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ページ番号:0000016084更新日:2019年10月21日更新印刷ページ表示

広島市学校評価システム検討会議 最終報告

子どもたちの健やかな成長のために
~学校を拠点とした「町ぐるみ」による教育の推進・充実を目指して~

はじめに

 学校が保護者や地域住民等の信頼に応え、家庭や地域と連携協力して一体となって子どもたちの健やかな成長を図っていくためには、教育活動その他の学校運営の状況について積極的に情報を提供するとともに、その自己評価を実施し、評価結果の公表と、それに基づいて、改善を図っていくことが求められている。
 こうした中、国においては、中央教育審議会答申(平成10年9月)、「教育改革国民会議報告—教育を変える17の提案」(平成12年12月)などを踏まえ、平成14年3月29日付けで小学校及び中学校の設置基準(文部科学省令)を制定するとともに、幼稚園及び高等学校の設置基準を改正し、学校における自己評価等及び情報の積極的な提供に関する内容を新たに規定した。
 また、広島県においても、平成14年11月に「広島県学校評価システム検討会議最終まとめ」を出し、「標準的な学校評価システムの在り方」などを柱とした学校評価の実施の指針を示している。
 広島市においては、こうした国、県の動向を十分踏まえつつ、平成14年9月に「広島市学校評価システム検討会議」を設置し、学校を拠点とした「まちぐるみ」による教育の推進・充実を目指し、学校や地域の状況に応じた学校評価を行うための具体的な方策について研究協議を行ってきた。さらに、平成15年3月に学校管理規則を改正し、平成15年度から市立学校全体に自己評価を導入したところである。
 本検討会議においては、広島市の小・中学校の先進的な実践例や学校評価システム導入モデル事業の研究実践協力校の研究成果等を参考にしながら、自己評価の在り方やその推進方策、及び学校評価システムの信頼性を高めるための方策について協議を深めてきた。ここに、協議内容の最終まとめとして報告し、広島市における学校評価システムの確立に資するものである。

 平成16年2月

広島市学校評価システム検討会議
会長 林 孝

最終報告書の策定に当たって

1.策定の趣旨

 広島市においては、「心身ともにたくましく、思いやりのある人」を基本理念とし、生きるための基礎・基本をしっかりと身につけ、規範性、感性、体力、コミュニケーション能力の4つの力をバランスよく備えた「たくましい広島っ子」を育成するため、学校・家庭・地域が一体となり、「まちぐるみ」で新しい教育を推進している。
 この教育を推進していくうえで、学校は、どのような学校教育目標、教育方針のもとで、どのような教育活動を行うのか、その成果や課題、評価結果も含めて様々な教育情報を家庭、地域に積極的に公開し、教育活動等への理解・協力を得るための取り組みを充実する必要がある。
 そのため、広島市においては、平成13年度より、学校チャレンジ21推進事業を実施し、学校協力者会議において、教育活動について説明したり、ホームページを通して学校の情報を積極的に公開し、その充実に努めたりするなど、家庭や地域に対して、教育活動や学校運営等について説明責任(アカウンタビリティ)を果たす取り組みを進めている。
 各学校が「まちぐるみ」による教育の拠点として、このような取り組みをより確かなものにし、教育の質の向上を図るためには、計画(PLAN)—実践(DO)-評価(CHECK)—改善(ACTION)というマネジメントサイクルの考え方にたって、計画に基づき実践し、学校運営や教育活動の状況を評価し、その結果を情報発信することにより、学校に対する家庭や地域のニーズを的確に把握するとともに、これに基づいて改善を図っていくという、本市独自の学校評価システムを早期に確立する必要がある。

2.性格

 本市においては、平成15年3月に学校管理規則を改正し、平成15年度から市立学校全校で自己評価を実施している。また、学校評価の実践研究を行うため、研究実践協力校を指定し、学校における評価活動の推進・定着についての研究の成果を検討会議に反映させるとともに、研修会を通じて市立学校全校に実践事例を情報提供している。
 検討会議では、昨年度に引き続き、各学校での自己評価の推進・定着を図る方策と自己評価の客観性・信頼性を高めるための地域等からの外部評価や、専門家による第三者評価など外部からの評価の導入について協議内容を整理し、最終報告書として取りまとめたものである。

これからの学校評価の在り方について

1.これまでの評価活動の状況

 各学校においては、学校教育目標の達成状況等について評価活動を実施してきているが、本市において学校評価システムが導入される以前において、これまでの評価活動には次のような傾向が見られた。

