
17,800,000円 |
9,461,000円 |
9,461,000円 |
15,700,000円 |
教材・教具整備費補助 |
67,800,000円 |
35,019,000円 |
35,969,000円 |
68,958,000円 |
施設整備資金借入金利子補助 |
3,949,000円 |
617,000円 |
572,000円 |
必要額 |
私立幼稚園耐震化整備費補助 |
―円 |
27,285,000円 |
|
必要額 |
預かり保育事業費補助 |
28,925,000円 |
24,929,000円 |
22,472,000円 |
34,458,000円 |
合計 |
118,474,000円 |
97,311,000円 |
68,474,000円 |
119,116,000円 +必要額 |
⑵ 広島市私立幼稚園協会に対する補助
ア 継続分
当協会は、私立幼稚園の教職員の資質の向上を図るための研修事業、その他の事業を行い、幼児教育の振興に努めている。しかしながら補助率2分の1では財政基盤がぜい弱化している協会では、財源が捻出できないため、市から配分された補助金を十分には活用できない現状にあることから補助率を撤廃し、従前どおりの定額補助にしていただきたい。
区分 |
平成15年度補助額 |
平成30年度補助額 |
平成31年度補助額 |
令和2年度要望額 |
教職員研修費補助 |
7,200,000円 |
3,613,000円 |
3,613,000円 |
7,200,000円 |
特別支援教育研究事業費補助 |
1,000,000円 |
422,000円 |
422,000円 |
1,000,000円 |
少子化の流れを受けて、各園においては定員割れや園児数の減少により経営状況が厳しくなり財政基盤がぜい弱化しており、協会運営収入も年々減少し、各種事業の廃止や縮小、人件費のカット、会費以外の負担を求めながら事業継続を余儀なくされており、健全な協会運営が困難な状況になっている。また、市からの補助事業やその他の事務事業なども市と密接に連携しながら遂行しているが、それに係る人件費・事務費については平成27年度200万円、平成28年度に100万円の補助金を増額していただき、合計300万円となり感謝しているところであるが、補助率2分の1の制約により当協会における負担は、今なお過重なものとなっている。
幼稚園を取り巻く環境が国の政策もあって大きく変革している中にあって、当協会の果たすべき役割が重要となってきている。今後とも、市と連携しながら求められる責任を十分に果たすためにも財政基盤の強化が急務となっている。
当協会は、加盟幼稚園及び認定こども園の社会公共性を高める各種調査研究をし、その理論技術の進歩及び施設設備の充実を図り、幼児教育の発展に寄与することを目的とした団体である。あわせて、市民の多くの幼児が就園しており、市の幼児教育に多大な貢献をしているものと自負している。しかしながら、協会等(団体)運営費補助については、他の政令指定都市では、調査研究や人材確保等の充実した補助が交付されているが、それらに比べ、広島市は、見劣りする状況となっている。
ついては、当協会の円滑な運営と組織強化のため、協会運営費補助のより一層の充実をお願いする。
区分 |
令和2年度要望額 |
備考 |
協会運営費補助 |
10,000,000円 |
組織基盤の強化・人材確保・広報活動等事業 |
2 第60回政令指定都市私立幼稚園団体協議会広島大会開催に対する助成
全国の政令指定都市が、毎年持ち回りにより大会を開催している。令和2年度には、当広島市が開催地となっている。この開催費用について、格段の御配慮を賜り、助成していただくようお願いする。
区分 |
令和2年度要望額 |
広島大会開催費補助 |
2,500,000円 |
3 子ども・子育て支援新制度に関する幼稚園・認定こども園の施策の充実
⑴ 幼保連携型認定こども園への移行に伴う教育部分(幼稚園部分)の施設整備補助金制度の導入
