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○広島市食品ロス削減推進条例

令和4年12月22日

条例第47号

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、流通、販売、消費等の各段階において日常的に廃棄されている。

この現状は、とても「もったいない」ことであり、食品ロスの削減により、まだ食べることができる食品を廃棄することなく、可能な限り食品として活用していくことが重要となっている。

さらに、食品ロスの削減は、食品の生産等に関わる資源等の無駄な使用の抑制、地方公共団体における廃棄物処理に要する経費の軽減等につながることからも重要である。

また、世界は今、持続可能な社会を実現させ、それを将来の世代に引き継ぐ上で重要な時期を迎えており、食品ロスの削減は、そのために誰もが取り組める身近な課題となっている。

このような状況の中、本市においては、広島市一般廃棄物(ごみ)処理基本計画の中に位置付ける食品ロス削減推進計画等に基づいて食品ロスの削減に関する施策を実施しているが、今後は、食品ロスの削減に主眼を置いた施策の更なる充実とともに、貧困対策等を含めた幅広い分野にわたる施策の展開が求められる。

また、食品ロスの削減のためには、誰もが食品ロスを他人事ではなく我が事として捉え、これへの理解と行動の変革が広がるよう、本市、事業者、消費者等の多様な主体が連携して推進していくことが必要である。その上で、あらゆる主体において、食べ物を大切にする文化を再認識しながら、子どもたちに明るい未来を託せるよう覚悟を持って行動を変革していくことが求められる。

このような認識の下、本市における食品ロスの削減を推進し、もって持続可能な社会の実現に寄与することを目指し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)の趣旨にのっとり、食品ロスの削減に関し、本市及び事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにするとともに、本市の施策の基本となる事項を定めることにより、食品ロスの削減に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって持続可能な社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第1項に規定する医薬品、同条第2項に規定する医薬部外品及び同条第9項に規定する再生医療等製品以外のものをいう。

2 この条例において「食品ロスの削減」とは、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組をいう。

(本市の責務)

第3条 本市は、食品ロスの削減に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、本市の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(事業者の責務)

第4条 事業者は、食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、自らの事業活動に関し、食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとする。

2 事業者は、自らの事業活動に関し、本市が実施する食品ロスの削減に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(消費者の役割)

第5条 消費者は、食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、日常生活の中で食品ロスの削減のために自らができることを考え、賞味期限(定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限をいう。第16条第2項第3号及び第3項第2号において同じ。)及び消費期限(定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限をいう。第16条第3項第2号において同じ。)を正確に理解した上で、食品の購入、保存又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとする。

(関係者相互の連携及び協力)

第6条 本市、事業者、消費者、食品ロスの削減に関する活動を行う団体、学校その他の関係者は、食品ロスの削減の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

(食品ロス削減推進計画)

第7条 市長は、食品ロスの削減に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、食品ロスの削減の推進に関する法律第13条第1項に規定する食品ロスの削減の推進に関する計画(以下「食品ロス削減推進計画」という。)を定めるものとする。

2 市長は、食品ロス削減推進計画を定めるに当たっては、環境、消費生活、保健、福祉、産業振興、教育その他の食品ロスの削減に関連する分野における施策相互の有機的な連携が図られるよう配慮するものとする。

3 市長は、食品ロス削減推進計画を定めるに当たっては、あらかじめ、広島市廃棄物減量化・資源化等推進審議会の意見を聴くものとする。

4 市長は、食品ロス削減推進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

5 前3項の規定は、食品ロス削減推進計画の変更について準用する。

6 市長は、毎年、食品ロス削減推進計画に基づく施策の実施状況を広島市廃棄物減量化・資源化等推進審議会及び市議会に報告するとともに、これを公表するものとする。

(普及啓発、教育及び学習の振興等)

第8条 本市は、消費者、事業者等が、食品ロスの削減について、理解と関心を深めるとともに、それぞれの立場から取り組むことを促進するため、次に掲げる施策を策定し、及び実施するものとする。

(1) 消費者に対し、日常生活の中で食品ロスの削減について意識し、そのために自らができることを考え、それを実践するための啓発及び知識の普及を図るために必要な施策

(2) 消費者に対し、環境、消費生活及び食育に関する施策と連携して食品ロスの削減についての啓発及び知識の普及を図るために必要な施策

(3) 消費者、事業者等に対し、先進的な取組、優良事例その他の食品ロスの削減に資する情報の適切な提供を行うために必要な施策

(4) 地域等において食品ロスの削減についての啓発及び知識の普及を行うことによる食品ロスの削減の推進を担う人材の育成を図るために必要な施策

(5) 児童、生徒及び学生に対し、学校の教科等を通じて、食品ロスの削減についての理解と関心及びその実践を促進するために必要な施策

(6) 前各号に掲げるもののほか、食品ロスの削減について、啓発及び知識の普及、教育及び学習の振興等を図るために必要な施策

2 前項の施策には、必要量に応じた食品の販売及び購入、販売及び購入をした食品を無駄にしないための取組その他の消費者と事業者との連携協力による食品ロスの削減の重要性についての理解を深めるための啓発が含まれるものとする。

(食品関連事業者等の取組に対する支援)

第9条 本市は、食品の生産、製造、販売等の各段階における食品ロスの削減についての食品関連事業者(食品の製造、加工、卸売若しくは小売又は食事の提供を行う事業者をいう。第12条第1項及び第16条第1項から第4項までにおいて同じ。)及び農林漁業者並びにこれらの者がそれぞれ組織する団体(以下「食品関連事業者等」という。)の取組に対する支援に関し、次に掲げる施策を策定し、及び実施するものとする。