評価について

  • 内容
    表現が抽象的で、検証可能なものになっていなかったり、目標が網羅的で具体的実践内容との系統性が十分に図られていなかったりするなどの状況が見られた。
  • 方法
    評価が記述式で行われていることが多いため、保護者等にわかりにくいものになっていたり、評価基準や評価指標が曖昧なため、定量的な把握が難しくなっていたりするなどの状況が見られた。
  • 時期
    学期末や年度末など、教育活動が終了した後に実施することが多く、活動途中で中間的な評価を実施することが少ないという傾向が見られた。
  • 評価者
    評価が校内の教職員を中心に行われていることが多いため、客観性、信頼性の確保につながっていない状況が見られた。

改善方策について

 改善につなげていくための具体的な協議が必ずしも十分とはいえない。評価結果を次年度の学校教育目標や教育活動等に反映されていない状況が見られた。

情報公開について

 授業や運動会などの教育活動は、家庭や地域に公開されることはあっても、その取り組みの成果を総括することや、学校教育目標や教育計画の達成状況、教育活動の評価結果について、情報を公開することが少ないという傾向が見られた。

推進体制について

 学校が主体的に教職員以外からの評価を取り入れて教育活動や学校運営の改善を図っていくシステムが不十分であった。また、学校の努力だけで解決できないことについても客観的に判断して解決を図るための仕組みが整っていなかった。

2.これからの評価活動の在り方

 これからの評価活動においては、従来の良さを生かしつつ、前述のこれまでの評価活動の状況を見直し、評価の客観性、信頼性を高め、教育活動や学校運営の改善につなげていくため、次の点に留意する必要がある。

評価について

  • 内容
    各目標の設定に当たっては、それぞれの内容に系統性を持たせるとともに、当面の課題や必要性を考慮して簡潔に整理する。また、評価の客観性、信頼性を高めるため、できるものについては、数値化した基準を設定し、数値化が困難な場合についても、できるだけ検証可能な指標を設定する。
  • 方法
    段階評価という方法を導入し、それぞれの段階における指標をあらかじめ設定する。
  • 時期
    教科の指導や生徒指導のように比較的短い活動期間で評価することができ、また、その成果を次の指導の改善に生かしやすい事柄については、学期末や学期の途中で、必要に応じて中間的な評価や随時評価を実施する。
  • 評価者
    したりするなど、子どもたちや家庭、地域等に対してアンケートによる意識調査を実施したり、評価結果を説明したうえで、記述や口頭での意見を集約必要に応じて教職員以外からの評価活動を取り入れる。

改善方策について

 問題点を是正することだけを意識するのではなく、子どもたちや学校の持っている「良さ」を明確にしていくという視点も取り入れる。
 また、評価を次年度につなげるためには、評価活動によって得られたデータをどのように分析・解釈し、問題点とその原因を診断し、改善策を明らかにしていくことが大切である。
 このため、校内に評価活動を推進するための組織を設け、これらの作業を行う中核的な役割を果たすとともに、校務分掌・学年会等との連携、調整を行うようにすることが望ましい。

情報公開について

 家庭や地域に対して、学校教育目標を達成するための校内組織、教育計画、その達成状況など、可能な限り質の高い情報の公開に努める。
 また、説明するに当たっては、資料をビジュアル的なものにするなど、わかりやすさを第一に考えることが大切である。
 特に、教育関係の専門用語を使用する場合は、簡単な注釈を付けるなど、情報の受け手の立場に立った公表を工夫する。

推進体制について

 学校が主体的かつ継続的に教育活動や学校経営の改善を図っていくためには、自己評価活動を学校評価の中心として充実させることが大切である。また、その信頼性と客観性を高めるために、学校が保護者や地域等の代表者からなる評価組織を設置し、自主的に外部評価を行うことが必要である。
 各学校が主体的に行う評価活動だけでなく、各学校の学校経営の在り方や教育委員会の支援の在り方も含めて、専門的な立場から客観的に判断することが必要である。そのため、別途、第三者評価機関を設けて評価を行うことが望まれる。

 こうした評価活動を効果的、効率的に機能させるためには、システム(学校評価システム)として学校経営の中に位置づけることが重要であり、こうした活動を支援する教育委員会の推進体制も充実させる必要がある。

