調査特別委員長報告

 3月14日の本会議において、調査特別委員会(大都市税財政・地方創生対策特別委員会、都市活性化対策特別委員会、安心社会づくり対策特別委員会)の各委員長から、これまでの調査・研究の概要について報告がありました。
 なお、紙面の都合上、委員の意見を中心に掲載しています。

大都市税財政・地方創生対策特別委員長報告

 各調査項目に対する委員の意見は次のとおりです。

1 大都市税財政制度の充実強化
(1)指定都市の国の施策及び予算に関する提案
▼感染症対策に関する事務・権限の移譲について、本市において、市域を対象とした新型コロナウイルス対策を講じられるよう力を込めて提案してほしい。
▼国と地方間の税財源配分の是正を進めるため、それぞれの役割分担を明確化した上で、具体的な提案を行ってほしい。など
(2)大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望
▼人口減少により社会状況が大きく変わろうとしている中、要望し続けても実現しないものについては、指定都市市長会の中で本市がリーダーシップを取って国との折衝の在り方を見直すなど、新たな対応に取り組んでほしい。
▼税源配分の見直しに当たっては、国会議員に地方の現状をしっかり見極めてもらって、より協力してもらえる体制を作るべきではないか。など
(3)主要事業に関する国への要望
▼黒い雨体験者の支援について、国が設置した検討会で検証が進められているが、黒い雨体験者の高齢化が進んでいることを踏まえ、国に対して早期に結論が出されるよう強い姿勢で臨む必要があるのではないか。
▼実際に災害に遭われた人たちが住宅を再建するということについて、より充実した支援措置が要るのではないか。など
(4)党派別要望に係る広島市個別要望事項
 本市の主要事業に関する国への要望事項を次のとおり選定しました。
1 原爆被爆者援護施策の充実
2 道路・交通ネットワークの整備
3 都市再生・都市基盤の整備
4 防災・減災のまちづくりの推進
5 平和への取組

2 地方分権の推進
▼農林水産業を営む者が行う野外焼却に関する廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び同法施行令並びに関連通知の解釈の明確化について、周辺の市町も抱えている課題であり、市町で取扱いが異なることがないよう、国へ提案し、農業を営む環境づくりを行ってほしい。
▼国が提案を認めなかったことで断念するのではなく、アプローチの方法を変えながら取り組んでほしい。
▼市民サービス向上のため、積極的に提案を行い、制度の改善に努めてほしい。など

3 地方創生への取組
▼男性が仕事、女性が家庭、男性が主、女性が従であるなど固定的な役割分担意識にとらわれないよう男女共同参画社会の実現に向け取り組んでほしい。
▼公共交通の利用促進を図るため、地域の人たちの声を反映して、より利便性の高いものとなるよう取り組んでほしい。
▼広島広域都市圏における将来の人口を維持するために本市は重要な役割を担っていることから、子育て支援について、関係部局で連携して様々な施策に取り組んでほしい。
▼大学卒業生の県内就職率について、低下している原因を分析し、それに対応した取組を行ってほしい。など

4 効果的・効率的な行政の推進
▼行政手続に対する審査等へのAIの活用について、審査結果に問題がなかったかどうかチェックする仕組みを設け、厳正に判断が行われたかどうか、最終的には責任のあるところで判断できるようにしておく必要がある。
▼国の自治体DX推進計画では、国の主導により全国の自治体が足並みをそろえて推進するということになっているが、各自治体がどのようにデジタル化を進めていくかというのは、それぞれの実情に応じて独自に判断して進めるべきではないか。
▼DXの推進により市民生活の質の向上と、本市の魅力を高めていくことが可能となるので、しっかり取り組んでほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、少子高齢化や人口減少により生じる様々な課題に的確に対応した真の分権型社会の実現や地方創生の取組と、デジタル化により既存の制度等を変革していくデジタル・トランスフォーメーションを推進していく上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう強く要望します。


