ひろしま市議会だより 第323号別紙
特別委員長報告


三つの特別委員会は、所管をまたがる事項や重要な事項について調査・研究することを目的として令和5年6月30日に設置され、約2年間、鋭意活動してまいりました。今号では、6月11日の本会議において各委員長から報告のあった、これまでの調査・研究の概要について、主に委員の意見を掲載しています。

大都市税財政・地方創生対策特別委員会

委 員 長
八條 範彦
副委員長
平野 太祐 定野 和広
委  員
長井 龍也 中村 孝江
豊島 永子 有田 優子
山下 正寛 三宅 朗充
椋木 太一 川村 真治
岡村 和明 宮崎 誠克
西田 浩 中森 辰一
永田 雅紀

【調査項目】
1 大都市税財政制度の充実強化
2 地方分権の推進
3 地方創生への取組
4 行政改革と財政健全化の推進

各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 大都市税財政制度の充実強化
(1)指定都市の国の施策及び予算に関する提案
▼多様な大都市制度の早期実現について、総務省の中に専門的に検討する専任組織や指定都市との研究会を設置し、特別市制度の実現に向けて議論を加速するよう具体的に提案するのは有意義なことであり、確実に進めてほしい。
▼ヒト・モノ・カネを循環させることによって高齢化社会を支える財源を確保するよう検討してほしい。など
(2)大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望
▼地方税の国税化は、地方の課税権を大きく侵害し、地方分権に逆行するため、早期に是正するよう要望するとともに、国・地方間の税源配分の決定などに際し、地方の意見が国にしっかり届くよう取り組んでほしい。
▼都市としての魅力を発信しているのに、転出超過が止まらない原因がどこにあるのか一歩踏み込んで考えてほしい。など
(3)主要事業に関する国への要望
▼保育士や幼稚園教諭は精神的な負担が大きいことから、スクールカウンセラーを学校だけではなく、保育園や幼稚園にも配置するよう検討してほしい。
▼国の機能が東京に一極集中している問題に一石を投じる意味でも、外務省の核軍縮、核不拡散に関する部署を広島に移転させることについて積極的に行動してほしい。など
(4)党派別要望に係る広島市個別要望事項
 本市の主要事業に関する国への要望事項などの中から以下の項目を選定し各党派に要望を行いました。
1 原爆被爆者援護施策の充実
2 道路・交通ネットワークの整備
3 都市再生・都市基盤の整備
4 防災・減災のまちづくりの推進
5 平和への取組

2 地方分権の推進
▼権限移譲に見合わない財源移譲では、特別市になることが財政を弱体化させる懸念があるので、権限に見合った財源を確保するよう進めてほしい。
▼特別市としてどのような行政を行うのかを明確にした上で、特別市制度の実現に向けて取り組むべきではないか。など

3 地方創生への取組
▼学生が置かれている実態を分析して、若い人が本市で働きたい、住み続けたいと思えるような施策に取り組んでほしい。
▼地域における子育て支援や障害者支援、高齢者支援はどの世代の人も関わっていく必要があるので、ひろしまLMOを全市的に広め、子育て世代が町内会に加入してもらえるような施策を考えてほしい。
▼交通安全対策については、本市として組織横断的に取り組むとともに、広島県警察に対し、こどもや高齢者の交通事故を減らすための取組を強く働き掛けてほしい。
▼二酸化炭素の排出量削減にもつながることを考えた食品ロス削減に取り組んでほしい。
▼UIJターン就職学生支援事業は本市が力を入れている事業なので、その意気込みを学生に知ってもらえるよう、SNSを活用するなど広報を工夫してほしい。
▼こども医療費補助制度や学校給食の無償化について、本市は、政府が行うべきだと言い続けるのではなく、それが実現されるよう本市としても積極的に取り組む必要があるのではないか。など

4 行政改革と財政健全化の推進
▼学校や保育園において教員や保育士が非正規で雇用され、その大半が女性となっている状況が続く限り、ジェンダーバランスの問題は解消せず本市の人員配置は偏ったものになるので考えてほしい。
▼財政の柔軟性を整えていくため、経常収支比率を改善する取組を進めてほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、少子高齢化や人口減少により生じる様々な課題に的確に対応し、真の分権型社会の実現や地方創生の取組を推進していくために、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう、強く要望します。


都市活性化対策特別委員会

委 員 長
山路 英男
副委員長
山本 昌宏 平岡 優一
委  員
吉田 いつこ 松本 拓也
丸山 幸一郎 沖本 高博
福田 心平 門田 佳子
大西 理 清水 貞子
西佐古 晋平 川口 茂博
川本 和弘 並川 雄一
桑田 恭子 碓氷 芳雄