幼稚園が幼保連携型認定こども園への移行に伴い施設整備を行う場合、国の制度では、教育部分(幼稚園部分)は文部科学省の認定こども園施設整備交付金から、保育部分(保育所部分)は厚生労働省の保育所等整備交付金から、それぞれ補助金を受けることが可能とされている。ところが現在広島市には、保育所部分の補助制度はあるものの、幼稚園部分の補助制度がないため、幼稚園が幼保連携型認定こども園ヘの移行を検討する際、施設整備の資金が不足し、移行をちゅうちょする一因となっている。「既存の幼稚園による認定こども園への移行促進」という政策は、「広島市子ども・子育て支援事業計画(平成27年3月策定)」に明記されている。また、松井一實広島市長は、令和元年6月の市議会において、「広島の未来を担う子どもの育成については…保育園と幼稚園の役割分担を超えて一元的に対応する必要がある。…」と所信表明されている。幼稚園部分の施設整備補助制度の導入は、正にこれらの政策・方針に沿うものと言える。また、政令指定都市の状況について見ると、全国20市の政令指定都市のうち、平成30年12月現在で6市(札幌市、さいたま市、横浜市、静岡市、大阪市、神戸市)が幼稚園部分の施設整備補助制度を設けており、その数は今後も増えてくることが見込まれる。
ついては、広島市におかれても、幼稚園部分の施設整備補助制度の導入を図っていただくようお願いする。
4 幼児教育無償化への円滑な対応のための施策の充実
令和元年10月にスタートした幼児教育・保育の無償化に伴い、私学助成の幼稚園においては、全ての園児に対して領収書や提供証明書の発行が求められることとなった。また、世帯の就労状況等によって園児を新1号、新2号と分けることが決まり、新2号については預かり保育も無償化の対象となった。副食材料費についても、低所得者層や多子世帯への補助が決定している。これらはいずれも、私学助成園においては初めて対応する内容であり、これまでの就園奨励費に係る事務とは比較にならないほどの膨大かつ複雑な事務が発生し、年間を通じて恒常的に対応することが求められている。これらのことを鑑み、各幼稚園において新たに専任の事務職員を雇い上げるための費用あるいは既存事務員の事務量の増加に対応する手当等の増額費用に対して広島市単独の補助をお願いする。
5 特別支援教育の充実強化
発達障害者支援法の施行や平成24年度児童福祉法改正により、障害児に対する専門的な児童発達支援が推進されるようになった。現在、園では、気になる子どもや集団生活に馴染みにくい子どもたちが増加傾向にあり、個々の支援だけではなく、個別の指導計画の策定や加配職員の確保、小学校や専門機関との連携を行っている。
現在、障害のある幼児等への財政的支援策は、従前の医師の診断や療育手帳等の所持の見直しが図られ、医師等の意見書や保護者の同意で可能となるよう制度改正が行われ、充実が図られているが、県費のみでは十分な財政的支援策とはなっていない。加配に対する県費補助金は、保育所における障害児一人に対する保育士加配分の助成金の4分の1程度しかない。また、政令指定都市の状況について見ると、令和元年度当初予算から全国20都市のうち、14都市(札幌市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、京都市、大阪市、神戸市、北九州市、福岡市)が特別支援教育事業費補助金等の制度を設けており、広島市においても是非、市独自の財政的支援策をもって、障害のある子ども等の成長・発達段階に応じた特別支援教育の充実強化を図っていただきたい。
6 公立と私立の園の役割分担を明確にした幼児教育の充実に向けて長期的なビジョンを示し、それを踏まえた幼児教育施策の充実
広島市におかれては、令和元年6月の市議会で、幼児教育・保育の充実に向けての長期的なビジョンを策定することを表明されている。
かつて公立幼稚園が3歳児保育を開始する際に、公立は、調査・研究、障害のある子どもの受入れなどを行い、私立は集団保育になじむと思われる子どもを中心に受け入れると整理されている。
このことを鑑み、今後策定されるビジョンは、今後の少子化も踏まえ、公立は、専門的な支援を必要とする幼児の受入れや小学校への接続に関する私立園への支援などを行い、私立は、これまでと同様に、集団保育になじむと思われる子どもを中心に受け入れるなど、公立と私立の役割分担を明確にしたものとしていただき、私立幼稚園や認定こども園が健全で円滑な園運営をし続けることができるようお願いする。