委員長 山路英男
副委員長  伊藤昭善 近松里子
委 員






水野 考 川村真治
宮崎誠克 大野耕平
西田 浩 竹田康律
母谷龍典 谷口 修
中森辰一 若林新三
金子和彦 児玉光禎
中本 弘


都市活性化対策特別委員長報告

 各調査項目に対する委員の意見は次のとおりです。

1 魅力ある都心づくりの推進
(1)中央公園内の公共施設の集約化等に向けた検討
▼映像文化ライブラリーにある
多くの貴重な映像資料や音楽資料については、歳月とともに劣化していくため、しっかりと保存、保管できるよう検討してほしい。
▼中央公園に限らず施設の利活用に当たっては、目標や目的を明確にし、計画的に進めてほしい。
▼中央図書館など中央公園内の公共施設の移設については、歴史的背景や建設した目的が達成されているかといった視点で今後の施設の在り方を検討してほしい。
▼中央図書館のエールエールA館への移転によって、今後、広島市の負担や広島駅南口開発株式会社等へ与える影響がどうなるか、しっかり市民の皆さんに理解していただくことが大切ではないか。
▼中央図書館の移転に当たっては、広く市民、県民が利用していただけるような、広島広域都市圏の図書館としてふさわしいものにしてほしい。
▼子どもが利用する施設の整備に当たっては、子育て世代、特に子どもたちの意見を最大限に尊重してほしい。
▼文化、スポーツ施設が集まる中央公園の中で、文化の中心となる中央図書館を商業業務機能の強化を図ろうとする広島駅前に移転させようとすることは、納得ができない。
▼図書館については、多くの人たちが本に親しむことが大切ではないかと考えているので、様々な意見をいただきながら、すばらしい図書館になるように努力をしてほしい。
▼こども文化科学館、こども図書館、ファミリープールについては、こどもゾーン一帯を面として捉え、関係課が連携して各施設の機能が重複しないよう整理し、子どもが楽しめる空間を整備してほしい。
▼中央公園内の公共施設の集約化については、旧市民球場跡地やサッカースタジアムなど都市開発の進捗に合わせ、複合的に進めることで大きな成果が出せると思うので、統一した整備時期の目標を定め、ヒト・モノ・カネの計画を立てて、地域や民間事業者の支援をいただきながら、できるだけ早く進めてほしい。
▼こども図書館、こども文化科学館、青少年センターの三つの施設を集約することは無理があるので、こども図書館を単独の施設とすることなどを改めてしっかりと議論して方針を決めてほしい。
▼こども文化科学館については、青少年センターが移転してくることになっても、利用者へのサービスが低下しないようにしてほしい。
▼青少年センターについては、移転することになっても、現在、無料で利用できる部分は、引き続き無料で利用できるようにするとともに、他の施設を利用することとなった場合は、施設によって利用料が異なることのないよう、公平性に特に留意して検討してほしい。
▼浅野文庫について別途検討するとなっているが、浅野文庫は中央図書館の前身で、本市にしかない大切なものであり、これを中央図書館から移転させれば、中央図書館の本質が変わってしまうので、移転させるべきではない。
▼本市は子育てしやすい環境を目指していくべきであり、そのためにファミリープールは、公共交通の利便性が高い都心部において子どもたちが親や祖父母と一緒に遊べる場所として必要であるので、他都市の事例を参考に、年間を通じて利用できる施設として存続させるよう検討してほしい。など
(2)都心における土地の高度利用等
▼行政と商店街等民間事業者が一体となって、オープンカフェ設置の推進などにより、スピード感を持って街並みを変えていってほしい。など

2 公共交通を軸とした交通体系の構築
(1)総合交通戦略の改定
(2)地域公共交通計画の改定
(3)公共交通ネットワークを活用した地域活性化の取組

▼バス事業への上下分離方式の導入に当たっては、国の財政支援が不可欠であるため、様々なネットワークを活用し、各党の国会議員に働き掛けて是非ともこれを実現してほしい。
▼バス事業への上下分離方式の導入に当たっては、事業者間の収益状況の違いについて、原因を分析した上で必要な支援を行うよう検討してほしい。
▼持続性の高い新たな公共交通体系の構築に当たっては、延伸されるアストラムラインを含めて検討してほしい。
▼持続性の高い新たな公共交通体系の構築については、バス事業への上下分離方式の導入に限らず、AI技術の進歩などによる交通形態の変化を見据え、しっかり検討してほしい。など
(4)乗合バス事業の共同運営システムの構築
▼高齢社会において重要な役割を果たす公共交通に対し支援することは賛成であるが、本市がどれだけ財政支援するのかが示されないと議会として判断できないため、共同運営システムの実現可能性をしっかりと検討した上で、本市の財政支援の規模を示してほしい。
▼市民がどこに住んでいても公共交通を同じように利用できるよう利便性の向上に努めてほしい。
▼共同運営システムの構築によるバス事業者への財政支援だけでなく、バス運転手の成り手不足を解消するため、運転手の処遇改善も検討してほしい。
▼高齢化が進む中、地域交通の必要性が高まっており、乗合バス事業への支援だけでなく、乗合タクシーなど地域交通への支援にも力を入れてほしい。など