【調査項目】
1 魅力ある都心や拠点地区等におけるまちづくりの推進
2 公共交通を軸とした交通体系の構築
3 インバウンド需要等の回復を見据えた観光振興

各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 魅力ある都心や拠点地区等におけるまちづくりの推進
(1)中央公園内の公共施設の集約化等の進捗状況
▼ファミリープールについては、安価で楽しめることが最大の魅力だと思うので、その再整備に当たっては、できるだけ利用者に経済的な負担が掛からないようにしてほしい。
▼こども文化科学館、こども図書館及び青少年センターの再整備に当たっては、各施設を現在のこども文化科学館の建物に無理に配置することになると、サービスの低下が懸念されるので、各施設に求められる機能をしっかりと確保してほしい。
▼ファミリープールについて、流れるプールを残すとともに、ナイトプールを導入することで、市民だけでなく観光客にも来てもらえるような施設にしてほしい。
▼シャレオは空き店舗が目立つなど、紙屋町はこのままでは衰退してしまうので、中央公園内の公共施設の集約化等を検討するに当たっては、紙屋町の活性化も含めて考えてほしい。
▼文化芸術やこどもたちの施設の整備については、目先の財政的なメリットから集約化にとらわれるのではなく、中長期的な視点で進めてほしい。
▼こどもゾーンの整備に当たっては、小・中・高校生を対象としたアンケートを取るなど、こどもの意見をしっかり取り入れていくことが重要ではないか。
▼ファミリープールについて、多大な費用を掛ける以上、多くの方々に利用してもらう必要があるので、年間の目標利用者数という明確な目標を持って整備を進めてほしい。
▼こども図書館の再整備に当たっては、こども本の森との役割分担等についてしっかり検討してほしい。
▼健康科学館が廃止されるが、30年間培ってきた健康・人体に関する科学の展示などをこども文化科学館の展示ホールの中に盛り込むことを検討してほしい。など
(2)商工センター地区まちづくりビジョンの策定
▼商工センター地区の再整備については、将来的な財政の硬直化を防ぐためにも、民間主導で進めて、行政はサポートする形となるよう検討してほしい。
▼JR新井口駅から草津漁港までペデストリアンデッキを整備することについては、その必要性も含めて、もっと市民の声を聞いた上で検討してほしい。
▼MICE施設の整備に当たっては、周辺のにぎわいをどういった形で創出していくのかを踏まえた上で、周辺施設や交通の利便性なども含めて、総合的な観点からMICE施設や宿泊施設の規模を検討してほしい。など

2 公共交通を軸とした交通体系の構築
▼各事業者が収益性を高めていくためには、共同運行計画及び路線再編計画の立案が必要となるが、事業者間の調整が課題となってくるので、本市がイニシアチブを発揮して、合意形成を図ってほしい。
▼できる限り少ない投資で最大の効果が得られるように、利便性が向上し、利用者が増加する仕組みづくりを進めてほしい。
▼バスの自動運転については、運転手不足の解消等につながると思うので、積極的に実証実験の実施に向けた検討をしてほしい。
▼民間の競争性が失われることによりサービスの低下が懸念されるため、プラットフォームでサービスの質の向上についても取り組んでほしい。
▼バス路線の再編に当たっては、運転手の労働環境の改善に資するものにしてほしい。
▼高齢化が進む中でバスの便数が減少している地域があるため、高齢者に配慮した路線の最適化を行うことにより、高齢者が移動手段に困らないようにしてほしい。
▼バスの運行時間については、住民に要望を聞いた上で、利用しやすいものとなるよう、本市から事業者に働き掛けてほしい。など

3 インバウンド需要等の回復を見据えた観光振興
▼広島が観光地としてインバウンド需要を受け止められるまちになるため、似島、草津漁港、宮島を結ぶ船便を整備するなど、瀬戸内海を活用した観光ができるように考えてほしい。
▼アドベンチャーツーリズムのようなインバウンドの富裕層向け観光プログラムは大きな経済波及効果があると思うので、旅行業者等としっかり連携して検討してほしい。
▼平和大通りのPark-PFI事業を進めるに当たっては、そこに数多くの慰霊碑が存在することの意義に十分配慮してほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、高齢化の急速な進展や人口減少に直面する中、持続的に都市の活力を維持・向上させ、中四国地方の中枢都市にふさわしい都市機能の集積・強化や利便性の高い公共交通ネットワークの構築、インバウンド需要等の回復を見据えた観光振興など、活力や魅力にあふれ、にぎわいのあるまちづくりを進めていく上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう、強く要望します。


安心社会づくり対策特別委員会

委 員 長
山内 正晃
副委員長
石田 祥子 水野 考
委  員
木村 唯 石川 さおり
亀井 一夫 幸城 麗子
大田 智弘 藤本 聡志
田中 勝 森野 貴雅
森畠 秀治 大野 耕平
中原 洋美 元田 賢治
若林 新三 山田 春男
碓井 法明