学校評価についての基本的な考え方について

1.学校評価システムとは

 学校評価システムは、教職員による自己評価活動を中心に、学校が教育活動や学校経営について主体的かつ継続的に改善を図る仕組みである。
 具体的には、各学校において、目指す学校像(ビジョン)や前年度の評価結果に基づき各目標を設定(PLAN)し、その目標達成に向けて、具体的方策と目標達成の指標等を策定して、教職員が共通理解のもとに実践(DO)を行う。そして、子どもたちや保護者等の意見を参考にしながら各目標の達成状況を自己評価(CHECK)し、その評価結果に基づいて学校経営計画の改善(ACTION)を図るものとする。
 さらに、その自己評価活動の信頼性と客観性を高めるために、学校は主体的に地域等の代表者による評価組織を設置して外部評価を実施するとともに、教育委員会においては、必要に応じて専門家による第三者評価を実施するものである。

 校長は、自己評価及び外部評価の結果に基づいて学校経営の改善を図るとともに、当該年度の目標や評価結果及び次年度に向けた改善策を公表する。

学校評価システムの概念図

学校評価システムの概念図の画像

2.学校評価システムの目的

(1)教育の質の向上
 これからの学校においては、「まちぐるみ」による教育の拠点として家庭や地域との連携を深め、子どもたちや地域の実態に応じ創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開し、地域住民から信頼される学校づくりを進めることが求められている。
 そのためには、学習指導や生徒指導など教育活動とそれを支える学校運営のあらゆる場面において、計画(PLAN)-実践(DO)-評価(CHECK)-改善(ACTION)というマネジメントサイクルを導入し、計画(PLAN)の段階から、客観的な評価が可能になるような目標を設定し、教職員、保護者、地域住民が一体となってその具体的な目標に向かって協働的な取り組みを行うことが大切である。
 また、こうした取り組みの結果を公表することで、学校教育目標の具現化に向けた教職員、保護者、地域等の間での意見の交流が活発になり、そのことが各学校の教育の質の向上につながると考える。

教育の質の向上の画像

(2)経営責任の明確化
 学校は、これまでも行事の後や年度末に教育活動を振り返り、次への改善を図ることを目的として、主として教職員を中心に評価を行ってきた。
 しかしながら、地域住民に学校の存在価値を明らかにし、教育活動に対する社会の理解と協力を得るには、これまでの方法だけでは教育活動等の改善を図ることは不十分である。
 したがって、こうした取り組みに加え、家庭や地域からの意見や要望を的確に把握し、それを評価につなげていくことによって、評価活動の客観性、信頼性を高めていくことが大切である。
 そのため、各学校においては、学校教育目標等を年度当初に保護者や地域に説明するとともに、その達成状況等に関する評価を計画的、組織的に実施し、保護者や地域に説明することによって、学校としての「経営責任」の明確化を図り、学校の透明性を確保する必要がある。

経営責任の明確化の画像

(3)「まちぐるみ」による教育の推進・充実
 学校が、家庭や地域の信頼に応え、一体となって「まちぐるみ」による教育を進めていくためには、学校の情報を、家庭や地域に積極的に提供するとともに、その意見を十分に聞き、学校と家庭、地域が双方向で結ばれた緊密な連携を図っていく必要がある。
 このため、評価によって得られた「データに基づく対話」を生み出し、学校、家庭、地域のコミュニケーションを促進することを可能にする「学校評価システム」を導入することによって、学校の取り組みに対する家庭、地域の理解や協力・支援が得やすくなったり、それぞれの教育に対する役割を果たしたりするなど、「まちぐるみ」による教育をより一層推進・充実させていくことが期待される。

まちぐるみ」による教育の推進・充実の画像

学校評価システムの具体的な展開に当たって

1.計画(PLAN)

(1)作成様式
 学校経営計画は校長自らの経営理念をもとに、各学校が計画・作成するものである。その際、「目指す学校」の実現に向けて、各学校独自の具体的かつ客観的で検証可能な目標を設定する必要がある。
 そのため、教育委員会が示す学校経営計画の様式は基本的な要素に絞り、その他については、各学校が、子どもたちや地域等の実態を踏まえ、創意工夫のもと主体的に作成することが望ましい。

