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ページ番号:0000016086更新日:2019年10月21日更新印刷ページ表示

広島らしい新しい教育の推進のために ~広島市21世紀教育改革推進総合プラン検討会議提言~(第1章)

はじめに

 本検討会議は、広島の独自性を発揮し、市民に信頼され子どもが躍動する「広島らしい新しい教育」を創造するため、広島市教育委員会から委嘱を受け、平成11年11月に発足しました。この提言は、学校、家庭、地域の在り方などについて幅広く検討した結果をまとめたものです。

 明治22年(1889年)に市制を施行した広島市は、近代都市として発展してきました。また、教育実践や研究面では、常に我が国の教育界をリードしてきた輝かしい歴史を持つ文教都市でもあります。

 広島市においては、このような素晴らしい歴史を受け継ぎ、これからの21世紀に向けて、「豊かな人間性をはぐくみ、人が輝く社会の形成」をめざし、学校教育をはじめ、社会教育や家庭教育の充実を図ろうとしています。

 本検討会議では、教育改革にかかわる先進的な取組を行っている他都市の視察や、広島市立の小学校、中学校、高等学校、養護学校、触れあい教室等を訪問するとともに、市民・教員・児童生徒を対象に実施された教育に関するアンケートの調査結果により教育の実態把握に努めてきました。また、「子どもたちが輝く広島市の教育を考える」をテーマにした教育フォーラムや学校関係者や関係機関等22団体からのヒアリング、各区における公聴会等でお寄せいただいた多数の意見をもとに、13回にわたって幅広く議論を重ねてきました。

 広島の新しい教育がめざすものとしては、「心身ともにたくましく、思いやりのある人」を基本理念とし、子どもたちに、生きるための基礎・基本をしっかりと身につけさせ、規範性、感性、体力、コミュニケーション能力の4つの力をバランスよく備えさせることが必要であるという結論を得ました。

 本提言はさらに、この新しい教育を推進していくために、学校には何が求められているのか、家庭はどうしたらよいのか、そして学校・家庭・地域の一体化に向け何が必要とされるのかを問い、その実現に向けての基盤となる教育環境の充実や、「21世紀の学校像」ともなる新しいシステムの導入をどのように図るのかについても言及しています。

 このような教育を受けた、広島から育つ子どもたち一人ひとりが幸福になり、地域へ、そして世界へ貢献できる人となってほしいと願っています。

 広島市教育委員会においては、本提言を踏まえ、関連する施策について早期の取組がなされることを希望します。

 子どもたちは「まちぐるみ」となって、皆ではぐくむのだということを、ぜひ再確認していただきたいと思います。この広島らしい新しい教育の推進のために、最大限の支援、参加が得られることを切望します。

第1章 21世紀における教育の在り方

第1節 21世紀を担う人間像

 20世紀の激動の時代にあって、私たちの生活に大きな影響を与えた科学技術の飛躍的進歩や情報化、高齢化、さらには国際化等の大規模な社会変動は、21世紀を迎え、一段とその歩みを速めようとしています。
 今世紀の近い将来、一層の情報化、国際化の進展にともない、地球規模はむろんのこと、宇宙規模の情報を家庭にいながら即座に入手できるようになるでしょう。また、科学技術の一層の発達により、人も地球規模や宇宙規模で行き交い、共に、平和に、仕事を行い、生活を営んでいく時代もそんなに遠い先ではないでしょう。
 こうした状況にあって、大きな社会の変化に対応し、そのなかで幸せな生活を営んでいくために、人に求められる能力も一段と多様化し、高度化したものとなるでしょう。それは、自己を確立させ、自分自身の考えを認識し、自身の価値、自分の民族、国、文化への誇りを持ち、主張すると同時に、他人の個性、価値、他民族、他国、他文化との互いの違いを認め、それぞれを尊重し、相互の信頼のうちによりよい価値、文化を創造していくことができる能力でしょう。
 一方、こうした社会の大きな変動は、私たちの生活のみならず、次世代を育成していく教育の在り方にも大きな影響を及ぼしてきました。我が国では、近年、少子化、高齢化、技術革新の進展、環境問題の深刻化など、子どもたちを取り巻く社会状況も変化しており、このことが今の子どもたちの生活様式や価値観に多大な影響を与えてきました。こうした認識に立って、学校教育においては、平成14年度から「ゆとりの中で生きる力をはぐくむ」ことを柱とした教育課程が実施されるとともに、完全学校週5日制が実施されることとなっています。これは我が国の教育制度上、教育の枠組みを根本から変更する大きな改革といえます。この完全学校週5日制の導入は、これまでの学校を主体として子どもを教育する時代から、学校・家庭・地域が一体となり子どもを教育する時代への変化をもたらすものだからです。