(1) 食品関連事業者等が食品ロスの削減に積極的に取り組むことを支援するために必要な施策

(2) 第16条各項に規定する取組を支援するために必要な施策

(3) 食品関連事業者等が消費者に対する食品ロスの削減についての啓発及び知識の普及に取り組むことを支援するために必要な施策

(4) 前3号に掲げるもののほか、食品ロスの削減についての食品関連事業者等の取組に対する支援のために必要な施策

2 本市は、食品の生産から消費に至る一連の過程における食品ロスの削減の効果的な推進を図るため、食品関連事業者等の相互の連携の強化のための取組に対する支援に関し必要な施策を策定し、及び実施するものとする。

(表彰)

第10条 本市は、事業者、消費者、食品ロスの削減に関する活動を行う団体、学校その他の関係者の食品ロスの削減を促進するため、食品ロスの削減に関し顕著な功績があると認められる者に対し表彰を行うものとする。

(実態調査等)

第11条 本市は、食品ロスの削減に関する施策の効果的な実施に資するよう、まだ食べることができる食品の廃棄の実態に関する調査並びにその効果的な削減方法等に関する調査及び研究を推進するものとする。

(未利用食品等を提供するための活動の支援等)

第12条 本市は、食品関連事業者その他の者から未利用食品等まだ食べることができる食品の提供を受けて貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない者にこれを提供するための活動(以下「未利用食品等を提供するための活動」という。)の円滑な実施を図るため、次に掲げる施策を策定し、及び実施するものとする。

(1) 未利用食品等を提供するための活動に係る関係者相互の連携を強化するために必要な施策

(2) 消費者及び食品関連事業者等に対し、未利用食品等を提供するための活動の意義及び役割についての啓発及び知識の普及を図るために必要な施策

(3) 食品関連事業者等が未利用食品等を提供するための活動を行っている団体等に対して支援することを促進するために必要な施策

(4) 貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない者に対し、未利用食品等を提供するための活動を行っている団体等によって食品が適切に提供されるために必要な施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、未利用食品等を提供するための活動の円滑な実施を図るために必要な施策

2 前項に定めるもののほか、本市は、民間の団体が行う未利用食品等を提供するための活動を支援するために必要な施策を策定し、及び実施するものとする。

(食品廃棄物の再生利用の促進)

第13条 本市は、食品廃棄物の再生利用を促進するために必要な施策を策定し、及び実施するものとする。

(推進体制の整備)

第14条 本市は、食品ロスの削減に関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、当該施策に関係する部局相互の連携を図るための体制を整備するものとする。

(財政上の措置)

第15条 本市は、食品ロスの削減に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(食品関連事業者及び農林漁業者の取組)

第16条 食品関連事業者は、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとする。

(1) 発注した商品(食品に限る。以下この号において同じ。)のこん包の資材に損傷又は汚損が生じた場合において、その資材でこん包された商品に損傷又は汚損が生じていないときは、その輸送又は保管に支障を来す場合その他の合理的な理由がある場合を除き、そのままの状態で納品することを許容すること。

(2) 未利用食品等を提供するための活動の意義及び役割を理解し、その活動のために可能な範囲で未利用食品の提供を行うこと。

2 食品関連事業者のうち、食品の製造又は加工を行う事業者は、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとする。

(1) 食品の製造又は加工の時に生ずる端材、形崩れの食品等を有効に活用すること等により、食品の原料又は材料を無駄にしないように利用すること。

(2) 食品の製造又は加工及び出荷の工程において、食品を適正に管理し、その鮮度を保持すること。

(3) 食品の製造又は加工の方法の見直し、その保存に資する容器包装の工夫等により賞味期限の延長を検討するとともに、賞味期限の表示(食品の製造又は加工の日から賞味期限までの期間が3月を超える場合のものに限る。)について年月表示等に改めることを検討すること。

3 食品関連事業者のうち、食品の卸売又は小売を行う事業者は、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとする。

(1) 納品期限の緩和その他の食品ロスの削減に資する商慣習の見直しを行うこと。

(2) 消費者に対し、賞味期限及び消費期限が近い食品から購入するよう呼び掛けるとともに、それを売り切るための工夫を行うこと。

4 食品関連事業者のうち、食事の提供を行う事業者は、それぞれの実情に応じて可能な範囲で、消費者に対し食事として提供された食品を食べ切るよう促すための工夫を行うことに取り組むよう努めるものとする。

5 農林漁業者は、次に掲げる事項に取り組むよう努めるものとする。

(1) それぞれの実情に応じて可能な範囲で、規格外又は未利用の農林水産物(食用に供されるものに限る。次号において同じ。)を有効に活用すること。

(2) 未利用食品等を提供するための活動の意義及び役割を理解し、その活動のために可能な範囲で規格外又は未利用の農林水産物の提供を行うこと。

1 この条例は、令和5年4月1日から施行する。

2 この条例の施行の際現に定められている本市の食品ロス削減推進計画は、第7条第1項の規定により定められた食品ロス削減推進計画とみなす。

3 広島市附属機関設置条例(昭和28年広島市条例第35号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう略〕

4 市長は、この条例の施行後、社会情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

広島市食品ロス削減推進条例

令和4年12月22日 条例第47号

(令和5年4月1日施行)