作成様式の画像

  • 学校経営計画
    学校の教育目標の達成を目指し、学校全体をトータルに見直す視点から、教育課程を中心に、校内研修計画などの諸計画をまとめた学校の総合的な計画のことで、目指す学校像(ビジョン)、経営目標(中期経営目標、短期経営目標)、具体的方策により構成される。
  • 学校経営目標
    学校が教育実践において追求する理念であり、方向性、よりどころ、目安とされるもの。
  • 目指す学校像(ビジョン)
    地域における自校の使命、何を目指して教育活動を進めるかを定めること及びその使命の追及を通じて実現しようとする自校の将来像のこと。
  • 経営目標
    経営理念に基づき設定した具体的で検証可能な学校経営の目標のことで、中期経営目標(3年程度)と中期経営目標を達成するための短期経営目標(年度)とがある。

(2)作成の手順

作成の手順の画像
(3)作成上の留意点
ア 目指す学校像(ビジョン)
 校長は、地域における自校の使命や学校内外の状況を的確に把握して、子どもたちに身に付けさせたい力や態度、それを実現するための学校、教職員のあるべき姿を具体的に設定するとともに、この目指す学校像(ビジョン)について教職員の共通理解を図り、子どもたちや家庭、地域にも周知することが大切である。
 このことにより、教職員・保護者・地域住民がそのビジョンを共有し、互いに協力し合って組織的、継続的な改善への取り組みが期待される。

イ 中期経営目標・短期経営目標

  • 校長は、学校教育目標、目指す学校像を踏まえ、当面の学校の目指すべき方向を示した中期経営目標(3年程度の経営目標)とそれを達成するためのより具体的化された短期経営目標(単年度の経営目標)を設定する。
  • 設定に当たっては、学校経営の現状分析を的確に行うとともに、子どもたちや家庭等に説明できるよう、できるものについては、数値化した基準を設定する。数値化が困難な場合についても、様々な方法で客観的に検証できるような指標を設定することにより、目標の達成状況がわかるように工夫する。
  • 中期経営目標には、『学力の向上』、『豊かな人間性の育成』、『「まちぐるみ」による教育の推進』という共通的視点を盛り込む必要がある。このほか、学校固有の課題解決を図ることや特色づくりを推進するための学校独自の視点を設けることも必要である。

ウ 具体的方策

  • 具体的方策は中期経営目標、短期経営目標を達成するための具体的な手だてであり、目標の達成度を評価するための項目である。
  • 具体的方策は、中期経営目標、短期経営目標等の達成状況を総合的に評価し、改善に生かすことができるよう工夫する必要がある。そのため、できるものについては、数値化した基準を設定したり、数値化が困難な場合についても、できるだけ検証可能な指標を設定したり、子どもたちや家庭等にアンケートによる意識調査を行うなどして、目標の達成状況が客観的でわかりやすいものとなるよう工夫する。特に、質的な変化を多角的にとらえるための情報収集について工夫が望まれる。
  • 評価を効果的に行うためには、校長、教頭のほか、校長が指名した教職員で構成する「学校評価委員会」を設置し、評価指標・評価基準の検討を加えて具体的方策を設定する。設定に当たっては、公務分掌、学年会等の意見を参考にするなど、全教職員が参画することが望まれる。
  • 具体的方策の設定に当たっては、校長の権限と責任を制約することがないよう留意する。

具体的方策における目標値の設定例

目標値設定の累計 目標値の設定基準
都道府県等の状況 全国平均、政令市平均等の目標値などを基準として目標値を設定
過去の最高値・最低値 学校の過去の最高(最低)値を基準として目標値を設定
過去の実績数値の推移 これまでの学校の実績数値から将来の目標値を設定
100%の実施を前提 対象者に対して全て実施する必要があることは、全てが実施されるような目標値を設定
既存の計画等で定められた目標値 既存の計画や参考となる他の計画等で既に目標を設定し、目標値を定めている場合はその目標値を設定

2.実践(DO)

  • 中期経営目標等の達成に向けて策定された具体的方策に基づいて、子どもたちの実態の変化や活動の状況を的確に把握しながら、教育活動を展開する。その際、学年会や校務分掌のほか、校内研修会等で目標や実践上の課題等について常に教職員の共通理解を図る。
  • 定期的に進捗状況を把握したり、途中段階で評価を実施するなど、必要に応じて中期経営目標等を見直し、より効果のある教育活動が展開できるよう、具体的方策や評価基準等の修正を行う。

3.評価(CHECK)

(1)学校における自己評価
ア.評価者
 学校評価委員会において中期経営目標等の達成状況について自己評価する。また、その際、必要に応じてアンケート等によって子どもたちや家庭から意見を聴取し、参考にする。