 本提言の大きな特色は、21世紀を担う子どもたちをはぐくむためには、今世紀を担う人間のあるべき姿を鮮明にイメージし、それが子どもたちの中に具体的に生まれるようにすることが必要であるとの認識に立ち、これを具現化するために、これまでの教育とその成果を振り返り、検討を加えて、広島らしさを生かした新しい教育システムを創造しようとしたところにあります。
 唯一の被爆国である我が国の、とりわけ、広島の子どもたちには、人間の尊厳、生命の尊さを自覚し、人を思いやる温かい心を持ち、人と自然の共生する平和で豊かな社会を築いてもらいたいと願っています。21世紀を生きる子どもたちに夢を託し、その夢を具現化していくために、このような人間像を、『心身ともにたくましく、思いやりのある人』としました。
 ここでいう「たくましさ」とは、心身の強靱さのみを意図するものではなく、向上しようとする前向きの意欲や、たゆみなく努力する態度、どんなときでもやさしさや正義感を失わない強さなども意味しています。
 また、「思いやり」とは、弱者に対するやさしさや親切心だけではなく、人知れず尽くしている人への配慮、善意をすぐ実行できる態度、他人の喜びや苦しみに心がうたれること、自分の言動が常に反省できることなども意味しています。

 ヒロシマを受け継ぎ、地球的視野で考え、相互の基本的人権を尊重し、よりよい人間社会の創造のために貢献し、国際社会に通用する広島人となるとともに、地域で平和のために汗の流せる人となってほしいと切に願っています。

第2節 現在の教育の現状と課題

 我が国の近代学校教育が開始されて以来、100余年を経ましたが、『明治以降、我が国発展の歴史を振り返れば、その根本には国民の教育に対する熱意はもとより、教育に携わる人々のたゆみない努力があったことはいうまでもない。このような教育の成果は我々の世代の責任として確かに受け継ぎ、新しい時代に向けた改革に不断の取組を進め、次代に引き継いでいかなければならない。社会・経済の大きな変動が続く中で、今こそ我が国は、教育立国を目指していく必要がある。しかしながら、我が国が戦後の荒廃から立ち直り、めざましい経済発展を遂げて、教育の量的拡大が実現される中で、家庭や地域社会の教育力が低下し、過度の受験競争が生まれ、いじめや不登校の増加、さらには青少年の非行問題の深刻化や「学級崩壊」と呼ばれる現象が生じるなど、教育を取り巻く課題も少なくない。』(文部省)と述べられるように、我が国の学校教育が人材育成に果たしてきた役割ははかりしれないものがあります。
 近年のめざましい工学、科学技術の進歩、これに伴う経済の繁栄はこれまでの我が国の学校教育の産物といっても過言ではないでしょう。また、識字力の育成においては、世界の多くの国が、いまなお、この問題で困難に直面していることを思えば、我が国の学校教育の成果は容易に理解できるでしょう。
   しかし、今までの学校教育が社会変動の影響を受けた今日の社会、未来の社会においても、十分に機能できるのか、また、この学校教育が市民の信頼を得るに十分であるかは疑問の残るところです。

 こうした点を検討するために、広島市教育委員会(平成12年)は「教育に関する市民アンケート」を実施しました。「今の教育に問題があると思われますか」とたずねた結果は、「非常にある」が42.1%、「ややある」が49.0%であり、「あまりない」はわずか1.1%でした。実に、9割強の人が現在の教育に「問題がある」と評価していました。
 また、「今の教育に問題がある」と回答した人は特に、

  1. 家庭のしつけが不十分であること。(33.8%)
  2. 子どもを取り巻く社会環境の悪化(26.7%)
  3. 学(校)歴を偏重する社会の意識(12.8%)

などに問題があるとしていました。(下図参照)

市民アンケート(円)

市民アンケート(棒)

さらに、具体的に、教育のどのような側面に問題があるかを同じアンケートからみてみますと、「道徳、社会規範、しつけ」教育の不十分さ、「教師の指導力」への疑問、「いじめ、不登校、問題行動、中途退学などへの対応」の不十分さが指摘されていました。

 現在の教育システムが既に保護者の信頼を失っていることは明らかです。特に、「道徳、社会規範、しつけ」教育への不信は、我が国の学校教育が誇りとしてきた、学習内容への不信の表明としてとらえることができます。また、これは我が国が誇りとしてきた基礎学力への不信としてもとらえることができます。文化創造の基になる科学、技術、基礎学力の発達はそれを用いる人間の道徳心、規範力にかかっていることを考える時、これからの教育内容の重大さを思わずにはおれません。また、教員への不信も深刻な問題です。人間による教育を目的とする我が国の学校教育の根幹を揺るがす問題だからです。さらには、家庭教育力、地域教育力の低下への懸念も重大な問題です。先にも述べましたように、平成14年度からは、完全学校週5日制が実施されることとなっています。この完全学校週5日制の導入は、これまでの学校を主体として子どもを教育する時代から、学校・家庭・地域が一体となり子どもを教育する時代への変化をもたらすものだからです。こうした、問題の解決は単に学校教育の改革のみで達成できるものではありません。ながい間、我が国の人材育成に貢献してきた教育システムそのものを振り返り、検討していく必要があります。
 こうした検討をするためには、今までの教育が、来るべき時代に求められる資質を備えた人材を育成してきたかどうかを明らかにしていく必要があります。現在の我が国や広島市の教育が、次代を託す子どもたちを育成するものとなっているかどうかを検証するということです。

