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衛研ニュース/水道水中のホルムアルデヒドについて

ページ番号:0000000231 更新日:2012年8月13日更新 印刷ページ表示

 平成24年(2012年)5月、利根川水系の浄水場の浄水から、水道法の水質基準である0.08mg/Lを上回るホルムアルデヒドが検出される水質事故が発生しました。このため複数の浄水場において、取水停止等の措置が取られ断水等の事態となり、市民生活に影響を及ぼしました。埼玉県、群馬県等関係自治体による原因究明がなされましたが、取水源である河川水からホルムアルデヒドは検出されず、浄水から検出されたことから、何らかの化学物質(ホルムアルデヒド前駆物質)が浄水場での浄水処理過程において塩素と反応しホルムアルデヒドが生成されたものと推定されました。

 その後、国立医薬品食品衛生研究所等において、事故発生時の水道原水を分析したところ、全ての検体からヘキサメチレンテトラミンが検出されたことから、本物質が今回の事故の原因物質として挙がってきました。

 6月になって、群馬県の産業廃棄物処理業者が処理受託したヘキサメチレンテトラミンを高濃度に含有する廃液を河川に排水したことが判明しました。その際に中和処理されたものの、ヘキサメチレンテトラミンが十分に処理されずに河川中に放流されたものと思われます。

 次式に示すとおり、ヘキサメチレンテトラミンに消毒剤である塩素を添加することにより加水分解が起こりホルムアルデヒドが生成されます。

C6H12N4(ヘキサメチレンテトラミン) + 6H2O(水) → 6CH2O(ホルムアルデヒド) + 4NH3(アンモニア)

ホルムアルデヒドとは

 ホルムアルデヒドは有機化合物の一種で最も簡単なアルデヒドです。水などの極性溶媒に可溶で、37%以上の水溶液はホルマリンと呼ばれます。ホルムアルデヒド及びホルマリンを含むアルデヒド水溶液は医薬用外劇物に指定され、人体へは、粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こします。また、接着剤、塗料、防腐剤などの成分であり、安価なため建材に広く用いられています。しかし、建材から空気中に放出されることがあり、その場合は低濃度でも人体に悪影響を及ぼす、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られています。

 また、ホルムアルデヒドは、浄水過程で水中のアミン等の有機物質と塩素・オゾン等の消毒剤が反応してできる消毒副生成物質です。

ヘキサメチレンテトラミンとは

 ヘキサメチレンテトラミンは、医薬品として膀胱炎、尿路感染症の治療に用いられますが、これは尿内でホルムアルデヒドに分解し、防腐性を持つことを利用したものです。工業的には発泡剤、硬化剤として用いられます。

 また、ヘキサメチレンテトラミンは毒性が低いため、現在、水質規制における環境基準等の設定項目にはなく、規制対象物質ではありません。

本市におけるヘキサメチレンテトラミンの使用状況

 本市内の太田川をはじめとする河川の流域におけるヘキサメチレンテトラミンの工場・事業場での使用状況については、PRTRデータによると、ヘキサメチレンテトラミンを1トン以上取り扱っている工場・事業場はないことから、今回の水質事故のように水道の取水に直接影響を及ぼすような事態にはならないと思われます。しかしながら、ヘキサメチレンテトラミン以外の物質についてもホルムアルデヒドの前駆物質になる可能性があることから、今後も適正な廃棄物の処理等について注視していく必要があると思われます。

井戸水等飲料水中のホルムアルデヒド

 当所において実施した過去五か年(平成19年~23年)の飲料水中のホルムアルデヒドの検査結果では、飲料用の井戸水等25検体で実施し全て基準に適合していました。

 また、広島市水道局<外部リンク>では、安全でおいしい水を市民の皆さんに供給するために、河川などの水源から取水口、浄水場、各家庭のじゃ口に至るまで定期的に水質検査を行っています。平成23年度の給水栓水の定期水質検査結果は、ホルムアルデヒドを含むすべての項目において水質基準に適合している状況です。

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