イ.評価指標及び評価基準

  • 評価指標及び評価基準は、中期経営目標等の達成状況を客観的に判断できるように各学校で設定し、公表する。策定にあたっては、教職員だけでなく、必要に応じて保護者等の代表を含めて協議するなど、自己評価の信頼性を高めるよう工夫する。
  • 評価指標は、過去の実績や現状、学校体制、地域実態や子どもたちの状況などを十分検討した上で具体的なものにする。
  • 評価基準は、具体的方策ごとに4段階評価などが考えられるが、評価に当たっては、ほぼ目標を達成できたから「B」判定、あるいは段階「3」というような安易な評価に流れないように留意しなければならない。そのためには、項目ごとの目標値に対して評価指標を設けておく必要がある。

学校における自己評価の画像1

学校における自己評価の画像2

ウ.評価の実施時期

  • 評価は、年度当初に学校経営計画を立て、具体的実践を行い、その結果を次年度の学校経営計画に反映し、教育活動を改善するためのものである。そのため、年間を通じて計画、実践、評価、改善というマネジメントサイクルが機能するように計画的に実施する。
  • 具体的方策によっては、学期末や学期の途中で必要に応じて中間的な評価を実施する。また、月単位、日単位等で繰り返す教育活動や種々の行事については、随時評価を行うことが必要である。

(2)地域等からの外部評価
ア.評価者
 自己評価活動の信頼性や評価結果の客観性を高めるため、校長が保護者や地域等から評価者にふさわしい人を選び、教職員以外で構成される外部評価組織を設置する。

イ.評価内容
 外部評価組織は、学校の自己評価の結果とそれに基づいて学校が策定する改善方策及び自己評価活動全般について評価を実施し、学校に対して意見提言を行う。外部評価の項目は、その評価結果をどのように活用するかという目的に合わせて校長が設定する。その際、校長は、実際に評価を行う外部評価組織の意見を参考にし、評価の客観性及び有効性が確保されるように努めなければならない。

ウ.評価の実施時期
 外部評価は、年間計画に基づいて、学校が自己評価の結果分析と改善策についての検討を行った後、毎年、年度末に実施する。また、評価結果の活用目的によっては、年度途中でも実施することが考えられる。そのため、年間を通じて外部評価組織の情報収集が可能となるよう、学校は積極的に情報を公開する必要がある。

(3)専門家による第三者評価
ア.評価者
 教育委員会が専門的な知識を有する者から委員を委嘱し、第三者評価機関を設置する。

イ.評価内容

  • 第三者評価機関は、前年度の自己評価及び外部評価等の資料に基づいて、客観的かつ専門的立場から分析し、各学校に対して学校経営や教育活動の改善についての意見提言を行うとともに、教育委員会に対しても、各学校への支援の在り方について、意見提言を行う。
  • 第三者評価の基になる資料の作成様式や評価項目及び評価指標・評価基準は、教育委員会が第三者評価機関の意見を聞いて策定する。

ウ.評価の実施時期
 年間計画に従って、できるだけ多くの学校について第三者評価を実施することが望まれる。そのため、教育委員会は、第三者評価機関の委員がいつでも必要に応じて資料を収集できるように、諸条件を整備する必要がある。

(4)改善(ACTION)

  • 評価結果の集計・分析により、目標達成の状況やその要因、背景、課題等を明らかにし、その結果を、次年度の学校経営計画の策定に活用するなどして教育活動の改善を行う。
  • 課題を明確にするため、評価結果の分析方法を工夫したり、子どもたちや保護者の評価と教員の評価とを対比させたりすることも有効である。
  • 年度中途での評価については、当該年度の学級経営計画の見直しに活用する必要がある。
  • 地域等による外部評価や、専門家による第三者評価によって得られた意見提言を改善に生かす。

改善(ACTION)の画像

(5)評価結果の公表

  • 校長は、学校評価の結果を家庭や地域等に公表する。学校外からの意見を聞くことで、今後の教育活動の改善に生かすとともに、「まちぐるみ」による教育を推進することができる。
  • 公表内容は、評価結果にとどまらず、年度当初設定した中期経営目標との関連や今後の改善の方向について明らかにするとともに、図表やグラフ等を使い、簡潔明瞭でわかりやすい内容となるよう心がける。
  • 公表する方法については、学校だよりの活用やPTA総会、説明会等の開催のほか、インターネットのホームページなど、より多くの家庭や地域等に公表する。その際、広く意見を聞いて教育活動に生かせるような方法を工夫する。
  • 個人情報の発信は、本人・保護者の同意に基づき、校長が必要と認めたものに限定する。また、公表する内容については、著作権や広島市個人情報保護条例・広島市情報公開条例等にも留意する。