 このような認識に立って、本検討会議においては、教育の現状課題等について検討を行った結果、我が国に生じた社会変動や今までの教育により次のような課題が生じてきているのではないかという認識に達しました。

(1)自制心のない子どもたち

  • 少年の犯罪、問題行動等が多い。
  • 非行の根底には、子どもたちの寂しさがある。
  • 自己中心的
  • 耐性に欠ける。

(2)個人主義の子どもたち

  • 家の中でひとりでテレビゲームをする、携帯電話でしか話し合わない。
  • 他人に干渉したくない、干渉されたくない。自分の世界をつくりたいと思っている。
  • 自分の関心があるもの以外には熱中できない。
  • 自由という言葉をはきちがえて自分の権利だけを主張し、義務を果たさない。

(3)コミュニケーション能力が低下している子どもたち
 ・子どもたちに話しかけてもほとんど反応がない。
 ・自分の意見や感情を表現する能力が乏しい。
 ・学校で学んだ英語が現実場面で生かされていない。

(4)実体験が不足している子どもたち

  • 自然・社会・文化などとの実体験が少なくなっている。
  • 実体験を必要としない生活になっている。(体験の疑似化・人工化・危険性への過度な警戒)

(5)心身の健康が心配な子どもたち

  • 持久力がなく、すぐ疲れる。
  • 朝食を取らないなど、食生活がゆがんでいる。
  • 生活習慣病(※)が低年齢化している。
  • いじめ、不登校、問題行動等が増加している。

※生活習慣病とは、生活習慣が疾病の発症に深く関係していることが明らかになったこと伴い、一次予防を重視して生活習慣の改善を図る観点から、新たに導入された概念であり、「食習慣、運動週間、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義(厚生省)される。例えば脳血管疾患、心臓病、高血圧症、肥満症などがある。

(6)情報過多や忙しさに追われる子どもたち・大人たち

  • 子どもたちの生活が忙しすぎる。
  • 情報過多や情報内容の問題により、本当に大切なことを見抜けなくなっている。
  • 大人もまわりのことを省みる時間的・精神的余裕がない。

(7)社会全体のモラルの低下

  • 物質的な価値観や快楽を優先している。
  • 他者への責任転嫁など、責任感が欠如している。
  • 社会全体や他人のことを考えず、自分の利害得失を優先している。

(8)揺れ動いている価値観

  • 子どもの立場に立つことと子どもにこびることとが誤解されている。
  • 基本的な知識・常識・教養というものが軽視されている。
  • まじめであることや、努力することに対する評価が低くなっている。

(9)学校の閉鎖性

  • 保護者に学校の教育内容・行事等が伝わりにくい。
  • 問題点を学校が抱え込んでおり、家庭・地域に実情が伝わっていない。
  • 学校と家庭・地域との信頼関係がうすれている。

(10)失いつつある家庭・地域の教育力

  • 自分以外の子どもにはかかわろうとしない傾向がある。
  • 地域活動の輪が広がりにくい。
  • 教育の問題をすべて学校に押しつける傾向がある。
  • 家庭、地域であいさつができない。
  • 子どもたちと社会とがかかわる場が少ない。

(11)その他

  • 子ども自身に目標がない、夢も持たない。
  • 学力が低下している。
  • 学校での環境教育への取組が少ない。
  • 社会性が身についておらず、企業で再教育している。

 本検討会議では、各委員の意見や市民の意見を踏まえ、近年の科学技術の発達に伴う、急速な情報化、国際化、大規模な社会変動が学校教育のみならず家庭教育や地域教育に大きな影響を与えていること、また、来るべき時代を担う人材を育成していくためには、現在の広島の教育システムは多くの解決すべき課題をもっているというという認識にいたりました。こうした課題を解決するためには、子どもたちをはぐくむ広島の新しい教育の方策として、基礎・基本をしっかりと身につけさせることを基盤にして、規範性、感性、体力、コミュニケーション能力の4つの柱を設定し、こうした人材育成のできる広島の新しい教育システムの創造に取り組まねばならない時期にきているという結論に達しました。

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教育委員会 学校教育部 指導第一課・指導第二課
電話:082-504-2486・082-504-2487/Fax:082-504-2142
メールアドレス:kyo-sido1@city.hiroshima.lg.jp

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