3 アフターコロナを見据えた観光振興と中小企業の活性化
▼早期に入込観光客数をコロナ禍前の水準まで戻すため、民間の力も活用し、様々な取組を行ってほしい。
▼コロナ禍で困っている中小事業者に対し、国、県との役割分担にこだわらず、広島市として事業者の実態をよく見て、必要な支援を直接行ってほしい。
▼SNSは若者への影響力が強く、高い効果が見込まれるため、内容を充実させ、周知に努めてほしい。
▼経済状況の厳しさを把握するためには、倒産件数だけでなく休業、廃業の件数を把握する必要があるので、是非調査をしてほしい。
▼広域都市圏に係るSNSを活用した情報発信については、関係市町が連携して行うよう本市がリーダーシップを執って取り組み、広域都市圏を盛り上げてほしい。
▼G7広島サミットに向けた取組については、本市の様々な魅力が多くの方に伝わるよう、工夫して行ってほしい。
▼中小事業者への経営支援に当たっては、新しい生活様式に対応した事業環境の整備などについて融資ではなく補助事業として進めるとともに、統計上の数字に表れない苦しみを持つ事業者の声を聴き、事業に反映させてほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、高齢化の急速な進展や人口減少に直面する中、持続的に都市の活力を維持・向上させ、中四国地方の中枢都市にふさわしい都市機能の集積・強化や利便性の高い公共交通ネットワークの構築、アフターコロナを見据えた観光振興・中小企業の活性化など、活力や魅力にあふれ、にぎわいのあるまちづくりを進めていく上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう強く要望します。


委員長 碓氷芳雄
副委員長  石橋竜史 山内正晃
委 員






西佐古晋平 吉瀬康平
川本和弘 平岡優一
岡村和明 平野太祐
桑田恭子 渡辺好造
八條範彦 元田賢治
永田雅紀 山田春男
藤田博之


安心社会づくり対策特別委員長報告

 各調査項目に対する委員の意見は次のとおりです。

1 災害に強いまちづくり
▼行政がいかにして市民の命を守るかというところにもっと力点を置いて避難計画を作成してほしい。
▼同意を得られない要支援者に対しては、全国の例を参考にするとともに、要支援者がどこにいるかという情報を地域で共有できるようにしてほしい。
▼平成26年の災害において被災地の住民と広島市が一体となって取り組んだ復興まちづくりプランの策定に関するノウハウを広島市の中で継承してほしい。
▼平成30年災害の復興まちづくりプランを早く作成し実行するために、市と地域で共通認識を持って取り組んでほしい。
▼防災・減災対策の整備事業を行うだけではなく、治水プロジェクト等を含めて、今こんなことが行われてますという情報を、国、県、関係自治体と連携して是非発信してほしい。
▼防災情報を本当に必要な人に伝えるために、市が直接できなくても、小さい単位の町内会を通じて伝えたりすることを推し進めてほしい。
▼避難行動要支援者のうち、災害危険区域に居住し、かつ家族等の支援が受けられない方の個別避難計画の作成については、命を守る支援が届くよう、着実に推進してほしい。
▼降雨の状況が下流の者に分かるようなシステムを作るとともに、そういった情報が分かるような防災計画を同時に考えてほしい。など