6.教育委員会との連携

  • 校長は、学校経営計画及び評価結果を、学校の設置者である教育委員会に報告する。
  • 教育委員会は、各学校の評価結果を教育行政施策に反映させるため、その内容の分析・考察に努め、学校経営に対する相談機能の強化などの指導・助言のあり方を検討することや、各学校の評価結果に基づく学校経営計画の改善策に対して、必要な支援(人的・財政的)を行うことを検討する必要がある。
  • 教育委員会は、第三者評価によって得られた結果に基づいて施策を見直し、学校の支援や指導に生かすよう努める。また、校長をはじめ、教職員を対象とした研修会の開催や実践研究の成果の普及を図るなど、計画的に学校評価システムの定着・充実に向けた手だてを講じる必要がある。
  • 教育委員会は、外部評価組織の設置準備期間を設けるなど、各学校において外部評価を円滑に導入できるよう学校現場の状況に配慮することが必要である。

実施に当たっての留意点について

1.教職員の共通理解

 学校評価をより実効性のあるものにしていくためには、校内研修会等を通じて、学校教育目標や目指す学校像等の再確認を行ったり、これまでの評価の在り方や課題等について十分協議・検討を行ったりするなど、教職員の共通理解を図ることが必要である。特に、学校評価の今日的な役割や計画的な評価活動の在り方について意識の共有化を図ることが大切である。

2.推進体制の整備

 学校評価は校務をつかさどる校長の権限と責任において行われるべきものであるが、その目的や内容を共通理解し、また、学校評価の結果を教職員全員のものとしていくためには、学校評価委員会を校内組織に位置付け、教職員一人一人の学校経営への参画意識が向上するように組織の活性化を図るなど、学校全体で学校評価に取り組む推進体制を整備する必要がある。

3.目的意識の明確化

 学校評価は学校教育活動の充実・改善を目的としており、それを実現するためには、校長が、教職員に明確なビジョンを示すことにより、教職員一人一人が共通の認識に立ち、かつ目的意識を持って取り組んでいく必要がある。

4.積極的な情報発信

 家庭や地域等から、学校評価の資料となる意見を幅広く収集するためには、日頃より、学校の教育活動等を広く知ってもらう必要がある。
 そのため、PTA総会、保護者会、学校だより、ホームページ等、様々な情報伝達の場や方法を活用して、学校評価の取り組み状況やその結果をはじめ、学習の達成状況や学校行事などといった幅広い教育情報の提供に努めるなど、家庭や地域にできる限り質の高い情報を積極的に発信していく必要がある。

おわりに

 本検討会議においては、先行事例や実践研究の成果を参考にしながら、自己評価にかかる評価体制や評価項目、評価基準の在り方やその客観性と信頼性を高めるための外部からの評価の在り方等を主な柱として協議を深め、その協議結果をこの報告書に取りまとめたものである。
 研究実践協力校においては、自己評価の導入によって校内で議論が活発に行われるようになり、学級や学年に対しても担任や学年主任から経営方針が明確に示されるようになるなど、信頼される学校の実現に向けて意識改革が着実に進みつつある。
 学校評価システムは、学校が質の高い情報を提供することで説明責任を果たし、主体的に教育活動等の改善を図っていくものであり、それによって『教育の質の向上』、『経営責任の明確化』、『まちぐるみによる教育の推進・充実』に寄与するとともに、現在検討が進められている通学区域の弾力的運用を推進する上においても重要な仕組みの一つである。
 市教育委員会においては、学校評価システム導入後の状況を把握し、学校評価の不断の見直し・改善を行うとともに、学校現場の実践や、国及び都道府県等の先進的な研究事例などの情報を収集し、学校への情報提供に努めるべき必要があると考える。
 この報告書は、広島市学校評価システムの基本的な考え方を示したものであり、自校に合うよう工夫することが求められている。今後、各学校において自己評価活動が充実し、広島市の学校評価システムが有効に機能していくことが、広島市の子どもたちの健やかな成長につながることを切に願うものである。

このページに関するお問い合わせ先

教育委員会 学校教育部 指導第一課・指導第二課
電話:082-504-2486・082-504-2487/Fax:082-504-2142
メールアドレス:kyo-sido2@city.hiroshima.lg.jp

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