【調査項目】
1 災害に強いまちづくり
2 保健医療対策
3 高齢者福祉の推進
4 子ども・子育て支援
5 循環型社会の形成の推進

各調査項目に対する委員の意見などは次のとおりです。

1 災害に強いまちづくり
▼大雨等による自然災害が大規模化、頻発化している中で、防災対応と気象情報に精通した気象防災アドバイザーの活用などにより、災害に強いまちづくりを更に進めてほしい。
▼本市の避難誘導アプリ「避難所へGO!」について、地域情報も含めた地域のコミュニケーション等もできるように充実してほしい。
▼命の危険にさらされる不安と向き合っている医療的ケア児・者など医療への依存度が高い方の個別避難計画については、一度完成したことで終わらず、定期的に状況を確認するなど寄り添ったものとしてほしい。
▼防災行政無線屋内受信機の無償貸与について、携帯電話やスマートフォンを持っていても使いこなすことができない高齢者も対象としてほしい。
▼自宅又は車中泊などの在宅避難者等が必要な支援を受けられるように行政として対象者を把握し、連絡体制を充実させるよう努めてほしい。
▼人工透析など医療への依存度が高い方は災害関連死となるリスクが高いので、災害を受けても引き続き医療行為が受けられるようにしてほしい。
▼洪水対応の発令基準の見直しを行ったことをしっかりと住民に周知してほしい。など

2 保健医療対策
▼社会全体で健康を支え、守るための社会環境の整備という観点から、個人の問題と考えられていた女性特有の健康課題を解決するフェムテックの普及に取り組んでほしい。
▼本計画で取り上げられた課題を解決していくことが健康寿命の延伸という目標につながっていくと考えるので、ベースライン値に係る調査結果を基に、今後更なる取組も推進してほしい。
▼ひきこもりの人の調査はこれまで余り行われていないので、実態を把握した上で、困っている人たちの環境をどうやったら改善できるのか検討する場を持ってほしい。など

3 高齢者福祉の推進
▼高齢者の方の相談から活躍までをワンストップで対応する「高齢者活躍地域相談センター」のようなものを設置し、高齢者の社会参加を促して、フレイル対策につなげてほしい。
▼介護サービスの質を決めるのは人材であり、人材の不足は介護職員の処遇改善と一体のものであるから、そこに力を入れてやってほしい。
▼高齢者いきいきポイント事業を拡大することが、本市の財政にとって負担になるのか、プラスになるのかについて、様々な視点で調査研究を進めてほしい。など

4 子ども・子育て支援
▼ヤングケアラーの実態を把握し、支援強化を充実させるために、ヤングケアラー専用の進路相談窓口の設置を進めてほしい。
▼ヤングケアラーについて、こどもへの周知は当然であるが、大人への周知も行い、声を上げられないこどもたちを支援していけるように、LMOなどとも連携して取り組んでほしい。
▼本市において、こどもたちが充実した生活ができ、教育を受けられ、幸せだという思いが持てるように取り組んでほしい。
▼こども基本法におけるこどもの意見表明権は、こどもを大事にし、少子化を克服していこうとする一つの大きな柱であるので、本市が今、計画している様々な事業について、こどもの声をきちんと聞いてほしい。
▼こども・若者が長期休暇明け前後に自殺をしたり、また、長期休暇中に家庭の経済的理由などで、食事を満足に食べられないといった問題も深刻化しているため、学校の目が届きにくい長期休暇こそ、こども・若者の居場所を作ってほしい。
▼子育て支援に関する目標値を高く設定したことは評価しているので、目標達成に向けてしっかりと取り組んでほしい。など

5 循環型社会の形成の推進
▼法律や条例が施行されていることや、自分たちの責務を知らないという事業者がいることから、しっかり周知をしてほしい。
▼食品ロスの削減の取組は誰でも取り組める身近な課題であるため、広報に力を入れてほしい。
▼エシカルマップの活用などエシカル消費の普及啓発活動の拡充を図ってほしい。
▼食材を手に入れたい人と売れ残って困っている人が、上手につながって双方がウインウインの関係になるような仕組みを、デジタル技術を活用して作ってほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、自然災害が頻発化、激甚化する中、防災力の向上を図ること、急速な人口減少や少子高齢化が進む中、人口減少に歯止めをかけ、将来にわたり住みよい、活力ある地域社会を維持していくこと、高齢者一人一人が、いきいきと暮らせる社会を実現すること、全てのこどもを社会全体で支える、こどもと子育てに優しいまちを実現すること、持続可能な社会を実現させ、将来にわたって健全で快適な生活環境を保全することなど、今後、市民が安心して社会で暮らせるまちづくりを進める上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう、強く要望します。