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○広島市基本構想

この基本構想は、議会の議決すべき事件に関する条例に基づき、令和2年6月25日、広島市議会において議決されたものです。

目次

第1 趣旨

第2 策定の背景

第3 都市像

第4 施策の構想

【世界に輝く平和のまち】

1 「平和への願い」を世界中に広げるまちづくり

【国際的に開かれた活力あるまち】

2 活力の創出と都市の個性の確立を目指したまちづくり

3 地域特性に応じた個性的な魅力を生かしたまちづくり

【文化が息づき豊かな人間性を育むまち】

4 多様な市民が生き生きと暮らせるまちづくり

5 保健・医療・福祉、子どもの育成環境の充実を目指したまちづくり

6 安全で安心して生活でき、豊かな自然を将来に引き継ぐまちづくり

第5 施策の推進

第1 趣旨

広島市基本構想(以下「基本構想」という。)は、総合的かつ計画的な行政を推進し、もって市民福祉の向上を図ることを目的として、広島市の将来の都市像及びそれを実現するための施策の構想について定めるものである。

第2 策定の背景

人類史上最初の被爆都市である広島市は、これまで、平和首長会議の加盟都市やその市民、NGO等と連携し、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を訴え続けてきた。しかしながら、世界には、依然として約1万4千発の核兵器や核弾頭が厳然として存在し、その近代化が進む一方で、平成29年(2017年)に国連で採択された核兵器禁止条約は未だ発効に至っていない。加えて、国際社会においては、自国第一主義が台頭し、排他的、対立的な動きが国家間の緊張関係を高めている。こうした状況下においては、これまで以上に市民社会において平和意識を醸成することにより、平和への大きな潮流をつくり、各国の為政者が世界恒久平和に大きく歩みを進められるよう後押しする環境づくりを進めていくことが求められている。

一方、我が国においては、世界に類を見ない速度で少子化・高齢化が進むとともに、本格的な人口減少社会を迎えている。広島市においても、令和2年(2020年)をピークに人口が減少し、令和22年(2040年)には、市民の3人に1人が65歳以上に、5人に1人が75歳以上になると予測されている。こうした人口動態の変化に加え、地域コミュニティの活力低下、個人の価値観やライフスタイルの多様化が進むとともに、急速な技術革新やグローバル化の進展などの影響により、未来を担う子どもを取り巻く環境を始め社会環境が大きく変化している。さらに、年々外国人訪問者等が増加し、地元経済等への波及効果が高まる一方で、受け入れる地域との共存・共生が求められるようになっている。加えて、地球温暖化による気候変動の影響が疑われる自然災害への対応など、様々な課題に直面しており、広島市は今、大きな時代の変革期にある。

これまで、都市づくりの最高目標である都市像として「国際平和文化都市」を掲げて施策を展開してきた広島市は、現在、「200万人広島都市圏構想」を提唱し、都市間での競争を前提とする旧来のまちづくりの発想を転換して、広島広域都市圏を構成する23市町と共に、それぞれの強みを生かしながら、圏域全体が持続的な発展をしていくまちづくりの実現、深化に取り組んでいる。こうした取組が大きな時代の変革期に対応するためには必要不可欠であることを踏まえ、広島市のより一層の発展に向けた施策を展開するために、新しい基本構想を策定する。

第3 都市像

広島市は、人類史上最初の被爆都市を「恒久の平和を誠実に実現しようとする理想の象徴」である「平和記念都市」として建設することを目的とした広島平和記念都市建設法を基に、復興に尽力した。その後、一貫して都市づくりの最高目標となる都市像に「国際平和文化都市」を掲げ、その具現化に取り組んでいるが、そこで目指す「平和」とは、世界中の核兵器が廃絶され、戦争がない状態の下、都市に住む人々が良好な環境で、尊厳が保たれながら人間らしい生活を送っている状態をいう。

今日、世界中の各都市においては、気候変動や貧困、差別、暴力など、市民生活の安全と安心を脅かす様々な課題に立ち向かっているが、核兵器を巡る国際情勢を見てみると、各都市が課題解決に向けて積み重ねてきた努力を一瞬にして無にしかねない状況にある。

こうした中、広島市が真に「平和」の実現を目指す「平和記念都市」となるためには、世界中の各都市が「平和」についての価値観を共有しながら、それを実現するための環境づくりに連携して取り組むことの重要性を国際社会に向けて発信し続ける必要がある。また、全ての市民が多様性を尊重するとともに、健やかで、その価値観やライフスタイルに応じて共に助け合いながら生き生きと暮らし、誰もが平和の尊さを実感できる豊かな文化と人間性を育む都市づくりを着実に進めていく必要がある。

広島市は、こうした都市づくりの方向性を踏まえ、引き続き、都市像に「国際平和文化都市」を掲げる。

第4 施策の構想

「国際平和文化都市」の具現化に当たり、三つの要素を基に、次のとおり施策の構想を定める。

【世界に輝く平和のまち】

1 「平和への願い」を世界中に広げるまちづくり

(1) 世界で最初に被爆し、廃墟から立ち直った都市として、世界の都市や多様な主体との連携を推進し、国際世論の醸成を図りながら、広島市がこれまで訴え続けてきた核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて取り組む。

(2) 被爆から70年以上が経過し、被爆者の高齢化が更に進む中、各国為政者や世界中の人々の広島訪問を促すとともに、核兵器のない平和な世界を若い世代からも訴えていけるよう、被爆の実相を守り、広め、伝える取組を進め、被爆体験を基にした平和を希求する「ヒロシマの心」の共有の推進を図る。

(3) 平和首長会議の加盟都市を始めとする世界の都市や市民社会、国連機関等と連携し、飢餓や貧困、差別、暴力、環境破壊など、市民生活の安寧を脅かす諸問題の解決に向けた活動を推進する。