2 保健医療対策
(1)広島市健康づくり計画『元気じゃけんひろしま21』の改定
▼長寿社会になってきているので、市民が少しでも長く健康でいられるように、引き続き様々な施策を充実してほしい。
▼高齢化が進み、老衰で亡くなる人の割合が増加しているので、終末期をどのように過ごすかを家族等と話し合う人生会議について、高齢者施策の中で取り組んでほしい。
▼永久歯が生える時から歯周病対策をきちっとしておかないと、永久歯が駄目になってしまうので、次期計画にはう蝕と同じ位の位置付けで歯周病対策について記載してほしい。
▼健康診査の受診率の向上について、ナッジ理論の活用だけでなく、受診するとポイントが貯まるといった得をする仕組みも受診につながると思うので、取り組んでほしい。
▼働く世代の運動習慣者の割合が減っており、この世代が高齢になった時に病気になる確率が高くなっていくので、若い時から様々な運動の機会が得られるような施策を考えてほしい。
▼健康診査については、働き方や経済的な環境等によって、受診しない理由も様々であるため、どうすればなるべく多くの方に受診してもらえるのか是非考えてほしい。
▼2025年に65歳以上の5人に1人が認知症になると言われているため、認知症の予防対策を、次期計画の中に含めてほしい。など
(2)新型コロナウイルス感染症対策の検証及び今後の対応
▼新型コロナウイルス感染症に感染し、後遺症に悩む方の不安を軽減するため、後遺症外来に関する情報提供を丁寧に行ってほしい。
▼今後のワクチン接種については、実績を踏まえて供給を受ける量を調整し、廃棄になるものを極力少なくするよう努めるべきではないか。
▼現場を担う基礎自治体として、国に対し必要であれば政策の見直しを求めることも役割の一つであるため、その判断材料として本市のワクチン接種の有無と症状の相関関係や症状別割合のデータを示してほしい。
▼感染症患者が今後も必要な医療を受けられるよう保健所や医療現場の体制の充実に努めてほしい。など

3 地域コミュニティの活性化
▼ビジョンの策定に当たっては、地域の声を聴き、地域の主体的な担い手はどこなのか整理し、ビジョンを誰が担うのか、いつまでやるのかを明確にした上で、地域間のバランスを考慮して進めてほしい。
▼しっかりとしたビジョンを作って、地域がこれから5年後、10年後を目指して活性化するようにしてほしい。
▼町内会が担うべきものの位置付け、これからのコミュニティが何をすべきなのか、新たな協力体制はなぜ必要なのか、その中身は何なのかを、きちっと明確にしたビジョンにすべきではないか。
▼市が地域の困り事を掘り下げて話をするには、これに携わる職員は専門性が必要になるため、ジョブ型にすることも含め職員の体制について検討してほしい。
▼今でさえ、コミュニティは地域差があり、この取組によりますます差が開いてしまうのではないかと心配なので、なかなか進まない地域へフォローをしてほしい。
▼空き家を活用した地域の活性化の仕組みづくりについては、中山間地域だけではなく、中心部の老朽化したマンションの空き家も念頭に置いて考えてほしい。など

4 地球温暖化対策
▼国産木材を活用することにより森林を若返らせることは、森林による温室効果ガスの吸収に有効であることから、こうしたことを踏まえた計画にしてほしい。
▼再生可能エネルギーの普及に当たっては、自然を破壊する乱開発につながるようなものは、きちっと制限できる内容の計画にしてほしい。
▼ZEB化の推進は、今後の市有施設に係る地球温暖化対策において欠かせない取組であるため、財政局を始め関係部局と連携し、着実に導入を推進してほしい。
▼地球温暖化対策については、教育と連携して若い世代への啓発に力を入れて取り組んでほしい。
▼建物の新築・改築時の再生可能エネルギーの導入等については、補助制度があるが、今後これらの設備の修繕等についても何らかの対策を検討してほしい。
▼地球温暖化対策実行計画の実施に当たっては、環境調整会議において施策ごとにどれだけのお金を掛けてどれだけの効果があったかを検証して進めてほしい。
▼脱炭素社会の構築に向けた社会経済システムへの転換について、その必要性や行政として積極的に推進することを市民に広げていく取組を検討してほしい。など

 本特別委員会で調査・研究した項目は、自然災害が頻発化、激甚化する中、防災力の向上を図ること、市民一人一人が、生涯を通じて心身ともに健康で自立した生活を送ることができるまちを実現すること、新型コロナウイルス感染症対策を講じること、持続可能な市民主体の地域づくりを進めること、2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指すことなど、今後、市民が安心して社会で暮らせるまちづくりを進める上で、非常に重要な課題です。
 委員各位の貴重な意見を真摯に受け止め、これらの課題に対する取組を推進していただくよう強く要望します。


委員長 森畠秀治
副委員長  山本昌宏 定野和広
委 員






山下正寛 三宅朗充
川口茂博 椋木太一
田中 勝 並川雄一
石田祥子 三宅正明
馬庭恭子 中原洋美
太田憲二 木山德和
碓井法明 木島 丘