【国際的に開かれた活力あるまち】

2 活力の創出と都市の個性の確立を目指したまちづくり

(1) 中四国地方の中枢都市として、持続的にその活力を維持・向上させるため、都心等における業務・商業機能の集積・強化や利便性の高い公共交通ネットワークの構築など、集約型都市構造への転換に向けた取組を進めることにより、都市機能の充実強化を図る。

(2) 圏域経済の活性化に資する産業の集積・強化、広島市の経済の屋台骨である中小企業の活性化、農林水産業の振興を図るなど、産業の振興に取り組む。

(3) 広島市の観光資源の魅力向上や、広島広域都市圏の市町と連携した広域周遊観光、インバウンドの推進を図るなど、観光の振興に取り組む。

(4) 海外諸都市との交流の推進や市民レベルでの交流の促進、外国人訪問者が滞在しやすく、また、外国人市民の暮らしやすさにも配慮したまちづくりに取り組むなど、国際交流・国際協力や多文化共生の推進を図る。

3 地域特性に応じた個性的な魅力を生かしたまちづくり

(1) 多くの人々が「訪れたい」、「住んでみたい」、「住み続けたい」と感じる個性的で魅力あるまちを実現するため、「デルタ市街地」、「デルタ周辺部」、「中山間地・島しょ部」の三つのエリアの特性を踏まえ、地域資源を生かしたまちづくりを推進する。

(2) 各区の個性豊かな地域資源を生かし、住民による主体的かつ継続的なまちづくり活動を促進するなど、区の魅力と活力の向上に取り組む。

(3) 広島広域都市圏を構成する23市町と共に、人口減少に歯止めを掛け、圏域の経済の活性化と自律的で持続的な発展を目指し、ヒト・モノ・カネ・情報が循環する、どこに住んでも安心で暮らしやすく、住民の満足度の高い都市圏の形成に向けた取組を推進する。

【文化が息づき豊かな人間性を育むまち】

4 多様な市民が生き生きと暮らせるまちづくり

(1) 多様な市民が活力にあふれ、生きがいを感じ、生き生きと暮らせるとともに、広島広域都市圏の住民にとっても、活躍できる場を創出するまちを目指し、地域の活力を生み出す雇用等の促進や、男女が共に活躍でき、また、生涯にわたって学習できる社会の実現を目指した取組の推進を図るなど、高齢者や女性を始め全ての市民の意欲と能力が発揮できる環境づくりに取り組む。

(2) 市民一人一人の生きがいや心の充足感、健康増進や体力向上等に資するとともに、市民や国内外から訪れる人々が多様で上質な文化・スポーツの魅力に触れることのできる環境の下、様々な交流を生み出すことにより、広島広域都市圏全体の活力とにぎわいが創出されるよう、文化・スポーツ活動に対する支援や参加機会の提供、環境の整備を進めるなど、その更なる振興に取り組む。

(3) 市民や企業、NPO等による主体的なまちづくりが推進され、地域が主体となって地域の様々な課題にきめ細かく対応していけるよう、まちづくり活動に対する支援やその担い手確保を図るなど、地域コミュニティや多様な市民活動の活性化に取り組む。

5 保健・医療・福祉、子どもの育成環境の充実を目指したまちづくり

(1) 地域において、住民がそれぞれ役割を持ち、相互につながり支え合いながら、心豊かに暮らせるよう、「自助」、「共助」、「公助」を適切に組み合わせることにより、持続可能性の高い地域福祉を推進するとともに、高齢者や障害者、子どもなどが抱える様々な課題に対応できる包括的な支援体制の構築を図るなど、地域共生社会の実現に向けて取り組む。

(2) 市民はもとより、広島広域都市圏の住民も安心で豊かな暮らしを送ることができるよう、健康づくりの推進、新たな感染症の発生も見据えた健康で安寧な生活の確保、医療提供体制等の充実を図るとともに、高齢者が安心して暮らせる社会の形成や、障害者の自立した生活の支援に取り組むなど、保健・医療・福祉の充実を図る。

(3) 急速に社会経済環境が変化していく中、子どもたちが将来に希望を持ち、健やかに成長していくことができるよう、全ての子どもが健やかに育つための環境づくりや、幼児教育から、小学校、中学校、高等学校、大学がそれぞれ連携し、円滑に接続された教育体系を基盤として、特色ある多様な教育プログラムを展開しながら、子どもの様々な能力や適性等に応じ、一人一人を大切にする教育の実現に向けた取組の推進を図るなど、未来を担う子どもの育成と教育に取り組む。

6 安全で安心して生活でき、豊かな自然を将来に引き継ぐまちづくり

(1) 市民の誰もがいつまでも住み続けたいと思うまち、訪れた誰もが住んでみたいと思うまちに不可欠な安全・安心の確保を図るため、地域の防災力の向上や情報収集・連絡体制の整備、広島広域都市圏の近隣市町とも連携した消防体制の充実、防犯意識や交通安全意識の高揚、道路や公園、上下水道等の施設の効果的・効率的な維持保全を進めるなど、安全・安心に暮らせる生活基盤の整備に取り組む。

(2) 自然災害の発生要因と言われている地球温暖化の防止対策を推進するとともに、豊かな自然を将来に引き継いでいくため、省エネルギー対策の推進や再生可能エネルギーの活用促進、ごみの減量・資源化等の推進、自然環境の保全を図るなど、環境と調和した循環型社会の形成に取り組む。

第5 施策の推進

この基本構想を達成するため、施策の大綱を総合的・体系的に定める第6次広島市基本計画を策定する。

広島市基本構想

 年番号なし

(令和2年6月25日施行)

体系情報
第1類 則/第1章 基本構想
沿革情報
年番号なし